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☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第82話☆

1 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/19(火) 22:22:43 ID:rMp7/ZB7
魔法少女、続いてます。

 ここは、 魔法少女リリカルなのはシリーズ のエロパロスレです。


『ローカル ルール』
1.リリカルあぷろだ等、他所でのネタを持ち込まないようにしましょう。
2.エロは無くても大丈夫です。
3.特殊な嗜好の作品(18禁を含む)は投稿前に必ず確認又は注意書きをお願いします。
  あと可能な限り、カップリングについても投稿前に注意書きをお願いします。
【補記】
1.また、以下の事柄を含む作品の場合も、注意書きまたは事前の相談をしたほうが無難です。
  ・オリキャラ
  ・原作の設定の改変
2.以下の事柄を含む作品の場合は、特に注意書きを絶対忘れないようにお願いします。
  ・凌辱あるいは鬱エンド(過去に殺人予告があったそうです)

『マナー』
【書き手】
1.割込み等を予防するためにも投稿前のリロードをオススメします。
  投稿前に注意書きも兼ねて、これから投下する旨を予告すると安全です。
2.スレッドに書き込みを行いながらSSを執筆するのはやめましょう。
  SSはワードやメモ帳などできちんと書きあげてから投下してください。
3.名前欄にタイトルまたはハンドルネームを入れましょう。
4.投下終了時に「続く」「ここまでです」などの一言を入れたり、あとがきを入れるか、
   「1/10」「2/10」…「10/10」といった風に全体の投下レス数がわかるような配慮をお願いします。

【読み手 & 全員】
1.書き手側には創作する自由・書きこむ自由があるのと同様に、
  読み手側には読む自由・読まない自由があります。
  読みたくないと感じた場合は、迷わず「読まない自由」を選ぶことが出来ます。
  書き手側・読み手側は双方の意思を尊重するよう心がけてください。
2.粗暴あるいは慇懃無礼な文体のレス、感情的・挑発的なレスは慎みましょう。
3.カプ・シチュ等の希望を出すのは構いませんが、度をわきまえましょう。
  頻度や書き方によっては「乞食」として嫌われます。
4.書き手が作品投下途中に、読み手が割り込んでコメントすることが多発しています。
  読み手もコメントする前に必ずリロードして確認しましょう。

『注意情報・臨時』(暫定)
 書き込みが反映されないトラブルが発生しています。
 特に、1行目改行、且つ22行以上の長文は、エラー表示無しで異次元に消えることがあるそうです。
 投下時はなるべく1レスごとにリロードし、ちゃんと書き込めているかどうか確認をしましょう。

リンクは>>2

2 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/19(火) 22:23:49 ID:rMp7/ZB7
【前スレ】
☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第81話☆
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1218508975/

【クロスものはこちらに】
 リリカルなのはクロスSS倉庫
 http://www38.atwiki.jp/nanohass/
 (ここからクロススレの現行スレッドに飛べます)

【書き手さん向け:マナー】
 読みやすいSSを書くために
 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/5301/1126975768/

【参考資料】
 ・Nanoha Wiki
  ttp://nanoha.julynet.jp/
  (用語集・人物・魔法・時系列考察などさまざまな情報有)
 ・R&R
  ttp://asagi-s.sakura.ne.jp/data_strikers.html
  (キャラの一人称・他人への呼び方がまとめられてます)

☆魔法少女リリカルなのはエロ小説☆スレの保管庫
 ttp://red.ribbon.to/~lyrical/nanoha/index.html  (旧)
 ttp://wiki.livedoor.jp/raisingheartexcelion/   (wiki)

3 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/19(火) 22:28:46 ID:dEWfOUQp
>>1
乙!

4 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/19(火) 22:31:37 ID:G+YoNE39
乙。

5 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/19(火) 22:41:17 ID:0U1/YFwB
>>1乙なの
そろそろ夏厨が消える時期なの

6 名前: ◆6BmcNJgox2 :2008/08/19(火) 23:12:18 ID:3wQr66wQ
>>1乙です

新スレ早々で済みませんが、書きます。

・『二つの未来』の続き
・『世界の平和を取ってスカの嫁兼監視役になった未来』『自分の幸せを取ってユーノと結婚した未来』
の二つのIFの内、前者は完結したので、今は後者のストーリーです
・エロありです(801含む)
・鬱注意(コミカル要素との併用ですが)
・オリキャラ登場
・病み要素注意

7 名前:二つの未来 39 ◆6BmcNJgox2 :2008/08/19(火) 23:13:33 ID:3wQr66wQ
翌日、なのはは管理局医療施設の内の一室、ユーノが寝かされている病室で
未だ目を覚まさず、眠り続けるユーノを不安そうな面持ちで見つめていた。

「ティアナ達だけじゃなく…ユーノ君まで…。」

先日、ユーノは突然フェイトに斬られた。手術は成功し命は取りとめたが、意識は未だ戻らず
ユーノは眠り続けている。このままユーノの意識が戻らなかったらどうしよう…
なのはは不安で不安で仕方が無かった。

「こ…これも…スカリエッティを抑えられなかったが故の…事なのかな…。」

ユーノを斬ったのはフェイトであり、厳密にはスカリエッティは一切関係無い。しかし、
帰ってきたジェイル=スカリエッティがミッドの何処かに潜伏し、何を企んでいるのか
分からないと言う事実が逆に管理局を不安にさせ、ストレスを蓄積させる原因になっているのは確かだ。
現にフェイトはそのストレスに耐えられず、おかしくなってユーノを斬ると言う暴挙に走ってしまった。
それ以来フェイトは逐電し行方不明。それがますますなのはを不安にさせる。

「あ! そういえばナーノ! ナーノは…大丈夫なのかな?」

まるで外堀を埋めるかの様になのはの身近な人間が狙われて行くこの状況。
それ故に次はナーノが危ないのでは? となのはは不安になっていた。
そして、その頃のナーノはと言うと…

「痛! ど…どうしたの? どうしていきなり叩くの? ヴィヴィオお姉ちゃん!」
「うるさい! 前々から思ってたけど…今日は言わせて貰うから! もうこれ以上私の
なのはママに近寄らないで! なのはママは私だけのママなんだよ!!」
「え!? どうして!? どうしてそういう事言うの!?」

突然ヴィヴィオに人気の無い所へ連れて行かれ、頬を引っ叩かれたナーノは思わず泣き出しそうになっていた。
しかし…ヴィヴィオはそんなナーノを憎らしい目で見つめていた。

「どうしてもだよ! ちょっとママのお腹から出て来ただけで…なのはママに可愛がられてるからって…
子供面しないでくれない!? さっきも言ったけどなのはママの子供はヴィヴィオだけなんだよ!」
「どうして!? 僕達姉弟なのに…どうして…。」

ナーノの目からは大量の涙が浮かんでいたが、ヴィヴィオは容赦しなかった。

「うるさいうるさい! お前なんか弟なんかじゃない!」

父と母の間では無く、故人の遺伝子データから培養槽の中でクローン培養される形で生を受け、
また血では無く、心で繋がった事によってなのはの養子となったヴィヴィオ。また、その周囲にも
ナカジマ家を初めとして、血では無く心で繋がった親子に触れる事が多かった事により、
ヴィヴィオにとっては血では無く心で繋がった親子こそが普通であり、逆になのはとユーノの間に
誕生したナーノの様な、血の繋がった子供の存在は余りにも異質に見えていた。故にナーノが
なのはに大切にされている事をヴィヴィオは良く思っていなかったし、ナーノについても
なのはとユーノの遺伝子をそれぞれ受け継いだだけの存在にしか見えなかった。

8 名前:二つの未来 40 ◆6BmcNJgox2 :2008/08/19(火) 23:14:51 ID:3wQr66wQ
「なのはママとユーノパパの間に生まれたから二人の子供!? そんなの私は認めない!
血で…遺伝子で繋がってるだけで子供面出来るならクローンで十分じゃない!
そう! クローン! お前はなのはママの血を引いてるだけの赤の他人! 血を引いてるだけで
なのはママに可愛がってもらえるずるい奴! でも私は違う! 血は繋がって無いけど…
心で繋がってる! 心で繋がってるからこそ…私こそ本当のなのはママの子供!
お前なんかとは違うんだよ!」
「え…あ…何で…どうして…そんな…。」

凄い剣幕で罵声を浴びせ続けるヴィヴィオにナーノは言い返す事が出来ず、目からは
涙がポロポロと流れ出すのみ。そして、自分の存在について自信が持てなくなって来ていた。
ヴィヴィオはナーノを目障りに思っていた様だが…ナーノはヴィヴィオを頼れる姉と思っていたからだ。

「お前になのはママの子供を名乗る資格は無い! もう何処へでも行けば良い! 私の目の黒い内は
なのはママには近付けさせない!」

ヴィヴィオが再び手を振り上げ、ナーノへ平手打ちをしようとしたその時、
突然何者かがヴィヴィオの手を掴んで止めた。それは一体何者なのか…

「ハ〜イ! お痛はそこまでですよ〜! 陛下〜!」
「クアットロ!? って言うか陛下って呼ばないで!」
「あ…意地悪なメガネのお姉ちゃん…。」

突然ヴィヴィオの手を掴んで止めたのはクアットロだった。それにはヴィヴィオもナーノも戸惑う。
何故『嫌な女ミッド1』の名を欲しいままにするクアットロがナーノを庇うのかと。

「いけませんよ〜。古代ベルカ聖王の血を引く陛下ともあろう者が〜、こんなちっちゃな子を
苛めるなんて〜、大人気無いとは思いませんか〜?」
「うるさい! 何故コイツを庇う!? この間の会議の時だって散々クソガキと馬鹿にしてたのに…。」

クアットロこそナーノを不要な者としていたはずなのに、何故掌を返して庇うのか全く解せなかった。
しかし、クアットロはナーノの頭を優しく撫でながら言うのである。

「確かにこの子はクソガキですよ〜。なのはさんの血を引いた子供なのに〜およそエースに
なり得そうな才は一切受け継がなかった〜ママの顔に泥を塗る親不孝なダメ息子〜!」
「意地悪なメガネのお姉ちゃんまで…僕の事…そう言うの…?」

庇っているのか否定してるのか分からないクアットロの態度にナーノはまたも泣き出しそうになるが…

「けど〜こんな子でも一応人権がありますからね〜。それに〜今はこうでも〜今後どうなるか〜。
案外凄い事になったりするかもしれないとは思いませんか〜?」
「え…。」

クアットロがナーノを庇う理由。確かに今のナーノに対して全くと言って良い程評価はしていないが、
逆にだからこそ、今度の成長を楽しみにしていたのである。

9 名前:二つの未来 41 ◆6BmcNJgox2 :2008/08/19(火) 23:16:28 ID:3wQr66wQ
「それに〜実はなのはさんのお実家について〜少し調べさせていただいたのですけども〜。
何でもなのはさんのお実家は〜古くから伝わる古流剣術とやらを今に継承してるらしいですね〜。
でも〜その直系の血筋でありながら〜なのはさんはそっち方面の才は無いに等しかった〜。
今でこそ管理局魔導師としてエース・オブ・エースとして君臨し〜ジュエルシード事件や
夜天の魔導書事件〜そしてレリック事件等で大活躍したなのはさんも〜彼女の実家からすれば
才能ゼロなダメな子だったワケですよ〜。ならこのナーノ君にも…また別の可能性があっても
可笑しくは無いとは思いませんか〜?」
「お…お母さんも……ダメな子だったの…? 信じられない…。」

クアットロが一体何処からその様な情報を手に入れて来たのか分からないが、彼女は
なおもナーノの頭を優しく撫でていた。

「でも〜今のナーノ君はこんな調子ですから〜なのはママに守ってもらって当然だと私は思いますよ〜。
なのはママとしても〜沢山苦しい思い、痛い思いしてやっと産めた子ですから〜ナーノ君を大切にしても
別に可笑しい話ではありませ〜ん。それに陛下〜。貴女は今の自分について〜理解なさってるんですか〜?」
「だから陛下なんて呼ばないで!」

普通の言葉遣いだけでも腹が立つと言うのに、一々ヴィヴィオを陛下と呼ぶクアットロに
ヴィヴィオはこの上ない程腹が立った。他の人に陛下と呼ばれるだけならば、恥かしい程度で済むが、
クアットロにそう呼ばれるのは遠まわしで馬鹿にしている嫌味にしか聞こえなかったからだ。
しかし、クアットロは全く臆する事無く続ける。

「今の陛下は〜一人前〜立派な大人じゃありませんか〜? レリック事件の時はまだ小さくて〜
幼かった陛下も〜今や背はとっくになのはママを超えちゃって〜勉強だって沢山して立派に
自立出来るだけの実力を付けてるじゃありませんか〜? それにナーノ君のお姉ちゃんでもあるから〜
何時も教導のお仕事で忙しいなのはママに代わって〜弱っちぃナーノ君を守ってあげなきゃならないのに〜
未だになのはママなのはママ…ナーノ君に嫉妬してまでなのはママなのはママ…恥かしいとは思いませんか〜?
このガキ〜! 陛下の方こそよっぽどクソガキじゃありませんか〜?」
「何ですってぇ!?」

ヴィヴィオは思わずクアットロに組み付くが、やはりクアットロは臆していなかった。
確かになのはに引き取られたばかりのヴィヴィオは小さく、幼かった。
しかしあれから何年も経過した今では、聖王のゆりかご内部で見せた大人形態を思わせる
長身の美女へと成長を遂げていた。だからこそなのはに固執し、まだ幼いナーノに嫉妬する
ヴィヴィオの姿はクアットロにとって笑い者であった。

「もう一度言ってみなさいよ!」
「あら〜? 本当に言って欲しいんですか〜? なら言わせていただきますよ〜。
身体は大人〜中身は子供のヴィヴィオちゅわ〜ん! まだなのはママのおっぱい欲しいんでちゅか〜?」
「こ…このぉぉぉぉ!!」
「あ! やめて! やめてよぉぉ!」

一触即発の事態となったヴィヴィオとクアットロをナーノは泣きながら止めようとするが、
そこで何者かがナーノの肩をポンと叩いた。

10 名前:二つの未来 43 ◆6BmcNJgox2 :2008/08/19(火) 23:17:39 ID:3wQr66wQ
「まったく…女同士の争い程醜い物は無いよな〜? ボウズもそう思うだろう?」
「お…おじさん…誰?」

突然現れたちょっと悪っぽい自動車修理工風のいい男にナーノは首を傾げる。
しかしナーノは知らなかった。彼こそエリオを意識不明の重体(別の意味で)に追い込んだ
帰ってきたジェイル=スカリエッティ製作の改造人間『怪人・あべオトコ』だった事を…

「言っておくけどね…今の私は…昔の私とは違うよ…。貴女みたいなポンコツ…
簡単に捻り壊せるだけの力を持ってるんだからね?」
「あらそうですか〜? でも〜身体ばかりでかくなっても〜おつむが子供のままじゃ〜
そう上手く行くとは思いませんけど〜。ねぇ〜マザコン陛下〜?」

ヴィヴィオとクアットロの睨みあいは続いていたが…その時だった。

「んあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「え!? この声は!?」
「ナーノ君!?」

突然響き渡ったナーノの悲鳴に二人は慌てて声の響いた方向を向いた。そこには…
パンツとズボンを脱ぎ下ろされ、かつてエリオにズルムケにされた一物を露出させた状態で
脚をM字大きく開かれ、泣きじゃくるナーノの姿があった。しかもそれだけでは無い。
ナーノの小さくも丸々とした可愛らしいお尻の割れ目の奥に覗くピンク色の尻菊から…
怪人・あべオトコの長大な一物で串刺しにされていたのだ。

「嫌ぁぁぁぁ!! お母さん助けてぇぇぇぇ!!」
「あああ!! ナーノォォォ!!」
「ナーノ君!?」

これにはヴィヴィオもクアットロも愕然とした。しかし、怪人・あべオトコは満悦そうな
笑みを浮かべながら己の一物でナーノの尻を激しく突き上げるのである。
これはかつてエリオを意識不明の重体(別の意味で)に追い込んだ時と全く同じやり口だった。

「んぁぁぁぁぁぁ!!」

ナーノは頬を真っ赤にして泣き叫び…喘いだ。ナーノは父親譲りの実に可愛らしい
男の子として生まれて来た事が災いし、今までエリオを初めとして様々な男達に性的な
悪戯を受けて来たが…流石に尻を掘られるのは初めてだった。

「ハッハッハッハッ! 何がクソガキな物か! こんな良いケツを持ってるじゃねーか!
ドクターはコイツがなのはの子だとは言え、父親の方に似ちまった時点で評価するに値しないと
言っていたが…男が好きな俺としてはコイツの親父も捨てたもんじゃねーと見たな!」
「ドクター!? まさかお前がスカリエッティの改造人間!?」
「そうだ! 俺はドクター・ジェイル=スカリエッティが作ったガチホモ改造人間
その名も『怪人・あべオトコ』だ。よろしくな? ドクターが昔作った人造魔導師と…
戦闘機人の旧世代コンビさん?」
「な!? 旧世代コンビ〜!?」

11 名前:二つの未来 43 ◆6BmcNJgox2 :2008/08/19(火) 23:18:56 ID:3wQr66wQ
確かにヴィヴィオもクアットロもスカリエッティによって作り出された存在だが、
どう見てもちょっと悪っぽい自動車修理工にしか見えない怪人・あべオトコに
旧世代と馬鹿にされるのはかなりプライドが傷付く物だった。そして、ナーノ救出を兼ねて
旧世代と馬鹿にした怪人・あべオトコに怒りをぶつけようとしたその時には…

                   どびゅぅ!!

「あああああああああああ!!」
「ナーノォ!?」
「ナーノくぅぅぅん!?」

ナーノの尻菊を大きく広げて腸内へ深々と押し入った怪人・あべオトコの長大な一物から
勢い良く放たれた濃い精液によって、ナーノはまるでペットボトルロケットの様に
天高く吹っ飛ばされてしまった。流石にこうなれば喧嘩している場合では無いと、
ヴィヴィオとクアットロが協力して何とかナーノを救助する事は出来たが…
その時には既に怪人・あべオトコの姿は無く、代わりに例の『帰ってきたジェイル=スカリエッティ!
その尖兵ただいま参上!』の紙が置かれたのみであった。そして…

「あ! ナーノ!?」
「ナーノ君! しっかりして!?」
「……………。」

ナーノは動かなくなっていた。怪人・あべオトコに尻を掘られ…男の身でありながらアナル処女を
男に奪われた精神的ショックで…ナーノは完全に意識を失っていた…。

                       つづく

12 名前: ◆6BmcNJgox2 :2008/08/19(火) 23:21:57 ID:3wQr66wQ
今日はここまでです。>>10のタイトル番号を間違えてしまいました。正しくは42です。

あと追記ですが、一応誰も死なない予定です。怪我に関しても障害とかは残さずに五体満足で回復する様にしてます。
「明らかにこれは死んだー」って思える様な描写があってもそれは(以下略)です。

13 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/19(火) 23:26:01 ID:4i+0yDLr
つまらん

14 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/19(火) 23:30:55 ID:4i+0yDLr
つまんないから二度と書くな

15 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/19(火) 23:33:16 ID:G+YoNE39
NGID/4i+0yDLr

16 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/19(火) 23:35:58 ID:cySKohqy
なんだろ、この欝展開とハジケ展開の混在っぷりは……。

あんた、凄すぎだよ……

17 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/19(火) 23:36:12 ID:JJeubAiw
この少年ジャンプのすぐ消えるギャグマンガみたいなノリがなきゃな…
正直エロとギャグが中途半端で読むに堪えない

18 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/19(火) 23:44:23 ID:F9x68ERn
GJ!!です。
ヴィヴィオとクアットロの言い合いあたりまでは、ドロドロした感じでしたが、
改造人間が出てからが神展開過ぎるwww
そして、ナーノにちょっと興味持ってるクアットロが気になるw

19 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/19(火) 23:52:28 ID:Olau4LZ+
鬱とコミカルを合わせることで両方をより際立たせる……だっけ?
鬱描写の中にコミカルを入れて際立つわけないじゃん。中途半端に混ざって悪い意味でシュールになるだけだよ?
際立たせたいなら鬱パート、ギャグパートに分けてギャグならギャグ、鬱なら鬱とそれぞれに全力で描き込まなきゃ。
どうもアクロバティックなことをしようとしすぎて迷走している気がする

20 名前:69スレ264:2008/08/19(火) 23:52:55 ID:0o49pcpz
業務連絡です。
80スレの保管完了しました。
職人の方々は確認お願いします。

21 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/19(火) 23:56:17 ID:ZLkgCRGE
司書殿に敬礼!保管業務乙であります!

22 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/20(水) 00:25:12 ID:QXypOyS1
鬱とコミカルのどっちを際立たせたいのかわからん
あとクアの台詞の「〜」が多すぎて読んでてウザい

23 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/20(水) 00:29:04 ID:yOjpRVhG
>>20
いつもありがとうございます。
この礼はSSを上げることで。

24 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/20(水) 03:43:47 ID:rJEePzQP
≫12
乙、と言いたいところだが一言。
その分量なら投下時間的に前スレの埋めとして投下出来るはずだ。
前スレが埋まってもないのに、毎度毎度少ない分量で一発目に投下する。
あんたは一番槍投下するためにSS書いてんのか?違うだろ?
一番槍ばっか狙うんじゃなくて、もっと推敲に時間かけてくれよ、頼むから。


25 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/20(水) 05:28:26 ID:8kj0ILwI
見えないんで分からないが、一人で色々新しい事をやって目立とうとして失敗してる、で良いのか?
>>6辺りの人は一度自分で客観的に評価してみようぜ

26 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/20(水) 06:07:14 ID:81UnmWIG
>>22
キャラの把握が出来ていない人によくあるな
セリフの記号的な使い方は

語尾をめったやたらに画一化するのが、某作品の二次創作に多かったと聞く
ex.「〜だぜ」「〜なのだわ」
文章量が少ない短レス・豆篇ならともかく…

27 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/20(水) 07:20:50 ID:Mi0md9jK
ちょほぃと相談。

ここに長編を何度か投下しているんだが、
一度投下した作品の加筆修正・再編集版を、その筆者自身が同人誌にしたりしても大丈夫ですか?

28 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/20(水) 07:23:52 ID:eN6UNihL
>>27
駄目な理由はないと思いますが。

29 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/20(水) 07:52:58 ID:NDb19Xr2
>>27
貴方が書いたものならなんの問題も無い

>>26
なんかハリポタの日本語版思い出したぜw
ゆうこりんはキャラ壊しすぎ……原作はみんな普通なのに……

30 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/20(水) 08:49:52 ID:JITEZCIc
>>12

毎回毎回思うことだけれど、ギャグとシリアスどっちつかずで、非常にバランスが悪いものになっているな。

そもそもこの作者さんのユーなのネタ、なのはがやたら白痴化したり、フェイトを必要以上に貶めたりし過ぎだと思う。
キャラ破壊系のギャグならそれでもいいんだけれど、中途半端にシリアスが混じっていると、読むに耐えないものになるだけだと思う。


31 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/20(水) 08:57:51 ID:Ssp+fa5R
スゲーな。
そんなに好きでもないのに毎回読んでるのかw
ヒマなのかw

32 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/20(水) 09:04:29 ID:dS/2Yd8Z
気に食わない作品があるからっていちいち批判なんかするなよ
嫌ならスルーすればいいだけなのにわざわざ全部読んで文句つけるとかアホかと
やっぱ夏だなぁ

33 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/20(水) 09:14:09 ID:RcDpFp8G
>>1乙!
>>6乙!

      いいか、みんな
        (゚д゚ )
        (| y |)

エッチとエロでは単なるスケベ野郎だが
       H  ( ゚д゚)  ERO
       \/| y |\/

    二つ合わさればヒーローとなる
        ( ゚д゚)  HERO
        (\/\/

君も此処でヒーローになってみないか!?
            ∩   
        ( ゚д゚ )/   
       m9   ノ  
       ノ   ヽ   
       (_ノ ⌒゙J 

34 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/20(水) 09:14:21 ID:JITEZCIc
先にも書いたけれど、この作者さんの作品はギャグ話ならむしろ好きな方なんだよ。
半端にシリアス混ぜると変な化学変化起こしてダメになるわけで。

35 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/20(水) 09:37:21 ID:L7KnUUo7
前スレ>>568
GJ!!
以前の作品も好きだっただけにその後を書いてくれるのは嬉しい
やっぱバカップルのような関係になれたか。エリオよく頑張った。
そして年下に主導権握られてしまうティアもかわいいな
まだこの後の続きも見たいという欲求が…

36 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/20(水) 09:50:46 ID:NDb19Xr2
>>34
例え自分がこれはダメと思っても、これはいいって思う人だっているだろうし、
スルーしとくのが基本でしょ
批評スレでもないのに自分が嫌だからって理由でダメ出しとかガキ丸出しもいいとこだよ
第一、なんでそんな上から目線なのさ
「こうした方が私はよくなるように思います」みたいな書き方は出来ないのか
そもそも人の文にダメとか言えるほどの文章書けるの?

37 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/20(水) 10:13:46 ID:ETNjtL5S
きっと>>36は高潔な自己犠牲を払っているのだろう

38 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/20(水) 10:15:40 ID:JITEZCIc
>>36

>「こうした方が私はよくなるように思います」みたいな書き方は出来ないのか

だからこそ、半端にシリアス混ぜずにギャグならギャグに徹底した方がいいと思って言っているんだけれど、私の言葉足らずで理解出来なかったみたいだね。その点は済まない。

>そもそも人の文にダメとか言えるほどの文章書けるの?

職人でなければ作品への感想すら書いてはいかんスレだったのかここは?

39 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/20(水) 10:18:43 ID:dS/2Yd8Z
>>38
お前頭悪いだろ
とっとと消えろ夏厨

40 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/20(水) 10:19:28 ID:JITEZCIc
>>39

そっくりそのままお返しするよ。

41 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/20(水) 10:21:13 ID:dS/2Yd8Z
うわぁ・・・

42 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/20(水) 10:33:43 ID:fmCtJzfu
みんな一回テンプレのマナーを読み直そうぜ
批判する内容が正しくてもテンプレが守れないなら荒らしと同じだよ

それともこれも夏が過ぎれば治るのかねぇ

43 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/20(水) 11:05:26 ID:Ssp+fa5R
なんぞこの流れw

44 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/20(水) 11:36:20 ID:/eH/cmdQ
少頭冷

45 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/20(水) 12:05:47 ID:JITEZCIc
>>44

確かに大人気なかった。不快に思われた方には申し訳ない。

46 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/20(水) 12:30:19 ID:sS/om8K1
まず作者に謝るのが先だろうに・・・

47 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/20(水) 14:00:27 ID:NcnzGtD0
>>45
謝りたいなら敬語を使ってください

48 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/20(水) 14:02:20 ID:YqCDDfFQ
売り言葉に買い言葉は確かに大人気ないな
けど別に>>30自体は
>2.粗暴あるいは慇懃無礼な文体のレス、感情的・挑発的なレスは慎みましょう。
のように粗暴な言葉づかいでもないし、挑発的でもないと思う
内容だって的外れなわけじゃないしこの程度では失礼にはあたらないんじゃないかな?
確かに作者様の文が好きな人も多いだろうけど一読者の一意見としては真っ当なんじゃない?

ま、そんなことをいちいち考えるより今からSSX新キャラをいかにエロに絡ませるか妄想するほうがよっぽど建設的だけどね!

49 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/20(水) 14:11:59 ID:zufisJcQ
よしじゃあ、1人で暮すにはちょっと広いマンションにヴォルツを上げて全身の火傷跡をなめてあげるスバルをですね

50 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/20(水) 14:22:03 ID:ZUDBm4ME
SSX絡みのネタを投下されてもネタバレが怖くて一般発売までスルーしそうな俺

51 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/20(水) 14:24:17 ID:HoE87QJ5
ただここで相談すると即効ネタバレに抵触しそうでどうもな。

52 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/20(水) 14:42:16 ID:OvOJo2d6
3期新キャラなのにSSXに名前すら出してもらえなかった人達が
2期キャラなのにも関わらずSSX登場を成し遂げたあの人を拉致して調教するとかどうよ?

53 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/20(水) 16:38:12 ID:FhjG9UGc
前スレ571氏
デレるティアナがもの凄くイイです
これからエリオに調教…もといラブラブしながら生きていくんだろうなと想像
いつかまた書いてくれると嬉しいです

54 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/20(水) 17:56:19 ID:U13VwDtF
SSXネタとしては、スバルとヴォルツ。
(遂にスバルにもノーマルなフラグが!!)

酔っ払ったスバルを部屋まで送るヴォルツ。
しかしスバル酔い+戦闘機人パワーにより押し倒されてしまい、理性が吹き飛ぶ二人。

55 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/20(水) 19:36:36 ID:AzaiJorW
とは言え、SSXのネタを含む投下は、一般発売まで自重しようと思っている俺ガイル・・・
諸兄としてはどう思う?事前に注意書きが有ればネタバレOK?

56 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/20(水) 19:41:44 ID:yOjpRVhG
ただ、SSX見た人間は、SSXに含まれている展開ができなくなってしまう。
(あるキャラクターがある集団に所属するという展開が書けない)
で、知らない人間は、当然単なる自分展開としてそれを書けるわけで。
その辺りのさじ加減をどうするか。

57 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/20(水) 19:42:16 ID:yOjpRVhG
見た。じゃないな。「聞いた」だ。

58 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/20(水) 20:31:39 ID:ijFKkIfI
>>55
感想レスのほうででバレが含まれちまうかもしれんし、
わがままいえば一般発売までとっておいてホスィな

59 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/20(水) 20:43:27 ID:eN6UNihL
>>58
一般販売というと10月末か。
結構遠いのが悩みどころだわな。

60 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/20(水) 20:45:13 ID:dAsjUcBo
しかし一般販売10月末だからなー
自分的には前書きにSSXネタ警報でOKと思いたい所だが

61 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/20(水) 20:57:47 ID:QXypOyS1
なんか無性にバレ貼りたくなってきた

誰か止めてくれ

62 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/20(水) 20:57:51 ID:XEJfe3hb
前スレ>>468>>506

スマン、なんやかんやで予告日に書けなかった……。
まだ暑い日が続くので、もう少し全裸待機願います。
未完で終わらせることは絶対しないので。

63 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/20(水) 21:10:52 ID:YqCDDfFQ
自分から話題を出しといてアレだけど>>48
一般発売に向けて妄想を今の内に溜め込んどこうって意味だったんだ
やっぱり買っていない人で楽しみにしている人もいるだろうし、そういう人も職人が投下した時にリアルタイムで感想を書きこみたいだろうしね

64 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/20(水) 21:13:22 ID:LnESJUaR
一般販売組としては発売まで待ってて欲しいな・・・

65 名前:B・A:2008/08/20(水) 21:48:36 ID:kvaUvLtf
一般販売まで2ヶ月か・・・・・・それまでにこのスレ90が超えそう。

今は投下大丈夫ですか?

66 名前:B・A:2008/08/20(水) 21:58:07 ID:kvaUvLtf
誰もいないようなので投下していきます。


注意事項
・B・A版エリルー時空のお話
・主人公はヴィヴィオ
・オリキャラが出ます
・非エロでバトルです
・sts本編から11年後の物語
・フェイトが天寿を全うしております
・その他かなりの捏造多し(特に古代ベルカや聖王に関して)
・タイトルは「Das Erbe zur Zukunft」 意味:未来への遺産
・シエン爺さんはどこまでもタフだった
・漫画なら聖王陛下のネームで一コマ埋まりそう
・SSXの内容は風の噂程度にしか知りません(←もう持っている人に対して)
・前提作品『Ritter von Lutecia』
       『Nach dem eines Speerritters』

67 名前:Das Erbe zur Zukunft@:2008/08/20(水) 22:00:04 ID:kvaUvLtf
第27話 「MASSIVE WONDERS」



海底に沈んでいく石のように、シエンの意識は暗闇へと堕ちていった。
この選択が正しかったのかどうか、それはシエン自身にはわからない。まだやれることがあったかもしれないし、もう自分にできることは何もないかもしれない。
だが、何れにしても死にいく自分にはもう関係のないことだった。このまま底まで堕ちて煉獄の炎に焼かれるだけだ。きっと娘と同じ場所に逝くことはできない。
多くのものを蔑ろにしてきた自分にはそれに相応しい罰が待っているはず。それに異存はなかったが、残してきてしまった子ども達のことが唯一気がかりであった。
ケーニッヒ・エリオ・スクーデリアとセリカ・クロスロード。
愛娘を失って孤独な日々を過ごしていたシエンにとって、二人との触れ合いは懐かしい家族の温もりを思い出させてくれた。
一時は、死んだ娘のことを忘れて三人で新たな人生を歩めるかもしれない、そう考えたこともあった。だが、安らぎは彼を娘の死から解き放ってはくれなかった。
皮肉にも、無邪気に笑うセリカと父を失ったショックに沈むケーニッヒを見る度に、彼の心は見えない鎖によって雁字搦めになっていた。
そして、シエンの思いとは裏腹に、二人の子ども達の人生は狂いを見せ始めた。
ケーニッヒは何かに取り憑かれたかのように戦技を学び、シエンがロート・シルトという組織を作り上げて管理局に反旗を翻らせようとしていることを独自に突き止め、
半ば無理やり組織の活動に参加するようになった。
シエンへの憧れが強かったセリカはエリートコースへのキャリアを蹴って管理局に入局、だが意固地で感受性が強かった彼女は犯罪者に対して行き過ぎた暴行を働くなどの
問題を起こし、時に悪を悪と断ずることができない管理局の体制に耐えかね、彼女もまたロート・シルトに参加した。
せめて真っ当な幸せを掴んで欲しいと願っていたはずが、気づけばまるで正反対の場所に二人を追いやってしまった。
全ては、娘の死を振り切れなかった自分の弱さが招いた過ちだ。
今頃、二人はどうしているであろうか? 特にセリカはケーニッヒと違って戦下手だ。最悪、退き際を見極められずに未だ戦い続けている恐れすらある。
彼女の性格を考えれば、大人しく降伏してくれることを期待するのも難しい。
思えば、彼女はシエン・ボルギーニの被害を最も受けた人物であった。そもそも、セリカ・クロスロードは戦いに向いていない。
魔法を上手く使えぬ体質もさることながら、彼女の強すぎる感受性は自分でも知らず知らずの内に無関係な他者の苦痛に共感し、
まるでそれが自分のことであるかのように心を傷める。そして、その痛みは苦痛の原因への激しい憎悪へと転化され、
精神の均衡を図るために自分の怒りの捌け口としての必要悪を見出してしまうのだ。
過剰なまでに悪を憎む心は、ある意味で自己防衛の役割を果たしているのである。そんな人間が戦場に立てばどうなるかは言うまでもない。
だが、シエンは厳しい現実に傷つき、悩むセリカを救うことができず、やがて彼女は悪を憎み、犯罪を憎み、管理局を憎み、
かつて友と呼んだ者すら憎むようになった。多感過ぎることを除けばごく普通の少女であった彼女は、こうして戦い続ける修羅へと堕ちていったのである。
或いは、これこそが自分に課せられた罰なのかもしれない。セラ・ボルギーニを死なせてしまったことを悔やみ、
ミッドチルダを混乱に陥らせた自分に課せられた重い罰。ならばそれはもう十分に役目を果たした。シエン・ボルギーニはこのまま悔やみながら死んでいく。
だから、セリカ・クロスロードにはせめて幸福な結末が訪れてくれることを祈らずにはいられない。
そうして、シエンの意識は段々と暗闇に沈んでいく。

68 名前:Das Erbe zur ZukunftA:2008/08/20(水) 22:00:37 ID:kvaUvLtf
だが、不意に温もりが冷え切った体を包み込んだ。まるで春の日差しに照らされているかのような温かさに、擦れ始めたシエンの意識は急速に覚醒していく。
同時に、沈んでいた体が何かに引きずられるように浮かんでいった。





気がつくと、抜けるような青空が広がっていた。意識を失う前に垣間見た錆色の空ではない、降り注ぐ陽光を遮るものが何一つない真っ青な空だ。
自らの命と引き換えにしてミッドチルダの民に返却したはずの空が、どこまでも目の前に広がっている。

「生きて・・・・いるのか?」

呟くと、全身に激しい痛みが走り、喉から擦れるような音が漏れる。まるで全身の至る所に楔を打ち込まれたかのような錯覚は、
同時にこの老いた肉体がまだ生きていることを如実に物語っていた。

「余り喋らないで、心臓が半分吹き飛んでいるんです。治癒魔法で応急処置は施しましたが、無理に動いたり大声を出したりしたら苦しいだけですよ」

メガネをかけた金髪の男が顔を覗かせ、穴の空いた胸に手をかざしながら囁く。どうやら、彼が死にかけの自分の治療を施してくれた人物のようだ。
かざした手からは注がれる淡い魔力光が傷口に浸透し、ジンワリとした熱と共に出血が治まっていっている。

「君は・・・・・・・」

「ユーノ・スクライア、通りすがりのしがない考古学者ですよ」

「スクライア・・・・・・そうか、聖王の・・・・・」

「ええ、ヴィヴィオの父です」

「まさか、敵の親族に助けられるとはな・・・・・・・地獄が満員で、追い返されたか」

擦れる喉で自嘲し、シエンは再び青空を見上げる。

「まだ・・・・・死ぬなということだな」

どうやら、自分にはまだ役目があるようだ。組織の長としての役目か、一人の親としての役目か、或いは稀代の犯罪者として裁かれる役目か、
何れにしろ、折角拾った命をむざむざ捨てる程シエンは愚かではなかった。例え、その先に待つものが何であったとしてもだ。

「セリカは・・・・・・・私の娘はどうなった? 君の娘と、空で戦っているはずだ・・・・・・・」

その問いに、ユーノは空の彼方を一瞥して沈黙した後、酷く言いにくそうに顔をうつ伏せながら答えた。

「・・・・・まだ、戦っています」

「そうか・・・・・・・」

諦めとも嘆きとも取れるため息を漏らし、シエンはポツリポツリと語り出す。
気を抜けばすぐにでも引きずられてしまいそうになる意識を、懺悔することでこの世に縛り付ける。

「あの娘には、本当に悪いことをした・・・・・・あの娘は本当に、普通の子どもだったんだ・・・・・・私と違って・・・・・・あの娘は争いと無縁の世界に生きて
・・・いた・・・・・だが、私が狂わせてしまった・・・・・あの娘の苦悩・・・・嘆きから、救えず・・・・・ただ、戦う力だけを与えてしまった・・・・・・・・」

普通に生きて、幸せな生活を送る道もあった。だが、彼女はそれを選ばずに恩人と運命を共にする道を選んでしまった。何一つ戦う理由を持たなかった彼女は、
憧れと理想だけを胸に戦いに身を投じてしまった。

69 名前:Das Erbe zur ZukunftB:2008/08/20(水) 22:01:11 ID:kvaUvLtf
「止めることもできた・・・・・・力ずくで、あの娘を戦いから遠ざけることもできた・・・・・・だが、私にはできなかった。
ただ、私の役に立ちたい一心で・・・・・・眩しい夢を追いかける彼女を・・・・・残骸でしかなかった私は、止められなかった・・・・・・・」

「その気持ち、よくわかります。僕もある人の人生を捻じ曲げてしまった。普通に生きていけるはずだった女の子に魔法の力を与え、戦いに巻き込んでしまった。
それで救えるものはありましたが、失ったもの、傷つけてしまったものも多かった・・・・・・・ですが、それを悔やんで否定してしまえば、
その人の思いまで踏み躙ることになるんじゃないでしょうか?」

ユーノの脳裏に、最愛の妻の姿が思い浮かぶ。
高町なのは。
第97管理外世界で、ごく普通に生きていた少女。彼女の人生は、ユーノと出会ったことで一変してしまった。魔法の力を手に入れ、望まぬ戦いに身を置き、
何度も危ない目にあった。積み重ねた無理が祟って死にかけたこともあった。それは全て、自分と関わってしまったからだ。
ユーノ・スクライアという人間と関わらなければ、彼女はきっと戦いとは無縁の生活を送り、平和な世界で喫茶店の店長にでもなっていただろう。
その平凡な幸せを奪ってしまったのは、間違いなく自分の罪だ。そのことについて悩んだことは、一度や二度ではない。だが、彼女はそれを責めなかった。
それどころか、魔法と出会ったおかげで多くの友人達と出会うことができ、困っている人達の手助けができるようになったと、感謝を述べたのだ。
目を背けたくなるような絶望を何度も垣間見たはずだ。
その手で救うことができなかった命もたくさんあったはずだ。
それでも、彼女は責めなかった。やがては魔法の力を失い、戦闘魔導師でいられなくなっても彼女は責めなかった。
それが今の否定になってしまうから、どんな結果でも後悔しない。自分の意思を貫いたのだから、過去の自分は否定しない。
重傷を負って搬送された病院でも、JS事件が終結した時も、プロポーズを受け入れてくれた時も、そう言って彼女は自分のことを責めようとはしなかった。

「僕なんかが言えた義理じゃないと思いますが・・・・・・・後悔も懺悔もやろうと思えば誰でもできます。
けれど、行動することは・・・・・自分から何かをしようとすることは、きっと勇気がいることです。だから、もう少し自分を許してみたらどうですか?」

「許すか・・・・・・・許せていたら、こんな姿は晒しておらぬよ」

「不器用ですね、お互いに」

お互いに苦笑を漏らし、二人は頭上に広がる青空を見上げた。
戦いの音はすぐそこまで聞こえてきている。意識せずとも感じ取れる魔力の渦、それは開かれた世界でぶつかり合う二人の少女のものだった。

「大丈夫です、あなたの娘はヴィヴィオが必ず助け出す。何と言っても、僕となのはの娘ですからね」

「難しいぞ・・・・・・私の娘はかなりの頑固者だからな。だが、今だけは信じさせてもらうと・・・する・・・か・・・・・」

傷の痛みに表情を引きつらせながらも強がりを見せるシエンにつられ、ユーノもまた笑みを零す。だが、彼の内心はシエン程穏やかではいられなかった。
彼の脳裏に浮かんでいるのは、カリム・グラシアが預言者の著書によって宣託したある一節だった。その不吉極まりない言葉を思い返す度に、
ユーノの背筋に凍えるような寒気が走り、最悪の結末が想像されるのである。

『二つの星は大地を焼き、かくして王は天へと昇る』

今、クラナガンの空で二人の聖王が対峙している。この一節は、戦いの果てにそのどちらかが死亡することを予言しているのだ。

70 名前:Das Erbe zur ZukunftC:2008/08/20(水) 22:01:48 ID:kvaUvLtf
(なのは、レイジングハート・・・・どうかヴィヴィオに力を貸してあげて・・・・・・・そして、どうか誰も悲しまない結末を・・・・・・)

瓦礫の街中で、ユーノはそう祈らずにはいられなかった。





それは異様な光景であった。
まったく同じ顔を持つ二人が、同じ空間に浮遊している。険しくも端正な美貌も風になびく長髪の色も、緑と赤のオッドアイも、何から何まで全て同じ。
違いがあるとすれば、それは髪型と装着しているバリアジャケットであろうか。ヴィヴィオのそれは母が現役時代に使用していたエクシードモードであるのに対し、
もう一人のヴィヴィオが展開しているのは黒のインナーに金色の装飾が施された白いジャケットと純白のマントを纏っている。
その全身から滲み出ているのは間違いなく王者の風格。神々しいまでのその輝きは、明暗がはっきりと別れた黒と白のカイゼル・ファルベとなってその身を包みこんでいた。

「お前は・・・・・本当に・・・・・・・」

気圧されそうな圧迫感と戦いながら、ヴィヴィオはレイジングハートを強く握り締めてもう一人の自分を睨みつける。たったそれだけだというのに、
許容しきれない気持ち悪さが沸き起こった。全身の細胞が殺意を持ってしまったかのように疼き、直視することもできないどす黒い感情に呼吸不全すら起きている。
まるで、人智の及ばない存在が二人を戦わせようとしているかのように、ヴィヴィオの内から不快な衝動が責め立ててくる。

「お前は本当に、私なの!?」

「愚問だな、私よ。私がお前であることは、お前自身が誰よりも理解しているだろう? 何より、この瞳と魔力の輝きが全てを物語っている」

「だったら、何でセリカちゃんの中から出てきたんだ! その娘とお前は、何の関係もないだろう!」

「そうでもないぞ、私よ。何故なら、私はこの娘に呼ばれて出てきたのだからな」

「な・・・・に・・・・」

「私は、聖王の記憶の中でずっと私を呼び起こしてくれる者を待っていた。私の意識と強くシンクロし、その記憶をダウンロードできる存在を」

「まさか、お前・・・・・・・・」

「そうだ、私は自分の全ての記憶を聖王の記憶に移植しておいたのだ。遠い未来の世界で復活し、再び世界を手に入れるためにな」

言うなり、聖王ヴィヴィオは手にしていたRHの先端を眼下の建物に向け、無造作に魔力弾を連射した。本来は対応していないベルカ式の術式を無理やり走らされたためか、
発射された魔力弾の威力は建物の壁を僅かに削る程度の威力しかなく、RH自体はプログラムの処理が追いつかずに宝石部分が悲鳴を上げる様に明滅している。

「止めろ! それはセリカちゃんのデバイスだ、お前のじゃない!」

激昂したヴィヴィオが後先も考えずに突撃し、渾身の力を込めてフラッシュインパクトを放つ。
だが、その一撃はRHで軽々と受け止められ、衝撃を諸に受けたRHの胴体に僅かなヒビが入る。

「鈍器としても使えぬか。ミッド式のデバイスは何百年経とうと脆いな」

瞬時にRHを消失させ、聖王ヴィヴィオは身を捻るようにヴィヴィオの体を受け流し、その胴体に強烈な膝蹴りを叩き込む。
凝縮された魔力が込められたその一撃はヴィヴィオの体を易々と吹き飛ばし、向かい側のビルに大きな穴を穿った。


71 名前:Das Erbe zur ZukunftD:2008/08/20(水) 22:02:21 ID:kvaUvLtf
「私はな、ずっと探していたのだよ。己の支配を盤石なものとする方法をな」

「支配・・・・だって?」

「そうだ、私は全てを支配したい。他国に攻め込み、その土地を搾取し、資源を略奪し、技術を奪う。そうしてベルカは繁栄してきたのだ。
しかし、人間とはいつか老いて死ぬもの、それは聖王とて変わりはない。そして私が死ぬということは、長い目で見ればこの世の全ては何れ死して滅ぶことを物語っている。
聖王の血統も、ベルカも、そして次元世界そのものも、その運命から逃れることはできない。だが、遙か古代のアルハザードではそれすらも克服する術があったという。
私はそれを欲した。全てを支配し、ベルカに永遠の繁栄をもたらすためには、この命がいくつあっても足りぬ! そのために人と財を使い、様々な文献を調査させ、
研究を行わせた。だが、死者の蘇生やクローン技術の再現は不可能だった。それは確かに存在していることは当時の歴史が証明していたが、
その方法はどこにも残されていなかった。だが、その過程で得たものも多く、私はそれに賭けることにした。私よ、お前は融合型デバイスの暴走は知っているか? 
デバイスが術者の意思を乗っ取り、自律行動を行う現象だ。私は、それに賭けることにした」

「それが・・・・・・聖王の記憶・・・・」

「そうだ。クローニング技術の過程で生み出された記憶転写技術を応用し、本来は戦闘知識のみを保存しておく聖王の記憶に私自身の記憶の全てを移植する。
あれは元々ただの情報記憶媒体だったからな、それ自体は難しいことではなかった。後は、私が死んだ後に誰かがそれに触れ、その人物の精神を乗っ取るだけで良い。
完全とは言えないが、これで私は永劫の時間を生きることができる。だが、まさか生前の肉体まで再現できるとは思わなかった。
この娘の体質は異物に対して柔軟であるが故により深くまで浸透できたということか」

「なら・・・・・そいつを破壊すれば、セリカちゃんを助けられる!」

瓦礫を払い除けて立ち上がり、ヴィヴィオはアクセルフィンを羽ばたかせる。
すかさず、聖王ヴィヴィオは手の平をかざして魔力弾を乱射し、ヴィヴィオを撃ち落とさんとする。

「そう簡単にはいかぬ」

「やってみなくちゃわからない!」

「そうではない・・・・・お前に、果たしてこの娘の心を開かせることができるかと言っているのだ」

魔力弾の乱射を止め、瞬時に肉薄した聖王ヴィヴィオは固く握りしめた拳をヴィヴィオの胴体へと叩き込む。瞬間、展開された二つの聖王の鎧が鬩ぎ合い、
視界を焼き尽くす眩い輝きを迸るが、それは瞬く間に灰色の光に侵食され、聖王の鎧を突き破られたヴィヴィオの体が大きく後退する。

「この娘にはな、自分の意思と呼べるものがないのだ。語る正義は全て他者の受け売り、しかも自分はそれに疑問を持つことなく全てを肯定し、
ただ愛する男に命じられるがままに力を振るう自我なき兵士。それがセリカ・クロスロードという娘の正体だ。曲がりなりにも信念を持つお前に、
果たしてこの娘の苦悩が理解できるか?」

足下にベルカ式魔法陣が展開し、かざした両手から極太の砲撃が放たれる。それをギリギリのところでかわしたヴィヴィオは、すぐさま反転してレイジングハートを構え、
アクセルシューターを連発して聖王ヴィヴィオを牽制する。

「理解できるかなんて関係ない、私はセリカちゃんと分け合いたいんだ! 言葉にしなくちゃ、話し合ってみなくちゃ、力になれるかどうかもわからないじゃないか!」

「いいや、断言しよう。私にはこいつの苦悩は理解できぬ。私よ、お前の理想も借り物だが、その意思は確かに本物だ。お前は誰かに乞われて戦っている訳でもなければ、
状況に巻き込まれている訳でもない。お前はお前の意思で戦場に立ち、他者の真似であることを承知で己の信念を振りかざしている。だが、この娘は違う。
この娘の正義は借りっぱなしだ。憧れた英雄の真似をして己の命を削り、愛する男のために自我すら投げ出す。何故なら、この娘にはお前と違って誇れるもの、
譲れぬものを何一つ持たないからだ」

降り注ぐ誘導操作弾を全て弾いた聖王ヴィヴィオが虚空に無数の短剣を出現させ、その全てをヴィヴィオ目がけて発射する。
回避不能なその弾幕をヴィヴィオはプロテクションを張って防御するが、足を止めた瞬間を見計らって接近してきた聖王ヴィヴィオが
強烈な回し蹴りを叩き込んでプロテクションを粉砕し、そのまま鋭い角度で踵落としを打ち込んでヴィヴィオを地面に叩きつけんとする。

72 名前:Das Erbe zur ZukunftE:2008/08/20(水) 22:03:28 ID:kvaUvLtf
「私よ。お前という存在が何故この時代に生まれたのか、それはこの娘の記憶を検索して大よその見当はついている。
お前は聖王のゆりかごを起動させるために生み出されたが、何者かに助け出されて今は時空管理局に所属している。
その人生の中で、お前は常人には計り知れぬ苦悩を感じたはずだ。だが、この娘にはそういった逆境が何一つない。
確かに魔法に関しては不利な体質かもしれないが、そもそもこの娘が魔導師を志したのは、高町なのはの強さと英雄としての功績に引かれたからだ。
普通に生きていれば苦難とは無縁の生活を送れたかもしれないごく普通の少女、だがその心は怒りに満ちている。世界全てに対する怒りと憎悪、
全てを救いたいと思いながら全てを憎む矛盾した感情。恐らくは全ての人間が抱いたことのある感情・・・・・・・争いなど、この世からなくなってしまえば良いと。
そんな理不尽な感情を、お前は理解できるか? 不条理によって生み出された私が、条理の中で生まれた感情に共感できるか? 
戦うための兵器でしかない聖王が、争いを憎むこの娘の心を開かせることなどできぬよ」

「私は聖王でもなければ、兵器でもない!」

再び飛翔し、弾幕をばら撒きながらヴィヴィオは聖王ヴィヴィオの周囲を旋回する。迂闊に近づけば格闘で圧倒され、
離れれば周りを鑑みない射撃で流れ弾が地上に降り注ぐ。それを防ぐためには、相手よりも高い位置を陣取って受け手に回るしかなかった。

「私だって、できることなら誰とも戦いたくない! 争いがなくなれば良いって考え方にも共感できる!」

「だが、お前の思考にはその先がある。『もしも争いが起きれば、それを止めるために自分は戦う』と。私という存在は無意識下で争いを肯定し、
武力を手に取ることも厭わないのだ。しかし、この娘にはそんな考えはない。自分のことを棚に上げて、争いを起こす者が悪い、誰かを傷つけようとする者が悪い、
悪事を働く者が悪い、そういった非常に短絡的な思考形態を形作っている。だから非情にもなれるし自分の命も軽々と投げ出せるのだ。
自己と呼べるものが存在しないのだから、他者に対する共感はあってもそれを理解できない。こいつはな、みんなが笑顔でいられるのなら死んでも良いと思っているのだ。
笑止・・・・・自分を蔑ろにしている者に、守れるものなど何一つない!」

「だったらお前はどうなんだ! 一方的な支配を望むお前の方こそ、人の気持ちがわからないんじゃないのか!」

両者の砲撃が激突し、激しい火花が飛び散る。ぶつかり合う魔力はほぼ互角、しかし、疲弊しているヴィヴィオと違い、
精神だけの存在である聖王ヴィヴィオは肉体の限界など気にせずに魔力を絞り出せるため、長期戦になれば宿主であるセリカの肉体が保たなくなる可能性がある。

(マガジンは予備の分も含めて後3つ。何とか隙を見つけてスターライトブレイカーをぶつけられれば・・・・・・・・・)

「足を止めるとは余裕ではないか、私よ」

いつの間にか背後に回り込んだ聖王ヴィヴィオが、その拳に灰色の魔力を纏わせる。反応の遅れたヴィヴィオは咄嗟にシールドを張るが、
繰り出された拳に纏われた魔力は堅牢な防御を瞬時に破壊し、轟音と共にヴィヴィオの体を吹っ飛ばした。

「かはっ・・・・・・・」

飛びかけた意識を根性で繋ぎ止め、アクセルフィンを羽ばたかせて空中で踏ん張りをつける。

「私が人の気持ちを理解できぬか・・・・・・・言い得て妙だな。私は人の愚かしさを誰よりも知っているが故に、誰にも理解されない。
それは他人のことを理解できぬのと同義か」

どこか自嘲するように呟き、聖王ヴィヴィオは懐かしむように空を見つめた。


73 名前:Das Erbe zur ZukunftF:2008/08/20(水) 22:04:18 ID:kvaUvLtf
「私よ、人間は誰もが違う価値観を抱き、異なる思考形態を形作っている。そして考え方の違いから争いが起き、
放置すればやがて人間は互いに憎み合って滅ぼし合うだろう。故に指導者が必要なのだ。争う必要がない幸福と富を与える強き王が必要なのだ」

「それは、お前の生きていた時代でのことだろう。けど、今の時代に王なんて必要ない!」

「果たしてそうか? お前が言うように、目の前で苦しむ人間を救い続けたとしても、それは根本的な解決にはならぬ。
もっと目線を高く持て、もっと視野を広く、王者の思考で物事を考えろ。大切なのは富める国、豊かな世界、平和な次元だ。ただ救っただけでは何も変わらぬよ」

「そのために、目の前で困っている人を見捨てても良いって言うの!?」

「救えるのなら私も救うさ。だが、憧れだけでは国は守れぬ、世界は救えぬ。お前やこの娘が所属する時空管理局もそうだろう? 出来うる限りのことはするが、
不可能ならば容赦なく切り捨てる。大のために小を犠牲にして次元世界の調和を保っている。我が王道はそれと何も変わらない。繁栄のためならば如何なる犠牲も厭わない。
その先に確かな未来が待つと言うのなら、我は修羅にでも羅刹にでもなろう。それが理解できぬと言うのなら・・・・・・・・」

聖王ヴィヴィオのかざした手の平に、極小の球体が出現する。大きさは野球ボール程度だが、そこに込められている魔力量は半端ではない。
例え魔力資質を持たない者でも、発せられる気にあてられて失神してしまう程のどす黒い魔力の塊だ。

「広域攻撃魔法・・・・・・」

術式の形ははやてが使用するデアボリック・エミッションと似ている。ならば効果範囲もそれとほぼ同等であり、機動の遅い自分では回避は困難だ。
だが、一対一のこの現状で何故そのような扱い辛い魔法を選択したのだろうか?
その問いの答えは、ふと視界の隅に映った存在によって導き出された。

(お兄ちゃん・・・・それにみんな!?)

自分と丁度対角の位置に存在するビルの屋上にエリオ達が佇んでおり、その後ろには翼に傷を負って横たわっているフリードの姿があった。
思わず逃げろと叫んだが、それが叶わぬことは明白だった。翼に傷を負っているせいでフリードは飛ぶことができず、エリオ達も先の戦いで酷く消耗している。
今から逃げても間に合わず、また疲弊した彼らではこれから放たれる攻撃を防御することもできないだろう。
彼らを救うためには、自分が盾となって広域防御魔法を展開するしかない。
踊らされていることに歯嚙みし、ヴィヴィオはアクセルフィンを羽ばたかせてエリオ達の前に回り込む。
移動の際に何の妨害もなかったのは、相手が自分を試しているからだ。言葉通り、目の前で苦しむ人間を救って見せろと、

「ヴィヴィオ!」

「みんな、できるだけ固まって体を伏せて・・・・・・・」

ヴィヴィオの声は固かった。
父親譲りの防御魔法にはそれなりの自信はあるが、元より聖王の鎧という最上級の盾を持つヴィヴィオにとって、
本格的に腰を据えて相手の攻撃を受け止めたことは余りなかった。教官免許取得試験に毎年落選していた理由も、
聖王の鎧を持つが故に防御面が比較的疎かになりがちであるという欠点を指摘されていたからだ。
だが、今回ばかりはそんな言い訳も通用しない。とにかく持てる魔力の全てを出し切らなければ、後ろにいる友人達を守ることはできない。

「できるよね、レイジングハート」

《できるできないではなく、やるかやらないかです。何事も、できないと思い込んだ時点でそれが成功することはありません》

強気な発言は年長者故の余裕か、或いは弱気になりつつある自分への気遣いか、何れにしてもレイジングハートの存在はヴィヴィオにとってとても心強かった。
思えば、彼女はいつも自分の側にいてくれた。いがみ合っていても、落ち込んでいた時も、レイジングハートは本当の姉のように自分のことを心配してくれていた。
そして、いざという時にはいつだって全力で応えてくれる。ならば、今回もきっと何とかなるはずだ。

「なら止めるよ、絶対に」

《All right, lady》

続けざまに二発のカートリッジを炸裂させ、エリオ達を包み込むようにプロテクション・パワードを展開する。
そして自身はリンカーコアを加熱させて聖王の鎧を極限まで硬化させ、更にカートリッジを連発して前面にワイドエリアプロテクションを展開した。


74 名前:Das Erbe zur ZukunftG:2008/08/20(水) 22:05:41 ID:kvaUvLtf
「無茶だよ、ヴィヴィオ! そんなにカートリッジを使ったら・・・・・・」

キャロが悲鳴を上げるのも無理なかった。不足する魔力を補うためとはいえ、何発もカートリッジを使用すればそれだけ魔法の制御も難しくなる。
現にヴィヴィオの表情は険しく、暴走寸前の魔力をギリギリのところで抑え込んでいるといった具合だった。だが、こうしなければみんなを守ることができないのだ。
他に頼れる者がこの場にいない以上、無理をしてでも自分一人が頑張らねばならない。

「お願い、レイジングハート!」

直後、解放された圧力が黒い渦となって全てを飲み込み、圧倒的な魔力の奔流が展開した障壁を激しく揺さぶった。
余りの衝撃に魔力を込めてしっかりと踏ん張っていたはずの体がジリジリと後ずさり、レイジングハートを握る手が圧力に耐えかねて震え始める。
早くも限界に達したヴィヴィオは辛そうに表情を歪めるが、後ろにいるエリオ達を守るためにも根を上げる訳にはいかず、歯を食いしばって黒い渦が消えるのを待った。
だが、淀みは消えるどころか時間と共にその激しさ、力強さを増していき、構築された虹色の障壁を抉り続けていく。
これ以上は保たない。
経験が無常な現実を認め、ヴィヴィオの心を絶望が支配する。
そして、彼女の視界は漆黒の闇に包まれた。





どことも知れぬ闇の中を、セリカは波間に揺れる小船のように漂っていた。
思考は完全に停止し、ただ懐かしい記憶だけが延々と再生されている。何年経とうとも決して色褪せないその記憶は、自分と最愛の人が出会った最初の瞬間から始まっていた。
それよりも前の思い出は確かにあったはずだが、セリカにとっては楽しい両親との思い出よりも、愛する老人と過ごした時間の方が何万倍も尊いものだった。

(私は・・・・・・私は、何で戦おうって思ったんだっけ・・・・・・)

ゆっくりと再生されていく思い出はどれも楽しいものばかり。中には辛い記憶もあったが、取り立てて珍しいものではなかった。
誰かに苛められることもなく、大きな病気や怪我も負わず、犯罪に巻き込まれたこともなく、平凡で穏やかな時間だけが流れていく。
だが、その裏にはいつも場違いな感情が潜んでいた。
例えば、テレビで報道されている陰惨な事件に誰よりも胸を痛めていた。
例えば、遠い次元世界で起きている戦争に必然性を感じることができなかった。
例えば、身体障害者の姿を見ているだけで吐き気を覚えた。
例えば、誰にも気づいてもらえずに片隅で震える捨て犬を無視することができなかった。
例えば、フィクションでも人が死んでいく姿を見るのが嫌だった。
普通の人間ならば適当に折り合いをつけて受け流すそれらを、セリカ・クロスロードは一つとして無視できなかった。
平凡であるが故にどこまでも偽善、エゴイスティックなまでの優しさが、彼女と周囲に些細ではあるが決定的な溝を生み出してしまった。

75 名前:Das Erbe zur ZukunftH:2008/08/20(水) 22:06:39 ID:kvaUvLtf
『どうして・・・・・どうしてみんな何とも思わないの? こうしている間にも、たくさんの人が苦しんでいるんだよ!』

『戦争なんてよくないことだ。どうしてそれがわからないんだ!』

『何で悪いことするんだ! そんな奴はいなくなれば良いんだ!』

『嫌だ・・・・・辛いのも苦しいのも見たくない。悪いことする奴も苦しんでいる人間も、みんな私の前から消えちゃえば良いんだ!』

世界がどこまでも穏やかで優しければ、彼女はここまで苦しむことはなかった。或いは彼女がもう少し鈍感なら、様々な事象を気に止めることもなかっただろう。
だが、世界は全ての人間に対していつも平等かつ非情であり、そんな現実はセリカ・クロスロードの精神をどこまでも磨り潰していった。
そして、日常的な幸せも些細な不幸に塗り潰され、研ぎ澄まされた感性が際限なく広がり続ける中で、セリカはなのは・T・スクライアという人物の存在を知った。
不屈のエース・オブ・エースと呼ばれ、多くの事件を解決に導き、また優秀な魔導師を数多く生み出してきた管理局の英雄。
彼女が解決した数々の事件、類希なる魔法の才能、最強の名を欲しいままにする実力、逆境をバネにして立ち上がった不死性、
どんな窮地でも諦めずに不可能を可能にする英雄的行動、そのどれもがセリカの心を捕らえて離さず、取り立てて目立つもののなかった彼女の人生に一つの指針を打ち立てた。
英雄になる。
なのは・T・スクライア。いや、高町なのはのような英雄になれば、この世界で苦しんでいる全ての人間を救うことができる。
そうすれば、きっとみんな笑顔で暮らすことができる。何一つ生きる方針を持たなかった彼女の人生は、そうして一つの目標を手に入れた。
そして、セリカ・クロスロードの戦いは始まった。
サンクト・ヒルデ魔法学校中等部に編入した彼女の前に最初に立ち塞がったのは、満足に初歩の魔法も使用できない自身の不憫な体質であった。
目覚ましい結果を出すこともあれば目も当てられぬ悲惨な結果で終わることもあり、ただでさえ人よりも遅れている身の上でその何倍もの修練が必要となった。
だが、セリカはそんな逆境にもめげずに訓練を重ね、すぐ側で労せずに結果を出せるヴィヴィオを見て競争心を熱く燃え上がらせた。
奇しくも、目標とする人物の娘が彼女の打倒すべきライバルとなったのである。その過程で、シエンからヴィヴィオが過去に実在した聖王と呼ばれる人物のクローンで
あることを聞かされたセリカは、彼女が管理局入りしたことに一つの希望を見出した。ひょっとしたら、ヴィヴィオが世界を変えてくれるかもしれない。
そんな淡い期待を抱いたのである。だが、彼女のささやかな願いに反して世界は何一つ変わらず、ヴィヴィオは新設部隊の一分隊長に収まって
自分本位な夢を追いかけているだけであった。
セリカの絶望は深かった。そして、その絶望は彼女に更なる力をもたらした。誰も英雄にならないのならば、やはり自分がなるしかないとより実戦的な訓練を積み、
既に決まっていた就職口を蹴って管理局に入局した。恩人であるシエン・ボルギーニがそうしたように、彼女もまた苦しむ人々の命を救わんと正義を志したのである。
だが、そこで待っていたのは組織としての効率を重視する余り形骸化してしまった正義だった。
犯罪者の人権が守られ、被害者はマスコミの晒しものとなり、確たる証拠がないから悪徳マフィアを見逃し、被害者だけが増えていく。
正義のための暴力すら行使するためには何重もの手続きを踏まねばならず、魔導師ランクの保有制限によって肝心な時に全力を出すことができない矛盾した現状。
目の前で起きている小さな事件を見逃し、どこかで起きている大きな事件のために少ない戦力を割く。それはあくまでセリカの主観であり、
現実問題として地上本部は非常によくやっていた。本局との連携もスムーズに行われており、十年前と比較すれば犯罪の発生率や検挙率は著しく好転している。
だが、その裏で理不尽に涙し、不幸に嘆いているほんの僅かな人々をセリカは見捨てることができなかった。そして、どうやっても弱者の嘆きがなくならないと悟った時、
セリカは自分が代わりに彼らを救う道を選んだ。


76 名前:Das Erbe zur ZukunftI:2008/08/20(水) 22:07:10 ID:kvaUvLtf
ヴィヴィオは世界を守るために無関係な人間を巻き込むことはいけないことだと言っていた。
しかし、セリカは今日までその手で救ってきた人々と同じ数だけの人間を犠牲にしてきたのだ。
十のために十を犠牲にした。
百のために百を切り捨てた。
千のために千を焼き払った。
たった一人を救うために何十人もの人間を傷つけたこともあった。
残り僅かな命を繋げるためにこの先何十年も生きられたはずの人間を押しのけたこともあった。
建物一つを犠牲にして幼い命を救ったこともあった。
破綻しているとしか思えない価値観。
正し過ぎるが故に間違っている倫理感。
正当であるからこそ異端となってしまった正義感。
それらは個人的な主観としてはどこまでも正しかった。目の前で苦しんでいる人をたった一人も見過ごすことができず、この手で救える全ての人を救おうと尽力した。
その代償として、それ以上の不幸を振りまきながら。
そんなことを繰り返している内に、セリカは自分が何をしているのかもわからなくなってしまった。
どうすれば求めている世界を創りだせるのかわからず、誰かを傷つける毎日。
どうすれば誰も傷つかなくて済むのかわからず、誰かを苦しめる毎日。
理想だけがどこまでも高くて、そこに辿り着くだけの力がなかった。手の平から零れてしまう命すら掬いたくて、自分自身を蔑ろにする以外の道が見当たらなかった。

『中将・・・・・私は、正しいことがしたいだけなんです。したいだけなのに、私はみんなを傷つけている・・・・・・誰も苦しんで欲しくなんかないのに、
誰かを救いたいと思ったら、誰かが嘆いている・・・・・・・』

『セリカよ。この世は常にそういった不条理で満ちている。完璧を期した計画が破綻し、杜撰な対応が功を制することもある』

『なら、この世に正義はないんですか!? どうして神様はこんなにも不平等なんですか!?』

『この世に神はおらぬよ。故に、平和は人の手で造らねばならぬ』

『中将?』

『君が望む世界、私が創ろう。逆賊の名を着せられようとも、我が命に賭けて、このミッドチルダに永遠の平和をもたらそう』

そう言ってのけたシエンの背中はどこまでも大きく、言葉では言い表せられない悲壮感に満ちていた。
まるで、二度と帰ることのない旅に出るかのような、そんな決意を秘めた背中だった。
待つこともできた。
彼が世界を閉ざし、平和な世界を作り上げて戻ってくるのを家で待ち続けることもできた。
だが、別れれば二度と会えない気がした。彼が敗北する姿なんて想像もできなかったのに、何故だかもう会えなくなるような気がしてならなかったのだ。

『私も連れて行ってください』

『だが、君は・・・・・・・』

『私の力も、使い方次第で役に立ちます。お願いです、中将の正義を、私に背負わせてください』

その日から、シエン・ボルギーニが彼女の正義となった。
彼に命じられるままに戦技を磨き、彼に命じられるままに作戦を遂行する。そこに自分の意思と呼べるものはなく、
ただ課せられた仕事をこなすだけの玩具の兵隊であるだけで良かった、何も考えなければ傷つくこともなく、冷徹なままに他人を傷つけることができる。
無条件に誰かを信頼し、その人物の言葉に全てを委ねていれば例え悪行でも善行と思いこむことができる。
何よりも、倒すべき敵が明確な形を持っていることは彼女にとって非常に心地よく、世界の在り方自体に憎悪を抱いていたセリカは、
管理局という敵を見出すことでやっと精神の均衡を図ることができたのである。そして、彼女は自身の能力を最大限に活かすために聖王の記憶を欲し、
それを用いて偽りの聖王になる道を選んだ。苦痛も死も覚悟の上で、たった一人の敵と戦うためだけに禁断の力に手を伸ばした。

77 名前:Das Erbe zur ZukunftJ:2008/08/20(水) 22:07:47 ID:kvaUvLtf
(けど、全部なくなった・・・・・・中将は死んだ・・・・・あいつにも勝てなかった・・・・・・後はこいつが・・・・・聖王が全部やってくれる。
私達じゃできないことを、みんなが幸せでいられる世界を、きっと作ってくれる・・・・・・・だから、きっとみんな笑顔になれる
・・・・そしたら・・・・・・・・そしたら・・・・・・・)

壊れてしまったレコードのように、そこから先の情景が思い浮かばなかった。
みんなの笑顔を守って、それから何がしたかったのか。
平和な社会を作って、いったいどうしたかったのか。
今まで、目先の目標だけを追い続けてきた彼女には、それを達成してから何をしたいのかという考え方が、決定的に抜け落ちていた。

(まあ・・・・・良いか。私の正義は所詮借り物・・・・・もう中将もいないんだ。だったら、私なんかがいなくても・・・・・もう、良いよね
・・・・・・休んでも良いよね・・・・・・シエン・・・・・)





そして、彼女の視界が漆黒の闇に包まれた瞬間、異なる四つの光が壁となって迫りくる漆黒の濁流を押し返した。

「よく耐えたな、ヴィヴィオ」

紅衣をはためかせ、大槌を片手で提げている少女が唇の端を釣り上げる。反対側には剣を携えた緋色の騎士が障壁を展開しており、
バランスを崩して傾いた体は筋骨隆々とした青年が片手で支え、その後ろには緑色の衣を纏った女性が佇んでいる。

「ヴィータちゃん・・・・シグナムさん・・・・・ザフィーラ・・・・それにシャマルおば・・・・お姉さん・・・・・」

「話は後だ。三人とも、持ち堪えろよ!」

「へっ、誰に言ってんだよ!」

「これくらいの衝撃、何てことはないわ」

「盾の守護獣の名は、伊達ではないということを見せてやろう」

集結したヴォルケンリッターが持てる力の全てを結集させ、渦を巻く殺意の嵐を押さえつける。
古代ベルカが遺した至宝、一騎当千の古兵の力の前に、さしもの聖王ヴィヴィオの攻撃も歯が立たず、やがて黒い奔流はその勢いを失って虚空に霧散していった。

「ヴォルケンリッター・・・・・・まさか、あの狂った魔導書が未だ存在していたとは」

霧散していく黒い渦の向こうから現れた人物に、ヴォルケンリッターの面々は懐かしくも複雑な感情が湧きあがった。
彼女達とて古代ベルカに生みだされた魔導生命体、時の聖王とお目にかかったことも一度や二度ではない。
だが、かつては一騎士として中世を誓っていた人物が、ヴィヴィオと戦っているという状況は、彼女達にとって余り喜ばしいことではなかった。

「久しいな、烈火の将よ」

「そちらこそ、息災そうでなによりです、聖王陛下」

「皮肉か? いや、お前は今の状況が掴めていないのだな。ならばそのまま知らぬ方が良い。刃を合わせるのならば、無知であった方が気楽であろうからな」

「その勿体ぶった言い回し、何百年経ってもちっとも変ってねーな、陛下は」

「紅の鉄騎か。お前もその生意気な喋り方は相変わらずのようだ。風の癒し手も蒼き狼も・・・・・・見たところあの管制人格はいないようだが、
まだ目覚めておらぬのか。ならば片手落ちも良いところか・・・・・・それで、そこにいる私は当代の主か?」

「生憎、ヴィヴィオは我らの友人です。それと、既にあなたがよく知る闇の書はこの世に存在しない。我らは我らの意思で剣を振るっているまでです」

「何だと?」

今まで懐かしい旧友と再会したかのように饒舌に喋っていた聖王ヴィヴィオの表情が、汚らわしい汚物を目にしたかのように激しく歪む。
そして、次の瞬間には気が狂ってしまったかのように髪をかき上げて哄笑を漏らした。

78 名前:Das Erbe zur ZukunftK:2008/08/20(水) 22:08:26 ID:kvaUvLtf
「くくくく・・・・・はははっ・・・・・己の意思だと? 虚像でしかないお前達が、造られた人形であるお前達が、何度となく災厄を振りまいてきたお前達が、
ただ断罪されるためだけに多くの者を犠牲にしてきたヴォルケンリッターが、自分の意思で戦っているだと!?」

まるで踊るように、腹を抱えて体をくの字に曲げ、よく澄んだ声で笑い続けた。ヴィヴィオと同じ声で、だがヴィヴィオでは絶対に覚えることのない感情のままに。
その目に宿っていた光は、確かな侮蔑の色であった。

「堕ちてしまったな、人形よ。お前達の美点など、ただ黙って主に従っているだけの操り人形であったということだけであったというのに」

「てめー、それはどういう・・・・・」

「よせ、ヴィータ」

激昂して飛び出そうとするヴィータを、ザフィーラは片手で制する。

「王よ、やはりあなたのお考えは変わらなかったのですね」

「無論だ。兵隊に感情などいらぬ・・・・・・王の手足となって王が命ずるままに戦い、そして死ぬ。その犠牲は恵みとなって国に還元され、新たな争乱を生き抜く糧となる」

その傲慢極まりない物言いに、誰よりも敏感に反応したのは他でもない。
争いを好まず、争いを終わらせるためにその力を振るうもう一人の聖王、ヴィヴィオ・T・スクライアその人であった。

「何だそれは! それじゃ、まるで暴君じゃないか! そんな治世のどこに平和があるって言うんだ!」

「私よ、お前は王というものを理解しておらぬようだな。王とはな、どこまでも残酷で気紛れで、そして民を裏切らぬものだ。
民草が捧げた国を、土地を、忠誠を、最大限に浪費して臣民が求めるものを勝ち取るのだ。我ら聖王の血族はそのために自らの肉体を武器へと変え、
強大な武力である聖王のゆりかごを手中に収めた。王とは人ではない、国を動かすための一つの現象、そして我々は暴君であるが故に英雄だ。
繁栄を、平和を、秩序を、それを望むのならば一度として歩みを止めてはならぬ。戦わぬから傷つかぬのではない、傷つかぬために戦うのだ」

それは戦乱の時代を生き抜いた武人であるが故に語れる覇道であった。
誰よりも民を思うが故に民を顧みず、国のために身命を捧げて国そのものとなった王。
そこにいるのは聖王ヴィヴィオという個人ではない。遙か古代に繁栄を極めた、古代ベルカという一つの国であった。
そこには確かに笑顔があった。
他国を侵略し、搾取した富が隅々まで行き渡り、貧しい人間は誰一人として存在しなかった。誰も彼もが豊かであるため犯罪など起きず、
定期的に巻き起こる騒乱は常に勝利で終わるために不満が募ることもない。その代わり、多くの屍の山が築かれるだけだ。
一見すると犠牲を最小限に収めることのできた事象でも、積み重ねれば救った命よりも遙かに多くの命を蔑ろにしてしまう。
大のために小を犠牲にするどころの話ではなく、より大きな幸福のためならばそれ以上のものを犠牲とする。
その結果として、幸福の天秤は常に一方向に傾き続けていたのだ。

「何だよそれ・・・・・・・そんなの、セリカちゃんが望んだ世界と全然違うじゃないか・・・・・・お前はそんな混沌とした世界を、この時代で再現する気なのか!」

「無論、我が悲願はベルカの永遠の繁栄にある。そのためにまずこの世界を征服し、次元世界統一の狼煙を上げる。
この肉体を捧げた娘も喜ぶであろうな。望む形ではないとはいえ、誰もが笑顔でいられる世界を特等席で見られるのだから」

「ふざけるな! セリカちゃんは、そんな世界なんてこれっぽっちも望んじゃいない! セリカちゃんは、誰も傷つかない世界が見たかったんだ! 
お前が作ろうとしている世界なんて、傷だらけで継ぎ接ぎだらけじゃないか! そんなんだからベルカは滅んだんだ!」

「私よ、いくら私でも我が国を侮辱することは許さぬ。それは、我が臣民への侮辱だ」

聖王ヴィヴィオの纏う気配が変わり、質量すら伴っているかのような凄まじい殺気が迸る。先程までの人間味を感じられなかった言動からは想像もできないその姿は、
彼女が如何に己の国を愛し、王であることに誇りを持っていたのかを如実に物語っていた。だが、己だけでなく親友の正義すらその身に背負ったヴィヴィオは、
叩きつけられる殺気を真っ向から受け止め、鋭い視線で切り結んだ。


79 名前:Das Erbe zur ZukunftL:2008/08/20(水) 22:09:07 ID:kvaUvLtf
「聖王、私とお前は別物だ。小さい頃からずっと、聖王であることが嫌だったけれど、お前を見て気持ちが変わった。
お前のような暴君を討てるのなら、この力も悪くない。お前を倒し、セリカちゃんを助け出し、私は人として生きる」

「そしてどうする? 苦しむ人間全てを救うと言うのか? そんなことは不可能だ。得るものがなければ、この世はただ減っていくばかりだぞ。零れた水は汲まねばならぬ」

それは正に真理。平和という名の水は零れてしまうからこそ、人々は互いに争い合うのである。
そして多くの犠牲と不幸を積み重ねて勝ち取られたそれは時を経てまた零れ、争いが起きる。
だが、ヴィヴィオのまっすぐな信念はそんな道理すらも押しのけ、青臭い理想を振りかざす。

「水が零れるのなら、誰かと一緒に支えれば良い。お前も見ただろう、ヴォルケンリッターは力を合わせてお前の攻撃を防いでみせた。
どんな困難が起きようとも、みんなで力を合わせれば何とかなるんだ。一人では無理なことでも、二人でなら何とかなる。二人で駄目なら三人、
三人で駄目なら四人、それでも駄目ならもっと大勢で。個人でできることに限りがあっても、国や世界が一つになれば、できないことなんてありはしない!」

「か弱き者が口にする信頼と協調か、くだらぬ」

「お前はそうやって人間の感情に共感しようとしなかったから、いつも一人だったんだ。何でもかんでも一人でやろうとしたから、ベルカを守ることができなかったんだ! 
何でも知ったふりをした頭でっかちな王様、お前の王道はいつか国を滅ぼす。私はいつか滅んでしまう争いの道より、ゆっくりでも良いからみんなと一緒に
平和を目指す道を選ぶ! その途中でどんなに辛い戦いが起きたとしても、私達時空管理局は決して挫けたりしない!」

「不可能だ」

「やってみなくちゃわからない!」

法の番人の理想と覇王の道理が。
生者と死者が。
連帯と孤高が。
騎士と王が。
若者と大人が。
愚者と英雄が。
譲れぬ思いを賭けて、激しく火花を散らせる。
対峙しているのは寸分違わぬ風貌の少女二人。陽光を照り返す金色の槍と、黒き野望を纏った拳が向かい合う。
ヴィヴィオ・T・スクライアは望まぬ神を否定し、聖王ヴィヴィオは目障りな若人を排除する。
これから繰り広げられる戦いの熾烈さを予感しながら、両者は自嘲を禁じ得なかった。
この戦い、仮にどちらが勝ったとしても得るものは何もない。何故なら、どんなお題目を並べ立てたとしても、結局のところこれは自傷行為でしかないのだから。

                                                               to be continued

80 名前:B・A:2008/08/20(水) 22:10:09 ID:kvaUvLtf
以上です。
シエン爺さんにはまだ役目があるので残ってもらっています。そのために事前にユーノを
クラナガンにまで移動させていたんだし(あの回は無印へのオマージュでもあったけれど)。
順調にいけば後2話で終われます(可能形なのが痛いけれど)。

81 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/20(水) 22:25:27 ID:yOjpRVhG
GJ

ヴィヴィオが聖王に勝利したら、聖王の王としてのビジョンを超える何かを提示しなきゃならない。
多分それって、戦いに勝利するより難しいぞ、がんばれ、ヴィヴィオ。

82 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/20(水) 22:42:34 ID:ijFKkIfI
>>80
相変わらず熱いぜGJ
最初はヴィヴィオが借り物と言われていたのに、ここにきてセリカこそが己の意思を持たぬときたか・・・
ただどうもこの長編の諸所で、とあるエロゲを連想してしまうんだが。影響受けてる?
あと2話ガンガレ

83 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/20(水) 22:42:41 ID:tzUNo7NR
GJ。ヴィヴィオがなのはさん以上に熱いキャラになってるw
なんつーかセリカは某赤い弓兵を彷彿とさせますな。
目についた不幸を無視できず、結果として聖王なんて守護者よかタチ悪いものになってしまった。(むしろ金ぴか?)
セリカのは生来のモノだけにより救えないですね。
ヴィヴィオは彼女を救えるのか?


84 名前:554:2008/08/20(水) 23:22:01 ID:lpRXMM0A
B・A氏GJ!
正義とは何かってのは永遠のテーマであると共に、文章にするのってものすごく難しいですよね
そんな文章をこの短期間にこれだけ書けるB・A氏が素直に羨ましいとです。


さて、こんな時間でしか投下できないクリニック・Fなどいかがですか?

85 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/20(水) 23:24:53 ID:yOjpRVhG
投下please

86 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/20(水) 23:25:11 ID:EJWGcnuR
GJ。
ユーノといい、ヴィヴィオといい、聖王陛下といい、
今回はずっと水橋のターンだったな。


87 名前:554:2008/08/20(水) 23:31:13 ID:lpRXMM0A
前スレでザ・シガー氏が同じようなシチュで書いていたのでこれはマズいと思い急ピッチで仕上げました。
いつものように書いていますが、今日一日でかなりの精神力を消費したのもまた事実orz
そんなわけで投下します&注意書きです。


・カップリングはジェイル(あえてこう表記)×ウーノ
・スカの性格がかなり変化してます。それについては後に触れますが、気になる人はNGしてください。
・なのはキャラはスカとウーノ以外はフェイトくらいしか出ません。しかもかなり後半。よってほぼオリジナルストーリー。
・エロです。しかも今日は夕闇のの中(ry
・NGワードは「小さな町の小さな診療所 クリニック・F」です。

それでは原案の73-381氏に多大なGJを送りつつ、投下したいと思います。


88 名前:小さな町の小さな診療所 クリニック・F:2008/08/20(水) 23:32:34 ID:lpRXMM0A
「あ、ジェイル先生だー」
「あらホント。いつもお世話になってます」
「いえいえ、こちらこそこの間はモロヘイヤの苗ありがとうございました」
「あのくらいはお礼なんかに入らないよ。いつも世話になってるんだから、あのくらいは当然です」

 こんな会話が何度交わされただろうか。
 灰色を基調とした比較的地味な色の着流しを着たジェイルと、自身の髪の色に合わせた藍色に桔梗をあしらった上品な浴衣を着たウーノが連れ立って歩いている。
 歩いている場所は診療所から歩いて十分ほどの神社。今宵、年に二度ほどの賑やかな様相を見せている。
 一度が元旦の初詣。そして夏のこの時期は境内に夜店が並び、広場では太鼓が打ち鳴らされその周りを盆踊りの集団が囲っている。すなわち、夏祭りである。
 記憶力に関しては人間離れしたものを持つ彼だけに道行く人に声を掛けられてはやれ「鈴木さん薬飲んでます?」だとか、やれ「高橋さん腰は大丈夫ですか?」などと、一人一人に丁寧にそして律儀に返答をしている。
 一人一人の会話の量はそれほど多くはないが、それが何十人単位で続けば話は別である。そしてその間、彼の一方城を歩いているウーノは一人置いてけぼりである。

「どうしたんだい、ウーノ? そんなしかめっ面をして」
「何でもありませんっ」

 そうジェイルが機嫌を取ってみても頬をふくらませてそっぽを向くウーノだが、ジェイルの視線が彼女から離れると同時に彼女の視線はジェイルの背中へと注がれている。
 機嫌が悪い理由が分からずに頭を掻くジェイルにとって見れば困惑で、してやったりのウーノにとっては駆け引きが成功して満面の笑み。傍らから見ているだけなら実に微笑ましい様子である。
 それが、片方は長身でモデルではないかと思うほどのビジュアルにも関わらず地域にも知られる心の優しい青年で、片方は女性としては背の高い方で綺麗だという形容詞の似合う女性かついつも献身的にパートナーの男性を支えている。
 そんな二人が寄り添い合って付かず離れずの言動を繰り返していたら、露店で店番のおっちゃんもたちまち笑顔になるというものである。


89 名前:小さな町の小さな診療所 クリニック・F:2008/08/20(水) 23:33:17 ID:lpRXMM0A
「いいねえ、目の保養になる」
「ああ、あの二人はいい。見ているだけで青春してたあの頃を思い出させてくれ「ちょっとアンタ達!! サボってないで店番しな!!」

「……ああ、あの頃が懐かしいや」
「ホントだな……」



     □     □     □     □     □     □



「なあ、せっかく来たのだから機嫌を直してくれないかい?」
「……ドクターが悪いんじゃないですか」

 神社の祭りと言っても賑やかなのは露店が入り乱れて活気だっているエリアと、太鼓の勇ましい音とお囃子の賑やかな音色が響き渡っているエリアだけである。
 神社の境内は、収穫を祝って豊作の神に祈るこの祭りでも式典が終われば言い方は悪いがお役御免といった感じで夜の闇と静寂が空気を支配していた。
 その神社の裏の縁側に、ジェイルとウーノは二人並んで座っていた。周りには人の居る気配すらない。

「私が一体何をしたと言うんだい?」
「自分の胸に手を当てて考えてください。私は知りません」

 シチュエーション的には誰もが羨む甘いひとときだが、二人の間に流れる空気は刃物のようにぴりぴりと研ぎ澄まされたものだ。
 そんな空気の中に頭を掻きながら冷や汗を浮かべるジェイルと、頬を膨らませそっぽを向いて拗ねた表情をするウーノがいた。
 本人としては自分はジェイルを困らせているんだ、という気持ちでいるウーノだが、二人の距離のせいか若干朱の指した頬の具合とその拗ねた表情はジェイルにとって劣情を抱く材料にしか成り得なかった。


90 名前:小さな町の小さな診療所 クリニック・F:2008/08/20(水) 23:33:59 ID:lpRXMM0A
「じゃあ、こうすれば許してくれるかな?」
「何を……んむっ……」

 月夜に照らされた二人の影が、その瞬間一つに重なって、離れた。

「っは、……そ、そんなことで誤魔化されるような私じゃないんですからねっ」
「それじゃ、お気に召してくれないみたいだからもう一度」
「ちょ、ちょっと待っ、んっ……」

 もう一度その影が重なり一つになる。
 しかし、先刻とは違い、その影は一向に離れる気配を見せない。それどころか、影の交わりは先刻よりも深い。

「んふっ……っ……っちゅ……」

 粘性の音が二人の間から紡ぎ出され、それは一種の効果音であるかのように、二人の興奮を高めていく。
 ウーノは自分の口内が焼けるような熱さを放ち、そしてその中に舌や口内だけでなく自分自身をも蹂躙せんとするものの存在が暴れ回っていることをはっきりと自覚していた。
 そのまま十秒、二十秒と時間は過ぎていき、ついに一分に達しようかというところでウーノがいつの間にか自分の腰に据えられていたジェイルの手を強引にふりほどき、顔を離す。

「っぁ……はあっ、はあっ……。い、いきなりなんて酷いじゃないですかっ」
「そんな口ぶりの割には嫌がっていないようだが?」
「……その質問は、ずるいです」

 言うなり頬を紅く染め、俯き加減で上目遣い。加えてテンションの上がっているジェイルは我慢というものを知らない。
 そうなれば、どういう事になるかはお互い周知のことである。
 ジェイルはウーノの背中に回り、彼女の胸の辺りをまさぐりだすと、着ていた浴衣が徐々にはだけていき、最後には常人よりは少し大きめの彼女の可愛らしい乳房だけが艶やかな紺の浴衣から覗いている格好になっていく。当然、彼女の息は荒い。


91 名前:小さな町の小さな診療所 クリニック・F:2008/08/20(水) 23:34:33 ID:lpRXMM0A
「下に何も付けてこなかったのか。通りで歩いているときにモジモジしているわけだ」
「っあっ……だって浴衣はぁっ、……着けなくていい、ひあっ、ってくら、まさんがはあっ……」
「なるほど。後で鞍馬さんにはお礼を言っておかないと」
「ふえっ……?」

 今はさほど重要視されていないが、本来浴衣は下着を着けずに着る服装である。
 ウーノは話の流れから、着付けや仕立てを伊吹に任せていた。ウーノ自身としては申し訳ない気持ちで一杯だったが、彼女の顔からは喜々とした表情が読み取れたので、おとなしく甘えることにしたのだった。
 そこから入れ知恵されたのであろう。現代では下着を着けて浴衣を着る女性が殆どだというのに、ウーノはそれを鵜呑みにして下着を履かずに浴衣を着ていたのだ。

「あるいは、期待していたのかい?」
「…………」

 胸を揉みしだき続けながらジェイルは耳元で囁く。当然、彼女からジェイルの顔は見えないし、ジェイルから彼女の顔もまた見えない。
 だが、ジェイルには無言の肯定という決して覆らない事実と共に、耳朶まで真っ赤になった彼女の熱がその事実を裏付けていた。
 伊吹から入れ知恵をされたのも事実であるが、こんな展開になることを期待していたこともまた事実。そして無言の肯定と熱を持った体の状態。
 ウーノにとっては、そのジェイルの囁きに対して肯定しないことが唯一の抵抗であった。

「んふぅ……ふぁ……」

 体は燃えるような熱を帯び、脳からはビリビリとした刺激が絶えず体へと伝えられる。
 自分でももう限界だというのに顔の見えない彼からは胸の疼きしか沈めてはくれず、先程から嫌と言うほどに股間の熱が収まらない。
 ウーノは意を決して、顔を俯かせながら懇願する。

「む、胸ばっかりで、はうっ、ずる、いですっ……」
「ふふふっ、その言葉待ってたよ」


92 名前:小さな町の小さな診療所 クリニック・F:2008/08/20(水) 23:35:13 ID:lpRXMM0A
 言い終えた後のウーノはやってしまった、という虚脱感を味わうと共に、これから始まる事に対しての期待や羨望が脳をよぎり、一層股間の疼きが刺激される。
 しかし、そんな間もジェイルは少々しか与えてくれず、ウーノの胸に添えられていた手を彼女の腋に手をやり、強引に持ち上げる。
 何も言わないジェイルに不信感を抱きつつもされるがままにされるウーノは、胸を愛撫され続けて一人では立てない状態である。
 しばらくそのままにされていると、ジェイルは一つの木の根本でウーノを下ろし、手をその木の幹へと添えて自分はウーノの後ろに回った。
 ウーノが何をされるのか分かったときには既に浴衣を捲られ下半身を顕わにされ、ジェイルの眼前に自分自身の恥ずかしい部分が丸見えになっている状態であった。
 ジェイルは腰を下ろすとそこへと顔を近づけ、既に準備万端であるそこをまじまじと見つめた後、満足そうに顔をそこへ埋める。

「ひあっ……!」
「もうあふれ出すほど濡れちゃってる。上の口は素直じゃないけどこっちは本当に素直だね」
「そ、そんなこと……ふあっ……!!」

 ジェイルのざらついた舌でそこを嘗めるたびに股間からは愛液が滴り落ちてジェイルの顔を濡らす。
 ウーノの顔が羞恥による紅から次第に快楽による紅に変わっていくのが、熟したトマトを更に熟すかのように鮮やかに変わり、見る者(この場合はジェイルだけである)を楽しませる。
 やがて美味しそうに嘗めていた部分から顔を離し、今度は立ち上がって自分の股間を外へとさらけ出す。
 その姿は凶悪と言えるほどにそそり立っており、後ろを向いたウーノはその大きさに目を奪われ、喉をごくんと鳴らした。
 焦らされて焦らされて焦らされて。そして、彼女は耐えられなかった。

「さて、どうして欲しい?」
「……い、挿れてほしいです! 私の熟れて熱くなって液が零れ落ちてるだらしのないおまんこに挿し込んで、掻き回して欲しいです……!!」
「よくできました」
「ぁっ……ふあぁあぁぁぁ……!! おくまで、おくまできちゃうよぉぉぉ!!」

 彼女に賛辞の言葉を一つ与えると、遠慮無しにその凶悪なモノを彼女の奥底まで突き刺した。ウーノはその刺激に耐えられず、完全に尻を突き出す格好となってしまっている。
 それと同時に快楽の混じった歓喜の声を上げるウーノの顔は、快楽で真っ赤になり眉は歪められても尚、口元には笑顔が浮かんでいた。
 やがて奥まで一気に貫いたことを確認すると、ゆっくりと左右に動きだし、そのスピードを速めていく。


93 名前:小さな町の小さな診療所 クリニック・F:2008/08/20(水) 23:35:52 ID:lpRXMM0A
「おくにっ……! おくに、あたってるふぅうっぅう!!」
「相変わらず名器だね。君の中は」
「あ、ありがとぃあっ、ございますぁんっ……」

 木に手を突き尻を突き出すウーノと、手で彼女の尻を押さえつけ欲望を叩き込む。客観的に見れば獣も同然の姿であった。
 しかし、彼らの指針となっているのは相手を想うが故。お互いがお互いを性欲の捌け口としているのではなく、単純な愛の営み。

「自分で腰を振ってないな、ウーノ。前に教えたはずだが」
「す、すいまひあっ……!」
「お仕置きだな、ウーノ」
「はいぃ、んぅっあ……! ウーノにぃいっ、お、おしおきおねがいしま、んあっああ!!」

 ぱんっ、ぱんっ、とウーノの尻を叩く音が、それこそ他の人間に知れてしまうのではないかというほどに大きな音が神社の境内に木霊する。
 ウーノが激しくされているのは単に彼女がそういったことが好きなのであって、ジェイル自身の欲望だけで彼女を虐げているのではない。
 根っからのM体質であるらしい彼女の性癖を知ってからというもの、ジェイルの心も次第に攻める方へと傾き出さし、それから拍車を掛けてこのような状況である。
 しかし、彼女を愛しく想うのは変わりなく、事実ウーノという名前をその科白ごとに入れているのも彼の優しさ故のことである。

「さて、そろそろ私も限界だが、ウーノはどうして欲しいのかな?」
「なかにぃっ! だ、だしてくださんぃあっ! おねがいしまふっあああっっ!!」

 途切れ途切れになりながらの懇願に、ジェイルの限界値は限界に更に近づく。それは彼の苦悶の表情からも伺い知ることが出来る。
 やがて、先刻から早まっていた左右の運動のスピードが更に速まり、行為の終着点が近づいていることを二人は往々に感じていた。
 ぐちゃっ、ぐちゃっ、という粘性を伴った音は更に大きくなり、ウーノの上げる嬌声もまた一段と大きくなる。

「ぐうっ、射すぞウーノッ!!」
「なかにぃぃああっ!! なかにぅああああっっっ!!!」
「ぐぅぅッ!」


94 名前:小さな町の小さな診療所 クリニック・F:2008/08/20(水) 23:36:52 ID:lpRXMM0A
 どくどくと、毒々しい白い液体がウーノの膣内で射出され、ウーノの中の奥底で弾け出す。
 やがて数秒の後に結合されたモノ同士が抜け、ウーノのそこからは白い液体がごぽごぽと噴出してくる。
 彼らはまだ、己の体を支配する倦怠感から抜け出せずにいた。



     □     □     □     □     □



「今日は一段と激しかったようだけど?」
「知りませんっ……!」

 あれからというもの、もう帰りたいと言うウーノをなんとか説き伏せ、もう一度祭りの喧騒の中へ引き戻すことに成功したジェイル。
 色々な液体で服も体も汚れてしまっているから無理だ、というのがウーノの抵抗だったが、それを予感していたかのように「服に付かないように気を配ってたんだ。ほら」というジェイルの科白と、
用意されていたかのようなウエットティッシュの登場で、ウーノのささやかな抵抗は幕を閉じたのであった。
 そんなこんなで、行為の前のように仲良く手を繋ぎ、祭りを練り歩く二人。道行く人の視線もまた、行為の前と同じく時にニヤニヤと、そして時に羨ましげな視線といった見守るような視線のみが二人に注がれていた。
 と、そんなところに向こうからこちらに手を振りながらたこ焼きを食べる女性が、焼きそば屋の前でおーい、と呼ぶ。傍らには食を止めるように諭す男性の姿も見えた。

「こんばんは。宇都宮さんと……立川さんも一緒ですか」
「なんかコイツがいきなり押しかけてきて腕を掴まれむごっ」
「な、なんでもないですよー。あははは……」


95 名前:小さな町の小さな診療所 クリニック・F:2008/08/20(水) 23:37:22 ID:lpRXMM0A
 咄嗟に口を押さえる疾風は赤を基調として足下に花火をあしらったいかにも現代風の浴衣を身に纏っている。それが彼女の活発な印象によく似合っているようにジェイルは感じた。
 一方の押さえられた方の隼はいかにも突拍子もなく来たという服装で、下半身はスポーツ系の半ズボンのジャージで上半身はこれも某有名スポーツメーカーのロゴの入ったTシャツというラフな格好である。

「いやー、保育士仲間がみーんな彼氏持ちだの夫が居るだので溢れてしまいまして。悔しいので生物学的には男であるコイツを引っ張ってきたんですよ、ええ」
「ああ、そうだったんですか」
「……なんですか? そのニヤニヤした目つきは。青のりでも付いてますか?」
「いえいえ何でも。ただ、仲がよろしいなぁ、と」
「ばっ……!」

 意地の悪い笑顔を浴びせられた疾風はその科白に赤くなって黙り込んでしまう。先程も言ったが、無言は肯定と同じである。
 「あら、そう言うことですか」と続けるウーノと、「は? どういうことだ?」と頭の上にクエスチョンマークを浮かべる隼が好対照で、思わずジェイルは吹き出す。
 それをジト目で見つめる疾風は、普段はからかう側の人間であるが故に墓穴を掘った自分自身の虚しさを噛みしめ、そして事態を好転もしくは話題の転換を企み周囲を見渡す。

「あっ、あそこに歩いてるの護くんじゃない?」
「ホントだな。でも隣に女の子がいるぞ……しかも、手繋いでやがる!」

 かーっ、羨ましい!! と、頭を抱えながらまくし立てる隼であったが、その彼の手をしきりに見つめては自分の手を出したり引っ込めたりを繰り返す人物がいたことを彼は知らない。
 無論、気づいている人間二人は笑いを堪えられない様子で、それに気づいた。疾風は顔を真っ赤にして睨むもそれ以上の反撃は出来ず、ただ羞恥で顔を俯かせることしかできなかった。
 そんなこんなで四人騒いでいると、歩いていた護の方も気が付いたらしく、塞がっていない右手を宙に上げて合図を送る。

「ジェイル先生こんばんは! ほら、藤花ちゃんも」
「こ、こんばんは、ジェイル先生」
「はい、こんばんは。その浴衣似合ってるね」
「あ、ありがとうございます……」


96 名前:小さな町の小さな診療所 クリニック・F:2008/08/20(水) 23:37:55 ID:lpRXMM0A
 護と手を繋いでいたのは先日すったもんだあってその後母親からこっぴどく叱られた、鮮やかな黄色の浴衣を身に纏った剣藤花その人であった。
 その手には護の手がぎゅう、と握りしめられており、てをまじまじと見つめる大人四人に対して顔を赤くする彼女が彼のことをどう想っているのかはそれだけで一目瞭然であった。

「あーもう! なんでお前はそこまでされて分からないんだッ!!」
「え? なんのこと?」
「それって自分に向けられた科白じゃないわけ?」
「は? どういうことだ?」
「あーもう……。これだから男は……。藤花ちゃんだっけ? 護は苦労するわよ」
「……護くんを悪く言わないでくださいっ」
「あ、ああ、ごめんごめん。それだけ言えるんなら大丈夫だな」

 そんなやり取りを傍らで見てにこにこと微笑を浮かべるジェイルとウーノ。
 少なくとも今この瞬間だけは幸せであると断言することが出来た。
 その幸せは未だ不安定な台座の上で揺れ続けていることを、まだ彼らは知らない。

「私が教えてあげるわ、隼くん。それはね」
「な、何言おうとしてるんですかウーノさんっ!! あー、心臓止まるかと思った」
「大丈夫。心臓が止まっても私が治せる。だから話しちゃっても良いよ、ウーノ」
「では改めて。疾風さんがこんなに慌ててるのはね」
「だからそういう問題じゃないっての!!」

 その足音が着実に近づいていることを、まだ彼らは知らない。





97 名前:小さな町の小さな診療所 クリニック・F:2008/08/20(水) 23:39:19 ID:lpRXMM0A
今回の投下は終了です。 こ、ここまで長かった…。

次回は番外編ですので気を抜いて(?)お待ち下さい。

98 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/20(水) 23:39:59 ID:LnESJUaR
水橋ヴォイスはエリ○ギャーが一番萌える。

>>80
GJ。
蘇った古き王をヴィヴィオは打倒できるのか!? 続き楽しみに待ってます。
いつか私もこんな熱い長編を書けるようになりたいぜ。

99 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/21(木) 00:10:54 ID:EGGjKt/6
>>80
なんだか聖王にギル様に通じるものを感じてしまった。
しかしあんな揺るがない信念を否定したからには「皆でなんとかする」なんていう曖昧なものではない答えを導き出さなきゃいけないよなあ。

100 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/21(木) 00:34:21 ID:wVSXd5F0
かぁ〜、GJ!
やっぱ祭りの暗がりでアハンウフンはお約束ですよね!?
ウーノ姉はやっぱナンバーズエロス担当だ、こんな人がいたらそりゃ外だろうが致しちしまうわ。

しかし、なんかもうこのまま永住して欲しい心から願いますが、局の捜査が確実に近づいている予感、凄く恐いわぁ〜。

101 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/21(木) 01:18:42 ID:Q7SvZr7H
>>99
どちらかというと自己肯定全開のセイバーだな
ギル君は自分本位だから

102 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/21(木) 03:06:58 ID:mldqcCpR
最初に正義を語ったやつが後から正義を語るやつに勝つ話はもういらない
聖王が世界を破壊して全てを無にしてくれたら万々歳だ

103 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/21(木) 09:41:21 ID:VvZ5l7tF
>>80
GJ!!!
改めてヴィヴィオが生きていくうえでの試練の戦いだと思った
それと同時にやっぱヴィヴィオは支配者には向いてないとも
エリオと同じ誰か大切な人をひたすら守ろうとする騎士の称号が一番だ

104 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/21(木) 11:12:41 ID:bYsLv7KR
>>80
GJ!!です。
聖王の道は征服し統治を成し遂げる上で膨大な死者を出す道でしょうけど、
次元統一できれば、その後の争いはほとんど無くなる。
ヴィヴィオ達の道は聖王の道のように急激に大量の死者は出ないけど、
紛争や戦争が続くので最終的には聖王の道より死者を出すかもしれないのか、
誰もが自身の大切なものを守ろうとするから争いが生まれるんだよなぁ。

105 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/21(木) 11:21:26 ID:syzKtA8u
>>80
まぁ、戦わずに豊かで平和にできない。
それは無能の言い訳だったりすると思うぞ。


106 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/21(木) 14:28:33 ID:CJLSUCe+
GJとかもう枕詞だろ。
いとおかし(可愛いなお前。ケツ出せよ。)

107 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/21(木) 14:31:22 ID:CJLSUCe+
ゴメン誤爆した。

108 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/21(木) 14:47:56 ID:zE3V0jHn
どんな誤爆だw

109 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/21(木) 16:13:02 ID:z8G5Oqh/
>>102
んじゃ、そういう破滅願望満載のSSを書いて叩きつけてきたまえ
さぞやいい文章が読めるに違いない

110 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/21(木) 17:10:08 ID:CJLSUCe+
きたまえ! キリッ

きたまえwww腹筋ちぎれるwww

111 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/21(木) 21:40:32 ID:2H/ai3yK
一人で笑い転げてるのって傍から見ると近づきたくないよね

112 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/21(木) 22:35:37 ID:horfYieY
>>80
GJ!なんか話の展開から
種死の最終回が頭をよぎったのは自分だけか。
流石にヴィヴィオには「覚悟はある…私は最後まで闘う!」
なんて答えは出して欲しくないw
聖王の答えにただの人として生きる彼女はどんな回答を出すのか。
でも出した答えに最終的に聖王が納得するなんてのは勘弁してほしいな。
戦乱を生き抜きその果てに掴んだ彼女の答えは決して「間違っていない」んだし。


113 名前: ◆Ev9yni6HFA :2008/08/21(木) 22:54:21 ID:zbPUBJS6
何か過疎ってますがこれから投下したいと思います

114 名前:尊ぶべき愚者 ◆Ev9yni6HFA :2008/08/21(木) 22:59:29 ID:zbPUBJS6
・非エロです
・オリキャラ多数
・独自解釈を含みます
・sts開始前の地上本部をメインにした話なので六課の面々については察してください
・NGワードは「尊ぶべき愚者」で

115 名前:尊ぶべき愚者 十七話 1/27 ◆Ev9yni6HFA :2008/08/21(木) 23:01:12 ID:zbPUBJS6
 二尉が精密検査を受けるとかでその日の訓練は中止となった。
 本人は心配するなと言っていたが、医療スタッフの顔が険しかったのが気になる。
 当日に言われて暇を持て余していたティアナは准尉に誘われてクラナガンに繰り出していた。
 抵抗はあったがこういう付き合いも大事だと了承した。

「お!」
「うげ……」

 十字路を曲がった直後に准尉は苦々しい声を上げた。
 顔は引き攣り、体が後ろに下がる。

「よお、偶然だな。准尉」

 黒髪の男性が片手を上げ親しげに声をかける。

「本当に偶然ですね、外交官。一人ですか?」
「いや、三人」

 外交官と呼ばれた男性が振り返ると二人分の影が向かってくる。
 赤髪の男性と青髪の女性で二人とも見覚えがある。
 執務官と親友であるスバル・ナカジマの姉、ギンガ・ナカジマだ。

「また微妙な組み合わせですね。ナカジマ陸曹と面識ありましたっけ?」

 准尉が肩を落として全身を脱力させる。
 どうやらこの場から去りたがっているようだ。

「あの、准尉……」
「これから飯食いに行くからお前も来いよ」

 助け船を出す前に先手を打たれた。
 外交官は准尉と肩を組み親密そうにするが准尉の方は目に見えて嫌がっている。

「どうせ、例の店行く気なんだろ」
「まあ、そうなんですけど……」

 顔を合わせず、視線は足元を彷徨う。
 そのまま小声でぶつぶつ呟いていた准尉だが、とうとう諦めたのか渋々頷く。



116 名前:尊ぶべき愚者 十七話 2/27 ◆Ev9yni6HFA :2008/08/21(木) 23:02:11 ID:zbPUBJS6
「執務官、店に着いてからで良いのでちょっと確認してほしい所が」
「うん? ああ、分かった」

「今度はファナウンテラスって所に行きたいんだが」
「一人で行ってください」
「そう言うなよ。俺達、親友だろ?」

 仕事の話でもしているらしく親しげな執務官とギンガ。
 更に一方通行にも見えるが仲良しな准尉な外交官。
 そうなると一人余るのは自明の理な訳で、ティアナは四人から一歩分下がって歩いていた。
 
 と、唐突に足を止めて周辺を見渡す。

「どうした?」
「あの、何か聞こえませんか?」

 雑踏の中で危うく聞き漏らす所だったが、確かに聞こえた。
 最初は建物の間を風が通り抜ける音かと思ったが、耳を澄ませると泣き声のようだ。

「あれじゃね? フェレットの鳴き声とか」
「いや、どうも人の泣き声に聞こえますけど」
「なんだ、准尉。知らないのか? フェレットは喋るんだぞ」
「それ、使い魔か何かですか?」

 前方で行われているやり取りを無視して意識を集中させる。
 活気溢れる街で一人で泣いている声の主へと。

「こっちです!」

117 名前:尊ぶべき愚者 十七話 3/27 ◆Ev9yni6HFA :2008/08/21(木) 23:03:41 ID:zbPUBJS6
 裏路地に入って少し進んだ所に人影が見える。
 更に近付くと重ねられた廃材に座った少女がすすり泣いていた。

「お父さん、お母さん、みんな……」

 割と高級そうな衣服を身に着けているが、迷子か家出か。
 近付く途中で踏んだ砂利が乾いた音をあげ、少女の顔がこちらを向く。
 陽光を連想させる眩い金髪。
 その両目は普段なら深緑のような翡翠と炎のような紅玉の瞳をしているのだろうが、今は赤く泣き腫らされていた。

「何で泣いていたのかな」

 出来るだけ警戒心を抱かせないように優しく話しかける。
 相手の少女は両手で目を擦りながら、

「べ、別に泣いてなどいない」

 本人はそう言うが真っ赤に充血した両目が言葉より雄弁に事実を物語っている。

「つーか、何でこんな裏路地にいんだよ。善良な奴の多い聖王教会とは訳が違うんだぞ」

 外交官と離れられて此れ幸いと付いて来た准尉が呆れ顔だが、知り合いなのだろうか?



118 名前:尊ぶべき愚者 十七話 4/27 ◆Ev9yni6HFA :2008/08/21(木) 23:05:14 ID:zbPUBJS6
「わたしが何処で何をしようがわたしの勝手だろ」
「泣いてる子供をほっとけるかよ」
「とにかく一緒に行きましょ。ここは危ないから」
「首都っていったって治安は完璧じゃないんだぞ」

 准尉が手を差し伸べるが少女は一瞥しただけで動こうとしない。



「! なあなあ、そこの暗がりに男達が倒れてるんだが」



「だから、わたしは自分一人でも大丈夫だ」
「はいはい。ギンガさん、食事ってこの子も一緒で大丈夫でしょうか?」
「ええ、大丈夫。花やかでいいわね」

 過半数の同意が得られたので正式に決定。
 後は少女の説得だけだ。



「いや、だからそこの暗がりに、なあ、執務官。
 お前もなんか言って……おい、なに本通りから「自分はこの一団には関係ありませんから」って面してんだよ」
「いや、面倒事には関わらない主義なので」
「じゃあ執務官なんてやってんじゃねぇよ! さあ、お前も裏路地に来い。恐れる事はない。勇気を出して一歩踏み出せばいいんだ」
「いえ、本当に遠慮しときます。聖王教関係の友人からも忠告されてますし」
「お前は汎神論の世界の人間だから神罰とか怖くないだろ」
「それは何か違うような」




119 名前:尊ぶべき愚者 十七話 5/27 ◆Ev9yni6HFA :2008/08/21(木) 23:08:50 ID:zbPUBJS6
「外交官の誘いは受けても俺達の誘いは駄目ってのか?」
「別にそういう訳ではないが……」
「ご馳走してあげるって言ってるんだから大人しく受けときなさいよ」
「一緒に食事が出来たら私達は楽しいから私達の為と思って、ね?」
「・・・・・・ま、まあ、そこまで言うなら行ってやらない事もないが」

 躊躇いがちに准尉の手を取る。

「まったく、素直じゃないんだから」

 自分でも分かるくらいニヤニヤしながら少女の背中を叩く。

「ッ! だから、私は! お前達がどうしてもと言うから仕方なくだな!」
「はいはい。じゃあ、行きましょうか。准尉にギンガさん」

 裏路地から出ると外交官がしゃがみ込んで地面にミミズのような線を書いている。

「? 何を遊んでるんですか。さっさと行きますよ」

 准尉が外交官の脇に手を突っ込んで無理矢理立たせる。

「……お前等、将来大物になるぜ。方向性までは知らないが」






120 名前:尊ぶべき愚者 十七話 6/27 ◆Ev9yni6HFA :2008/08/21(木) 23:09:34 ID:zbPUBJS6
 六人がやって来たのは一件の居酒屋だった。
 店に入る前に男三人は肩を組んで楽しげな女子三人から離れる。

「実はお前達に言っとかないといけない事がある」
「奇遇ですね。俺もです」

 外交官と准尉の視線がぶつかり合い、組んでいる腕にも力が入る。
 二人がゴクリと固い唾を飲み込み、

「わりぃが、代金頼むわ」
「そのまんまお返ししますよ。予定が三倍になったらどうしようもないですから」
「・・・・・・俺、外交官なんだけど。言っちまえば一国の代表よ? 言っちゃうよ。明日朝一番でゲイズ中将に言っちゃうよ。
 お宅の平の局員は政府高官に無理矢理奢らせるんですか? って」
「……分かりましたよ」

 権力には勝てず不承不承のまま執務官の方を向く。

「あの二人で割り勘を」

 准尉は執務官に期待を込める。
 生真面目でお人好しな性格のようなので頼まれれば断れないだろう。
 しかし、執務官は薄ら笑いを浮かべ、

「すまない。持ち合わせがもうないんだ」

 申し訳なさそうに呟いた。
 もう、というのがミソだった。



121 名前:尊ぶべき愚者 十七話 7/27 ◆Ev9yni6HFA :2008/08/21(木) 23:10:33 ID:zbPUBJS6
「……もしかして今までずっと一緒だったんですか?」
「調査にはそうする事が最適だと考えたんだ」

 間違いだったかも、と小声で付け加えた。

「ずっとただ飯食らいかよ」
「仕方ないだろ。金ないんだから」

 悪びれる様子を微塵も見せず外交官はあっけらかんと答える。
 権力は人格者に付与される訳ではないのだな、と准尉は嫌な事を悟った。

「外交官なのに金がないんですか?」
「ないんだよ、国全体で金が。俺にしたって外交官という名の使いっ走りだし」

 がま口の財布を開いて逆さまにする。
 埃しか落ちてこなかった。

「……そっちも大変なんですね」
「基本的に自給自足で産業とかないからな。ミッドチルダから見れば文化レベルは低いんだろうなぁ」
「……まあ、今回は俺の奢りで」
「有り難う」





122 名前:尊ぶべき愚者 十七話 8/27 ◆Ev9yni6HFA :2008/08/21(木) 23:11:37 ID:zbPUBJS6
「おや。久し振りだね、あんちゃん」
「どうも」

 暖簾を潜って店内に入り、厨房で包丁を研いでいる親父に挨拶をする。

「最近二尉が来ないけど、どうしてる?」
「何時もどおりですよ」
「そうかい? 室長さんが、「もし来たらすぐに自分に連絡して何も出さないでくれ」とか言ってたから」
「・・・・・・そう、ですか」

 二尉の様子が負傷前と変わらないと思っていた准尉だったがそう言われると不安になってくる。
 彼が無茶をする人間だというのはよく知っているので尚更だ。
 室長に詳しい容態を聞くべきかもしれない。

「そういえば、最近新しいアルバイトの子が入ったと思うんですが……」
「おお、入ったよ。知り合いかい?」
「ええ、まあ、ちょっと。今日は休みですか?」
「いくつも掛け持ちしてるみたいだからねぇ」
「そうですか。あー、後ほど話があります」

 その話がこの店に来た一番の目的なのだが、どうも気が重い。
 第三者にはとてつもなく説明しづらいからだ。


 六人用のテーブルはないので四人用のテーブル二つに男女がそれぞれ座る。
 いきなり別れてしまったが食事が始まれば勝手に動くだろうと准尉は楽観視する。
 その間にも外交官は壁にある品書きを眺めて思案をしている。

「えーと、豚とろ焼きに刺身の盛り合わせにもつ鍋に・・・・・・あーもうめんどくさい。メニューにあるの一通り頼む」
「・・・・・・人の金だと思って好き勝手してますね」

 良心は相手を見極めるべきだというのが本日二度目の教訓だった。




123 名前:尊ぶべき愚者 十七話 9/27 ◆Ev9yni6HFA :2008/08/21(木) 23:12:26 ID:zbPUBJS6
「この店の雰囲気は嫌いじゃないな」

 簡単な料理や飲み物が運ばれてきた所で食事がスタートする。

「十年くらい前、あるロストロギアを回収する為に出向いた街にも似たような店があってさ」

 外交官は糸を引いた豆を二本の細長い棒で器用に掴んで口に運んでいく。
 腐ったような臭いを発するそれをよく食べられるな、と准尉は顔をしかめた。

「ロストロギアの回収は管理局の仕事なんですけどね」
「仕方ないだろ。そのロストロギアが暴走すると俺達の世界も侵食されるって言われたら手を打たない訳にはいかないだろうが。
 それに、被害者やその家族が大勢いてな。彼等の事を考えると行動しないといけないと思ったんだ」
「……外交官の世界が無事って事はちゃんと回収出来たんですか?」
「いや、まあ、回収したのは管理局なんだけどな」
「……無駄働きですね。最初から管理局に任せとけば良かったのに」
「今にすれば俺もそう思うかな。被害者には何も出来なかったし、途中で変な仮面した奴に襲われるしさ、何なの、あいつら」
「知りませんよ」

 何処かで聞いた気もした准尉だが、すぐには思い出せなかったので質問されないように否定しておく。

「管理局は管理局で、虹砲をぶちこもうとするし、逃げるの大変だったんだぞ。あれを使うとか正気か? 俺が泳げないと知っての仕打ち?」
「事情は分かんないですけど指揮官がそうしないといけないと判断したなら……」

 突然上がった甲高い音に准尉の発言は中断される。
 音源を探すと執務官が申し訳なさそうな表情で床に落ちたスプーンを拾い上げていた。

「すみません」

 鈍感な准尉にも今のが偶然ではなく、執務官が話の流れを変えようとしたのは分かった。
 流石に理由までは不明だが、そもそも食事時にする話ではない。


124 名前:尊ぶべき愚者 十七話 10/27 ◆Ev9yni6HFA :2008/08/21(木) 23:13:16 ID:zbPUBJS6
「・・・・・・そういえば外交官って何歳なんですか?」

 十年前に危険なロストロギアの回収を任せられていたという事はそれなりの筈なのだが。

「何歳に見える?」

 問い返されたので外交官の顔をじっと見つめる。
 一見すると病気かと思うほど青白い肌をしているが常人以上の健康体である事は身をもって理解している。
 黒い髪の毛は艶やかな光沢を放ち瞳は血のように赤い。
 これで女だったら言う事はないのだが。

「えーと、二十七くらい?」
「ぶっぶー」
「二十五?」
「全然だな」
「三十五?」
「ちげーよ」
「もしかして四十超えてます?」
「よーく考えれば分かるぞ」

 腕組みをして思案する。
 ミッドチルダでは若作りしている人間が多い。
 知り合いの知り合いには孫までいるのに二十代でも通用するのもいると聞いた気もする。
 そもそも外交官は違う世界の住人なので若く見える種族なのかもしれない。
 准尉が考え込んでいる間、外交官は愉しそうに酒を呷る。

「准尉。多分、お前が考えているより問題は単純だ。なあ、執務官」

 話を振られた執務官は食事の手を一旦止めて頷く。

「ですね。ただ、ミッドチルダの人間には難しいかもしれません」
「ぅんと、降参です」

 お手上げとばかりに両手を上げると外交官は落胆したように息を吐いて棒を鼻先に突きつけてくる。


125 名前:尊ぶべき愚者 十七話 11/27 ◆Ev9yni6HFA :2008/08/21(木) 23:14:05 ID:zbPUBJS6
「お前なぁ、俺の話を聞いてなかっだろ」
「は?」
「俺は懇切丁寧に説明したぞ。俺の世界には太陽がなくて人工物の月しかないって」
「……ああ!」

 そこで外交官の言わんとする事が理解出来た。

「だからお前達の使う暦の概念そのものがないんだよ。まあ、俺は仕事柄多少は使ってるが」
「大変じゃないですか、それ?」
「そりゃもう。暦の概念があっても世界によって一日が十時間だったり逆に三十時間だったり、一年が二百五十日くらいしかなかったり。
 最近はもっぱら遅刻の言い訳に使ってるが」

 外交官が話の最後に自身の株を下げるような発言をするのは悪癖なのだろうか?

「ランスター、今の話、なかなか重要だったが、聞いてたかい?」
「え? あ、はい!」

 食器を持ったままティアナが慌てて振り向く。
 恐らく話し半分だっただろう。

「管理外世界には自分達の常識は通用しないという事だ。自分の常識を絶対視してると足下を掬われてしまう。
 執務官は次元航行部隊でも重宝されるから頭の片隅に置いておいて損はない」




126 名前:尊ぶべき愚者 十七話 12/27 ◆Ev9yni6HFA :2008/08/21(木) 23:15:33 ID:zbPUBJS6
「あなた、家族は?」
「大家族でな。特に妹がたくさんいる」

 野郎三人と同様に女子三人も雑談を始めている。
 ギンガとティアナは顔見知りなので話題の中心になるのは少女に関する事だ。
 ただ、名前を聞いてもはぐらかすだけで一向に答えようとしないのだが。

「あなたによく似てる?」
「というより瓜二つだ。年の違う一卵性双生児だな。一度、ガラス越しで会った時に鏡だと勘違いしてしまったよ」
「じゃあ可愛いのね。会ってみたいわね」
「では、住所を教えるから会ってやってほしい。彼女達も喜ぶ」

 少女はギンガが仕事用に持っていたペンとメモ用紙を拝借して更々と住所を書く。
 そのメモ用紙を受け取ったギンガの表情が眉を寄せ怪訝なものになる。
 だが、それも一瞬。
 何事もなかったようにメモ用紙をティアナに渡す。
 渡され、内容を確認したティアナはその理由に気付いた。
 書かれた住所にあるのは一般家庭ではなく孤児院だからだ。
 ティアナ自身、兄が死んだ後に入る事も考えたので地理的には間違いない。
 興味を引かれたものの、流石に初対面の人間が踏み込んでいい話題ではない。
 ギンガもそう考えたからこそ無言だったのだろう。

「妹さんの事は分かったけど、お兄さんや弟さんは?」
「兄の一人は現在ミッドチルダにいると思うが、性格や言動に難があってな……会うと気分を害す可能性が・・・・・・」
「うげ……もしかしてあの十四歳の兄貴か? 明星だか、紋章だか名乗ってる」

 背中合わせで座っていた外交官が渋い声で割り込んでくる。

「ああ。妹の一人がそんな事を言っていた」
「あいつ、近くにいんのかよ。寒気がしてきた・・・・・・」





127 名前:尊ぶべき愚者 十七話 13/27 ◆Ev9yni6HFA :2008/08/21(木) 23:16:13 ID:zbPUBJS6
「彼女のお兄さんってどんな人なんですか?」

 外交官の突発的な行動を見ていた准尉は関心を駆り立てられた。
 純粋に彼女の兄弟というものを想像出来なかったのも理由の一つだが。
 問われた外交官は渋い表情のまま小皿に立てた箸をぐるぐると回す。

「個人的な感想を言うと哀れな奴ではあるんだが、一緒にいたくはないな」
「彼女の言う通り性格に問題が?」
「お前の方から歩み寄れば上手くいくと思うが、会わないに越した事はない」

 外交官も会わないに越した事がなかった人物にランキングされているのだがわざわざ言う必要もない。

「・・・・・・ちょっと気になったんですけど、兄弟の話はしてたけど親の話はしてないですよね」

 木の股から生まれたという事はないだろうから両親はいる筈だが、不自然なほど話題に出ていない。
 外交官の方を見ると難しい顔で右手に持ったソース入りの容器と左手に持った悪臭を放つ小皿を交互に見つめて唸っている。

「……彼女、両親いないんですかね?」

 本人には聞こえないよう、耳打ちするような小声で話しかける。

「両親に該当する存在は死んでるな」
「それで」

 泣いていたのはそれが原因だろうか?

「……そんな単純じゃないと思うけどな」
「どういう事です?」
「仮に生きていても彼女の方から引き取りを拒否する公算が高いんじゃないかとな」
「だからどういう意味ですか?」

 もし、という仮定が無意味だとは理解しているが、それでも両親が生きていれば喜んで一緒に暮らすだろう。


128 名前:尊ぶべき愚者 十七話 14/27 ◆Ev9yni6HFA :2008/08/21(木) 23:16:49 ID:zbPUBJS6
「お前には関係ない話だ」
「ここまで言っといてそれじゃ生殺しですよ」
「我慢する事を覚えろ。忠告しとくが、何にでも首を突っ込みたがるその癖は今の内に直しとけ。いつか命に関わる」
「彼女と出会ったのはあんたに引っ張り回されたのが原因だったような……」

 図星だったのか外交官は押し黙り、口を大きく開いて小皿の中身を一気にかっ込んでそのまま飲み込んでしまう。

「とにかく。今日は仕方ないにしてもあんまりあの子に関わるな。互いにとって望ましくない」
「何でそんなに……」

 教会で会った時には既に少女の事をよく知っている風だったが、ここまで強情になる理由が解せない。

「あの子はお前が思ってる以上に重要な人物だ。誰がミッドチルダに連れて来たのやら」
「重要人物、ですか?」

 ギンガやティアナと笑みを交えて楽しそうにしている少女を年相応で外交官の言う重要人物には見えない。
 むしろ外交官に誇大妄想癖があると言われた方がしっくりくる。

「お前が不審な事故死を遂げてもちょっと夢見が悪くなるだけで俺は構わないけどな」
「大袈裟な。まあ、前向きに検討しますよ」
「そりゃ俺達の間じゃ検討するつもりがない時の返答だ」

 慨然として咨嗟しながら目だけは別の方に向いている。 
 准尉もつられて同じ方向に視線をやるがそこには壁しかない。



129 名前:尊ぶべき愚者 十七話 15/27 ◆Ev9yni6HFA :2008/08/21(木) 23:18:06 ID:zbPUBJS6
「やはり情報が少ないです」

 他の四人が楽しそうにしている中で仕事の話をしなければならない事にギンガは多少の物悲しさを覚えた。
 仕事の結果が思わしくないなら尚の事だ。
 提出の期日が迫っているので仕方ないのだが。

「実行犯がいない以上、仕方ない面もある。
 本局としたら最低限の体裁が調えられた報告書が提出されれば問題なしと判断するだろうけど……」
「実際に被害を被った地上部隊には何としても全てを解明しなければならないという意地みたいなのがありますね」
「……シェオルの入手先は僕も知りたいと思ってるしね。他にはロストロギア、エイドスクリスタルに次元災害、ヒドゥンか。
 当事者であるブリュメールは行方不明だし、スクライア司書長が休暇中で無限書庫は仕事が遅いし」
「シェオルの事は執務官でも分かりませんか?」

 執務官が23管理外世界の出身者だと知ったのは偶然だった。
 最初こそ驚いたものの執務官の視点から考えてみれば当然かもしれない。
 自分の父親も母親の不審死について調査を続けているのだ。
 故郷から失われた筈のロストロギアがテロに利用されたと知ればいてもたってもいられないだろう。

「残念ながら。少なくとも世界創造、下手すればもっと前からあった筈だから。
 最古の記録では既に崇められていたから誰も詳しく調べてないんだ。
 しかし、アルカンシェルの直撃を受けても無事とはね」

 そこまで言って執務官は急に思い詰めた表情になる。
 口元を手で覆い、深く息を吐く。

「ナカジマ陸曹、ちょっと外に出よう」

 そう言って席から立つ執務官にギンガも続くが色気のある話は期待出来ないだろう。




130 名前:尊ぶべき愚者 十七話 16/27 ◆Ev9yni6HFA :2008/08/21(木) 23:18:51 ID:zbPUBJS6
 店の外に出れば室内での食事により火照っていた体が冷たい夜風で引き締まる。
 軽く伸びをして相変わらず深刻げな執務官を見据える。

「これは、極秘事項なんだけど、ちょっと拙い事態になりそうだから言っておく」

 執務官はそこで言葉を一旦切り、周囲を警戒するように見渡す。
 動きを止め、五十メートル程先のビルの屋上を忌々しげに睨み付けていたが視線を落として嘆息する。

「先の事件の際、ガジェットと一緒に戦闘機人が現れた事で本局の一部は君達姉妹が敵性組織のスパイじゃないかと疑っている」

 ギンガは一ヶ月前に会った隻眼の少女の事を思い出す。
 当時は気にする余裕がなかったが他者から見れば疑わしい点も存在する。

「そんな筈はないと再三進言したものの中々聞き入れてもらえなくてね。
 管理局における戦闘機人関係の技術はまだまだ未熟だからこちらの検査では発見出来ない通信機があるんじゃないかって言ってきて」

 管理局の技術が劣っているという理由の他に脳や心臓のような重要な器官は完全に調べきれない事情がある。
 そこに本人の意思とは無関係に得た情報を送信する装備があっても不思議ではない。

「レリック事件は僕の担当じゃないし、近い内にミッドチルダを離れると思う。だから、君の方でも警戒しておいてくれ」
「・・・・・・」

 監視対象に監視している事を伝えるのは論外であり共犯者として拘束されても文句は言えない。
 後に監視対象が白だと判断されても調査途中に伝えたなら弁明は出来ない。

「どうして、私にそんな事を言うんですか?」

「・・・・・・本人の意思ではどうする事も出来ない問題を責め立てるのが気に入らなかったのかな、多分」

 執務官は何となく自信なさげな顔つきで言葉を選ぶように絞り出す。

「執務官は子供みたいな所がありますね」
「・・・・・・そうかな?」
「そこに怒りを感じてリスクを度外視して行動するのは子供ですよ。人を簡単に信じる所も」
「簡単に信じてるつもりはないけどね」
「じゃあ私を白だと思った根拠は?」


131 名前:尊ぶべき愚者 十七話 17/27 ◆Ev9yni6HFA :2008/08/21(木) 23:19:33 ID:zbPUBJS6
 顎に手を当てて少しだけ沈黙。
 眼球だけ動かして夜空を見上げ、そしておもむろに、

「直感」

 そう、一言だけ呟く。

「直感、ですか。法の執行人としてはどうかと思いますけど・・・・・・」
「そうかなぁ。僕の直感は外れた事ないんだけどな。
 それに君が仮に黒だとして、会って一月も経ってない僕より先に責任を追及される人間は大勢いる」
「時間は関係ないですよ。調査を命じられたのは執務官なんですから」
「あんまりそういう常識は通用しないよ、管理局。表沙汰には出来ない類の調査だし」

 一時、二人の間に沈黙の時間が流れる。
 執務官の用件は終わったが話の切り方が拙かった。

「それと執務官?」
「何かな」
「スプーンに罪はないので大切に扱わないと駄目ですよ」
「そうだね。准尉を殴るよりはいいが短絡的すぎた」
「……やっぱり23管理外世界の事は」

 アルカンシェルで壊滅したという執務官の故郷。
 管理局の判断は止むを得ないと思うが、やはり宿怨のようなものを抱いているのだろうか。

 しかし、聞いてどうすると頭の中で別の声が囁く。
 執務官が恨みを抱いていると答えたとしたら、これからどうする?
 加害者側が被害者にどんな言葉をかけるつもりだ? まさか恨んでいるのが執務官一人だと思っている訳ではないだろうな?

 次々に浮かんでは消える言葉を振り払う。
 執務官が何と答えても自分は出来る事をやるだけだ。

 平静を装って返事を待つが、

「そろそろ戻ろう。ランスターにあのお二方の相手は荷が重いんじゃないかな」

 表情を見せないままギンガに背中を向けて店に入ってしまう。
 そこでギンガは自分が安堵している事に気付いた。
 結局の所、今の自分には他人の憎しみの矢面に立つ覚悟がなかったのだ。





132 名前:尊ぶべき愚者 十七話 18/27 ◆Ev9yni6HFA :2008/08/21(木) 23:20:27 ID:zbPUBJS6
 執務官とギンガさんは出て行ったきり戻ってこない。
 准尉はカウンター席に移動して店の主人と話しているので必然的に残った三人で会食を続ける事になる。

「希少金属が産出されるだか何だか知らないが、もう十年近く互いに領有権を主張しててな。冗談じゃねえよ。
 何で俺が関係調整しなくちゃいけないんだよ。なあ、君の方から手を引くように言ってくんね?」
「わ、私はその、下っ端ですから」
「あの世界は他の資源も豊富で三百年前から諍いが絶えないからな。どうせ無人だし、いっそ破壊してしまった方が平和かもしれんな」
「それやるなら第三勢力じゃないといけないよなぁ。連合の加盟国がやると空中分解だし」

 外交官は長嘆しながら猪口に酒を注いでいく。

「そういや、名前聞いてなかったね。姓の方は准尉達が話してるの聞いたけど」

 とろんとし始めた目でティアナを見定める。

「えっと、ティアナ・ランスターです」
「良い名前だ。今必要なんだよな〜夜明け」

 一言喋るだけでも心臓を締め付けられるような緊張を強いられる。
 詳しいプロフィールは聞けなかったがかなり偉い立場の人間である事は間違いない。
 准尉はどうしてあんなに自然体で接する事が出来るのか、ティアナには疑問でならなかった。



「卒業して二年経ってランクも二つ上がってるんですが、あんまり強くなった気がしなくて」

 悩みを打ち明けてそこから話を発展させていくのが今回の趣旨らしく、ティアナも秘めていた苦悩を喋ってしまった。
 その場の勢いとは恐ろしい。

「魔力量とかは生まれである程度決まっちゃうからな。でも、それなりの地力があれば頭の使い方次第でどうとでもなるんじゃね?」
「ランクなどいちいち気にする必要もない、いい加減なものだと思うがな。
 戦闘能力と直結している訳でもなし。わざと手を抜いて保有制限を誤魔化す輩もいる事だし」
「まあ、精神的な拠り所にもなるしインパクトのある必殺技が一つでもほしいな。
 集束砲『シュテルネンリヒト ブレッヒャー』とかどうよ?」
「響きが悪いな。『エーヴィヒ クラフト シュネーシュトゥルム』というのはどうだろう?」

 結論として基本を鍛えるのが大切だとティアナは思った。
 ただ、魔力量が少ないなら集束砲という着眼は間違っていない。
 使用済みの魔力を再度集めるのは相当高度な技術だが二尉に相談してみるのも悪くない。





133 名前:尊ぶべき愚者 十七話 19/27 ◆Ev9yni6HFA :2008/08/21(木) 23:21:09 ID:zbPUBJS6
「なかなか苦労してるみたいだね」

 外交官による国家機密漏洩ギリギリの愚痴が再会した頃になって執務官とギンガが帰ってきた。
 ギンガが落ち込んでいるようにも見えるが何があったのだろうか?

「深く考えずに条件反射で会話してれば楽だけどな」

 妙な達成感を身に纏わせて准尉も戻ってきた。

「嬉しそうですけど、店の人と何を話してたんですか?」
「ちょっと時給アップの交渉をな」

 ティアナの頭上にクエスチョンマークが浮かぶ。
 時給とはこの店の時給だろうか?
 准尉はあくまで客であって副業等を行っている筈はないが。
 そんな疑問が顔に出ていたのか外交官が得意気に鼻を鳴らし、

「准尉は女を囲ってるんだが、嫌われてて直接金を受け取ってもらえないから回りくどい手段を……」
「また誤解を招くような発言を……!」
「間違ってなくね?」
「大間違いだろ! しかも何故かその認識が部隊に広がってんだよ!」
「不思議な事もあるな」
「あんた以外に誰が広められるよ!」
「俺以外にも三、四人はいるぞ」

 酔っているのか准尉は酷く情緒不安定なようだ。
 これは下手したら外交問題になるのではないだろうか。

「あの二人は仲が良いね」

 執務官がティアナの横に座る。
 ティアナ視点では准尉は本気で外交官の胸ぐらを掴んでいるが、喧嘩するほど仲が良いという奴だろうか。
 まあ、親しいからこそ相手に遠慮がないのかもしれない。
 あ、クロスカウンターが炸裂。
 しかし准尉だけが崩れ落ちた。



134 名前:尊ぶべき愚者 十七話 20/27 ◆Ev9yni6HFA :2008/08/21(木) 23:21:52 ID:zbPUBJS6
「そうそう。勉強の方は進んでる?」
「はい。頂いた資料も参考にして」
「すまないね。二尉みたいに付きっきりで教えられれば良かったんだけど」
「とんでもないです! 今のままでも十分」

 執務官に心底申し訳なさそうにされ、逆にティアナの方が慌てた。
 現状でも自分は相当に恵まれている方だ。
 貰った資料にしても事件の概要から関係者の詳細な情報、検事や弁護士の発言まで綿密に纏められたものだった。
 一つの事件資料作成にも多大な労力が必要だっただろう。

「無限書庫にあったのをコピーしただけなんだけどね」

 歯をちらつかせながら苦笑い。

「他人に教える経験が少ないからどうしても自分の時の受け売りになっちゃって」
「それで執務官になれるなら望む所です。私も見習って立派な執務官になりたいです」

 相手に対する賞賛を含んでいたが何故か執務官の表情を沈ませる結果になった。

「自他共に執務官向きではないと認めてるから、僕の事は見習わない方がいい」
「あの、じゃあどうして執務官を志したんですか?」
「ちょっと調べたい事があってね。執務官なら過去の裁判記録なんかを楽に閲覧出来るから。
 あと、引き取ってもらった以上は高い地位を目指さないといけないと思ったのもあるけど、人の為に働くのは好きだし」

 やはり目指す理由は十人十色、千差万別。
 自分のように兄の為に頑張っている人間もいれば、やりたい事をやる為に目指す人間もいる。
 ただ、執務官になろうとする意志は誰にも負けないつもりだ。

 刹那、執務官がティアナを危ぶむような眼差しを向けるが、ティアナが気付く事はなかった。



135 名前:尊ぶべき愚者 十七話 21/27 ◆Ev9yni6HFA :2008/08/21(木) 23:22:29 ID:zbPUBJS6
「仕事は大変ですか?」
「僕が戦っている敵は組織というより思想、理性というより感情だから。殲滅は不可能だろうな。そういう意味じゃ難儀だよ」
「感情、ですか」
「例えば、管理局というシステムさえなければ君の兄は死なずにすんだだろ」
「いや、でもそれは逆恨みです」

 他人から兄の話題を出された事で胸を締め付けるような圧迫感があるが、顔に出ないよう歯を食い縛ってやり過す。

「逆恨みだろうさ。でも人によっては十分な行動理由になる。そしてそういう相手は厄介だ。正論が通じない」
「じゃあ、もしそんな相手と遭遇したらどうすれば?」

 執務官は困ったような自虐的な笑み。
 その意味は、これから提示する答えは最良ではないという事。

「力ずくで叩き潰すしかないな。口で言っても分からない馬鹿は」

 二人の間に漂う空気が何処となく重くなり息苦しさすら覚える。

「そうそう。君に渡しておくものがあった」

 その雰囲気を吹き飛ばすような明るい声で執務官は自製のファイルから古びたノートを数冊取り出した。

「これは?」
「執務官試験の傾向と対策をまとめたものだ」

 受け取ったティアナはページをパラパラと捲ってみる。
 どのページにも黒い字でびっしりと書き込みがあるが、それ以外にも様々な色や字体での書き添えがあるので何人もの手が加わっているのだろう。


136 名前:尊ぶべき愚者 十七話 22/27 ◆Ev9yni6HFA :2008/08/21(木) 23:23:38 ID:zbPUBJS6
「コピーは禁止らしいから」
「執務官もこれで勉強したんですか?」
「そうだよ。僕の場合は読み書きをマスターするのに時間がかかったけど」

 注視すると一つだけ崩れた文字群がある。
 というか、記号にしか見えないのも交じっている。

「それは執務官試験に合格する為のノートだから。まあ、結構関係ない事も書いてあるけどね。それがまた面白かったり。
 君も執務官になったら気に入った人間にあげればいい。紙媒体の資料なんて邪魔だから捨ててもらってもいいけど」
「だが、情報を保存するという観点からは電子媒体より紙媒体の方が優れているな。
 一番は石板だが、手間やコストを考えると断然紙だな」

 猪口を持った外交官が横から割り込んで来る。
 もうその辺の酔っ払いと変わらず、准尉が普通に接せられる訳もおぼろげながら理解出来た。

「それはそうですね。電子媒体では半世紀もすれば情報を読み取る機械がなくなってるだろうし」
「こっちじゃ未だ羊皮紙が主流だな」
「こっちでもそうでしたね。製紙技術はまだまだ未熟で大量生産は出来ませんでしたから」
「うんうん。液晶や立体画面なんて夢のまた夢だよな」
「ですね」
「つーか発電所とかないんだよな!」

 気が合うのか、二人は何やら盛り上がっている。





137 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/21(木) 23:23:43 ID:gNti2Ih1
支援
ブラウザで見てたら唐突に太字になったんだが何事

138 名前:尊ぶべき愚者 十七話 23/27 ◆Ev9yni6HFA :2008/08/21(木) 23:24:13 ID:zbPUBJS6
「なんかあっちも楽しそうだな」
「そうですね」

 いきなりメンバーが増えた事で心配していた准尉だったが、ティアナも外交官と打ち解けているようで良い事だ。
 外交官も時々見せる人を陥れるような言動さえなければ普通に付き合えるというのに。
 しかし、何だかんだで世話になっていて嫌いになりきれないのが厄介な所だった。

「しかし、この組み合わせは初めてだな」

 前回はあまり話せなかったので准尉にとっては待ち望んでいた状況とも言える。

「わたしにとってもちょうどいい。お前達二人に聞いておきたい事があったのだ」

 幼い見た目に似つかわしくない重々しい面持ちにギンガと准尉は互いに顔を見合せる。

「一ヶ月前の事件で死にかけたのによく管理局に残る気になったな」

 一ヶ月前の事件という単語で准尉が思い出す事は多々ある。
 馬鹿でかい蛇に吹き飛ばされたり、虚数空間に落とされかけたり、思いっきり床に叩きつけられ骨を折ったり。
 自分の無力さを痛感する事になった一件は忘れた事がないので別格。
 確かに碌な目に遭っていない。
 これなら管理局を辞めても誰も文句は言わないだろう。

 それでも尚、残り続ける理由を少女は問うてきた。
 ここはネタに走るべきか? という思考が頭をよぎる准尉だったが、少女の真剣な眼差しを前にして幾らなんでも不粋だなと改める。
 舌の回りを良くする為に、グラスに注がれたビールを一気に飲み干す。

「俺は管理局の為に戦った事は一度もないぞ。ただ、管理局にいるのがミッドチルダや大切な人達を守るのに一番だと思ったからだ」
「私も、命の危険は覚悟の上だし、逆に自分達が危険に曝されて助かる人がいるなら本望だって思ってるけど」

 二人はそれぞれの考えを述べた後でねー、と頷き合う。

「ってか、前にも同じように答えて驚かれたんだが、俺が戦う理由ってそんなに変かな?」

 記憶の糸を辿ると一ヶ月前にも二尉に管理局にいる理由を問われて同じように答えた。
 そういえば、あれもこの居酒屋だった。



139 名前:尊ぶべき愚者 十七話 24/27 ◆Ev9yni6HFA :2008/08/21(木) 23:24:59 ID:zbPUBJS6
「変ではない。守りたいものがあって、その為に自分の命すら賭けられるのが人間だ。だが、同時に死への恐怖を抱くのも人間だ」

 准尉は決して上等とは言えない頭で少女の言葉を噛み砕いていく。
 少女には守りたいものがあるが命を賭す事に恐怖を感じている、という事で言いのだろうか?
 だから自分達の話を聞きたがった。

「力がないから何も出来なくて大切な人を失うのは辛いが、力があるのに何もしなくて失うのも辛い」

 執務官も参戦してくる。

「どちらも嫌だから自分は戦う道を選んだ」
「死ぬ事は怖くないのか?」
「遅かれ早かれ生きてる限り人は死ぬ。重要なのは理解してくれる人間や後を継いでくれる人間がいるかどうか」

 良い事を言ってるのだが准尉は嫌なものを感じた。
 ただでさえ明るい性格ではない執務官が不意に覗かせる陰鬱な気配。
 喋っている間にそれが見え隠れしていた。

「なるほど。色々と参考になった」

 それでも不安はいくらか氷解したらしく少女の曇っていた顔に日が差した。
 普段からそうしていれば可愛いのにと准尉は内心で吐露した。


「おやぁ、何だかテンションが低いな。今日は奢りなんだからもっとパーっといこうぜ」
 
 話題に入っていなかったと思えば外交官は一升瓶を持ち出していた。
 シリアスな雰囲気は彼には関係なかったらしい。




140 名前:尊ぶべき愚者 十七話 25/27 ◆Ev9yni6HFA :2008/08/21(木) 23:25:44 ID:zbPUBJS6
「もうこんな時間か」

 備え付けの時計は九時過ぎを指している。
 明日も平常勤務なのであまり遅くなるのは避けたい。

「そろそろお開きですかね」
「俺的にはまだまだ余裕だが、子供は寝る時間だからな」

 目に妖しげな光を宿らせ、薄ら笑いを浮かべながら伝票を准尉に差し出す。
 准尉は顔の筋肉をひくひく痙攣させ、代金を見ないように受け取る。


「あ、そうだ。ちょうどカメラがあるから記念に写真でも撮るか」

 外套の中に手を突っ込んでがさこそと探り一つのカメラを取り出す。
 准尉達から見れば古い型だが外交官にしてみれば新しい型なのかもしれない。
 外套からカメラを取り出すという行為はもはや気にしなくなっていた。

「写真なら僕が撮りますけど」
「いいって。俺には写真なんて必要ないし」
「では、わたしもいらないな」

 少女が席に着こうとするが、

「馬鹿言うな。お前が主役だ」
「だな。ナカジマ陸曹、ランスター」
「了解です。陸准尉殿」
「ふっふー。覚悟なさい」

 ギンガが悪戯を企む子供のような笑みで敬礼しティアナが腕まくりの真似をする。

「ちょっと待て。離せ!」

 見事な連携プレーで嫌がる少女を真ん中に、その左右にギンガとティアナ、後ろに准尉と外交官が並ぶ。
 レンズのファインダーを見つめて各々がピースをしたり笑みを向けたりする。
 それを確認した外交官は数回シャッターを切り連動してフラッシュが発生する。

「じゃあ近い内に焼き増しして渡すから」




141 名前:尊ぶべき愚者 十七話 26/27 ◆Ev9yni6HFA :2008/08/21(木) 23:26:30 ID:zbPUBJS6
 写真撮影はある種の合図であり撮影後は自然と解散になる段取りである。
 解散の言い出しっぺである准尉だが一番最初に帰るのは気が引けるな、と周りを窺っている所でそれに気付いた。

 少女が頻繁に肩にかかった後ろ髪は弄りながら忙しない様子だ。

「どうした?」

 そんなに写真撮影が嫌だったのかと思ったがどうも違うようだ。

「趣味で作ったものなんだが……」

 少女がおずおずと差し出したのは十字の形をした銀色のアクセサリーだった。
 数は四つ。
 外交官を除けば人数分ぴったりである。
 大きさ的にイヤリングは厳しいがネックレスには出来そうだ。
 手に取って顔を近付けると細かい装飾が施されているのが確認出来る。

「へえ。ちゃんと女の子っぽい所もあるんだな」
「……どういう意味だろうか?」

 少女は笑顔で、しかしどすの利いた声で准尉に詰め寄る。
 彼女の両目に睨まれると不思議な威圧感がある。
 外交官が言っていた話をあながち冗談と片付けられなくなった。

「いや、なんか老成してるからさ」
「わたしは生まれて九年しか経ってないがな」
「だからそんな九歳児がいるか。なあ?」
「親友の話に出てくる人共々九歳はちょっと無理が……」

 ティアナも同調し、ギンガも目を逸らしている所から推測するに同意見のようだ。
 執務官は何とも言えない顔だが。



142 名前:尊ぶべき愚者 十七話 27/27 ◆Ev9yni6HFA :2008/08/21(木) 23:27:26 ID:zbPUBJS6
「よってたかって・・・・・・」
「怖い顔すんなって。ほら、チョコレートやるから。好きだろ?」
「わたしが好きなのはキャラメルだ」
「だっけ? まあいいや。あって困る事はないだろ」
「・・・・・・もういい。帰る」

 機嫌を損なったのかぷんすかしながら店の引き戸を乱暴に開ける。
 しかし残った三つのアクセサリーもしっかりと准尉に押し付けていた。

「送ろうか?」

 前回と違って暗いので安全に配慮した親切心だったが、

「必要ない」

 あっという間に切り捨てられた。

「また一緒にご飯でも食べましょ」
「気が向いたらな」
「本当素直じゃないわね、あんた」

 つんけんとした態度にティアナも苦笑を浮かべる。




「……あ」

 店の外で少女の姿が見えなくなるまで見送っていた准尉は呆けた声をあげる。

「どうしました?」

 准尉は頭を掻きながら、

「今度も名前教えてもらってないや」

143 名前:尊ぶべき愚者 ◆Ev9yni6HFA :2008/08/21(木) 23:32:02 ID:zbPUBJS6
以上です
このスレでもSSXを手に入れたという報告をちらほら聞きますがこういう時は金も時間もない地方在住者はつらいですな
まあ、自分は3期までで明かされてない部分をオリジナル設定で補完しまくってるので戦々恐々としてますがw

それと司書の方、今更で気が引けるのですが、本作品の八話で
相手は三等海佐で自分は一等陸士。 となっている部分を

相手は三等海佐で自分は陸曹。 に修正をお願いします。


144 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/21(木) 23:50:17 ID:7l2tEjET
外交官の忠告も虚しく、准尉はこの1年半後くらいに見事に遭遇してフルボッコにされる訳ですが。
ってか妹とは普通に仲が良いのに兄貴とは仲悪いのなw


145 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/22(金) 00:31:21 ID:zBA+om0y
>>143
GJです。またも彼女が登場。妹が沢山らしいですが、その中に魔王二世が居るのでしょうか?
初登場の兄貴ですが・・・・誰だろう?

146 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/22(金) 00:44:13 ID:etZT9sma
そうだよな
異世界なのに一年が同じっぽいミッドチルダと地球の方が珍しいよな


>>144
あの兄貴はDQNだしな
それに妹の事を知ってるからこそ兄貴が嫌いなんだろうな
ってか外部の話題は避けようぜ

>>145
短編の「La Divina Commedia」に出てきたルーキフェルか>>144の言う別所のキャラかな、可能性としては


147 名前:亜流:2008/08/22(金) 04:32:38 ID:MoGx7ewI
前スレ>>202です。
「コテなりトリなり〜」という意見を前スレ>>391氏から受けて、コテだけ付けました(トリいらないよね?)
保管の際にはこれでお願いします
>>202 ユーノ×アリサ、>>385 ?×アルト)

<以下チラシの裏>
とりあえずA案グリフィス、B案ユーノで色々妄想してみたものの決定打に欠ける
グリフィスにはフラグが足りない、ユーノには接点が足りない
困ったもんだ

148 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/22(金) 09:01:29 ID:h8/udYdX
ほのぼのしてた写真撮影が嫌なフラグにしか思えない……
ギンガとティアナは生存確定だし准尉はキャラ的に大丈夫そうだが、残りの二人が……

外交官は上手いことフラグ回避したな
納豆にソースかけちゃったけど

149 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/22(金) 10:01:36 ID:i6lNv0Vq
あれ、本人じゃないの?

150 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/22(金) 11:13:31 ID:SkIfUZic
>>147
少なくとも書くのが決定なら、
アナタ本人の名を語呂合わせしたら憎悪の空から魔を断つ剣を呼ぶ偉く尊大な幼女の名に読めてしまったので、
書に近いって事でB案キボンヌ
まぁ保管庫覗いても元ネタになかったカプは結構あるんですけどね

151 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/22(金) 12:54:08 ID:KWqxx7fr
>>147
フラグも接点も作ろうと思えばいくらでも作れるんだから自分が好きな方のキャラでいいと思うよ?
例えばグリフィスの方は失恋の悲しみをさり気なく慰めるとか
ユーノだったら護送任務とか、クラナガンで一人で飲んだくれてたら同様になのはに振られてやさぐれてたユーノと出会い意気投合とか

152 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/22(金) 15:38:41 ID:PBPpjNpm
>>149
何の話?

153 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/22(金) 15:45:15 ID:wHbKFAmU
>>77
シャマルさん、地味にお○さん扱いなのか。

154 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/22(金) 16:06:55 ID:i3YTBBC6
だっておb…あれ、何で腹がケチャップまみれになってるんだ?

155 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/22(金) 16:13:58 ID:mL6bVR1B
そういやシャマルゥだけフィギュア出ないよねwww

156 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/22(金) 17:23:41 ID:sPQ2NK4Z
アルフが妊娠する話を思い付いたんだが、アルフは分娩室で子供を出産できるのだろうか

157 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/22(金) 18:13:09 ID:/ePQNoMV
戦闘機人とかヴォルケンとかは分からんが
使い魔はできるんでね?なんとなくだけど…

158 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/22(金) 18:18:26 ID:qwZ2c3wD
それ以前に妊娠できるのか、という話だが。
いつだったか、使い魔は生殖能力がないとか都築が言ってたみたいなのを見た覚えが。

159 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/22(金) 18:21:55 ID:PGt7L0iL
>>156
設定上は無理だがそんなものはどうとでもなる。
エロパロだし。

160 名前:156:2008/08/22(金) 19:05:53 ID:sPQ2NK4Z
貴重な意見をありがとうございます
エロパロらしくやってみる

161 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/22(金) 19:28:49 ID:Rnx2nive
>使い魔は生殖能力がないとか

そこでロストロギアの出番ですよッッ!!1

>>156
超期待せざるを得ない!
アルフのお相手は誰だか非常に気になるがw

162 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/22(金) 19:53:38 ID:7O8P1zG3
>161
ユーノの体内に今、新たなる生命の脈動が!

163 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/22(金) 19:55:37 ID:qwZ2c3wD
使い魔の場合、生殖能力あっても種族的な意味や遺伝子的な意味で人間との間の子は厳しいか。
まあ、ロストロギアがあるさHAHAHA……
ってどういう理由や必要性があって作られたロストロギアだw

164 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/22(金) 19:56:55 ID:xbUWS6QQ
>>163
使い魔と恋に落ちたマッドなサイエンティストが
子供を生む為に作ったでおkじゃないか?

165 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/22(金) 20:20:10 ID:nPTcT/on
このスレエロパロで一番浮いてるよな
陵辱ネタ全然ないしそれどころかエロすら無いのばっかだし
オリキャラとかまで出して厨二臭いSSしか書いてないのが居て

166 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/22(金) 20:21:51 ID:odbI0Mq3
>>165
じゃあ君が書いてよ

167 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/22(金) 20:25:38 ID:zxaHxZeb
>>165
同感

168 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/22(金) 20:27:01 ID:/KLklGan
>>166
定期的に沸くバカだ
いちいち構わずスルーした方がいいぜ

169 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/22(金) 20:30:12 ID:GeuMcbCf
>>165
つ【ローカルルール】


非エロ連載が多いからそんなイメージ抱くかもしれんが

エロい流れの時も当然あるのよボーヤ

170 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/22(金) 20:33:33 ID:FwipE8wd
使い魔って確か人間だと出来ないんだよな
なのはさんが死んでフェイトさんがなのはさんを使い魔にとか読んでみたいけども
あ、でも使い魔ってなる前となった後じゃ中身はまるで別物なんだっけか
切ない話になりそうだな

171 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/22(金) 20:41:30 ID:jALIjS+C
そういやユーノが死んでなのはさんがユーノ似のフェレットの使い魔つくって
アルハザード目指すのがあったな

172 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/22(金) 20:42:29 ID:i3YTBBC6
とりあえず、お茶でも飲みながらマターリ投下を待とうか
つ旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦

ミルクと角砂糖をたっぷり入れるのがこのスレでの作法……

>>170
2行目。なのはさんが管理局の人体実験でキメラにされて〜って筋で考えたことあるな
ちょっとメモ帳開いt(ry

173 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/22(金) 20:48:52 ID:/otJC2kz
>>171
kwsk

174 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/22(金) 21:15:36 ID:chTQmv8j
>>170
不可能とされている、というだけで確か理由は明言されてないんじゃなかった?
案外「使い魔にする事は出来るが中身は別物になる=死者の復活にはならない」って
だけで普通に術式自体は可能だったりして……凄い欝話が出来そうだ



175 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/22(金) 21:28:13 ID:qwZ2c3wD
人間を使い魔にする、か……生きていても死んだあとでも、どちらにしても人としての尊厳を凌辱する最大級の侮辱だな。
切ないとか通り越して鬱まっしぐらな展開しか思い付かない。

176 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/22(金) 21:31:10 ID:odbI0Mq3
つまり外見だけはそっくりな紛い物ができるのか。
鬱だな・・・

だがsれが(ry

177 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/22(金) 21:45:09 ID:GMFsfXD7
そして使い魔にした張本人はプレシア女史のように暴走するんですね?
わかります。

178 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/22(金) 21:48:28 ID:2j6E8kBt
フェイトそんなら案外幸せに暮らしてそうな気が

179 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/22(金) 21:49:16 ID:mWDdfI/E
>>170
母親と同じ道を辿りそうな気がするんだが…

180 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/22(金) 22:01:54 ID:aUSxx443
>>80
乙です。
色々言われていますが、どうか気を落とされずに。
自分はどのような物語でもかまいません。

181 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/22(金) 22:09:21 ID:/KLklGan
>>172
いつかそれが投下される事を願ってるぜ

182 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/22(金) 22:24:12 ID:cjCA25FL
>>173
◆6BmcNJgox2氏の短編『真の悪魔… 』非エロ の事だと思う。

183 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/22(金) 23:40:08 ID:wHbKFAmU
人間使い魔で一個思いついたネタ

敵の攻撃から死んだ恋人の使い魔を庇って主死亡、
使い魔「あなたが死んだら私まで消えてしまいますよ」
  主「そうだね・・・・・・わかっていたはずなのに、体が動いてしまったよ」

駄目だ、鬱にしかならない。

184 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/22(金) 23:41:11 ID:a6dvX+xk
あれだ
ザフィーラの守護騎士システムが変異しているのを応用して、
アルフも主フェイトに負担を掛けまいと自身のエネルギーは食事などで自分で補えるように……人間に近づけたら生殖機能も(ry
要は書き手次第。
ガンガレ

185 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/22(金) 23:48:23 ID:/ePQNoMV
生殖と聞いて

なのはやはやてが「異世界人と子供って作れるの!?」と言う質問を
シャマル先生にして、一波乱起こる。


ってのを思いついた。

186 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/22(金) 23:50:49 ID:xNmSm27A
前スレ>>571
いまさらですがGJ!!
さすがエロオ・モンデヤル
初めは好感度低かったものの、見事なテクニックで順調に上げてる
ティアエリになってしまうのも時間の問題か

187 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/23(土) 01:29:03 ID:Zn4D1MsK
レイジングハートの人格を飛翔中に落ちた奴からトレースする話あったのが印象深いな
多分人を使い魔にしようとした技術の産物がインテリジェントデバイスって話を使ったんだろうけどなかなか面白かった気がする
いや、いいアイデアで面白かったね、あれは!

188 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/23(土) 01:51:31 ID:Me4eW/Op
今、ようやくStS全話見終わったんだが、一言言わせてくれ。

…………ガリュー、あんまり強くねぇっ!!
いや、ここの某SSの影響で、めちゃくちゃ強いと思いこんでたw

189 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/23(土) 02:19:34 ID:+Iy/Mi6q
>>188
大きな芋虫を想像していたらそれは間違いだっ!

190 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/23(土) 02:29:13 ID:id4zSRJX
>>188
エリオの相手してるところで察しろw

191 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/23(土) 02:55:02 ID:1ym6GX1w
それでもエリオがAAランク相当になるまで成長しないと勝てなかった。
それでもAAランクなのかorz
主はSランクなのに。

192 名前:B・A:2008/08/23(土) 02:58:02 ID:1ym6GX1w
と、大事なこと書くの忘れた。

今からエロいの投下いきます。


注意事項
・エロです
・桃子×リンディの百合(百合の定義はよくわからないけれど、とりあえず女同士です)
・例によって尻ばかりいじめてます
・リンディさん受けや桃子さん攻めが苦手な人はスルーで
・士郎さんのキャラクターが崩壊したかも
・「アーッ」もちょっとだけあります
・一応、前に投下した「高町家の爛れた饗宴」と同じ世界観ですが、未読でも何の問題もありません
・タイトルは「奥様達の爛れた休日」

193 名前:奥様達の爛れた休日@:2008/08/23(土) 02:59:00 ID:1ym6GX1w
締め切った室内に淫靡な水音が響き、冷房が利いているにも関わらずムッとするような熱気が立ち込めている。
向かい合う人物と肌を重ねればそれだけで鼓動が高鳴り、乗り物酔いにも似た眩暈を覚えた。

「はぁ・・・ああ・・・うぅん・・くちゅ・・ちゅぅ・・・」

「うぅ・・うぅん・・・ああぁ・・・・桃子さん、はげしい・・・・・」

室内運動用のエアマットレスの上に押し倒されたリンディは、執拗にキスを迫る桃子の唇から顔を逸らし、いやいやと首を振る。
だが、そんな健気な抵抗は却って桃子の嗜虐心を燃え上がらせるだけであり、熱を帯びたように爛々と輝く両の瞳は舐めるようにリンディの裸体を視姦していく。

「いやぁ・・・・・見ないでぇ・・・・・・」

「どうして? リンディさん、見られるの好きでしょう?」

「ち、ちが・・・・」

「嘘おっしゃい。こんなにエッチな体している癖に。ほら、もうこんなに・・・・・・」

そっとリンディの秘唇を拭った桃子の指は、リンディの愛液で濡れて照明の光を反射している。そして、桃子は嫌がるリンディの唇を怪しく光る指で無理やりこじ開け、
滑らかな咥内を細くしなやかな指先で凌辱していく。

「んぬう・・・・・ううぅ・・・・んんんん・・!!!」

「ほら、ちゃんと舌を絡めて。自分のおつゆでしょう。そう・・・・上手ですよ、リンディさん」

ヌメヌメと怪しく動き回る舌を指先で弄びながら、桃子は悦に染まった頬を緩ませる。
同性すら羨むほどのリンディの巨乳は桃子の体重で潰されて見るも無残な形に変形しており、肌が擦れる度に粘着く汗が不快感を醸し出す。
だが、同性同士で体を重ねるというアブノーマルな状況に酔った桃子はそんな不快感など気にならず、まるで玩具の木馬で遊ぶ子どものように体を上下させて
厭らしく形を変えるリンディの乳房を堪能する。

「本当、羨ましい・・・・・・・私もこれくらい大きければあの人も喜ぶだろうなぁ・・・・」

「桃子さんだって、十分・・・・・」

「あら、それは皮肉ですか? そんなこと言う人にはお仕置きですよぉ」

無邪気に囁いた桃子はリンディの口を蹂躙していた指を引き抜き、愛液で濡れそぼった股間へと指を伸ばした。
女のツボを知り尽くした桃子の愛撫ですっかり発情してしまったリンディの媚肉はまるで別の生き物のようにヒクついており、
透明な粘液が壊れた水道管のように止めどなく漏れている。だが、桃子は自己主張を繰り返す秘唇に目もくれずにその先にある慎ましやかな菊門に指を添え、
皺の数を数えるようにゆっくりと淵をなぞっていく。

「ひやぁっ!」

「リンディさん、こっちの方が感じるんでしたよね?」

「うぅ・・ああ・・・や・・ちがうの・・・・ちがうんです・・・・・」

「亡くなったご主人に調教されて、おケツの方が感じちゃう変態さんなんですよね」

耳元で囁きながら、桃子はヒクつく菊門に指をねじ込んで焦らすように入り口付近を愛撫する。
それだけで軽い絶頂に達したのか、リンディの口から何とも言えない色っぽい悲鳴が漏れた。

194 名前:奥様達の爛れた休日A:2008/08/23(土) 02:59:46 ID:1ym6GX1w
「ほらぁ、言わなきゃいじめてあげませんよ」

「あぁん・・・あぁ・・・ああ・・・・」

「ほら、言った方が楽ですよ」

腸内を指で擦りながら、桃子はぷっくらと膨れてリンディの乳首に噛みついた。
真っ赤に充血した乳首はえも言えぬ快楽をリンディの脳へと伝え、反射的に収縮した括約筋が桃子の細い指を痛いくらい締めつけた。

「あああぁぁっ・・ああぁっ・・・・・」

「ほら、言って!」

「い、言いますぅ・・・・私ぃ・・・お尻の方が・・・好きなんですぅ・・・・・」

「違いますよ。おケツで感じる変態未亡人、でしょ?」

「そうですぅ。おケツで感じる変態なんですぅ。一日中発情しっ放しの色狂いなんです! 
だからぁ・・・もっと、もっと穿ってぇ・・・・リンディのケツ穴、閉じなくなるまで穿ってぇ!!」

何十人もの部下を従えている女提督とは思えぬ言葉を吐き、浅ましい雌の本性を露にしたリンディは、両手で臀部を割って必死に懇願する。
既に目の焦点は合っておらず、もつれた舌がだらしなく唇から顔を覗かせている。直腸を弄る桃子の指は秘唇から垂れた愛液でぐっしょりと濡れており、
収縮する腸壁はまるで誘いこむように指を咥えて放さなかった。

「ふふっ、よく言えましたね。それじゃ、ご褒美ですよ」

そう言って桃子が取りだしたのは、常軌を逸しているとしか思えない極太のディルドーであった。太さはボディビルダーの腕ほどあり、
男性器を模した両端にはビッシリとゴム製の突起がふじつぼのように生えていた。それを桃子は易々と自分の秘唇で咥えこむと、
もう片方の先端をパクパクと開閉を繰り返すリンディの菊門へと宛がった。

「力を抜いてくださいね、結構きますよ、これ」

にこりと微笑み、桃子はリンディの体を引き寄せる。瞬間、強烈な異物感がリンディの直腸を襲い、突起で擦られる感覚にリンディの脳がスパークする。

「ああぁぁ、ぐああああたたあぁぁぁぁぁぁっ!!!」

余りのショックに呼吸ができず、白眼をむいたリンディが助けを求めて腕を伸ばす。
その手を優しく掴んだリンディは、更に腰をくねらせてディルドーを直腸深くまで押し込み、ゆっくりと腰をグラインドさせていく。

「ああぁ・・ま、まって・・・・い、いき・・・・・息ができ・・・ああぁっ!!」

「あああぁん・・・ほらぁ、パックリいってますよぉ・・・・リンディさん・・・・・こんなに深く咥えこんで、やらしいぃ・・・・・」

「あまぁ・・・あああ・まっ・・・だめえ・・・おケツ・・・・ケツでかんじ・・・・あぁっ! あああん・・・ううああぁ・・・・あぁぁぁっ!!!」

限界まで伸びきった尻の粘膜が極太ディルドーを咥えこみ、全身が沸騰してしまったかのような錯覚を覚える。お互いの秘唇から零れる愛液はディルドーの根元まで伝い、
桃子は盛りのついた動物のようにじゅぶじゅぶと淫猥な音を漏らす腰を前後させ、アナルの快感に震えるリンディを犯していく。

「あぁぁん・・・うあん・・・ああん・・ああああぁぁっ!」

「いい? 気持ち良い、リンディさん?」

「いいぃ・・・も、もっとぉ・・・もっとしてぇ・・・・」

「それじゃ、体位を変えましょうか」

秘唇からディルドーを引き抜き、桃子はリンディに四つん這いの姿勢を取らせる。
そして、自身も同じ態勢を取ると、今度は肛門にディルドーを挿入し、互いのお尻を突き合わせる格好になるように体の位置を調節する。


195 名前:奥様達の爛れた休日B:2008/08/23(土) 03:00:28 ID:1ym6GX1w
「ふふっ、これでお揃いですね」

「み、見えないのが、ちょっと怖いわ・・・・・」

「前に美由希と試したんだけど、これはかなりきますよ。リンディさん、耐えられるかしら?」

その言葉の意味を嫌という程思い知ったのは、桃子が腰を動かし始めてからだった。

「ああぁぁ、いあやぁぁっ、深いぃぃっっ!!」

「ほら、気持ちよくなりたかったら腰を振って! もっと強く・・・ああ、そう、くるぅっ! ぶっといのがゴリゴリくるぅっ!!」

お互いにお尻をぶつけあうため、普通にピストン運動をするよりもより深くディルドーが侵入してくるのである。
しかも、ぶつけた反動でディルドーが大きく抜けてしまうので、快感を貪りたければそれに負けじと腰を振る必要があるため、
自然と動きは激しくなり、互いの臀部をぶつけ合う厭らしい音が響き渡ることになった。

「はあ・・あああぁっ、おケツ良いわぁ! こんなに、こんなに感じるなんて、知らなかったぁぁっ!」

「ね、ねぇ・・桃子さんもおケツ仲間よぉっ! 一緒にアナルアクメ決めましょ・・・・あぁっ、ひああ・・・ふか・・・ふかいぃっ!」

「もっと、もっと抉って・・・腰を上げてぇっ!」

「抜けるぅっ! 腰が抜けるぅっ! だめぇぇ、もっと気持ちよくなりた・・ああぁぁっ!!」

結合部が壊れてしまうのではないかというくらいねじ曲がったディルドーは腸液をまき散らしながら2人の直腸を抉り、みっともない嬌声を上げて2人はよがり狂う。
そして、一際深くディルドーの先端が腸壁を擦り上げ、2人の艶めかしいうなじが海老のように反り返ると、ほぼ同時に2人の視界は桃色の光で染め上げられた。

「あああぁぁぁぁぁぁっ!! イクゥッ、いくううううううううっ!!!」

「ももこさぁん、ああぁ、私も、私もいきますうぅぅぅぅっ!!!」

全身の毛穴が開いてどっと汗が吹き出し、股間から潮を吹かせながら2人は絶頂へと達した。
目も眩むほどのオルガズムに全身が痙攣し、激しかった腰の動きが見る影もなく衰えていく。
やがて、2人がエアマットレスの上にぐったりと倒れ込むと、極太ディルドーがゴロンと抜け落ち、みっともなく広がったままの肛門から白い湯気が立ち上った。








                                 おわり









196 名前:奥様達の爛れた休日C:2008/08/23(土) 03:03:50 ID:1ym6GX1w
おまけ







一方その頃、クロノ・ハラオウンは人生最大のピンチを迎えていた。

「ふっふっふっ・・・・・ようやく追いつめたよ、クロノ君」

桃子とリンディが女同士でよろしくやっている最中、クロノは何故か士郎に羽交い絞めにされていた。
もちろん必死で抵抗したが、数々の修羅場を潜り抜けてきたクロノといえどまだ15歳、潜った修羅場も鍛練に費やした時間も士郎も敵うべくもなかった。

「あの、冗談ですよね?」

「冗談なものか。前々から君のことは目をつけていたんだ。その引き締まった体、想像しただけでも果ててしまいそうだ。ほら、もうこんなになっているんだよ」

そう言ってさっきからしきりに尻の谷間に擦りつけてくる士郎の肉棒は固く勃起しており、大きさもクロノのそれより遙かに大きい。
だが、同性愛の気はこれっぽっちもないクロノからすればその感触は不快極まりなく、反動で体を拘束する腕を無理やり引き剥がして半ば転がるように士郎から距離を取り、
駆け出しながら助けを呼ぼうと懐から携帯電話を取りだして適当な番号を呼び出した。

『・・・・・・クロノ?』

「フェイトか? そこになのははいるか!? 大至急・・・・・」

『あぁぁん。だめぇ、なのはぁ・・・・今・・電話中・・・・クロノに聞かれちゃ・・・・・うぁ・・わきぃ・・・腋はだめぇ・・・・・・』

「無駄だよ、フェイトちゃんは既になのはの手中に堕ちている」

自信満々に告げる士郎が廊下の角からにゅっと姿を現す。
ならばと通話を切り、別の番号を急いで呼び出す。数コールかかった後、その人物は電話に出た。

『は、はい・・・・』

「ユーノか、今すぐ助けに・・・・・」

『美由希さぁん・・・・で、でんわぁ・・・電話してますから・・・ああぁん・・・かわぁ、皮がめくれ・・・・僕の包茎チンポめくれて・・・・あぁっん!!』

「淫獣、お前もか!」

怒りに任せて携帯電話を投げ捨て、クロノは玄関へと急ぐ。だが、いったい如何なる手品を使用したのか、次の瞬間には行く手を遮るように玄関の前で立ち塞がっており、
クロノはすぐ横の角を曲がることを余儀なくされる。だが、その先は突き当りとなっており、他に隠れられるような場所も見当たらなかった。

「ば、万事休す・・・・・・・」

「大丈夫だよ、痛くしないから」

音もなく背後に忍び寄ってきた士郎がクロノを拘束し、履いているズボンを無理やり脱がす。
いつの間に脱いだのか士郎の下半身は外気に晒されており、きつく反り返った肉棒がクロノの肛門を前にしてびくびくと上下運動を繰り返している。

「し、士郎さん・・・・・」

「安心しなさい、御神の剣士は二刀流なんだ」

「い、意味がわか・・ああ、あたって・・・・ちょっ・・だめぇ、だあぁ、アーッ!!」

                                                                   今度こそおわり

197 名前:B・A:2008/08/23(土) 03:04:44 ID:1ym6GX1w
以上です。
前々から書こうと思っていた熟女2人がアナル連結くんずほぐれつ。
夏も終盤だというのに未だ僕の脳みそ海綿体のようです。

198 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/23(土) 03:13:03 ID:zlxHyGqm
乙。高町家が全員Sな件wwwww
やはりそういう血なのか

199 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/23(土) 10:05:10 ID:Me4eW/Op
>>・・・・・うぁ・・わきぃ・・・腋はだめぇ・・・・・・

これでごはん三杯いけました。GJ

200 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/23(土) 12:03:54 ID:bZz9adi9
>>安心しなさい、御神の剣士は二刀流なんだ
またこのフレーズかよwww!
ぜひとも次にやる時にも入れて欲しい

201 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/23(土) 12:16:01 ID:+eiZVfiB
GJwwww!!
バカばっかだ(いい意味でww


202 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/23(土) 13:36:55 ID:TL0uvVhP
淫乱人妻GJ!!!

やっぱ未亡人は最高だぜ!!

203 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/23(土) 14:07:13 ID:2oBSVXM7
GJでしたw
高町一家にハラオウン一家が蹂躙されとるww

>脳ミソ海綿体
脳ミソくすぐっちゃうよ♪

204 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/23(土) 14:20:57 ID:0Y++tyF/
>『美由希さぁん・・・・で、でんわぁ・・・電話してますから・・・ああぁん・・・かわぁ、皮がめくれ・・・・僕の包茎チンポめくれて・・・・あぁっん!!』
これで4杯はいけます

205 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/23(土) 16:10:26 ID:O8Op69sE
GJ!これはいいアナル連結www
熟女やっぱエロくていいすよね

>>204
俺も5杯くらい行けます^^

206 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/23(土) 20:13:54 ID:spzj3Xo1
最近という訳じゃないが別にこのスレじゃなくてもいいだろうって作品が増えたな
非エロの長編とか

207 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/23(土) 20:33:18 ID:9a31wjJg
パロの字が見えてないようだな。

208 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/23(土) 20:44:09 ID:/lhkaEk+
またいつもの反非エロ君か?
毎度毎度一人でご苦労様
早く夏終わらないかなー

209 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/23(土) 20:45:51 ID:IiH3MJRs
残念ながら去年の秋冬あたりにも出没してたような

210 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/23(土) 20:48:34 ID:2NcFQekF
まあ、別の所に行った方がいいかもな
>>165>>206みたいなのの相手は疲れるだろうから

211 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/23(土) 20:50:40 ID:C47us5dg
このスレはずっと前から非エロの長編ばかりでやってきた
いちいち文句言う奴に構わないでスルーしとけ

212 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/23(土) 21:04:08 ID:IiH3MJRs
まあ、ちょうどB・A氏がすぐ上でエロいお話投下してらっしゃるが、
あれだな、同じ人がかいたSSでもエロありとなしではコメに違いを感じるというか。
連載中の非エロバトルSSのほうが長文コメ多いし、遅レスでもレスつけてるひと多いよなぁ
埋めネタで分類されてたが、非エロメインでここに来る層って実際かなり多そうな気がする

213 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/23(土) 21:11:21 ID:Xib0dlV3
長編でエロ入れるのは大変なんですよ、多分

214 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/23(土) 21:12:23 ID:1orjo3dq
単純に面白ければエロなんかあってもなくてもいいやって人が多いんじゃね?

215 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/23(土) 21:18:58 ID:6LYlm0O+
>>213
確かに短編はエロ、長編は非エロの割合が高い気がする。

216 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/23(土) 21:29:00 ID:kEaR1y8o
ここはエロを投下する場所じゃなくて、エロであろうと投下できる場所ですよ。
本来主役に思えるエロが、ローカルルールで特殊嗜好扱いからも分かること。

217 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/23(土) 22:03:21 ID:ZOF8UQDl
非エロからはじまるエロパロもある!
雑談からエロ展開もあることだし


してアルフ妊娠騒動はまだですか?

218 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/23(土) 22:17:51 ID:mxL0XGni
>>215
長編のエロもあったよ

219 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/23(土) 22:22:45 ID:9jVEMVGS
>>213
エロを書くのが大変、のほうが正しいと思う
特に一人称形式の場合、作者自身の経験も重要になってくる

220 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/23(土) 22:23:28 ID:IiH3MJRs
>>216
ローカルルールのそれはそういう意図ではなかったと思うんだが・・・


さて、ぬるぽ氏の新作を全裸待機しとくか

221 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/23(土) 22:33:50 ID:runRrmkS
>>219
いいじゃないか、魔法少女のSSを魔法使いが書いたって

222 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/23(土) 22:38:04 ID:hhZrRxN/
>>216
ローカルルールのそれは、
このスレが過疎スレだった頃の名残です

223 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/23(土) 22:39:58 ID:9jVEMVGS
>>221
っ「風俗」

224 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/23(土) 22:49:02 ID:/lhkaEk+
もうこの妙な流れいい加減にしてくれよ
投下こないかな

225 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/23(土) 22:53:07 ID:xrhou9iW
「闇の書」事件時に、はやてと一緒に家に帰るところを管理局員の一人に発見され、
それが元で脅されて、(性的な意味で)酷い目に合わされるヴィータ・・・・・


って電波を1ヶ月前くらいから受信してるんだが・・・・・・誰か受け取ってくれよ、この電波

226 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/23(土) 23:00:54 ID:hhZrRxN/
>>224
受信だけでなく送信せねば!

227 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/23(土) 23:01:31 ID:Zn4D1MsK
>>225
受信したのお前かよw
誰かが発信したのを受けたお前が書きなさいよww

228 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/23(土) 23:01:48 ID:hhZrRxN/
安価ミスだすまん

229 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/23(土) 23:06:54 ID:xrog8IX3
壊れたラジオかよw

230 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/23(土) 23:33:48 ID:Xib0dlV3
最近ヴィータがにゃんにゃんしたりされたりするの無いなぁ

231 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/23(土) 23:57:01 ID:XN3piwiI
ヴィータなら俺の隣でシャマルとにゃんにゃんしてるぜ
さっきから混ざろうと何度もトライしてるんだがそのたびに心臓をわしづかみにされるような痛みが胸にくるんだが

これは…恋…?

232 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/24(日) 00:15:37 ID:akNjWzUF
変だろ、常識的に考えて・・・・
ヴィータはリィンとアギトとにゃんにゃんだろ

233 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/24(日) 00:54:03 ID:DR4SFZUQ
そこでエロオ君ですよ。
エロオ君ならキャロと一緒にヴィータも相手して……。

おっと誰か来たみたいだ

234 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/24(日) 01:16:37 ID:0+DaBu1J
だれか徹底的に言葉責めをするヴィータのSSを書いてくれ
教導官資格を取ったと聞いてから某軍曹の如く罵倒してくるヴィータの電波が止まらないんだ

235 名前:野狗 ◆gaqfQ/QUaU :2008/08/24(日) 01:35:40 ID:Qwe791rn
 寝る前に投下行きます。
 エイミィ×フェイト
 ……のつもりだったんだよなぁ(遠い目) 

 一応エロですよ。

 あぼんは鳥かコテで。
 総レス数は8


236 名前:野狗 ◆gaqfQ/QUaU :2008/08/24(日) 01:36:15 ID:Qwe791rn
       1

 どうせもう、エイミィ・ハラオウンになることは決まっているのだ。外部には漏れていないけれど、リンディもクロノもその腹づもりになっている。
 それに、元「幼なじみの姉的存在」としてはどちらにしろ勝手知ったる家である。特に案内を請うまでもなく入り込んでも、誰も文句は言えない。
 というわけで、エイミィの前には軽くいびきをかきながら寝こけているクロノ。
 玄関のチャイムを押しても誰も出てこないと言うことは、クロノ以外誰もいないと言うことで。
 合い鍵で鍵を開けたエイミィを咎める者も誰もいない。
 リンディやフェイトはまだしも、アルフの気配もない。まあアルフのことだ、子犬モードになってフェイトの学校の周りをうろうろしているのだろう。

「クロノくーん、エイミィだよぉ」

 当然返事はない。昨日、というより今朝、艦長研修から帰ってきたばかりなのだ。ぐっすりと寝ているのだ。エイミィが耳元でささやくくらいで起きるわけもない。

「おーい。クロノくーん。早く起きないと、いたずらしちゃうよ?」

 掛けられている毛布を引っぺがすと、パジャマどころか全裸で寝ている。多分、シャワーでも浴びて疲れ切ったまま眠ったのだろう。

「風邪引いちゃうよ、ホンットにだらしないんだから」

 といいつつ、エイミィの視線は一点集中。疲れて眠っているはずなのに、妙に元気そうなクロノのとある部分へと。
 あらあら、なんて言いつつ、エイミィの手がとある部分へと伸びる。
 痛くない程度にしっかり握ったりつねったり。あるいはさすったり撫でてみたり。弄んで反応を確かめる。
 無意識の本能か、むくむくと大きくなるそれを、エイミィは苦笑とともに眺めている。その目がほんの少し、楽しげに揺れる。

「寝ててもこうなるんだねぇ。クロノくん、むっつりスケベだもんなぁ」

 クロノの謹厳実直はかなりの部分がポーズだということを、エイミィは知っている。事実、エイミィと婚約してから身体を重ね始めると、呆れるほどにクロノは性欲旺盛なのだ。
 禁欲的な性格だと思っていたのは、単に「婚前交渉はいけない」という、強迫観念にも似た道徳観念だったらしい。
婚約者なのだから構わない、というエイミィの説得に負けたその夜から、クロノは鬼畜ロノに変身している。
 もちろん、鬼畜とは言っても双方合意のハードプレイというだけで不法なものでは一切ない。その辺りは腐っても管理局のエースである。
 
「こんなに大きくなるんだもんなぁ…」

 しみじみと言いながら、クロノのペニスを扱いていると、なんとなく背後に人の気配を感じた。
 慌てて振り向くと、金髪の義妹さんが、クエスチョンマークを顔面中に貼り付けてこちらを見ている。

「エイミィ……お兄ちゃんに何してるの?」
「フェイト…ちゃん? いたの?」
「うん。いたよ」
「いつから?」
「ずっと、いたよ?」
「さっき玄関のチャイムを鳴らしたんだけど…」
「あ、多分、音楽を聴いていてヘッドフォンつけてたから」

 フェイトの視線を追ったエイミィは、自分がまだクロノのペニスを握っていることに気づいた。
 なんか癪なので、そのまま扱き続けることにする。


237 名前:野狗 ◆gaqfQ/QUaU :2008/08/24(日) 01:36:48 ID:Qwe791rn
          2

 フェイトの目は、純粋に疑問の目だ。あと、驚愕。
 不純なものは一切ない。

「もしかして、あの、あれかな」
「アレって?」
「ユーノに聞いたことがあるんだけど…」

 ユーノ!? エイミィは驚いた。ここでユーノの名前が出てくるのは予想外である。ユーノとフェイトはそういう関係だったのだろうか。
 ユーノの相手はなのはではなかったのだろうか?

「引きこもりって言う人が、トイレに行かずにペットボトルの中におしっこを貯めておくって」

 それは貯めているのではない。単なる極端な出不精、あるいは廃ゲーマーである。

「あ、でも、エイミィ、ペットボトルは持ってないよね」

 何かが哀しくてクロノが自宅で引きこもるのか、というかユーノはやってるのか。無限書庫でそういうことをしているのか。

「あのね、フェイトちゃん」

 エイミィは決めた。フェイトだってもう子供ではない。この管理外世界ではいざ知らず、ミッドチルダでは立派な大人なのだ。
 知識として性行為を知っていておかしくはない。
 それに、内々の話とはいえ自分とクロノの結婚のことだってフェイトは知っているのだ。夫婦になる二人が性行為をして何が悪いのか。

「これはね、私がクロノ君と、強引にしようとしてたわけで…」
「何を?」
「何をって…………フェイトちゃん、私が手に持ってるものなーんだ?」
「おちんちん」
「……あっさり答えるのね」
「おちんちんはおちんちんだから」
「うん。それは正しい。別に間違ってはないんだけど…ま、いいか。とにかく、私が持っているものを見れば私が何をしようとしていたかわからない?」
「…でも、エイミィはペットボトルを持ってないよ?」
「あのねえ、排尿から離れてくれるかな」
「違うの?」
「違うの」
「まさか……排便?」
「違うっ!」

238 名前:野狗 ◆gaqfQ/QUaU :2008/08/24(日) 01:37:22 ID:Qwe791rn
        3

「セックスだよ」

 言ってしまった。できればあからさまな言葉は避けたかったのだけれど、こうなっては仕方がない。遠回しではこの未来の義妹は理解してくれないのだから。

「エイミィ」
「なに?」
「嘘は駄目。正直に言って」
「いや、嘘じゃないよ? そんな凄い嘘つかないって」
「私だって、セックスくらい知っているんだよ」

 経験ではなく、知識としてなんだろうな、とエイミィは思う。もし経験として知っているのなら、相手の男は明日には凍らされて虚数空間に放り込まれることになるだろう。
 いや、相手によっては………………

「おかしいね。どうしちゃったのかな。恋愛は自由なはずだよね……クロノ君、ちょっと頭冷やそうか…」

 それは怖い。もしそうだったらノータッチが賢明だろう。
 しかし、フェイトの言葉はエイミィの想像を超えていて…

「セックスは男性の性器を女性の性器に挿入することなんだよ?」
「うん。知ってる」
「エイミィ、何の準備もしてないよ?」

 言われてみれば、なるほど今日の自分はパンツルック。もちろん脱ぐどころかボタンも外してない。このままでは結合は無理だ。
 って、ちょっと待て。
 フェイトの言うことは間違いではないけれど何かがおかしい。短絡的すぎる。というか、一部分だけしか知らない気配。
 挿入だけって、それではセックスと言うよりまるっきり交尾………。
 交尾?

「フェイトちゃん、それって誰に教えてもらったのかな」
「アルフだけど」

 うん。それは交尾だ。というかアルフ、少し考えなさい。そしてケモノ型でしかやってないのか、アルフ。
 相手が誰だか知らないけれど………………って、はやてのところの犬がいた。
 ああ、間違いなく交尾だね。うん、交尾だよ。 

239 名前:野狗 ◆gaqfQ/QUaU :2008/08/24(日) 01:37:55 ID:Qwe791rn
       4

「えっとね、フェイトちゃん、それはちょっと違う。いや、間違ってはないんだけど、それはセックスの一部分だけだよ」
「一……部分?」
「そうだよ。挿入する前にいろいろとやらなきゃならないことがたくさんあるんだよ?」
「そうなの?」
「そうそう。例えば……胸とか、身体のいろんな場所に触ったり」
「身体に?」

 自分の身体を見下ろして、不思議そうにフェイトは首をかしげている。
 どうもエイミィの言うことが今ひとつわかりにくいらしい。

「それを前戯って言うんだけど、前戯をしておくと、挿入がうまくいきやすいの。つまり、準備なんだよ」
「うまくいきやすく…?」
「フェイトちゃん、想像してみて、誰かに触られている自分を」
「え、なんだか気持ち悪いよ」
「じゃあ、なのはちゃんで」
「……あン…そこ……なのは…」
「早っ!」
「なのは、駄目だよ…そんなところ……アリサが見てるよ…」
「って、どこ!? その想像の場所はどこ!?」
「すずかも見てる……はやてだっているのに……あン」
「って学校でやってるの!? フェイトちゃん、ソニックフォーム見たときから思ってたんだけど、やっぱり露出癖ある?」

 そのままどこかへ行ってしまいそうなフェイトを止めて、エイミィは話の続きを始める。

「それで、今身体はどんな感じ?」
「なんだか、ぼうっとして」
「そっか。フェイトちゃんは、なのはちゃんに触られるとそうなっちゃうんだ? なのはちゃんのこと、そんなに好きなんだ」

 真っ赤になってうなずくフェイトに、エイミィの中で何かがプチンと切れる。

「それで、なのはちゃんじゃないと駄目なのかな?」
「え?」
「なのはちゃん以外にも、好きな子はいるよね?」
「なのは、以外?」
「例えば、はやてちゃんのこと、嫌い?」
「え。嫌いじゃないけど…」
「アリサちゃんや、すずかちゃんは?」
「嫌いじゃないけど、でも、なのはとは…」
「私だと、どうかな?」
「エイミィ?」
「挿入の前にやらなきゃならないこと、お姉さんが教えてあげるね」

240 名前:野狗 ◆gaqfQ/QUaU :2008/08/24(日) 01:38:39 ID:Qwe791rn
    5

 自分の部屋に連れて行かれ、フェイトはベッドの上に身体を横たえられた。
 何故か、逆らおうという気が起きない。それどころか、これから起こることを待っている自分にフェイトは気づいていた。
 時折狂おしいほどに訪れる想い。なのはの手を握ったとき、抱きついたとき、身体の中に流れる電流のような心地よさ。
そのままいつまでも、暖かくて柔らかいなのはを抱いていたいという想い。
いつまでも抱かれていたい、いい匂いのするなのはの腕の中にいつまでも抱かれていたいという想い。
 そしてそれとは別に、年上の女性として、義兄の婚約者として、実の姉のような存在として慕っていたエイミィに抱きしめられようとしている自分。

「フェイトちゃんが本当に嫌なら、無理強いはしないけれど」

 嫌だ、とは言えなかった。
 クロノにはっきりと物を言う姿を見るたびに、アースラで自分の部署を守る姿を見るたびに、憧れていた相手なのだ。
 自分にはないものを持った人。自分にはできない、己をはっきりと出すことのできる人。
 自分がこうなりたいという理想の一つを持った人。

「嫌…じゃないよ……」
「うん。それ聞いて安心した」
「エイミィに教えてもらえるなら、安心だよ」

 フェイトの微笑みに、エイミィは思わず顔を赤らめる。
 ちょっとしたきわどいジョークのつもりだった。それがいつの間にか抜き差しならないところまで踏み込んでいる。
 いや、今なら、回避はできるのだろう。
 回避、したいのなら。
 自分は回避したいのだろうか。エイミィは改めてフェイトの姿を見る。
 どこに出しても愛らしいと呼ばれるだろう子供。あと数年もすれば、どんな次元世界でも人目を引かずにはおかない美人になるだろう。その意味では、エイミィは軽い嫉妬を覚える。
 触れるだけで壊れてしまいそうな儚い雰囲気を漂わせてはいるが、本当は強い子。誰よりも強く、そして誰よりも脆い子。
 自分とは違う世界に住んでいるのではないだろうかと疑ってしまうような、妖精のような少女。
 この子の中に、自分の証を残したい。エイミィは唐突にそう感じていた。
 それなら、奪ってしまえばいい。証を残せないのなら、刻みつけてしまえばいい。初めての相手として。たとえ、どんな相手と巡り会おうとも、初めての相手は自分。
 今なら、この子は自分を受け入れてくるほどに未熟なのだ。未熟さ故の軽率で、この子は自分を受け入れようとしている。乗ずるのは、悪いことだろうか?
 否、とエイミィの中の何かが答える。

「うん。教えてあげるよフェイトちゃん」

 唇を優しく合わせる。舌を優しく、しかし断固とこじいれながらフェイトの唇を無理矢理に開き、まだ子供特有の甘さの残る口内をあまねく蹂躙する。
 強制ではあるがあくまでも優しさを失わない感触に、フェイトの抵抗は薄い。一瞬の本能的な嫌悪感さえ、エイミィへの信頼と言うことで自ら押さえ込んでいるようだった。

241 名前:野狗 ◆gaqfQ/QUaU :2008/08/24(日) 01:39:13 ID:Qwe791rn
       6

 クロノが好き。リンディが好き。そして、エイミィが好き。だから、こんな事をされても構わない。
 だって、好きな人だから。大切な人だから。
 フェイトは、エイミィの舌が自らの舌に絡むのを感じながら、自分に言い聞かせていた。
 意識が口内に向いている隙にブラウスのボタンが外され、冷たい外気が肌に直接当たる。最近付け始めたばかりのブラは優しく奪われ、震えるピンクの乳首がさらけ出されていた。

「本当、悔しいくらい可愛いよ、フェイトちゃん」

 エイミィの手がフェイトの両脇に触れた。
 くすぐったい、と反射的に身を固くするが、予想に反してその感覚はくすぐりではなかった。いや、くすぐりには近い。近いけれど、何か違う。
 エイミィの指の動きが何か別のものを伝えてきているのだ。
 じんわりと、まるでカイロを当てているような暖かさが広がっていく。それに伴う心地よさ。そして、力が抜けていくような感覚。

「そっか、ここがフェイトちゃんの感じる場所なんだ」

 ひゃう、とまるで冷たい氷を突然押しつけられたときのような声をフェイトはあげる。冷たいものではない、温かいものがいきなり脇の辺りに押しつけられたのだ。
 視界にはエイミィの頭。見えるのは、舌を伸ばして胸の横、脇の下を舐めている姿。

「エイミィ、だめ、そんなところ舐めちゃ……ひぅっ……」
「ふふーん、本当に嫌なら、エイミィさんの頭を押しのけてみなさい?」

 舌を止めると、唇でついばむようにして脇から胸元へと移動し、小さな乳首をくわえる。その動きに合わせるように、フェイトは切ない喘ぎを漏らす。
 喘ぎが終わらない間に、エイミィの指は反対側の脇から胸を弄ぶように滑っていた。
 右と左、舌と指。交互に、あるいは同時にフェイトの柔らかい身体をついばみ、滑り、くわえる。そのたびにフェイトの唇からは異なる喘ぎが。
 楽器だ。とフェイトは連想した。
 自分は今、エイミィに演奏されている楽器なんだ。身体中をいじくられては、エイミィの望む声をあげる楽器なんだ。そして楽器でいることはなんて心地いいのだろう。
 演奏される自分。そして演奏者は……。
 フェイトの脳裏には自然となのはの姿が浮かぶ。
 なのはの笑顔を思い浮かべた瞬間、唇を当てられたすべての箇所がまるで熱を加えられているかのように熱くなっていく。その熱は一点を深く穿ち、フェイトの中へと入ってくるのだ。
 より高く声があがる。
 楽器を演奏して欲しい。もっと滑らかに。もっと強く。もっと早く。もっと乱れるように。壊れるほどに演奏されたい。狂おしいほど艶めかしく。叫ぶほど絶頂の頂に。
 フェイトは、無意識にエイミィに抱きついていた。
 その唇をエイミィがふさぐ。
 
「……これ以上はやめよう」
「エイミィ?」
「フェイトちゃん、今、なのはちゃんのこと考えてたでしょう?」
「ご、ごめんなさい!」
「ううん、いいよ。フェイトちゃんの気持ち、わかるから」

242 名前:野狗 ◆gaqfQ/QUaU :2008/08/24(日) 01:39:47 ID:Qwe791rn
     7

「いつか本当に好きな人にしてもらえたら、もっと気持ちいいはずだよ」

 エイミィはベッドを降りると、フェイトに服を手渡す。そして自らも衣服を整え始めていた。

「こっちこそ、ごめんね」
「あの、エイミィ……」
「なにかな?」
「その……勉強に……なったよ」

 あ、と口をぽっかり開けて、ついでエイミィは笑い出す。

「うん、それなら良かった。本当に良かった」










 そのころ、クロノの部屋では。
 途中から目が覚めていたけれど、動くに動けなくてされるがままになっていたクロノが起き出していた。

「エイミィ……生殺しのまま放置か……勘弁してくれ……ここまでされたら収まるものも収まらないだろ…」

 仕方なく、自分で自分を慰め始めるクロノであった…… 

243 名前:野狗 ◆gaqfQ/QUaU :2008/08/24(日) 01:40:25 ID:Qwe791rn
     8

 X年後……
 某所……

「えっとね、キャロ、それはちょっと違う。いや、間違ってはないんだけど、それはセックスの一部分だけだよ」
「一……部分?」
「そうだよ。挿入する前にいろいろとやらなきゃならないことがたくさんあるんだよ?」
「そうなんですか?」
「そうそう。例えば……胸とか、身体のいろんな場所に触ったり」
「身体に?」

 自分の身体を見下ろして、不思議そうにキャロは首をかしげている。
 どうもフェイトの言うことが今ひとつわかりにくいらしい。

「それを前戯って言うんだけど、前戯をしておくと、挿入がうまくいきやすいの。つまり、準備なんだよ」
「うまくいきやすく…?」
「キャロ、想像してみて、誰かに触られている自分を」
「え、なんだか気持ち悪いよ」
「じゃあ、エリオ」
「……んーー……」
「もしかして、ルーテシア?」
「……あン…そこ……ルーちゃん…」
「早っ!」
「ルーちゃん、駄目だよ…そんなところ……アギトが見てるよ…」
「って、どこ!? その想像の場所はどこ!?」
「ガリューも見てる……フリードだっているのに……あン」

 そのころエリオの部屋では…(以下略)


244 名前:野狗 ◆gaqfQ/QUaU :2008/08/24(日) 01:40:57 ID:Qwe791rn
 以上です。お粗末様でした。

245 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/24(日) 02:09:34 ID:/zwifqQK
ちょwwwwwwwwwwwwwwww

エリオォォォ。・゚・(ノД`)・゚・。

246 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/24(日) 02:30:25 ID:0+DaBu1J
>>244GJ!
>>245
大丈夫だ。この場合エリオはクロノの立ち位置
つまり……わかるな?

247 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/24(日) 02:58:09 ID:fGtUu6tD
>>244 GJ!
>>246
( ゚д゚)ハッ! つまり、そういうことなんですね?!

248 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/24(日) 07:22:57 ID:fbfJ+O7D
そこはルーテシアといたしてるほうが修羅場っていい感じだろw

249 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/24(日) 17:56:45 ID:xttSr0Wi
>>244
GJ!キャロwwwww
実に良い性教育でした

250 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/24(日) 20:21:19 ID:3yAJH2gH
ここで一句。

エイミィさん また旦那とは やれずじまい

251 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/24(日) 20:33:25 ID:kx+pngHz
ふと電波を受信したんだが、スカって地底ミサイルつくれそうじゃないか?

252 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/24(日) 20:39:40 ID:VO3PNhtd
それよりもレリック沢山あるんだから、
エリック弾頭ミサイルでも作れよ。気化爆弾くらいの威力はある。

253 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/24(日) 20:40:57 ID:VO3PNhtd
ごめん、レリックね。

254 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/24(日) 20:58:00 ID:u7A9I4aB
エリックって誰だよw

255 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/24(日) 21:01:41 ID:CevFzm+l
>254
エリオとクアットロの子供かもね

256 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/24(日) 21:04:25 ID:CZ18BdME
エリック・・・レリックの真ん中にエリオの顔がついているレリック想像しちまったw

257 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/24(日) 21:04:46 ID:1JXZynRJ
>>254
フェイトのお見合い相手がそんな名前だったSSを思い出した

258 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/24(日) 21:12:59 ID:dhvW4LEa
このお、ちょんちょん!

259 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/24(日) 21:33:14 ID:X8y/deXk
>>258
広川太一郎乙

260 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/24(日) 21:35:49 ID:KYofuUyM
>>257
ああ、あいつは結構良かったな。

261 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/25(月) 01:47:56 ID:x5xMxub1
一日投下がなかったか……
ここでは珍しいな

262 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/25(月) 03:53:33 ID:Sg9usUqj
大量投下の予感・・・・・

263 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/25(月) 11:40:13 ID:6hsQwRu4
もう夏休みが終わるから、宿題でもしてんじゃね?

264 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/25(月) 12:01:19 ID:kCEMI7iE
このスレには高校生はいない筈だけどな

265 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/25(月) 12:13:01 ID:iP3Fi/2/
高校の頃夏休みに宿題あった?
ところでギン姉はザッフィを犬扱いしてんのか
最初は犬扱いしてたのにいつの間にか形勢逆転してる電波を受け取ったぜ

266 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/25(月) 13:05:05 ID:X/hWeFb5
大学生はボチボチ夏休みだろうから、これからに少し期待

267 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/25(月) 13:20:30 ID:YTvX7RZv
無限に生み出すことはできるけど制御ができないって設定があるから
イクスを発見したマリアージュたちが暴走してそのまま陵辱って展開ネタを希望する

268 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/25(月) 13:26:37 ID:kcugMJFS
しかし冥王って聖王に比べて味方にすると使いにくい能力だよな

269 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/25(月) 14:04:56 ID:w6i27ws0
>>267
それはひょっとしてSSXネタかい……
一般発売を待つ地方民の自分としては出来ればネタバレな話題は遠慮して
ほしかったりほしくなかったり……
いや、勿論俺に貴方の発言を制限する権利がないのはわかっているんだ
ただSSXネタのSSなら注意書きに書いてもらえればスルーできるが、
雑談の中に突然ネタバレが来ると回避しきれないんだ……
じゃあ一般発売するまでスレに来るな、と言われたら言い返す言葉はない


270 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/25(月) 17:01:41 ID:FLNxEakP
ネタバレして>>269たんを虐めたいよー

271 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/25(月) 17:10:36 ID:w6i27ws0
>>270
そんな事よりもっとエロい事を考えようぜ……ギンザフィ読みたい……


272 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/25(月) 17:14:02 ID:9Y28Xaya
>>271
ギンザフィよりもザフィヴィヴィだろ。

273 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/25(月) 17:15:09 ID:6hsQwRu4
ザンギエフ?

274 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/25(月) 17:24:30 ID:w6i27ws0
>>272
ザフィヴィヴィでも構わない、ザフィがメインのSSならば……
こういうリク的な事を書くと『自分で書け』っていう人もいそうだけど、
個人的に書く楽しさと読む楽しさはイコールじゃないのよね。
ぶっちゃけた話自分で書いたエロSSじゃ抜けなあwせdrftgyふじこ


275 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/25(月) 17:30:44 ID:NNacKeyb
ヴィヴィオの学校入学にともない、親馬鹿っぷりを発揮したザフィが同年代の男の子に変身して
一緒に入学するのですね、わかります。
ショタザフィが可愛く思えてきた

276 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/25(月) 17:34:31 ID:6TL1gm0T
1本書けたんで、17:40頃から投下します

277 名前:276:2008/08/25(月) 17:46:06 ID:6TL1gm0T
んでは投下します。
ただ、初めて投下するんで投下に手間取ったり改行が見苦しかったりするかもしれません。
何卒ご容赦ください。

▽注意事項▽
・ティアナ主人公の話
・今回はエリ×ティア
・前後編の前編で今回は微エロ
・ティアナに生えます。要はふたなry 苦手な人は回れ右で。
・NGワードは276でお願いします。

278 名前:276:2008/08/25(月) 17:49:10 ID:6TL1gm0T
「どうしよう……」

 ティアナ・ランスターは悩んでいた。今回の悩みは敬愛する教導官に撃墜されたことや
、凡人である自分の才能といった仕事がらみではない。また、青毛のパートナーのこと
が好きなのかもしれない自分の心について悶々とするような悩みでもない。肉体的な悩
みなのだ。

「どうしよう……」

 同じセリフを吐きながら姿見の前に立つ。医務室に備え付けられている大きな鏡に映っ
た、生まれたままの自分の姿。今は下ろしているオレンジ色の髪も、自分では気に入って
いる目も、誰かに揉まれ続けたせいで大きくなった胸も、いつもと変わらない。そこから下
に目をやる。わりと引き締まったお腹。鍛えているわりに細くてちょっと嬉しかったりする太腿。
そして……

「どうしよう……」

 三度目は溜息と共に。股の間にあるモノに目がいくと、どうしても溜息が出てしまう。普通
の女の子にはないソレが、今のティアナの大きな悩み。
大きさは手で握ってちょっと先が見える程度。最初見たときはもっと小さかったが今は大きく
なっているそれ。実際に見るのは、幼かった頃に兄と一緒に入ったお風呂以来だろうか。元々
自分の体についていないはずのそれからは違和感しか覚えられない。

「はぁ……」

 もう何度目になるか分からない溜息をつきながら、ティアナはこうなった原因について思いを
はせていた。




279 名前:276:2008/08/25(月) 17:51:56 ID:6TL1gm0T

 JS事件が解決してから3ヶ月ほど経ったある日のこと、機動六課フォワード陣はとある任務に
ついていた。内容はロストロギア密輸組織の摘発。地上本部がおとり捜査の結果組織を逮捕で
きる段階になったので、古代遺失管理部に所属する六課に協力を要請したのだ。ロストロギア
が暴走したときに封印処理が可能な高ランク魔導師がいるうえ、JS事件を解決した奇跡の部隊
が出てくることで他の犯罪組織への抑止力になる、ということも背景にはあったらしい。そんな
わけで、フォワードチームの4人は取引現場の廃棄区画に来ていた。

「予定時刻まで5分をきったわ。みんな、もう一度確認するわよ?」

 建物の影に隠れつつ、ティアナが周りのメンバーに告げる。今回のメンバーはフォワード4人
とヴィータ、シグナム両副隊長の計6人。隊長2人はそれぞれの任務のため来ていない。ただ、
ロストロギアの特性は分かっていないものの犯罪組織自体はたいしたことないらしく、事態が悪
化しない限りフォワードチームだけで対処することが決まっていた。

「敵組織とおとり役の人が接触。そのあと陸士部隊の人たちが突入するからそれと同時に建物に
突入。あたしとエリオが逮捕。キャロがロストロギアの確保でティアはそれのフォローだよね?」
「そうよ。最優先はロストロギアの確保だから、万が一キャロが危なくなったら頼むわね? スバ
ル、エリオ」
「はいっ!」
「任せといて!」
「キャロは封印に集中、周りはあたしが見るから」
「お願いします」
「さぁ、はりきっていくわよ!」

 突入後、次々捕まっていく組織の人間を尻目に、ティアナとキャロは放置されたロストロギアの
封印に取り掛かっていた。ロストロギアは、床から1メートルほどの高さをふわふわと浮いている。
見た目はまるで真珠で出来たサッカーボールのよう。キラキラ輝く様子に、思わず見惚れそうにな
ってしまうティアナだが慌てて首を振って思考を切り替える。
いまのところ暴走する気配は感じられないから、このままでもどうやら大丈夫なようだ。

「それじゃあキャロ、さっさとやっちゃうわよ」
「わかりました、ティアさん」

 念のための封印処理をキャロに任せて、周囲を見回す。今の状況はこちらが完全に優位だ。ス
バルとエリオのおかげもあって、犯罪者集団のほとんどはお縄についている。残った数人もあてずっ
ぽうに射撃魔法を撃っているだけで、こちらにはほとんど影響なし。思っていたよりも楽な仕事にな
りそうね。
 そんなことを考えていたティアナに突然声がかかる。

「ティアさん!」
「なっ!!?」

 背後からのキャロの声に慌てて振り返る。見ればロストロギアが暴走し始めていた。
さっきまで安定していたはずが、いまは眩しいくらい紅く輝いている。
少々気の抜けていたティアナは、想定外の事態に体がほんの一瞬止まってしまい、そして……

「きゃあっ!?」
「ティアーっ!!」

 ロストロギアから発射された光線が直撃する。薄れていく意識の中、誰かの叫び声を耳にしながらティ
アナはそのまま倒れてしまった。




280 名前:276:2008/08/25(月) 17:54:25 ID:6TL1gm0T

 そこから先はティアナにとっては後から聞いた話になる。
 ロストロギア暴走の原因は、敵魔導士の射撃魔法の命中。光線を受けて倒れたティアナはすぐさま
シグナムが地上本部の医務課へ運び、ロストロギアはヴィータが封印を施して事なきを得たそうだ。
ティアナについては検査終了後も目覚めていなかったが、魔力的な観点からは異常が見当たらず医
務官として優秀なシャマルもいる機動六課の医務室へと移送された。
 目が覚めてからシャマルに聞かされたのは大体そのような話だった。そして最後に、ロストロギア
がもたらした結果についても教えてもらった。

「なっ、なんなんですかっ、これは!!!?」

 ティアナが聞かされたこと。それは、自分は男のモノも女のモノもあるふたなりになった、というこ
とだった。確かに見てみると、普段の自分に無かったものがコンニチハをしている。

「さっき、異常はなかったって言っていたじゃないですか」
「そうよ。魔力的にはね。でも肉体には異常が出てしまったのよ。大丈夫、一過性らしいからそのう
ち消えてなくなるわ」
「一過性ってどれくらいなんですか?」
「それは……」

 言葉を濁すシャマルに、ティアナは絶望的な気分になる。普段から気丈なティアナだが流石に今回の
ことは相当堪えた。

「そうですか……」
「医務課のデータベースから過去に同じような症例がないかどうか調べたんだけど見つからなくって。
いまは無限書庫に依頼を出しているの。わたしが見たところ数年以内には元に戻ると思うんだけど……」

 返ってきた数年という答えに途方にくれそうになる。ティアナだって思春期真っ最中の女の子。その股間
にあんなものがずっとぶら下がっているなんて。自分の将来、お先真っ暗ではないか。

「とにかく明日もう一度詳しい検査を受けてもらうことになるから。それと今日はどうする? 自分の部屋に
戻っても良いけど?」
「今日はここに居させてください。あと、他のみんなにはこのことは……」

 まだ心の整理がついてない今、みんなやあの子に会って笑える自信がない。しかも、このことは万一
にも知られるわけにはいかない。隠し方も考えないと。ティアナは何とか冷静に考えようとするがどうにも
まとまらない。さっき起きたばかりなのにとても眠たいせいだからだろう。一度寝て、それから考え直すべき
だと決めた。

「分かったわ。隊長たちには知らせないといけないけど、他の子には黙っておくし、部屋にも入れないよう
にしておくから」
「ありがとうございます。」
「わたしはこの部屋にいるから何かあれば遠慮なく言ってね。お休み、ティアナ」

 眠そうなティアナを気遣いシャマルはカーテンを閉めてそっと立ち去った。





281 名前:276:2008/08/25(月) 17:57:28 ID:6TL1gm0T

 それがほんの2時間ほど前の話。今ティアナは鏡の前で自分の一物を見ながら溜息を吐いている。
ちなみにシャマルは部屋におらず、“無限書庫に行ってきます”との書置きが残してあった。彼女も
ティアナのために何とかしようとしてくれているのを感じて、ちょっと嬉しい。

「でも、コレどうしたらいいんだろう?」

 ティアナ・ランスター16歳、性に関してはかなり疎い。基本的に人付き合いが苦手なため、六課
に来るまで猥談をするような機会などほとんどなかった。来てからもたまにスバルやアルトたちとする
くらい。だから知っているのはそこでの会話や、たまにスバルが買ってくる雑誌を見て得た程度の知
識だった。
 鏡を使って自身の股間で反り返っているそれを見る。目が覚めてからずっとこの大きさだ。手触り
は普通だがとても熱く、腰の奥のほうにはなんとも言えない疼きが感じられた。ちょっとドキドキする。
その形は爬虫類の頭のような、キノコのような、不思議な形。

「……それにしてもヘンな形よねぇ」

 思わずボソッと呟いてしまった。とりあえず最初に見たサイズに戻したいのだが、どうすれば良い
か分からない。だからといって何もしないってままでは進まない。まずは第一歩。ティアナはそっと
自分のペニスをつかむ。上のほうは不思議な柔らかさ、肉とはどこか違う弾力性のある感触。一度
手を離し、続いて根元よりちょっと上の部分を握る。こちらは表面の皮の部分がふにふにとしていた。
しかもさっき触った部分と比べるとずっと硬くて熱い。

「んっ……」

 きゅっ、きゅっと握ると変な気分になってしまい思わず声が漏れる。ティアナは今までにもその感覚は
味わったことがあった。同室のスバルも寝いった深夜、どうしようもなく切なくなった体を慰めているとき
の感覚。あれとよく似ている。だが、握る力を強めたり弱めたりしても、得られる快感はいつもよりも
断然少ない。

「……はぁっ、誰かに聞いたほうが良いのかな?」

 自分が今までしていた行為については理解している。それがおおっぴらには聞けないことだということも。
それでもティアナは、自分の持つペニスから得られる快感をもっと知りたかった。六課の知り合い、男性陣
や年上の女性のなかで教えてくれそうな人を探す。シャマル先生はいない。ヴァイスさんやグリフィスさん、
男の人たちから聞くのも躊躇われるし、アルトさんだと根掘り葉掘り聞かれそうだ。ルキノさんやアイナさん
なら聞けなくもないが、万が一自分の体の秘密がばれてしまうのも嫌。

「やっぱり、なのはさんたちに聞こう」

 こうなると頼りになるのは隊長たちしかいない。あの人たちなら知識や経験もあるだろうし、何か良いアド
バイスももらえるかもしれない。
 そう思うとティアナは入院着を着ると、医務室から出て行った。部屋から出れば他の誰かと会うかもしれな
い。そんなことなどまったく考えてもいなかった。





282 名前:276:2008/08/25(月) 18:00:06 ID:6TL1gm0T

 うす暗い廊下を隊長たちのプライベートルームに向かって歩く。一度破壊されて再建された六課の
建物では、「私たちにはもう予算がありません、これからは省エネの時代や!」という部隊長の号令
の下、電灯の数が半分になったり、空調の温度が下がったりと経費削減が掲げられていた。魔法を
使った発電でも、その使用料は案外馬鹿にならないらしい。
 ところどころ電灯のない廊下を歩く道すがら、ティアナは体の異常を感じていた。体がさっきから熱
い。一歩歩みを進めるたびに、倍は熱くなっている気がする。歩みも段々と遅くなってきていて、今で
は壁に手をつきながら一歩一歩ゆっくり進むしかなくなっている。そして、頭の中を占めるのはそんな
体に影響されてか、この体を早く何とかして欲しい。静めてもらえるなら早く静めて欲しい。そんな期待
と欲望にあふれた気持ち、ただそれだけ。だから周りのことなど気にしない。なんとか歩いてもう少し
で隊長室というところで、

「ティアさん!」

 突然後ろから声をかけられた。ビクッと体が反応する。恐る恐る振り返ると、

「やっぱりティアさんだ。もう体は大丈夫なんですか?」

 フォワード随一の速さを誇る槍使い、エリオ・モンディアルがそこにはいた。

「エリオ…… あんた、どうしてここに……?」
「自主練をしてていまシャワーから上がったところです。ティアさんこそ体は大丈夫なんですか?シャマル
先生が2日間は面会禁止で絶対安静っておっしゃってましたけど」

 シャマル先生気を利かせすぎだ、とティアナは心の中で悪態をつくがいまさらどうしようもない。とにか
く嘘でも言って気をそらそうとするが頭の中はほかのことでいっぱい。それにティアナは嘘が苦手だ。スラ
スラ出てくるはずも無く口ごもる。
 だがふと心の中にひとつの考えが浮かんだ。

「ねぇ、エリオ。あんたは秘密守れる?」
「えっ? どうしたんですか急に……」
「いいから! 守れるの、守れないの、どっちなの!?」

 突然怒り出すティアナにエリオは驚くが、ティアナ自身も自分の言葉に面食らう。思っていた以上に心の
中では焦っているようだ。

「……わかりました。秘密は守ります。けど、秘密って何ですか?」
「ちょっとこっちに来なさい」

 そう言うや否やエリオの手をつかみ、来た道を戻る。どうでもいいことだが、握ったエリオの手は思ってい
たものよりも大きかった。




283 名前:276:2008/08/25(月) 18:07:52 ID:6TL1gm0T
とりあえずここまで。微百合注意って書くの忘れてました。スイマセン。
ぶっちゃけ頭の中は、ミスらないように落とすのでいっぱいいっぱい。だからタイトルもまだ考えてなかったりorz
後編はまた後日っつうことで。

最後になりましたが、今回の作品は26-111氏の"小さな騎士"、y=ー( ゚д゚)・∵. ターンA氏のエリオシリーズみ影響を受けました。
謹んでお礼申し上げます。

284 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/25(月) 19:35:02 ID:qi1INFXN
>>283
エリティアということはエリオがふたティアを攻めるのかな
普通はティアに押し倒されてアッーな展開予想してたけど…
後編に期待。GJ!

285 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/25(月) 19:54:38 ID:FLNxEakP
ふたなり化させるロストロギアなんて
ホント科学が発展した世界の文化は地獄だぜ!フゥハハハーハァー

286 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/25(月) 20:10:29 ID:b4zJ0jnB
♪心を忘れた科学には地獄の夢しか生まれない〜♪

287 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/25(月) 20:40:16 ID:dtj5wXjz
>>283
GJ!
このノリなら今度ティアなのの百合エロとかも見たいな
しかし初投下かー、最近新しい職人さんきてなかったし歓迎だぜ
後編待ってます

288 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/25(月) 21:54:53 ID:X4/nsik2
>>283
GJ。続きも楽しみにしているぜ

ただ、どうしてもエリオ逃げてーー!ってフレーズしか浮かばねえw

289 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/25(月) 23:27:31 ID:VEroaV17
他スレの話題で恐縮だが、スパロボスレのリョウト×ふたなりヴィレッタを思い出したのは多分俺だけ…だと思う

何が言いたいかというとだ、エリオにヒィヒィ言わされるティアナの痴態を今から期待してますよ、っと。GJ!

290 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/25(月) 23:41:48 ID:P2FFp39O
初めにエリオが入れてそのあと ティア「 こいつをどう思う?」エリオ「すごく大きいです」 ですねわかります

291 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/25(月) 23:43:33 ID:NNacKeyb
幻術使って3Pって電波が来たぜ!
ただ、幻術は実体がないからな・・・

292 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/25(月) 23:53:42 ID:4puHSpUR
つ「出し入れ自由な誘導弾」


あ、さおじゃないって?

293 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/25(月) 23:58:19 ID:0sLUgSI+
GJ!
もはやエリオが襲われる展開が鮮明にでてしまう
でもその想像を超えてることをwktkしながら待っている

294 名前:y=ー( ゚д゚)・∵. ターンA:2008/08/26(火) 00:07:59 ID:lzfDSOIc
おひさしぶりです、誰も無ければ投下します

ゼスト×トーレ
短編
エロあり

295 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/26(火) 00:08:42 ID:9Y28Xaya
即時投下を!!

296 名前:y=ー( ゚д゚)・∵. ターンA:2008/08/26(火) 00:10:46 ID:lzfDSOIc
居心地の良い場所




JS事件からどれほどの月日が流れたのだろう

トーレはうっすらと目を開けた、視線だけ動かす
また床に座り込んだまま眠っていたらしい、体の各部をチェックする
問題は無い、人間のように簡単に硬直するような筋肉の作りではない、彼女の体は戦うためのみを目的に作られたのだ
が、それでも連中や妹達は体を大事にしろと連日煩い、まったくどいつもこいつもおせっかいだ…

独居房用のベッドを見つめる、粗雑に扱われていたわけでは無い、その洗ったばかりの清潔なシーツは
管理局の彼女らに対する扱いが公正である事を物語っている

「………」

戦闘用機人の中でも自分は特にこういう性分らしい
柔らかで居心地の良い場所よりも、冷たく硬い場所に安らぎを覚えてしまう
人間にしても好みがそうだ、同じく捕らえられたナンバーズであったが
個々の反応は明らかに差があった

未だに恭順の意思を示さないドクター、などには共感を感じる
管理局の奴らが言うようにただ洗脳されていたわけではない、自分の意思だ、とトーレは今でも思っている
かたくなな態度で彼ら差し伸べる手をを拒み続けるウーノの気持ちも良く解るし
ある意味、あのクアットロにでさえ共感する部分があったのだ、まったくあの意外な頑固さは新たな発見だった

トーレは当初、あの子なら作り愛想でもして一番に出て行くのだろうと思ったのだが、事実は未だに房の中だ
不器用なのは私と何ら変わらなかった、と言えば怒るだろうか
あの子クアは、それとも嘲笑うだろうか…微妙なところだな…そう思い苦笑した

…だが、だからと言って新しい世界に出て行った他の妹達の事がが嫌いなわけではなかった
ただあの子達は素直に人の親切に心を許せない自分にとってはいささかながら眩しかったのだ


そう今までは

『トーレさん面会の方がおいでになられました』


「……」

頭上から声が降ってきた、トーレは返事をしなかった

数分後

カツン、カツン、小さな足音が近づいてくる、そして彼女の独房の前で止まった

「…どういう風の吹き回しですか?」
「…ああ、悪いな、どうも他に身元の保障を頼めそうな人が他に居なかったのでな」

済まないと思っている、そう言うとトーレは紫の髪を揺らして立ち上がり鋼鉄の境目に近づいた
今でも身に纏うのはあの頃と同じ戦闘用ボディスーツだ
対する女性は小柄な体に白いコートを羽織っていた、今は戦闘用ではない



297 名前:y=ー( ゚д゚)・∵. ターンA:2008/08/26(火) 00:12:32 ID:lzfDSOIc
「今更とは…言いませんが、何故また…急に」

チンクは当惑したように片の目で姉の表情を見上げた、正直姉の心境の変化は嬉しくはあるが
一方で今まで何度翻意を促してもまるで意思を変えなかった姉である
それゆえに警戒感もある、トーレの性格からすると表面を取り付くろいとりあえず出所した後
刹那的な破壊行動、もしくは元6課のメンバーに対しての復讐
…と言うのは考えにくいのではあるが
連絡を受け、突然出たいと言いだした彼女の目的をつかみかねていた

「ああ…」

トーレは穏やかな目で体をさすった

「ちょっと忘れていた事を思し出した、いや思い『出さされた』…かな…」
「……? 『された』」

チンクは聞き直した、外部との接触だろうか…制限されているはずだが…
トーレは伸びをした

「ああ、相当おせっかいな男だったよ…死んだ後までな…」

普段は無口なくせにな…、きゅっきゅっと手をさする姉を
チンクは怪訝そうな目で見つめていた








「あっ……はっ……ぁあっ!…」
トーレは逞しいその背中に爪を立てた

一瞬彼女の中のものが膨張したのが解った、と同時に自分も絶頂に達した

「うっ…ぐっ…!!…」

ドクン、びゅるびゅると熱いものが膣内にほとばしりトーレは呻いた
快感であるのか苦痛であるのか彼女本人にも不分明だった

「うぅっ…うっ…はっ…はっ…」

苦しそうに身じろぎするトーレのあごが上げられた、逞しくごつい男のあごに比べれば
トーレのそれは華奢ですらある

「…んふ…んっ…………」

ぴちゃ、くちゅ

男の舌は熱く蠢き、トーレの舌と絡みトーレはぼうっとした頭で考えた
(らしく…ないな)
普段男まさりで前線で妹達を叱咤する自分からは考えられない痴態
背も高く、トーレは自分を『女』として意識する事などなかった
いや無意識に避けていたのかもしれない
ウーノのような知的で優雅なわけでもない、ドゥーエのような男が皆振り向くような魅惑も無い
そんなコンプレックスから



298 名前:y=ー( ゚д゚)・∵. ターンA:2008/08/26(火) 00:14:03 ID:lzfDSOIc
「あっ!…」

トーレの中のものが再び硬さを増した、どっ、とうつ伏せにされると
後ろから貫かれ喘いだ

だが
この男、ゼストの腕に抱かれた時、そんなコンプレックスはどこかに行ってしまっていた
岩のように大きな肉体、丸太のような腕、太い腰の筋肉
彼女の水準よりかなり高い体を軽々と体重など無いかのように扱い
トーレは少女になったようだった、そして獣のように激しく犯された
体の中心を熱い鉄の棒が暴れまわるような感覚に酔った

「騎士…ゼ…スト…」

ああ!
ひときわ激しく腰がうちつけられ再度熱い白濁を最奥に感じてトーレは白い体を逸らせた






いつからこうなったのか
確かドクターに最初は単独で勝手な行動ばかりするゼストの監視を命じられたのだったか

それがトーレの生来の戦闘に対する興味から、ついこのSランク騎士に手合わせを申し出
そして負けた
何度も負けた、何度も何度も、何度挑んでも
話にならないぐらい彼女とぜストの間には実力に開きがあった、そして訓練を願い出るたび
打ち倒され、ついにゼストに手当てされる事も多くなった

それが男女の関係を持つようになるまでに
さほど時間はいらなかった


「騎士ゼスト…」

トーレはオーガズムの余韻の残る火照った体をゼストの逞しい胸に背をあずけていた
彼の体も灼熱の溶岩のように熱い
だが不快ではない、背にゼストの心音を感じる
彼にも自分の鼓動が聞こえるだろう、太い腕がトーレにかけられていた

「…ん?」
ゼストは声を漏らした、トーレが自分の掌を取り、そっと胸の辺りに当てている
豊満で弾力性に富む、グローブのような大きな手のゼストでも『揉み応え』のある見事な大きさ胸だと言える
それでいて上を向いても形の崩れない
ゼストはチャラチャラした軽い女よりも
トーレのような飾りの無い性格の女性が好きだったし均整の取れた肉付きのよい肉体も好きであった

トーレがいつか自嘲的に「自分は女らしくない、そのような魅力が無い」などと言った
ゼストは一笑に付して
無言で、その体に直接諭した、『お前の体は充分男にとって魅力的である』
ととりわけ自分のような不器用な男にとっては

299 名前:y=ー( ゚д゚)・∵. ターンA:2008/08/26(火) 00:19:35 ID:lzfDSOIc
「騎士ゼスト…」

トーレはゼストの掌を自分の胸に導いた
ゼストはされるがままに任せた、トーレの掌がゼストの掌に重ねられている

「…ゼスト…ゼスト…私は…この…大きな胸が嫌いでした…」
「…………」

ゼストは唐突なトーレの言葉を黙って聞いた、いちいち返事を必要とする類の話ではなさそうだ
たまにこんな事がある、トーレは妹達の手前もあり内に秘めている思いも多いのだ、それがゆえふいに口をつき
独り言のように噴出して話始める事がある
今までは言う相手もいなかったのだろう、相手に選ばれたのは光栄な事だ
言葉に耳を傾ける


「…私はこの無駄に大きなな乳房…が戦闘の邪魔になるたびにドクターに願い出ました…
 『いっそこの邪魔なものを取り払って欲しい』とドクターはいつも笑って却下されました…
              『トーレ、君も大事な私の母体の一つなのだよ』と…」


「………」
「ドクターが…もし死亡なされた場合…」

トーレはとつとつとゼストにスカリエッティの秘密を打ち明けた
あるいはこれはゼストの身の上は知っていたし危険な事かもしれない

だがこれをゼストに聞かせていいのかという迷いより彼女がゼストに話したい衝動が勝っていた
また、おそらく自分はドクターのバックアップとしての重要度は最底辺であろう事
ドクターの想定している『母体』としての候補はウーノ姉かクアットロ辺りであろう事があった

前線で戦う彼女は姉妹の中でも保存先としては危険が多く、破損の可能性が高かったことも手伝った
つまり、…もしこれでゼストに討たれてもドクターにとって私は大した損害ではない




「…だから、ドクターの言う事が形式に過ぎないのが解りました、だからそれからも…ずっと
 依然として私はこの胸が嫌いでした…私がこの胸の機能を『使用』できる日は永遠にこない事が解っていましたから…
  必要の無い…」
ぁっ…

知らず知らず、自嘲的に沈んでいたトーレは小さく声を上げた
ゼストがトーレの胸を柔らかく包みゆっくりとリズミカルに揉み、、乳首を軽く摘んだ

「ぅっ……あの…ゼ…スト」
「…が少なくとも今は役に立っている…少しは好きになれたか?」

しばらくゼストが面白そうに乳房を弄ぶのをトーレは黙って耐えていたが
ふいに振り向きゼストを見上げた、視線が合う、ぴたりとゼストの手の動きが止まった
「貴方は…?」

ゼストはこの男にしては珍しく少しばかり「…む」と言葉を詰まらせた、やがて咳払いするかのように答えた

「…ああ好きだぞ」
トーレは微笑んだ

「…はい、だから今は「これ」を少しだけ好きになれました…だから、たくさん使用して下さいね…無駄にならないように」
「ああ…そうだな…では無駄にならないようにしよう…」

二人は唇を重ねた

300 名前:y=ー( ゚д゚)・∵. ターンA:2008/08/26(火) 00:21:49 ID:lzfDSOIc
「…で…では…その…」

チンクは絶句して姉を見つめた
トーレはチンクを見て、済ました顔でお腹に手を当てた

「ああ…私も迂闊だったんだが…どうもこの中にあの男が居るらしい、先日検査で解った」

まったく親子揃って無口だ、居るなら居るで何とか言えばいいのだが、とか
どうやらドクターが生きてる場合避妊機能は働かないようだな、などとぶつぶつとと言っている

絶句しているチンクがようやく
「…あ…その…何と言うか…おめ、おめでとう…ございます…申し…申し遅れましたが…」
と言った

くっ…
それを見てトーレは噴出し、くくくと耐えかねたように大きく笑い出した、先ほどまで沈みがちに見えた人物とは思えない
やがて笑いを収めると
憑き物が落ちたようなすっきりしたような顔で、ああ、とまたお腹の辺りを撫でた
チンクもまじまじと珍しそうに、未だ妊娠の兆候が外見からは解らない姉の腹部を見た

「で、…まぁそんなわけだ…そういうわけならいつまでも引き篭もっている訳にもいくまい…
  どうやら私は『母』になったらしい、ここの機能も使う事になりそうだ…」

と胸をぽんぽんと叩いた、形のよい大きな胸がぷるんと揺れる、一瞬チンクは微妙な顔つきになったがトーレはそれには気が付かなかった









「ではよろしく手続きを頼む」

「あ、…いや、はい…では早速ゲンヤ殿から所管の…いや…あっ…いや先に病院の手続きが…い、いや…しかし」
チンクはあたふたと軽くパニくっている

これから忙しくなるだろう、トーレはまるで関心の無かった事なので妊婦に対する知識は皆無だった
本を買って、それからセミナーを受けるよう、ギンガだったか…指導教官どのにも面倒をかける事になるだろう
他にもたくさん…む、と、ふと気が付いた

「ん…お前はもう少しそこに居てもいいぞ、聞くところによると…生涯で一番居心地が良い場所だそうだからな」


小さな騎士どの、とトーレは少し笑って付け加えた

トーレは自分のお腹の中で小さなゼストがむっつりと頷いたように見えた

ああ、気の済むまでそこにそこに居るがいい、いざとなれば私が引っ張り出してやるから

鉄格子を見た


私は出よう、もうここから…




おわり

301 名前:y=ー( ゚д゚)・∵. ターンA:2008/08/26(火) 00:26:28 ID:lzfDSOIc
おわび、エリオ隊長が書けませんでした、すいません
(いや書こうと努力はしたんですが書いても書いてもゴミ箱行き…いつか書きます)
えーこのままだと全部放り出しそうなのでリハビリのつもりで書きました
言い忘れましたが原作準拠です、では失礼しました

302 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/26(火) 00:41:43 ID:pu4wxCKh
いやすばらしい。乙女で女なトーレさんは是非見てみたかった物の一つでした
やはりこういう男勝りな女性が女の子をしてるとギャップがあっていいですな

次は二番で純愛物を希望してみたり……

303 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/26(火) 00:44:22 ID:veQZDYT+
GJ!!です。
かなり良かったです。
生まれてくる子供はISを引き継いで高速戦闘ができる槍使いになるのだろうかw
情事をするのはルー子がスカ博士に調整してもらっているときと妄想すると、ちょっと台無しになるwww


304 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/26(火) 00:45:17 ID:GPfvRjAq
おおう! トーレの姉貴のエロとはなんと貴重な!! GJですたい!!!

シロクジラ氏の純愛バトルエロも素晴らしいが、この姉貴も素晴らしい。
このままナンバーズにもっと活躍(無論性的な)が与えられると嬉しいっすね。

305 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/26(火) 01:35:22 ID:RMVUnJOc
>>301
よしわかった。
リハビリは済んだな?では次こそエリオ隊長だ。

いや、ぶっちゃけユーノ教授とキャロの遺跡探検活劇でもいいんですが><

306 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/26(火) 02:00:38 ID:Y8XAZ4J4
ゼスト!
貴様ァァーー!!
お腹の中の子を残して
勝手に死ぬんじゃねええええええ。・゚・(ノД`)・゚・。

チンクに続いてトーレとはやられたぜw
しかもエロGJ!おっぱい星人には耐えられません!!


んで、ターン氏の偉業(?)からこういう展開を思いついた。

・最終決戦前
ウーノ「実直な人……嫌いではありませんよ?」
ドゥーエ「貴方、本当にからかいがいのある人ねぇ」
クアットロ「ここをこうしますとですねぇ〜……ほ〜ら、またおっきくなりましたわ♪」
セイン「んッ、私のお腹の奥に、ディープダイバーしてます」
セッテ「騎士ゼスト、貴方に勝つにはこの方法がもっとも効率が良いと、え、演算結果が……あァッ!」
オットー「お願いします!ディードと一緒に!!」
ノーヴェ「ゼストのことか?べ、別に好き……でもなんだ、この脈拍は!?」
ディエチ「来てぇ!貴方のイノーメスカノンで私の子宮に頂戴!!」
ウェンディ「あはは〜♪こんなキモチイイのクセになるッス!一日中してたいッスよ〜」
ディード「オットーと同じようにッッ――で、出てます!熱くて濃いのお腹の中にビュクビュク出てます!!」


・最終決戦中
スカ「フッ、たとえ私が捕まっても、ナンバーズ全員の胎内にはすでにゼストの子が宿っているだ。
   プロジェクトFの応用技術を用いて、約半年後には元気な赤ちゃんが産まれてくる。
   知らなかったのか?
   旧暦時代の権力者の間では、このように自身の予備を準備するのは常識。
   しかも私よりも健康かつ戦闘力に優れた騎士ゼストの血を引いてるのだ!!
   さぞや恐るべき人間兵器になるに違いない、クククッ」

フェイト「そんな!下手に危害を加えれば、彼女たちの中の赤ちゃんに悪い胎教になってしまう!」
はやて「あかん……手が出せん!おのれスカリエッティ。なんちゅうヒドイ手段をつかうんや!!」

ゼスト「……頼む。いろんな意味で私に止めを刺してくれorz」


そうそう、エリオ隊長は気長に待ってるから焦らんでいいぞ。



307 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/26(火) 11:46:28 ID:5W3tC00q
>>306
ディエチが明らかに別人じゃねえかwwwwwwwww

308 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/26(火) 12:46:34 ID:mx5qgti6
GJ!
ゼストさん、アンタはちゃんと生きて責任をとるべきだったよ…
なのに最終的には…

私はエリオのごとくをお待ちしておりますと言ってみる。

309 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/26(火) 15:37:51 ID:uSzVJDt2
エリオのごとくと言えば、何時かのエリオスレの流れであったな。
施設にいた時、助けたのがフェイトさんではなくゼストだったら
スカ陣営にいて管理局に怨恨を持っているとか。

何が言いたいかと言うとつまり、続きを待ってます。

310 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/26(火) 16:05:00 ID:veQZDYT+
自分は娼婦になったティアナを放っておけなくて、独占契約という事でユーノの家で、
一緒に生活する作品の続きが読みたい。

311 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/26(火) 16:46:20 ID:6h6xwigZ
ザフィーラに犯されて獣姦に目覚めるギンガはまだですか?

312 名前:野狗 ◆gaqfQ/QUaU :2008/08/26(火) 19:47:44 ID:XPaQA/9W
 投下行きます。 

 非エロ。
 レス数7。
 あぼんはコテか鳥で
 タイトル「ヴィータの抱っこ」


313 名前:野狗 ◆gaqfQ/QUaU :2008/08/26(火) 19:48:18 ID:XPaQA/9W
     1

「シャマル、いるかぁ?」

 ヴィータは医務室をのぞき込む。
 シャマルどころか、人の気配がない。

「シャマルぅ、いないのか?」

 返事はない。気配を隠しているわけでもなさそうだ。

「あいつ、どこ行ったんだ?」

 誰かが怪我でもして、駆けつけているのか。
 大きな事件ならば、スターズ副隊長の自分に連絡が来ないわけがない。たいしたことのない事故か、それとも個人的な怪我か。
どちらにしろ、大きな事件ではないということだろう。

「勝手に入るぞぉ」

 特に緊急な用事というわけではない。副隊長の義務として準備しておかなければならない応急治療キットに不足を見つけたので、補充しに来ただけだ。
ついでに、キットの構成に不備があるような気もするので、その点はシャマルに相談しようと思っている。
 戻ってくるまで待とうと、ベッドに腰掛ける。
 患者も誰もいないし、たまたまだろうけれど外に誰かが通る気配もない。珍しく、今日のこの区画は静かだ。
 いつの間にかヴィータはベットに寝転がっていた。

「あ、制服が皺になったらはやてに怒られる」

 起きればいいのに、上着を脱いでしまった。それほど、ベッドがふかふかで気持ちいいのだ。
ちなみに、今日のお昼にアイナとヴィヴィオ、そしてザフィーラ、シャマルの四人で医務室のお布団を干していたらしい。
 干したばかりの布団が気持ちいいのは、古今東西あまねくすべての次元において共通の概念である。
 干したばかりの布団の列、抗う術は我が手にはない。

「遅いなぁ、シャマル……」

 語尾がかなりまずい状態で弱くなっているのに、ヴィータは気づいていなかった。
 ただ、
 …このお布団、気持ちいいな……
 瞼がとろんと下がっていく。


314 名前:野狗 ◆gaqfQ/QUaU :2008/08/26(火) 19:48:52 ID:XPaQA/9W
       2

「どうよっ! スバル!」
「うん、凄いよ、ティアの新魔法!」
「あのね、スバル。褒めてくれるのは嬉しいんだけど。なんというか、褒め言葉よりも、批評というか、感想というか」
「……だから……凄いと思うよ? ティア」

 スバルは困ったように同じ言葉を繰り返す。

「んーとね……はっきり言って、粗探しをして欲しいんだけど」

 褒められるのは嬉しいが、欠点を指摘したもらいたいのが本音だ。
攻撃魔法の類ならば自分で判断できるが、幻術は本人よりも第三者に見てもらわないことには話にならない。

「んーーーーー? ごめん。粗なんてわかんないよ」

 ここで「自分の幻術は完璧だ」と思ったりしないのが、努力の人ティアナ・ランスターである。

「あんたに聞いた私が間違ってたわ」
「えー、そんなことないよ、本当に凄いってば」
「ありがと。でも、こういうのはやっぱり意地の悪い人に見てもらわないとね」
「意地の悪い人って…………そんな人、六課にいないよ?」
「ああ、違うわよ。性格が悪いっていう意味じゃなくて、厳しいっていう意味よ」
「ああ。……やっぱり、なのはさんかな」
「ヴィータ副隊長やシグナム副隊長でもいいと思うけれど、やっぱり自分たちの隊長が筋よね」

 フェイトの名前が出ないのは、実戦なら知らず、それ以外の部分でのエリキャロ可愛がりぶりを見てしまっているからだろう。

「でも、できれば隊長たちには見せたくないのよね」
「あ、ティアってば、隊長たちとの模擬戦に使う気?」
「隠し技の一つくらい、ね」
「うーん。隊長たちには内緒にできて、隊長たちと同じくらい目利きのできる人……八神部隊長かなぁ」
「話が大きくなるわね」
「あ、シャマル先生は? 確か、元々はシグナム副隊長やヴィータ副隊長、八神部隊長とチームだって聞いたことあるし」
「そっか。シャマル先生なら、秘密守ってくれそうだし。副隊長たちとチーム組んでいたんだったら目も確かなはずよね」

 言うが早いか、ティアナは座っていた椅子から立ち上がると部屋を出ようとする。

「遅くなっても迷惑だし、思い立ったが吉日ね。シャマル先生のところに行ってくるわ」
「あたしは、デバイスの整備があるから」
「うん。それじゃあ、行ってくる」
「行ってらっしゃい」


315 名前:野狗 ◆gaqfQ/QUaU :2008/08/26(火) 19:49:25 ID:XPaQA/9W
     3

 幻術魔法による幻像には実体がない。
 ただし、実体にあるものに上から幻像を被せたらどうなるか。
 さらに、多少の齟齬は誤魔化せる程度に、触覚を騙すことができたら。
 自分の体表に魔法効果を及ぼすことによって、別人に成りすますことができるのだ。
 幻術と言うよりは変装に近いかもしれない。しかし、任意の別人に成りすますことができるというのは大きいだろう。さらに、声を変えられるなら完璧だ。
 こうなると、幻術と言うよりもナンバーズ二女ドゥーエのISライアーズ・マスクに近くなってくる。
 しかし、ティアナは何とかそれをものにしようとしているのだ。


 医務室の前で、ティアナは深呼吸した。
 どうせなら、最初から騙すつもりの気合いで入っていこう。
 シャマル先生を騙すのに格好の人物。
 よし。
 ティアナは八神部隊長の姿を脳裏に思い浮かべていた。そして術式を構築。身体の回りに幻像を張り巡らせていく。

「シャマル先生?」

 ティアナは医務室に入った。
 返事はない。
 さらに呼びかけようとして、ベッドの人影に気づいて口を閉ざす。
 誰かが寝ているのなら、大きな声は出せない。

「……ヴィータ副隊長?」

 そこには、上着を脱ぎ捨てたヴィータが眠っていた。
 どう見てもただ眠っているだけで、調子が悪そうには見えない。そもそも昼間はいつも通りに教導をしていたのだから。
 単に寝ているだけ?
 確かに、シャマル先生と副隊長は古いつきあいらしいから、それくらいの融通は利くのだろう。
だけど、肝心なシャマル先生がいない。ということは、勝手に寝ているということなのだろうか。
 ティアナはふと、ヴィータの寝顔を観察している自分に気づいた。
 …可愛い。
 訓練中には間違ってもそんなことは思ったことがない。というよりそんなことを思う暇などない。
 しかし、こうやって無防備に眠っている姿を見ていると、とても可愛らしいのだ。
 白い肌。小柄の身体。赤い髪。
 自分から見ると小さく子供のような身体。だからといって相手を侮ることはない。魔法世界では相手を外見で判断するほど危険なことはないのだ。
 現に、自分と副隊長が本気で戦えば、一矢報いる前に二桁回は殺されてしまうだろう。それぐらいの力の差がある。
 しかし、今の寝姿を見ているとその事実すら信じられなくなってくる。

316 名前:野狗 ◆gaqfQ/QUaU :2008/08/26(火) 19:49:57 ID:XPaQA/9W
      4

「えっと……」

 起こしていいものだろうか、とティアナは悩んだ。
 気持ちよく寝ているところを起こされて気分のいい者はいない。それに、この姿をもう少し見ていたいという気持ちもある。

「ん……」

 ヴィータの身じろぎ。ティアナはいつの間にか、微笑みながらヴィータを見下ろしていた。
 …なのはさんがヴィヴィオを引き取った理由、今ならわかるような気がする。
 無意識に、手が伸びた。

「ん……」

 反応が面白くて、ヴィータの頬を指先でくすぐる。

「あれ?」

 まずい。冷や汗が流れるのをティアナは感じた。唐突に、ヴィータが目を開いたのだ。
 驚いたように自分を見上げる副隊長と目が合う。

「どうしたの? はやて」

 言われるまで、自分が幻像をかぶっていることを忘れていた。

「あ、ここ、シャマルの部屋じゃん。そだ、シャマルがいねえんだ。はやては、あたしを起こしに来たのか?」

 ティアナは一瞬で覚悟を決めた。どのみち、部隊長に変装していることは動かぬ事実なのだ。このまま誤魔化し通すしかない。

「はやて?」
「え? あ、そ、そやよ。ふ……ヴィータを起こそ思てな」
「うふふ。うん、ごめん。あたし、寝てたみたいだ」

 目をこすりながら、ベッドの上にぺたりと座り込んで、ティアナを見上げて笑う。
 …な、なに、この可愛らしいお子様は!?
 ティアナはヴィータの無防備加減に唖然としていた。これが、あの、鬼の副隊長?
 ヴィータは辺りを見回すと、静かに聞いた。

「はやてだけ?」

317 名前:野狗 ◆gaqfQ/QUaU :2008/08/26(火) 19:50:30 ID:XPaQA/9W
      5


「う、うん。あたしとヴィータだけやで」
「じゃあ……。この前の仕返し」

 手を引かれ、ティアナはベッドに引きずり込まれた。

「はやて、抱っこ」

 ぎゅっと抱きしめられて、ティアナの顔が真っ赤になる。

「副……ヴィータ?」
「はやてがいっつもあたしのこと捕まえてばっかりだから、今日は仕返しだよ」

 …えっと……副隊長と部隊長ってそういう関係だったの!?
 驚いているうちに、温かくて柔らかくていい匂いのものがティアナの頭を包んだ。ヴィータが、ベッドに倒れ込んだティアナの頭を抱きかかえているのだ。
 …副隊長、温かくて柔らかくて……スバルより……じゃなくて!!
 自分を叱咤しながら、ティアナは頭をフル回転させていた。

「ヴィータ、ちょお放して?」
「んー? どしたの? はやて」

 渋々放したヴィータから離れたティアナの動きが止まる。

「仕事の話か?」

 寂しそうな目が自分を見ている。何かが、ティアナの中で弾けた。

「ん、やっぱ、なんでもあらへんよ、ヴィータ。ほら、おいで」

 ベッドサイドに座り、ヴィータを膝の上に招く。

「えへへっ」

 素直に膝に座って、のけぞるような体勢でティアナにほほえみかけるヴィータ。
 …可愛い。副……ううん、ヴィータちゃん、可愛い!
 ティアナはヴィータの髪を撫でると、頬や額、鼻をくすぐるように触りまくる。

「やぁん、くすぐったいよぉ、はやて」

 ゾクゾクッとティアナの背筋に走る電流。
 …ごめん、スバル。あたし、浮気するかも……

「あんなぁ、ヴィータ」

「なに? はやて」

「なにしてるの?」

 突然の声にティアナは顔を上げた。
 そこにはシャマルが。

318 名前:野狗 ◆gaqfQ/QUaU :2008/08/26(火) 19:51:03 ID:XPaQA/9W
       6

「あ」と気まずそうなヴィータ。
「あ、あのな、シャマル、これは」
「ヴィータ、何してるの?」

 シャマルの背後から現れたのは、本物の八神はやて。

「はやてっ!?」

 ヴィータは振り向きざま、ティアナから飛び離れると、即座にグラーフアイゼンを構える。もちろん、ティアナに向けて。

「誰だ、てめぇ!」
「え? あ、あの……」
「よくもあたしを騙してくれたなっ!! だけど、もう誤魔化されねえぞ!」

 はやてがとことこと、二人の間に入る。

「はやてっ、危ないっ!」
「あー。大丈夫。これ、ティアナや」
「な゛」

 ティアナは肩を落として幻術を解いた。

「バレバレ、ですか……」
「うーん何となくやけどな。そやけど、あたしの姿でヴィータを騙すいうんは、たいしたもんやと思うよ。
これがフェイトちゃんやなのはちゃんの姿やったら、あたしもわからんかったかもしれへん」

 ひゅん、とティアナの前に突きつけられる騎士杖。

「で、あたしに化けてヴィータに何しようとしとったんかな?」
「えっと、そういう目的ではなくて……」

 ティアナの背後には、目の据わったヴィータがギガントフォルムのグラーフアイゼンを構えている。

「あたしもとっても聞きたい。何のつもりだったんだ、おめえ」

 ヴィータの顔には「こいつの頭殴って記憶消す」と書かれている。が、ギガントで殴られると記憶と同時に命もなくなるような気がするティアナだった。


319 名前:野狗 ◆gaqfQ/QUaU :2008/08/26(火) 19:51:36 ID:XPaQA/9W
       7

「ヴィータが可愛すぎるんが罪やったんやな」

 経過をすべて聞き取ったはやてが笑うと、ヴィータがまたティアナをにらみつけた。

「絶対、人に言うなよ。あたしとガチでやりあいたいんなら話は別だけどな」
「は、はい。わかってます。ヴィータ副隊長。絶対に言いません」
「それから」
「はいっ」
「戦ってる最中に敵に化けるってのは、相手を混乱させるためには悪くねえ。だけど、それができるのは相手に突っ込んだ後の話だ。
ガンナーのお前が真っ先に突っ込むってのは、どういう状況だ?」
「え、えーっと…………あ……」

 ティアナはヴィータの言わんとすることに気づいた。

「そだよ。突っ込む前に墜とされちまうぞ。そういうのは、元々先陣切って突っ込んでるあたしやスバルが使えれば一番効果的なんだ」
「すいません。私が浅はかでした」
「まあ、直接戦闘以外の機会では使うことも多いかもしんねーけどな。そういうのは執務官やってるフェイトのほうが詳しいだろ」
「はい」
「わかったらさっさと帰って休め。今日のことはくれぐれも誰にも言うんじゃねえぞ。スバルにもなのはにもだぞ!」
「はいっ」

 解放されたティアナが部屋に戻ると、スバルは先に寝ていた。
 静かにベッドに潜り込み、小さく「おやすみ」と呟く。
 翌日の夜。

「ティアナはこういうのが好きだって、シャマル先生が言ってた」

 そう言ってスバルがヴィータのバリアジャケットそっくりのドレスを着ていたときは、かなり本気でティアナは逃げ出すことを考えたという。


320 名前:野狗 ◆gaqfQ/QUaU :2008/08/26(火) 19:52:46 ID:XPaQA/9W
以上です。お粗末様でした。
StSのサウンドステージ04を再聴したら、ヴィータのあまりの可愛さについ…

321 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/26(火) 20:04:13 ID:Cb8hp3yP
GJ
だがヘルプが入るのがはやいしタイミングが良すぎるな
もしかしてタヌキ様は最初から見てたんじゃないのかとw

322 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/26(火) 20:26:45 ID:vtOKgipb
>>301
トーレ姉さんかわいいなあ
でも夫がもういないってかなり苦しいだろうな
いや、結婚してるわけじゃないから夫ってわけでもないのか…なんか切ないな…
GJ!!

自分はエリオ隊長とアリシアの義父さんだーい好き!な義親子の近親相姦を希望!

            ティ、ティアナさん撃たないで、アッーーーーーーーーーーーー

323 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/26(火) 21:36:52 ID:lzfDSOIc
>>320
うんティアナの変身ネタはええな、次は男の誰かに化けたら
男湯に連れ込まれて出られなくなったティアナとかw
しかし何でヴィータははやてが二人になった時点で即座に見破れたんだろ?

324 名前:ザ・シガー:2008/08/26(火) 21:52:43 ID:GPfvRjAq
はい、投下いくよ〜。

前スレで投下したヴァイ×シグSSの続き、「烈火の将は狙撃手がお好き」の番外編夏祭り編です。
今回はエロエロ、ヴァイスの股間の狙撃中がシグナム姐さんを蜂の巣にするお話。

325 名前:烈火の将は狙撃手がお好き:2008/08/26(火) 21:54:18 ID:GPfvRjAq
烈火の将は狙撃手がお好き 番外編 夏祭り (後編)


シャクシャクとプラスチック製のスプーンが氷をかき分ける小気味良い音を立てながら、鮮やかな紅色の甘味が口に運ばれる。
暑苦しい夏の熱気を忘れるような冷たさと堪らない甘さが口の中に溶けていった。


「ふむ、やはり日本の夏はカキ氷だな」


そう漏らしながらシグナムは久しぶりに食べるカキ氷の甘さに酔い痴れる。
ミッドにも地球から派生した食事はあるが流石にカキ氷は見当たらない、数年ぶりに食べるカキ氷はなんとも懐かしかった。
隣にいた青年は、アイスとはまた違うこの清涼とした甘味に少しだけ驚いていた。


「なんていうか不思議な味っすね。アイスとはまた違う感じで」


青年、ヴァイス・グランセニックは彼女が食べているものと同じく、イチゴ味のシロップのかかったカキ氷。
二人はお揃いの甘味を口へと運び、夏の暑さを涼やかな甘さで和らげた。
雑踏の賑わいの中を練り歩きながら食べるカキ氷は暑さのせいか、傍にいる相手の為かひどく美味しく感じられる。

そんな折、ふとヴァイスの目にシグナムの身体の“ある部分”が目に付いた。それは彼女の魅力的な巨大かつ美しい乳房。
機動六課の美女・美少女の中でも最大・最高・最美乳と呼ばれる胸、素晴らしいラインとサイズを誇るそこにヴァイスの視線が釘付けになる。
いや、別に“いやらしい事を考えてる”とか“今すぐ押し倒したい”と思ってる訳ではない。
いつも床を共にする時に視覚・触覚・味覚・嗅覚、考えうるあらゆる感覚で味わっているシグナムのたわわな乳房に違和感を感じたのだ。
最初はなにか分からなかったが、即座にその違和感の正体に気が付いた。途端にヴァイスは顔を僅かに驚愕と羞恥で歪める。
そしてそっと囁くようにシグナムに声をかけた。


「姐さん……その、一つ良いっすか?」
「ん? なんだ?」
「いや……その、胸……っていうか、下着付けてないんっすか?」


本当にシグナムに聞こえる程度の声量でヴァイスはそう言った。
彼の視線の先、浴衣に包まれたシグナムのたおやかな肢体、その中でも一際目を引く豊かな乳房。
そんな胸には下着特有のラインは浮いておらず、代わりに乳房の頂点にポツンと小さな膨らみがある。
腰の方も同様、素晴らしく豊かに実った尻のラインにも下着の線は浮いていない。
つまり今のシグナムは上も下も下着無し! ノーパン・ノーブラ、オーイェ〜♪ な状況だという訳である。
それはヴァイスの持つ常識では考えられない格好だった。


「ん? ああ、コレか。なに浴衣は下着を付けずに着て問題ないものだ、気にするな」


シグナムはさも当然のようにそう言う。浴衣が下着の着用を前提としないのは確かだが、しかしそれは昔の話であり現在は普通に下着を着けて着用する人が大半である。
どういう経路で彼女が浴衣に関する知識を得たかは分からないが、どうやら前述の昔の知識しか持ち合わせていないようだ。
まあ、こちらの世界の常識に疎いヴァイスがそれを確認する術はないので彼女の意見を信じるより他は無い。


「はあ、そうなんですか……」


ヴァイスは軽く頷きながらそう応えた。
そして、一度意識すると自然とシグナムの身体のその凄まじく凹凸に富むラインに視線が否応にも引き寄せられる。


326 名前:烈火の将は狙撃手がお好き:2008/08/26(火) 21:54:53 ID:GPfvRjAq
彼女の身体は何度見ても何度抱いても飽きない、むしろ見れば見るほど抱けば抱くほどのめり込む中毒性を持っていた。
そんな魅力的な烈火の将の肢体は、浴衣に覆われてさらなる艶を帯びている。
普段は凛とした雰囲気を持つシグナムだが、今日は形容し難い艶めかしい色香を漂わせていた。


『綺麗だなぁ姐さん、やっぱ浴衣の効果なのかねぇ……っていうか、なんか視線感じるな……周りから見られてるような感じが……』


彼女の艶やかな雰囲気と姿にヴァイスが見惚れていると、ふと何か周囲から向けられる気配に気が付いた。
目を周囲に向ければひしめく雑踏、その中から取り分け男の視線がこちらに向けられている事に気付く。
人ごみの中の無数の男の視線は言うまでもなくシグナムのその美しく艶めいた肢体に注がれていた。
浴衣によってくっきりと浮き上がった彼女の素晴らしいボディラインに、明らかに劣情を宿したやましい視線が絡み付いている。
それも一つや二つではない、周囲の雑踏に紛れた男の視線は十重に二十重にシグナムの身体を這いずり視姦の限りを尽くす。
その視線に込められた欲望と劣情はどろどろとした粘度を覚えるほどに濃密だった。
一度意識すると、熱のこめられた不快な視線はそこら中から感じられる。
まあシグナムのような美女を伴っていれば無理もない話しではあるが、ヴァイスはそれに例え様の無い怒りを感じた。


『クソが……何見てんだ……』


そう思うや否や、彼はシグナムの手を取って歩き出す。いや、その強い足取りは歩くというよりも走る一歩手前だった。


「ちょ! ヴァイス?」


突然手を掴んで歩きだしたヴァイスにシグナムは声を上げるが、彼はそんな事は構わずにどんどん勝手に進む。
人ごみを掻き分け、夜店の間を駆け抜け、二人が辿り着いたのは祭りの会場の外れにある木々の生い茂る茂みだった。
僅かに息が切れそうになる、ヴァイスは薄暗い茂みの中に入ってようやくシグナムの手を離した。


「まったく……突然どうしたんだ?」


突然の事に理解が追いつかず、シグナムは首を傾げてヴァイスに問う。
だがヴァイスは少しだけ荒くなった息を整えるだけで応えない。
彼女の姿を静かな暗がりで見つめていると先ほどの男供の視線が思い出され、ドス黒い怒りと嫉妬心や独占欲が沸きあがってくる。
そして次の瞬間にはシグナムの瑞々しい唇がヴァイスのそれで塞がれた。


「んぅぅ!?」


突然唇を奪われてシグナムは驚き、後ずさって距離を取ろうとするがそれは叶わない。
ヴァイスは彼女の肩を掴むと近くに立っていた木に押し付けて身動きを封じる。
いきなりこんな事をされれば無論シグナムは抵抗しようともがく、覆いかぶさってきたヴァイスの胸板を手で押し退けようと叩く。
だがその抵抗に、抗い難い快感という名の暴力が襲い掛かった。


「んぅ……ヴァイス止め……ちゅぷっ……あむぅ」


制止するために声を上げようとするシグナムだが、言葉は濃密な口付けに無理矢理中断させられる。
ヴァイスの舌が彼女の舌に絡まり、口内を満遍なく愛撫し歯の裏側まで舐め尽くし快感を刻み込んでいった。


327 名前:烈火の将は狙撃手がお好き:2008/08/26(火) 21:56:18 ID:GPfvRjAq
熱い舌の蹂躙、さきほど食べたカキ氷のシロップの味かキスは蕩けるように甘い。
口付けの快感に抵抗の力が弱まったのを感じると、ヴァイスの片手が肩からうなじに移った。
敏感なシグナムの性感の中でも一際弱い首筋や耳を彼の指が慣れた手つきで愛撫を行う。
さらにもう一方の手は浴衣の裾をめくり彼女の白く美しく締まった太股を撫で、その上にある蜜壷に触れる。
先の愛撫の為か、そこは既に汗以外の粘性の湿り気を帯びている。ヴァイスは迷わず秘裂の入り口や淫核を優しく撫でた。
重ねられる快感にシグナムは塞がれた唇からくぐもった嬌声を漏らす。


「んっ!……んむぅぅっ!」


屋外での情事に抵抗しようとするシグナムだったが、与えられる快楽は彼女のツボを知った的確なもので、徐々に理性という名の防壁を破壊する。
口付けられている唇と指に弄られる秘所から粘性の水音が響き、聴覚まで淫らに染めていく。
堅牢な筈の将の理知は圧倒的な肉の悦びに打ちのめされ・侵食され・溶かされる。十分にも満たない時間でシグナムの抵抗する力は完全に失われた。
そっと唇が離れて透明な唾液の糸を宙に残す、そしてヴァイスはズボンのファスナーを下ろすと硬くいきり立った肉棒を素早く取り出す。
彼はシグナムの片足を膝裏に手をかけて持ち上げ挿入の体勢を整えると、十分に果汁で濡れた蜜壷の入り口に自身の肉棒の狙いを定める。


「な!? ヴァイス止めろ……はぁぁあぁっ!!」


彼の意図に気付いた将が止めようとしたが時既に遅し、硬く硬く隆起した肉の槍は蜜壷を一気に姦通した。
ゴツゴツとした肉棒が愛液の溢れる淫穴を突き進み、挿入可能な最大限の侵入を果たす。
それだけで、既に熱く火照りきったシグナムは絶頂寸前まで昂ぶった。
あと数回肉棒が前後すれば彼女はあえなく達するだろう。だが、期待したその突き上げは一向に来なかった。
もう少しで絶頂の高みに昇れるところで寸止めされて、シグナムは恨めしそうな瞳でヴァイスを見つめる。
彼は薄暗がりでも分かるくらい、嗜虐的な黒い笑みを浮かべていた。


「んぅ……ヴァイス……どうして……」
「え? どうしたんですか姐さん」
「なんで……動かないんだ?」
「だって姐さん言ったでしょ? 止めろって。どうしてもして欲しいなら、ちゃんとお願いしてくださいよ」


その言葉にようやく理解できた、彼は言わせたいのだ、シグナムのその口から淫猥な要求を引き出して嗜虐心を満たしたいのだ。
いつもの情事ならばそうやって彼の欲求を満たす事もするが、しかし今は屋外である、そんな痴態を演じるなどあまりに恥ずかしく出来るわけが無い。


「そんな事言えるか!」
「へぇ、じゃあこのまま抜いちゃって良いんすか? 別に俺は構わないっすけど」
「そ、それは……」


熱くて硬い肉棒で貫かれ、絶頂寸前で寸止めされて生殺しにされ、シグナムはもう我慢の限界だ。
眉を歪め、彼を恨めしげに睨みながら彼女はボソボソと蚊の鳴くような小さな声で囁く。


「うご……いてくれ……」
「え? もう少し大きい声で言ってくれないと聞こえませんよ?」


徹底的に意地悪な態度を取るヴァイスにシグナムは視線に怒りを込めるが、快楽で蕩けた今の彼女に大した迫力は出せなかった。
潤んだ瞳で視線を注ぐ様は、むしろさらに欲情をそそる。
そして烈火の将はこれ以上焦らされるのに耐え切れず、悦楽の前に跪いた。


「分かった……言う、言うからちゃんとしてくれ……」

328 名前:烈火の将は狙撃手がお好き:2008/08/26(火) 21:57:17 ID:GPfvRjAq
「ええ、それじゃあ分かり易いようにハッキリ言ってくださいね」


シグナムの言葉にヴァイスは愉悦を極めたような心底嬉しそうな笑みを零す。
彼女のような凛然とした美女を肉欲で跪かせるというのは、嗜虐心と征服欲をこれ以上ないほどに満たすのだから無理も無いだろう。


「早く……動いてくれ……私の中をメチャクチャに掻き回してくれ!」


烈火の将は瞳を恥辱の涙で濡らしながらそう懇願した。
正に辱めの限りを尽くされた様だが、彼女にあるのは屈辱や羞恥心だけでなくしっかりと悦びもある。
ヴァイスによって刻み込まれてきた快楽と共に、シグナムの中にはしっかりと被虐癖がマゾヒズムの悦びが育まれていたのだ。
その証拠に蜜壷から流れる愛蜜の量は足首まで伝うほど溢れているし、膣壁は埋没した肉棒を美味しそうに律動し美味しそうに味わっている。
そして、シグナムの懇願を受けヴァイスは面悦として黒い笑みを深めた。


「言ったぞ? 言ったから早く……」
「ええ、分かってますよ」


シグナムの言葉が言い切られる前にヴァイスは返事と共に己が腰を全力で突き上げた。
ただ埋没していただけの肉棒が一瞬で体内を掻き回す凶器へと変貌し、烈火の将に凄まじい快感を刻む。
今まで焦らされた分、その快楽刺激はたったの一突きでピークへと達した。


「はぁぁあぁっ!!」


シグナムの濡れた唇からとびきり甘い声が零れ、浴衣に覆われた肢体がのけ反り、膣肉が収縮して肉棒を締め付ける。
待ちわびた律動に将は呆気なく達してしまい、たった一回の突き上げで迎えた絶頂で普段は凛々しい彼女の顔はだらしなく蕩けきっていた。
達した余韻に口からはただ荒くなった吐息だけが漏れ、身体は小刻みに震える。だがまだ少しも動いていないヴァイスがこれで満足する訳が無い。


「はぁ……はぁ」
「姐さん、それじゃ動きますよ」
「え? ちょっと待っ……んあぁぁっ!!」


シグナムが静止を口にする暇もなく、ヴァイスは再び腰の動きを再開する。
だが今度は先ほどとは比べられない程激しい動き、強く突き上げる衝撃に彼女の身体は揺さぶられた。
木を背に預けて片足立ちしているシグナムの肢体が肉棒の突き上げで大きく上下する、その度に緋色の髪と浴衣が乱れて彼女を淫蕩に飾っていく。


「待て……はんっ!……もう少し、ゆっくり……ふぅあぁぁあっ!」


達したばかりの状態で敏感な身体に刻み込まれる快感はあまりに強く、将は力ない声でそう懇願する。
だがそんな彼女の声はヴァイスを制止するどころか、むしろ彼の中に湧き上がった獣染みた肉欲をさらに昂ぶらせるだけだ。
ズンズンと子宮を押し上げるような衝撃と背筋を溶かすような快感に、シグナムは意識を失いそうな程の性感を感じる。
そしてヴァイスもまた同じく、凄まじい快感に唸り声を殺しながら酔い痴れていた。
一度達しても貪欲に雄を欲する膣肉は埋没する肉棒を蕩かすように絡みつき、まるで“早く精が欲しい”とでも言っているかのように緩急をつけて締め上げてくる。
将の女体は筆舌に尽くし難い極上の快楽をヴァイスに与え、早くも一度目の射精感を呼び起こす。


「くっ! すげえ締まる……姐さん、そろそろ出しますよ!」


シグナムを肉棒で突き上げながら、ヴァイスが呻くようにそう囁いた。


329 名前:烈火の将は狙撃手がお好き:2008/08/26(火) 21:57:46 ID:GPfvRjAq
そして次の瞬間、彼女の体内で白いマグマが火を吹いた。
まるで身体を内側から焼かれるような凄まじい灼熱感、ヴァイスの遺伝子除法を持つ煮え滾る子種が膣の奥で放たれる。
射精のあまりの勢いに陰茎と膣の結合部からはドプドプと音を立てながら泡となって精子が零れ落ちる程だった。


「はぁぁ……あつぅい……」


快楽で蕩けてだらしなく開いた濡れた唇からは、ただ甘い喘ぎが漏れる。
膣の奥、子宮口に与えられる熱にシグナムもまた再び軽い絶頂を迎えていた。
立て続けに二度も達した将は息も絶え絶えだったが、まだ一度しか発射していないヴァイスの剛直は衰える事無く硬度を維持している。
無論肉欲の方も猛る様に燃えている、少なくともあと一度は吐き出さねば収まりはつかなかった。


「姐さんちょっと体位変えますよ」
「へ? ひゃっ!」


無論返事は聞かなかった。
ヴァイスはシグナムの片足を掴んでいた手をさらに持ち上げ、彼女と繋がったまま器用に体位を変える。
シグナムが今まで背を預けていた木に両手を付き、尻をヴァイスの方に突き出すような形、いわゆる立ちバック・立位後背位の形となる。
この体位ならば、肉付きが良くそれでいて引き締まったシグナムのいやらしい尻に、美しくくびれた腰のラインやうなじをじっくりと堪能できるのだ。
ヴァイスの欲望も俄然燃え上がり、股間の屹立はさらなる硬度を得る。
だが反対に、シグナムは獣染みた姿勢で犯される羞恥で顔を朱に染めて恥らった。


「んぅ……ヴァイス……せめて普通にしてくれ……この格好は……嫌だ……」


シグナムは振り返ると、涙で潤んだ瞳を向け弱弱しい囁きで懇願を訴える。
羞恥心もさる事ながら、彼女はこの体位で与えられる快感の凄まじさを知っている。
だから恐いのだ、強烈過ぎる快楽で理性も何もかもが悦び一色に塗り潰されるのが。
しかし、シグナムのその姿は余計に劣情と嗜虐心を誘うもので、ヴァイスの蹂躙をさらに加速させるに終わる。
ヴァイスは口の端を吊り上げてどす黒い笑みを浮かべると、彼女の背中に覆いかぶさりその耳元で嬲るような言葉を囁いた。


「でも姐さん、“嫌”って言う割には姐さんのマンコ、さっきからエロ汁駄々漏れで俺のチンポを美味しそうにキュンキュン咥えてますよ?」


その言葉にシグナムは薄暗がりでもハッキリと分かるほどに、耳まで真っ赤になった。
ヴァイスの言葉に彼女の理性は限界まで羞恥心を煽られる。自分をまるで変態のように言われて将は即座に反論に移った。


「違う! これは……はひゃぁんっ!」


だが反論などするだけ無駄だった、彼女が言葉を言い終わる前にヴァイスは背後から抉り込むように腰を突き上げる。
石のように硬い肉棒で膣を抉られれば、シグナムの口からは途端に甘えた喘ぎ声が溢れ出す。
今度は後ろからという事もあり、さらに深く刺さった肉の槍が与える快楽は倍増していた。脳を焼く悦楽の甘い陵辱に、もはや理性の抵抗など一瞬で霧散するより他は無い。
ヴァイスは腰を激しく動かし背後からこれでもかと強く深くシグナムを突き刺しながら、彼女の纏っている浴衣の襟元に手を伸ばす。
そして襟元から服の内側に侵入した彼の手は、迷う事無く将の豊満極まる乳房を鷲掴み手馴れた愛撫を開始した。


「んはぁっ!……むねぇ……もう少し、優しく……ふあぁぁっ!」


たわわに実った彼女の肉の果実、それを丹念にそして力強く揉みしだきながら、無論その先端への刺激も忘れない。


330 名前:烈火の将は狙撃手がお好き:2008/08/26(火) 21:58:18 ID:GPfvRjAq
手の平全体を使って大きな乳房を揉むと同時に時折、指で先端の小さな豆を転がし摘み引っ張る。
その度に膣がさながら喜びを表現するかの様に収縮し、咥え込んだ肉棒を美味しそうに咀嚼してきた。

乳房への愛撫を開始しても腰の動きは少しも衰えない、むしろその動きはどんどん速さと強さを増していく。
果汁をしとどに垂れ流しているシグナムの膣をヴァイスの肉棒が全力で抉り貫き掻き乱す。しかもその一突き一突きが的確に彼女の性感帯を捉えている。
あまりに正確で容赦の無い責めに、バックでのセックスが始まってシグナムは既に数回軽く達していた。
そして軽い絶頂の連続に続き今度は今までのものを超える大波が近づいていた。


「はうんっ!……まっれ……たのむ……あんっ! おねがいだから……すこしやすませ……ひぃんっ!」


シグナムはヴァイスに何度も哀願するがそれらが聞き入れられることは無い。むしろ甘えた声と蕩けた目を彼に向ける度に責めは激しさを増す。
彼女は恐かった、あまりに強すぎる快楽と絶頂は、永い時で築いてきた自分自身という存在を溶かしてただの雌に変えてしまうから。
後ろから膣を抉られ、子宮口を突き上げられる度に徐々に最大の決壊が迫っているのが分かる。
膣の最奥への蹂躙は否応なく気を失いそうな程の絶頂をもたらすのを経験で知っていた、今それが目の前まで迫っていた。

そして、そのあと一歩、ほんの少しの刺激は唐突に訪れた。

白い歯を覗かせてヴァイスの口が開かれ、シグナムの後頭部に近づく。
堪らなく甘い香りを放つ彼女の髪に頬ずりして恍惚を味わうと、頭の横に鎮座している器官に舌を伸ばした。
それは耳、暗がりでも緋色の髪の横にある白い耳たぶへと伸びた舌がそっと這うと、次いで僅かな力を込めて甘噛みする。
その瞬間、シグナムの中で何かが弾けた。


「ひはぁぁああぁっ!」


脳がショートしそうな程の凄まじい絶頂の甘い電撃が彼女を襲い、背がのけ反り全身が小刻みに震える。
膣肉が痙攣するように収縮し、痛いくらいに肉棒を締め上げて精が欲しいとオネダリをしているようだ。
この刺激にヴァイスも堪らず射精感を解放する。再び吐き出される白いマグマ、灼熱の粘液が将の体内に注ぎ込まれていった。


「くあっ! すげえ……」


呻くように漏らしながら、ヴァイスは長い射精の余韻に浸る。
吐き出される精液が子宮口を叩くドクドクという音が耳まで響いてくるような錯覚すら感じる、それほど彼の射精の勢いは強かった。
ヴァイスは深い快楽に身を委ねながらシグナムを後ろから思い切り抱きしめた。
身体を密着させて浴衣越しに体温を求め、ポニーテールに結われた彼女の髪に顔を寄せてその熟れた果実のように甘い香りに酔い痴れる。
互いに絶頂を迎えた気だるく心地良い陶酔を、二人は存分に味わう。


「ふぅ……ああ、やっぱ姐さんの髪……良い匂いだ」


そう漏らしながら、ヴァイスは鼻腔から脳まで蕩かすような甘い香りを“もっともっと”と欲して彼女に身体を寄せ長く美しい髪に頬ずりする。
いささか汗で濡れてはいるが、シグナムの緋色の髪は相変わらずの素晴らしいキメの細かさでサラサラとした心地良い触感を与えてくれた。
そうして顔を押し付けていると、ふとした事で彼女の髪を束ねていたリボンが解けてしまった。


「あ……」


想いもよらぬ事に彼女の口からそんな声が漏れる。


331 名前:烈火の将は狙撃手がお好き:2008/08/26(火) 21:59:12 ID:GPfvRjAq
そして紅い絹糸を思わせるような長い髪が唐突に下ろされ、シグナムの髪型が一瞬でストレートに変わった。
汗に濡れた長く美しい緋色の髪は暗がりでも分かるほど艶を持ち、同時に解かれた事で今まで以上に濃密な甘い香りを放つ。
そして彼女の上気した頬に濡れて張り付き、涙で潤みきった瞳と相まって筆舌し難い凄絶な色香をかもし出していた。

彼女のその姿が目に映った瞬間、ヴァイスの胸の鼓動が一段早く高鳴る。
二度の発射で萎えかけていた肉棒が瞬く間に硬度を取り戻す、それも今までで一番隆起しているのではないかと思えるほどに硬い。
散々シグナムにぶち撒けた獣欲は薄まるどころかより激しく燃え始めた。


「こりゃ反則ですよ姐さん……」


シグナムに聞こえないような小さな声で呟くと、ヴァイスはその手を彼女の良く引き締まったウエストに回す。
そして肉と肉をぶつけ合う律動がまた再開した。
凶器のように硬い肉の槍は容赦なく膣肉を抉り、子宮口を突き上げ、正気を失いかねない程の快楽をシグナムに刻み込む。


「ひゃぁっ!……らめぇ……もう、やめ……はぁんっ!……ゆるひてぇ」


蜜壷を剛直で削られながらシグナムはろれつの回らぬ言葉で必死に許しを請うが、それが燃料となってさらにヴァイスを激しくさせる。

夏祭りの行われる夜店の列の傍ら、茂みの暗がりで濡れた肉同士をぶつけ合うような水音と蕩けるような甘い女の嬌声が奏でる狂想曲が響く。
夕暮れに鳴くひぐらしの歌と風になびく木々のざわめき、そして祭りの雑踏の音に紛れたその淫らな曲を聞く者は誰もいなかった。

ただ空に照る星と月だけを除いて。


終幕。





332 名前:烈火の将は狙撃手がお好き:2008/08/26(火) 22:00:32 ID:GPfvRjAq
オマケ

「う〜ん。ヴァイス陸曹とシグナム副隊長いないね」
「ほんと、どこいったのかしら」


スバルがその低い身長で必死に背伸びして周囲を見回すが一向にお目当ての二人は見つからない。
祭りの雑踏ではぐれたシグナムとヴァイスを探すフォワード四人だが、通信も繋がらないし行き先の検討もつかず、彼らは夜店を見ながら既に二時間近く歩いていた。
まあ、屋台を見ながらの捜索は苦ではなく、むしろ楽しいものだった。
しかし、いい加減に帰り支度をする時間が迫っていたという事もあり、彼らは真剣にはぐれた二人を探し出す。
特にティアナは鬼気迫る程の集中力であたりを見回していた。


「ったく、どこにいんのよ二人とも……もしかしてどこかの茂みでシッポリ致してんじゃないでしょうね……」


ブツブツと呟きを嫉妬の黒いオーラと共に漏らしながらティアナは眼を血走らせて捜索している。
彼女のその様子にスバルは苦笑しエリオとキャロは理解できず首を傾げていた。
そして四人が祭りの雑踏の中を歩きながらヴァイス達を探していると、エリオが少し離れた場所の異変に気付いた。


「あの人だかりなんですかね?」
「ん? ちょっと見てみようか」


集まった人の間を掻き分けてみればそこにはお目当ての二人がいた、それも衝撃的な格好で。


「姐さん……やっぱこれ恥ずかしいっすよ……」
「うるさい。そもそもお前が原因なんだから責任を持て」
「うう……」


フォワードの目の前ではヴァイスがシグナムを抱きかかえながらそんな会話をしていた。
そう! それは相手の背中と膝裏に手を回して雄雄しく抱き上げる由緒正しき抱っこの中の抱っこ“お姫様抱っこ”である。
いつもはポニーテールにしている髪を下ろし、幾分着崩れ所々が僅かに汚れた浴衣を羽織ったシグナムの姿は扇情的な艶で満ちており、嫌でも一目を引き付けていた。
それがヴァイスにお姫様抱っこなんてされていればなおさらだった。
とりあえずティアナは嫉妬と怒りで歯軋りし、他の面子は二人の恥ずかしい姿に僅かに頬を赤くする。


「あ、あの……お二人ともなにしてるんですか?」
「って! エリオ!? お、お前らいたのか!?」


意を決して話しかけたエリオの声にヴァイスが面白いくらい驚く。
恥ずかしいこと極まりない姿を見られ、二人の顔はそれこそトマトのように赤くなった。


「今お二人を見つけまして。でも本当にどうしたんですか?」
「いや! こ、これはだな……その、こ、転んで足を捻ったんだ……うん……」


真っ赤に染まった顔を恥ずかしそうに俯けながらシグナムが言い訳を述べる。
まあ“本当は腰が抜けるまで激しく屋外セックスしていた”なんて言える訳はないだろう。

その日、結局シグナムはミッドに帰るまでヴァイスに抱っこされっぱなしだったとかそうでないとか。


めでたしめでたし。

333 名前:ザ・シガー:2008/08/26(火) 22:04:02 ID:GPfvRjAq
はい、投下終了。
夏も終わるというのに夏祭りのお話でした、もうちょい早く仕上げればよかったと反省。

そして、自分で書いておいて言うのもなんだけどシグナム姐さん最高〜!!
なんつうか、シャマとかナンバーズとかレジアスとかマッチョも良いけど、その何よりもシグナム姐さんが最高だ。
ポニテからストレートになるとかマジ最終兵器じゃね?

334 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/26(火) 22:46:18 ID:uSzVJDt2
そのうちティアナが鉈持って暴れそうだなw

本編は病んでいたけど、それは別に

335 名前:サイヒ:2008/08/26(火) 22:52:23 ID:/6vr7dO3
>ザ・シガー氏
GJ!!
浴衣と言ったらお外の茂み。
これもはや日本の常識!

>ポニテからストレートになるとかマジ最終兵器じゃね?
もろ手を挙げて大賛成。


二十三時頃から投下させてもらいます。

336 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/26(火) 22:54:57 ID:sDfTSfpV
>ザ・シガー氏
エロ過ぎだw
エロ過ぎなんだよ!!

>ポニテからストレートになるとかマジ最終兵器じゃね?
全くだ。
ティアナの髪型チェンジも反則すぎだぜww

337 名前:サイヒ:2008/08/26(火) 22:59:37 ID:/6vr7dO3
連載一回お休みして番外編のエロなんぞを。

クロフェで母乳プレイ再び。搾乳と呼ぶにはちと生温いレベル。ほんのちょっとだけ尻も有り。
「あの日見上げた空に」の外伝としてますが、「本編一年後、クロフェが結婚して子供作った」程度の認識でも読めます。
クロフェ・ユーなの・ゲンはやの子供であるオリキャラが0歳児として出てきてます(おまけその三だけは大人状態)。
全体的に登場人物がダメダメな思考の持ち主になっちゃってます。特に執務官。

338 名前:おっぱい禁止令:2008/08/26(火) 23:00:49 ID:/6vr7dO3
 我が子が無心で乳を吸っているという光景は、心和むものだった。
 フェイトとクロノの愛の結晶である息子、クロードは元気良くフェイトのおっぱいにしゃぶりついて母
乳を吸っている。
 だが突然、こくこくと動いていた喉の動きが止まった。母乳が出なくなったらしい。
 もうちょっと出ないかと粘って乳首をしゃぶる息子に、フェイトも乳房の根元を揉んで手助けしてみる
が出る気配はない。
 フェイトは反対側の胸もはだけてクロードに与えるがまたすぐに母乳は途切れ、空腹の収まらないクロー
ドの顔がだんだん泣き顔に崩れてくる。

「ごめんアルフ、粉ミルク溶かしてくれないかな」
「またおっぱい出なくなったのかい?」

 家事スキルについてはフェイトの数段上をいくようになっている使い魔は、手早く常備してある粉ミル
クを湯で溶かし人肌温にまで冷まして持ってくる。
 省エネモードのため五、六歳程度の身長しかないアルフだが、しっかりとフェイトからクロードを受け
取って哺乳瓶を口に当てた。
 たちまち泣き顔を引っ込めたクロードは、嬉しそうに哺乳瓶に吸いつきごくごくと飲みだす。

「なんか周期があるみたいだね。そういう症状の病気は聞いたことないけど」
「う、うん……」
「一回シャマルのとこで検査でも受けた方がいいんじゃないかい?」
「そ、そうだね。今度の休日にでも……」

 気遣いしてくる使い魔に生返事を返しながら、アルフには見えない角度でフェイトははだけたままの乳
首の脇に触れる。
 そこには、ぽつりと赤い歯型がはっきり残っていた。

(やっぱり……これのせいだよね)

 指でなぞりながら赤面するフェイトをよそに、哺乳瓶のミルクを全部飲み干した息子は気持ちよさそう
なげっぷをしていた。



          あの日見上げた空に 外伝  『おっぱい禁止令』



「だから、しばらくおっぱい触るのも吸うのも駄目」
「……そういう理由なら仕方ないけど」

 その夜、自室で二人っきりになったフェイトの宣言にクロノはあっさりと頷きはした。しかしすぐに問
うてくる。

339 名前:おっぱい禁止令:2008/08/26(火) 23:02:12 ID:/6vr7dO3
「けど、君は我慢できるのか? いつもいつもあんなに悦んでたのに」
「あうっ……」

 クロノに問われて、フェイトは顔を赤らめる。
 フェイトの母乳が時々出なくなる理由は病気でもなんでもなく、夫婦の営みの際クロノにあげているか
らクロードの分が無くなっているだけである。
 性交の最中に母乳が出ると、フェイトの官能はとんでもなく刺激されるのだ。
 赤子のひ弱な吸い方ではなくクロノの吸引力で根こそぎ吸われるのも、無骨な指で力強く母乳を揉み出
されるのも、出産前の交わりでは不可能だった快感を与えてくれてフェイトは積極的に頼んでクロノに飲
まれたり搾られたりしていた。さすがに、息子に吸われた時もいやらしい気分になったりはしないが。
 クロノも母乳の味が気に入ったらしく、これまで止めようと言い出したことはなかった。

「……平気だよ。別に、胸を触らないっていうだけで、他のことはちゃんとするんだから」
「粉ミルクでも別に栄養値的には問題ないと思うんだが」
「だって、育児書に母乳を与えた方が自然に母子の愛情が育ちますってあったから」

 フェイトにとってプレシアが母親として欠落した部分の多すぎた人物だっただけに、余計フェイトは親
子の絆を大切にしたかった。大量の育児書を買うだけでなく、リンディやレティから実体験に基づいた知
識を聞いてノートにまとめたりもしている。
 なによりもフェイトにとって母乳を与えるということは、自分がちゃんと人の親になれたという証のよ
うに思える重要な行為だった。

「とりあえず、お互い自重するということでいいか」
「うん」
「なら、しゃべるのはこのへんにして……」

 頷いたフェイトに、クロノの顔が近づいてくる。
 キスしながらゆっくりと押し倒されていき、シーツの上に横たわる。いつもならパジャマのボタンが外
されるところだが、クロノの指は下半身に向かってズボンと下着を引っ掛ける。膝の辺りまでずらすと、
そのままクロノは顔を埋めてきた。

「い、いきなり舐めるの?」
「胸を揉めないんだったら、他にやり方が無いだろう。……それとも、こっちがよかったのか?」

 後ろの穴をちょんちょんとつつかれ、フェイトは菊座に舌が入ってくる時の感触を思い出す。指には及
ばない浅さだが、クロノの舌が腸壁を這いずると背筋がぞわぞわして全身が痙攣するぐらい気持ちいい。
記憶を反芻しただけで思わず括約筋に力が入って、肛門がきゅっとすぼまった。

「……やっぱりこっちを舐めて欲しそうな顔してるな」

 早くもスイッチが切り替わったらしく、黒い笑みの混じった声を合図に舌が一度離れて腰が持ち上げら
れる。
 だがクロノの舌が向かったのは尻穴ではなかった。前と後ろの穴のちょうど中間地点。蟻の戸渡りと呼
ばれる部分であった。

340 名前:おっぱい禁止令:2008/08/26(火) 23:03:53 ID:/6vr7dO3
「ひゃん! くすぐったい……よ」

 湿った舌に敏感な部分を舐められ身をよじるフェイトだったが、身体が震えるのはくすぐったさだけで
はない。
 すぐ近くにもっと直接的に愛撫できる場所があるため滅多と触れられることはないが、クロノに舐めら
れている部分はしっかりと感じる場所の一つである。
 皮膚のすぐ下にある性感神経が、舌で優しく触れられて微弱な電流を頭に送ってくる。
 後ろの指も徐々に深く進んでくるがまだほんの入り口までで、硬く閉じた秘門をほぐしてリラックスさ
せようという動きだった。
 腰で隠れているためクロノが具体的に何をやっているのかフェイトには分からず、その分だけ神経が過
敏になり、じんわりと股間が濡れてくる。

「お尻、もっといろいろしてくれても、いいよ」

 蕩け出した声で囁くフェイト。許可のような口調だが、実態は己の欲望を形を変えて伝えただけである。
もちろんクロノもそこは心得ていて、やや奥深くまで抜き差ししながら肉壁を擦る。
 尻から上がってくる刺激にいっそう顔を緩ませるフェイトだったが、いきなりぴりっと胸の先から快感
が走った。
 思わず我に返って胸に眼をやると、自分の右手がゆっくりと乳首を転がしていた。完全に無意識下の淫
らな行動に、フェイトの頭はかっと熱くなる。
 幸いクロノが気づいた様子は無い。慌てて手を引っ込めるが、どうしても突き出した乳首に眼がいって
しまう。
 思い返せば、これまでクロノに性器を舌で愛される時は体勢上どうしても胸がお留守になってしまい、
必ずと言っていいほどフェイトは自分で自分の胸を慰めていた。
 それ以外の場合でも、抱き合う時はクロノに揉まれたり吸われたりされなかったことなど無い部分であ
る。なのに今夜は指一本触れられはしないとなると、逆に禁止を破って思うさまいじってみたいという思
考が沸いてくる。
 今もフェイトが息をする度に、柔らかく大きな双丘と中心に咲いた花は触って欲しそうにふるふると揺
れている。

(だめだめ! 自分から触っちゃいけないって言ったんだから、我慢しないと)

 頭を振って、胸への欲望を追い払う。
 フェイトの葛藤など知らぬクロノは、順調に愛撫の段階を上げていく。

『そろそろ、こっちも欲しそうにしてるな』

 念話と同時に、舌が逆戻りして秘裂に攻め入った。
 焦らされることなく、溢れる愛液がすすられ舌が突き入れられる。単純に入れるのではなく、丸めるこ
とで厚みと尖りを持たせてフェイトの蜜壷が味わわれている。さらに歯が硬くなった淫核を甘噛んだ。

341 名前:おっぱい禁止令:2008/08/26(火) 23:05:05 ID:/6vr7dO3
「ふぁ、っあぁ……!」
『そういえば、お尻にもいろいろしてよかったんだっけ』

 ぐいっと指が押し込まれる。
 もう撫でる程度だった最初の優しさはどこにもない。根元まで突っ込まれた指が、容赦なく尻穴をえぐっ
て引っかき回す。舌を越える激しさでフェイトの後ろの穴を侵略し尽くす。
 かと思えば、いきなり指も舌も抜いてクロノは顔を寄せてきた。

「ほら、前も後ろもこんなに濡れてる」

 クロノの口の周りは明らかに唾液とは違う液体でてらてらと光っており、目の前に出された指も腸液で
ねっとりと濡れていた。
 自分の分泌した恥ずかしい液体を見せられて、頬を染め反射的に顔を背けるフェイトだが、クロノの唇
が追ってくる。
 唇が重ねられ、舌を絡め取られる。自分の愛液がたっぷりとついて汚れたクロノの舌だが、まさぐり合っ
てクロノの唾液を飲むうちにそんなことはどうでもよくなった。
 その間も右手は尻に戻り、残った左手は秘裂に二本まとめて差し込んで指の腹を使って膣壁をなぞり上
げる。

「指と舌、どっちがいい?」
「どっちも、気持ちいいよ。もっとして、クロノぉ……!」
「お尻も?」
「うん、指ももっと挿入れて……ひぁっ!」

 前と後ろの指が、相反する動きを取り出した。
 秘裂の指が前後して奥底を突けば、尻の指は腸壁を擦ったり引っかいたりしてくる。
 かと思えばその数秒後には後ろが抽迭を始め、前は親指で秘芯が捏ねくり回される。
 両方からくる快感の種類が目まぐるしく変化し、フェイトに息を吸う暇さえ与えず絶頂へと引っ張り上
げられていった。

「ああ、気持ちいい……! 私、イッちゃうぅ……っ!」

 一際強く淫核を押し潰された瞬間、全身の筋肉に力が入り秘裂と尻穴がぎゅっと締まってクロノの指を
強く噛んだ。
 完全な受身での半強制的な絶頂だったが、そんなことは快感の大きさの前には些細なことだった。
 フェイトが果てるのに合わせて尻の指は抜いたクロノだが、前はなおしばらく動かしてフェイトを高み
からゆっくりと下ろしてくれる。
 喘ぐフェイトに満足そうな視線を落としながら、クロノもパジャマを脱ぎ去って、いきり立っている性
器を握った。

342 名前:おっぱい禁止令:2008/08/26(火) 23:05:55 ID:/6vr7dO3
「じゃあそろそろ、始めようか」
「……うん」

 身体が貫かれる衝撃と快感を思い出しながら、フェイトは自分からゆっくりと股を開いて、溶けなぐら
い熱を帯びた身体をクロノに差し出す。
 だが胸の奥にだけ、ほんのわずかな切なさが残っていた。



          ※



「二回目、出すぞ……!」
「あ、はぁあ……! あ、熱いぃ!」

 ごぽごぽと音を立てて、子宮に入りきらなかったクロノの欲望が結合部から滴り落ちていく。
 犬のように四つん這いになって背後から抱かれていたフェイトも同時に達し、絶頂の陶酔に涙と唾液を
流す。下の口からも、白濁液の後を追って新しい愛液が洪水のように流れ落ちていた。
 激しく喘ぐフェイトだったが、官能が満たされたわけではけっしてない。
 クロノの倍以上の回数絶頂に達し、たっぷりと精液を注がれてなお、フェイトの身体は乾いていた。

(おっぱい……触ってほしい……)

 前戯の段階から不満を訴えていた乳房は、もう媚薬をたっぷり塗り込められたかのようにじんじんと全
体が疼いていた。
 どれほど激しく達しても、すぐに胸の感触に引きずられる。イキたいのにイけない生殺しの状態に極め
て近い。

(先っぽだけなら……おっぱい出ないよね)

 クロノの肉棒はまだ硬さを保ったままフェイトの胎内にあるが、休憩中なのか特に動きもせず尻や背中
を撫でたり髪の毛をいじくったりして遊んでいる。
 クロノの様子を窺いながら、フェイトはそろりと折りたたんだ右腕を胸の先端へと持っていく。
 胸中の血が集まったように尖りきった乳首をきゅっと捻った瞬間、頭がずくんと痺れた。

「あぐぅ!?」

 背後でクロノの呻きが上がる。快感に反応して膣の具合が急激に変化したのが、両者にとって予期せぬ
不意打ちになったらしい。
 だが、クロノに気づかれたかもしれないという懸念など、フェイトの頭の中にはなかった。

343 名前:おっぱい禁止令:2008/08/26(火) 23:07:02 ID:/6vr7dO3
(乳首が、すごく気持ちいい……!!)

 強く愛撫されるのを待ちわびていた胸にとって、軽い愛撫でも十分すぎる刺激になった。
 片手だけでは足りない。反対側の乳首にも手を伸ばし、フェイトは夢中になって乳首をいじくり続けた。
 しこった乳首を徹底的に揉みほぐし、爪で引っかき、思い切り引っ張る。
 その一つ一つの行為が肉棒で突かれるぐらいに気持ちよく、全身が悦びに打ち震えじりじりと肉体の限
界へと引き金が引かれていく。
 フェイトは確信する。このまま乳首を触っているだけで自分は膣内射精に匹敵する絶頂を迎えられると。
 乳首だけでこれなら、母乳を搾ればどれだけの快感が待っているのか、予測がつかない。

(一回だけ。一回おっぱい出すだけなら、クロードの分も残ってる、よね?)

 答えの分かりきった自問自答を終え、フェイトが自分の乳房を握ろうとした時だった。
 ぐいっと強く両手首が掴まれる。はっとして首を回せば、唇の端を吊り上げてクロノが笑っていた。

「僕には触るなと言っておいて、自分であれこれするのはルール違反なんじゃないか」
「こ、これは、そうじゃなくて…………きゃっ!?」

 言い訳など聞く耳持たぬとばかりに、乱暴に上体が起こされる。そのまま激しく何度も腕が引っ張られ
た。

「ひぁっ! あふんっ! や、めて、クロ……はぁぁぁん!!」

 上半身の振動が下半身にも伝わって、繋がったままの膣がかき回される。
 だがそれ以上に、揺らされる乳房からの刺激がフェイトを悶絶させていた。勢いよく左右に身体を揺ら
されると、乳房同士が軽くぶつかり合う。たったそれだけの小さな衝撃が、胸の神経を通る間に何十倍に
も増幅されてよがり声を上げさせた。
 一度自ら禁を破った身体は、あっという間に理性をかなぐり捨ててクロノに懇願した。

「クロノっ、お願いだからおっぱい触って揉んで吸って、気持ちよくして……!」
「明日クロードにおっぱいやれなくなっても、いいんだな?」

 クロノの言葉にほんの数瞬だけ母性が甦り、否定の声を出そうと口を開く。
 だがすぐさま浅ましい雌の本能が取り代わり、欲望の示すがままにフェイトは叫んだ。

「いいからぁ、私のおっぱい絞って……いっぱい出してぇ!!」

 手首の拘束が解かれ、布団の上へと墜落するようにフェイトの上半身は落下する。
 胸に手が回り乳房をぐっと強く握られた瞬間、三種類の音がした。
 胸からは、母乳が吹き出す小さな音。
 股間からは、溜まった愛液が肉棒と秘裂の隙間から噴出する音。
 そして最後が、フェイトの口から漏れた絶叫だった。

「は、ああああぁぁぁん!!!!」

 がくがくと全身を痙攣させながら、尾を引く叫びをフェイトの喉は上げ続ける。

344 名前:おっぱい禁止令:2008/08/26(火) 23:08:00 ID:/6vr7dO3
「くっ……また締まる……! 一回搾られただけで、イッたのかフェイト」
「だってぇ、だってぇ……!」

 半開きの口から涎と意味の無い言葉を垂れ流しながら、クロノの手のひらに乳房を押しつけてフェイト
は催促する。
 何度もフェイトの乳を搾り慣れているクロノは、絶妙の指遣いで胸を揉み母乳を搾り取っていく。あっ
という間に、眼前のシーツが白く重く濡れそぼった。
 一度先端から母乳が滴る毎に、フェイトは絶頂に襲われ意識を飛ばしかける。同時に、流した分だけ別
の白色の液体を求めようと膣が収縮しながら蠢いた。

「もうちょっと、力を抜いてくれ。このままだと……挿入れてるだけで出しそうだ……!」

 クロノの頼みを聞き入れることなどなく、鼻腔から入ってくる乳臭さに脳髄までも犯されたフェイトは、
逆に自分の堕落した願いだけを口にした。

「私のおっぱい、搾るだけじゃなくて……飲んで。でないと、クロノの精液このまま枯れるまで全部出さ
せちゃうんだから……!」
「それは困る、なっ!」
「ひゃああん!?」

 身体が引っ張り上げられ、胎内をえぐり続けていた肉棒の角度が変わる。
 一気に後背位から背面座位に移行したクロノは、すかさずフェイトの右胸を強引に歪ませて乳首を口に
含んだ。
 肺活量だけでなく乳房を揉みあげる握力も加わり、あっという間にフェイトの母乳は吸い取られていく。
逆の胸を揉む手も止まりはしない。途中に乳首を歯で挟むことも忘れない。

「あ、ひあああっ!! もっといっぱい吸って!!」
 
 自分の体内で作り出した液体を、最愛の人が極上の美味として飲んでいる。
 その一事だけで、恋愛心・母性・肉欲といったフェイトの中のあらゆる要素が歓喜の悲鳴を上げて肉体
を打ち震えさせた。きっとクロノの精液をフェイトが飲んでいる時も、クロノは近い気分になっているの
だろう。
 小水のように蜜を垂れ流して感じながら、フェイトはこの交わりに唯一足りていない物を求める。

「全部っ、私の全部クロノにあげるからっ……! クロノもちょうだい!!」

 ありったけの力できつくクロノの分身を包みながら、同時にフェイトは腰を捻った。
 肉棒が激しく痙攣したかと思うと、どっと切っ先から灼熱の液体が発射され子宮を直撃する。

「はあっあああっああああぁぁぁぁんん!!!!」

 フェイトの身体も視界も真っ白に染まった。
 半分意識を失ったまま前のめりに倒れこめば、母乳を吸ったシーツがべったりと頬に張りついた。

345 名前:おっぱい禁止令:2008/08/26(火) 23:09:24 ID:/6vr7dO3
          ※



(…………う〜〜〜〜)

 事が終わって意識が回復し頭が醒めると、フェイトはあまりの自己嫌悪に寝台の隅っこで頭からシーツ
にくるまり呻いていた。
 自重しようと思っていたのに、結局は肉欲に負けて母乳を絞り尽くされてしまった。明日もクロードの
ご飯は粉ミルクだ。

(母親失格かな……)

 落ち込んで涙ぐみかけているフェイトに、クロノが声をかけてくる。

「すまない。我慢できなかった」
「…………クロノは悪くないよ。先にして欲しいって言ったのは、私なんだから」
「だけど僕も自重すべきだった。……まあ、君に喘ぎながら絞って欲しいなんて言われて、我慢できる訳
がなかったか」

 クロノの言葉でついさっきまでの痴態を思い出し、赤面したフェイトはますます強くシーツを引っかぶっ
てしまう。
 そんなフェイトの身体をあやすように、シーツ越しにクロノが優しく撫でてくれた。

「なんだったら、君の母乳が出なくなるまでこういうことするの止めようか?」
「……我慢できる? 溜めちゃうの、身体に悪いよ」
「妊娠中はずっとしてなかっただろ。一回やったら、二回目は簡単だ。期間も短いだろうしな」

 背中を撫でていた手が止まり、優しくフェイトを抱きしめてくる。

「するかしないかは、君に任せる。母乳は僕やクロードの物である以前に、君の物なんだから」
「……明日の夜までに、考えとく」

 考えると言いはしたが、心が多少は平静を取り戻し母乳の甘ったるい匂いとクロノの温かさに包まれて
いるうち、どちらを選ぶか全く決まらぬままに性交の疲労からフェイトの精神はゆっくりと眠りに落ちて
いく。

(……明日もクロードにおっぱいあげれないから……その分いっぱい抱っこしてあげよう)

 歌を歌ってあげて、絵本を読んであげて、母親が子供にして上げられることをいっぱいしてあげよう。
 それだけはちゃんと決めて、フェイトは緩やかに瞼を閉じた。



          終わり

346 名前:おっぱい禁止令:2008/08/26(火) 23:10:20 ID:/6vr7dO3
          おまけその一「スクライア家」



 どろりと、三度目なのに濃さの薄れない液体が舌に零れた。舌の上でたっぷりと味わいつくしてから喉
に送って、熱さと粘りを内臓の感覚で愉しむ。
 最後の一滴まで飲み干してからなのはが顔を上げれば、口淫を受けていたユーノも満足そうな表情を浮
かべている。
 だが同時に、どこか満ち足りない色も顔に表れていた。

「ねえなのは。口も気持ちいいんだけど、そろそろ本番したいなぁって……」
「駄目だよ。今晩は口だけでしかやってあげない」
「ええっっ、なんで!?」
「昨日私のミルクいっぱい飲んだんだから、今日は私が飲ませてもらう番なの」
「……ひょっとして、昨日ユーナの分まで飲んじゃったこと……怒ってる?」

 無言のままにっこり笑うと、ユーノの顔色が面白いように青ざめた。そのくせ肉棒は張り切ったままな
のが少し滑稽である。
 笑顔のまま唇から舌を覗かせ、亀頭をつんつんとつついている時だった。部屋に置いている端末が鳴っ
て、よく知ったデバイスの声を発する。

『マスター、ユーナお嬢様が起きられました。空腹かおしめが原因かと思われるのですが』
「分かった。今いくね」

 ちゅぽんと口から出して、なのはは若干乱れた服装を整える。

「えっ、まさか僕このまま放置プレイ!?」

 股間を露出したまま情け無い声を上げているユーノを置き去りにして自室へ戻り、ベビーベッドの隣の
机に置いてある愛機になのはは軽く礼をする。

「レイジングハート、お守りご苦労様」
『お気になさらず。アイナさんがおられない時に面倒を見るのは私の義務ですから。ヴィヴィオお嬢様は、
妹の面倒を見るにはまだ幼いですし』

 ぐずっているユーナを抱きかかえてはだけた胸元に近づけてやると、すぐに元気よく吸い始める。
 やがて乳首を口に含んだままことりと眠りに落ちた娘を下ろしユーノの部屋へ帰ると、夫がベッドの上
で土下座していた。

「お願いだから挿入れさせて」



『マスター、またお嬢様が起きられたのですが』
「あ、はぁぅん、レイジング、ハート……あと五分だけ……くぅんっ! ユーノ君、そこ、もっと!」
『了解しました。では僭越ながら私が子守唄など。ぼうや〜良い子だねんねしな〜。い〜まも昔も……も
う眠られましたか。本当に空気の読める良い子ですねお嬢様は』



          まだ続く

347 名前:おっぱい禁止令:2008/08/26(火) 23:12:16 ID:/6vr7dO3
          おまけその二「八神家」



「最近、トウヤが不満あるみたいなんです」
「何に対してだ?」

 夜更けに自室へとやってきた妻に、ゲンヤは服を脱ぐ手を止めて訊ねた。
 誕生したばかりの息子の異常は、どんな些細なことでも気にかかる。
 だが一足先にベッドの上で全裸となって三角座りしていたはやての言葉に、ゲンヤは思い切り拍子抜け
した。

「私のおっぱいに」
「…………へぇ」
「私のおっぱい飲み終わった後は必ず、シグナムやらスバル見てあっちの方がうまそうやって顔してるん
です」
「生まれたばっかりのガキがそんな顔するか」
「けどこないだ試しにシグナムのおっぱい吸わせてみた時は凄かったですよ?」
「吸わせるな」
「ちなみにヴィータの胸も吸わせてやろうとしたらトウヤめちゃめちゃ嫌がりました」
「…………だからあいつ部屋の隅でいじけてたのか」

 息子の将来が本気で心配になるゲンヤだった。我が子は間違いなく、母親最大の悪癖である乳への妄念
を受け継いでいる。

「だからせめてもうちょーっとだけ自分の胸を大きくしてやりたいな、と母親として思うんです」
「どうやってだ? シリコン入れたりするのか」
「まさか。周りのバスト成長に貢献し続けた私が断言します。そんなニセチチ手術せんでも、乳は揉まれ
て大きくなる。……だから」

 胸の前で脚を抱いていた腕をほどいたはやてが、猫のような姿勢と笑顔でにじりよってくる。

「現状、私の乳を揉む唯一の権利者である旦那さんに頑張ってもらいたいなぁと思ってるわけですよ」
「……ああ、つまり」

 遠回しすぎる誘いの意味を遅まきながらもようやくゲンヤは悟り、残っていた服を手早く脱ぎ捨て、は
やてを膝の上に抱き上げる。

「今夜はいっぱいしてほしいってことか?」

 ゲンヤの回答に、はやてはたいそう嬉しそうな顔でこくりと頷いて、口づけてきた。

「トウヤにけっこう飲まれましたけど、まだ二口ぐらいはゲンヤさんの分、残ってますよ?」



          まだまだ続く

348 名前:おっぱい禁止令:2008/08/26(火) 23:13:11 ID:/6vr7dO3
          おまけその三「二十年後のクロード・T・ハラオウン宅」



「よあ〜けのない、世界なんてな〜いから〜」


「なんかあの歌、聞いたことあるな」
「第九十七管理外世界の歌。この間実家に帰った時に、母さんがクロナに子守唄で歌ってた。ユーナも教
えてもらったんだろ」
「言われてみりゃ歌詞が日本語っぽい気がするな。……子供で思い出したが時にクロードよ、お前を一児
の父親にして俺の親友と見込んで訊ねたいことがある。正直に答えてくれ」
「なんだ?」
「母乳って美味いのか?」
「ぶっっっ!?」
「やっぱり由緒正しき二代目乳揉み士としては、揉んだら出る物の味も知っとかないとな。避妊具無しで
初体験に臨んで見事にホールインワン達成したエロード大先生だったら、母乳プレイの一回や二回やって
んだろ?」
「エロード言うな! そ、そ、そんな非常識なこと、やってるわけないだろう!」
「お前ってさぁ、嘘つく時必ず天井見るわどもるわで丸分かりだよな」
「う、うるさいっ! いくら親友だろうが答える義理はない! 自分で結婚相手を見つけて確かめろ!」
「そんな理想の相手が見つからないから訊いてんじゃないか」
「ハードルを下げろ。はやてさんぐらい料理上手でシグナム先生ぐらい胸があってシャマルさんぐらい優
しくてヴィータさんぐらい強い女性なんているわけないだろ」
「いいや、絶対いるはずだ! レトルト食品しか作れなくて胸がAAカップで優しさの欠片も無くて運動
神経ゼロな女が身近にいるんだから、その逆もこの世のどこかにいるに違いない! だいたいお前なんか
昔は理想の女性はフェイトさんだって言ってたくせに貧乳のユーナ……」
「 ふ た り と も ?」
「うわっっ!?」
「ユ、ユーナ!? お前いつからそこに……」
「お酒は飲んでもいいけど、あんまり騒ぎすぎてクロナが起きたりしたら…………怒るよ?」
「す、すまない! 静かに飲むから!」
「お、俺もぼちぼち帰るから!」
「静かにしてくれるなら、泊まっていったってかまわないよトウヤ君。私はもう寝るから、お皿とグラス
は水洗いだけしといてね。じゃあ、おやすみなさい」
「ああ、おやすみ。…………なんか最近、あいつキャラクター変わってないか? こう、笑顔に凄い迫力
があるっていうか」
「たしかに結婚したあたりからちょっとずつなのは義母さんに似てきてたような……」
「高町の血が今頃になって覚醒してんのか。そしてお前はどんどん尻に敷かれていってると」
「まあ、僕の知り合いで奥さんの尻に敷かれてない人なんていないし……」
「例外はうちの親父ぐらいか。なんでこんなに男が肩身の狭い思いする家ばっかりなんだろうなあ」



 その頃、教会にて。

「母乳と血液の成分はほぼ同じ。ということは、授乳行為とは言葉を変えれば吸血行為でもあるというこ
と。親子関係とは麗しき捕食関係でもあるのですねえ」
「…………フレイヤ、あなた何を突然?」
「いえ、お母様がコーヒーにミルクを入れているのを見て、ふと思いついただけのことです。うふふふふ」
(……本当にこの娘、苦手だわ)

 いつもの胡散臭い笑みを顔に貼りつけたままブラックコーヒーに生チョコのすり下ろしを浮かべて優雅
に飲んでいる養女を眺めつつ、カリムもコーヒーを口に運ぶ。
 ミルクも砂糖も入れたのに、やたらと苦かった。



          今度こそ終わり

349 名前:サイヒ:2008/08/26(火) 23:15:40 ID:/6vr7dO3
以上です。
自分で書いといてなんですが、三人娘のおっぱい吸い放題な子供達に軽く殺意が沸いた。


連載のプロット見直してたら、クロフェ時空のくせしてクロフェの会話シーンが最終回にしかないという
致命的な問題点(俺にとって)を見っけたんでクロフェ分自給自足。
おまけで盛大に連載のネタばれしてますが、特に先の展開を秘密にするような話でもないですし。

番外編第二段として「ルー子のエリオ寝取り計画(失敗編)」もやる予定。

350 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/26(火) 23:21:32 ID:XPaQA/9W
GJ!

>>「けどこないだ試しにシグナムのおっぱい吸わせてみた時は凄かったですよ?」
>>「ちなみにヴィータの胸も吸わせてやろうとしたらトウヤめちゃめちゃ嫌がりました」

 試しに吸わそうとして頭から囓られるリィンを幻視しました。
 って、何やってんですかはやてちゃん。


>>「ルー子のエリオ寝取り計画(失敗編)」

 正座して待ってます。がんばれルーちゃん

351 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/26(火) 23:48:16 ID:GPfvRjAq
GJ!!!  やっぱオッパイは良い、いや凄く良い!!!

相も変らぬエロさ、脱帽にございますよお師さん。
しかし、フェイトが胸だけで徹底的に悦楽を感じるようになったのは間違いなくクロノのせいだwww

352 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/26(火) 23:49:58 ID:sDfTSfpV
>サイヒ氏

  _   ∩
( ゚∀゚)彡 おっぱい!おっぱい!
 ⊂彡



353 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/26(火) 23:51:24 ID:1Vtg+ZSQ
GJ!!

>>「ルー子のエリオ寝取り計画(失敗編)」
失敗篇、ってことは性k……もとい成功篇もあるんですよね?!
あるといってください、お願いします

354 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/27(水) 00:29:14 ID:DVNqak4F
超GJ!
実にいいおっぱいでした
性格の3分の2は遺伝で決まるらしい……

355 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/27(水) 06:29:28 ID:+gcDj7nW
>>349
GJ!
相変わらずな色ボケ具合ですね、この二人w
あと何気に親として子供を気遣うフェイトと、そんなフェイトを気遣うクロノが
いい感じです。

でも、これだけのことやっても、子供はクロード一人だけなんですよね。この時空のクロフェ。
実はもう一人、弟か妹ができていても面白いけど、どうなんでしょう?

356 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/27(水) 08:09:16 ID:CnRR4V1B
プロバイダが規制されていて投下ができないorz
文章多いからケータイは厳しいし・・・泣けてきた。

357 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/27(水) 09:20:47 ID:nDSkLRI2
よし!会社か学校のPCから投下するんだ!ww

358 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/27(水) 09:47:09 ID:B+sNQsHZ
>>356
もっと推敲しろという神のお告げだよ、きっと
マターリしとけ。スレは逃げやしないからw

359 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/27(水) 10:07:43 ID:uBIWUml1
>>358

魔法少女リリカルなのは総合エロ小説第82話 は逃げ出した!
しかし( )に周りを囲まれてしまった!

( )内に入る言葉を答えよ

360 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/27(水) 10:57:17 ID:7u+UDM+e
>>359
変態紳士達 だな

361 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/27(水) 11:46:23 ID:mrFnBBKJ
ウホッ☆

362 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/27(水) 12:16:32 ID:F/wgW+ox
ちょっと懐かしいネタだがなのはエロパロと言えば、
納豆、G、キシャーに囲まれるべきじゃないかと思う。

363 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/27(水) 18:12:49 ID:i5rCkqcA
>>362
あの頃のスレはカオスだった……今はだいぶ落ち着いたね

364 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/27(水) 18:27:55 ID:ZQPv4w5L
G…ってなんだっけ?

365 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/27(水) 18:33:46 ID:PUwldMaG
調理場の黒い悪魔

366 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/27(水) 19:10:04 ID:aG1zxmMo
ルールーのインゼクトですね、わかります

367 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/27(水) 19:29:46 ID:UkQl5JNL
ガリューだろがりゅー

368 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/27(水) 19:41:03 ID:NhnrqKFD
>>349
フェイトさんみたいな立派なおっぱいを持つ妻ならクロノのようになっても仕方がないかと

ルー子のエリオ寝取り計画(失敗編)…ものすごい楽しみ!!!!
個人的には成功編が見られたらヘブン状態になりそう

369 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/27(水) 22:45:55 ID:CDEPQNpe
GJ!
エロノが凄くうらやましいです。
フェイトさんには頑張って大切な夫と子の相手を頑張って欲しい


そしてどうしてもルー子のエリオ寝取り計画が気になってしまう。
成功編…キャロが空鍋かきまわす想像が一発でできてしまうほど楽しみです。

370 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/27(水) 23:13:49 ID:zogC6wtA
GJ!
続きが楽しみだぜ!

371 名前:詞ツツリ ◆265XGj4R92 :2008/08/27(水) 23:19:50 ID:zogC6wtA
長い冬が明けた……
ようやく規制解除されましたので、30分から【空へと響く銃弾】第二話を投下してもよろしいでしょうか?


372 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/27(水) 23:20:32 ID:Ydm2ivte
遅かったじゃないか・・・

373 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/27(水) 23:21:05 ID:1zDK6k95
全力でOK! あなたのSS、一日千秋お待ちしておりました。

374 名前:空へと響く銃弾 第二話 ◆265XGj4R92 :2008/08/27(水) 23:30:05 ID:zogC6wtA
そろそろ投下開始します。
注意:脇キャラですが、オリキャラが出ます。
残酷描写がこれからの物語で登場する可能性があります。
さほど露骨にではありませんが、SSXの設定が織り込まれています。
それらをご注意してください。


375 名前:空へと響く銃弾 第二話 ◆265XGj4R92 :2008/08/27(水) 23:30:54 ID:zogC6wtA

 ボタボタと口から零れ出る液体が酸っぱかった。
 胸が、喉が焼けそうで、どこまでも吐瀉物が止まらない。

「うぼぇえ」

 ゲロまみれの無様な姿。
 耳に嵌め込んだイヤホンから冷たい報告連絡。

 ――射殺完了。

 胸が燃えるようで。
 下半身が凍りついたようで。
 頭蓋骨の裏側が掻き毟られているかのようで、ジンジンした。
 その日、買いに行った商売女が泣き叫ぶほどに犯した。

 それが俺の初めての人殺し。

 スコープの中の世界を砕いた日のことだった。




 空へと響く銃弾

 2.薬室に弾丸を詰め込んで、ボルトを引き、閉鎖する。




 ミッドチルダ首都航空隊。
 それが今のヴァイスの職場でもあった。
 そして、その場所にはかつての同僚がよく顔を合わせる場所でもある。
 それは――

「あー、ヴァイス先輩〜!」

 地上本部、航空隊宿舎の廊下から一人の女性が小走りに現れた。
 アルト・クラリッタ。
 元機動六課のオペレーター、今は陸士108部隊に所属し、その正式ヘリパイロット。
 その身に纏うフライトジャケットが何よりの証拠。

「よぉちびアルト、こんな場所で会うとは珍しいな。なんか用か?」

 ヴァイスがアルトに訊ねると、彼女は少しだけ頬を膨らませて答えた。

「用が無いとあっちゃいけないんですか?」

「ぇ?」

「ぶー、まあいいですけどね! これ、JF−704の整備報告です。整備課の人からついでに渡してくれって頼まれまして」

 別部署なのに、わざわざアルトに渡されたという事実は普通に考えれば少しおかしいことだろう。
 しかし、この地上本部はあまり変わって事ではない。
 何故なら彼と彼女はとてもある意味において仲良しだからだ。


376 名前:空へと響く銃弾 第二話 ◆265XGj4R92 :2008/08/27(水) 23:31:25 ID:zogC6wtA

「ん、サンキュ」

 そういってアルトにお礼の言葉を呟くヴァイス。
 ヴァイス先輩。
 アルトの二年前からさほど変わらない態度、グランセニック陸曹という呼び方の皮がはがれて、彼女は昔通りヴァイスを先輩と呼ぶ。
 長い付き合いだ。
 どこか子供っぽさの抜けないアルトの態度に苦笑しながら、ヴァイスはぺらぺらと書類を確認。
 そして、最後に付けられたヘリパイロットのローテーションスケジュールを見て、眉を歪めた。

「あれ? また俺の待機時間が減らされてるんだが、どういうことだ?」

「いや、私に聞かれても……あ、そういえばヘリに見かけない顔の若い子がいましたけど、新人でも入ったんですか?」

「そういやこの間入ってきたな? ということはその分の割り引きで――くそ、あのおっさん……俺の楽しみを奪うつもりか」

 ガシガシと頭を掻いて、ヴァイスが呻く。
 ヘリパイロットとスナイパー、その二束わらじを履いているヴァイスのスケジュールは不規則だ。
 武装隊に人手が足りなければ引っ張り出されるし、ヘリパイロットに余裕がなければパイロットに移行する。
 どちらも手放せない、大切な仕事になっているからこそ、片方に比重が傾くのがヴァイスには苦悩だった。
 そして、傾く仕事――狙撃手としての時間が長いのは彼にとって苦痛だった。

「先輩?」

「ん、あ、いや……サンキュな。悪いなアルト、わざわざ届けてもらって。生憎俺はここ最近自分も操縦するヘリだって言うのに見にいけなくてさ」

 ヴァイスがヘリの操縦桿を握ったのは一体何日前だろう。
 ストームレイダーのグリップを握る感触だけは生々しく残っているというのに、操縦桿を握る時の感覚は、空へと舞い上がるなんともいえない喜びである感覚が朧だった。

「いえ、別に対した手間でもないですからっ」

 アルトがどこか心配そうに答える。
 ヴァイスの浮かべる影を帯びた表情に、彼女はどこか心配そうな目を浮かべていた。
 そんなアルトの視線に気付いて、ヴァイスは取り繕ったかのように笑みを浮かべると、不意に手を伸ばした。

「よし、アルト! 今度飲みにでもいくか!」

「え? いきなりなんですか!? って、人の髪をくしゃくしゃにしないでくださいよ〜!」

 なでなでとアルトの髪を弄るヴァイスに、うきーとアルトが抗議のパンチをするが、届かない。
 長身の上に手が長いヴァイスの手で押さえられると、小柄な彼女の手は微妙に彼の身体には届かないのだ。
 ぶんぶんと空を切るアルトの手。
 からからと笑うヴァイス。

「先輩、本当に28ですか? もう少し大人になってくださいよ!」

 アルトの反論。
 三十路、二歩手前のヴァイスには辛い言葉だった。

「うるさいぞ、アルトのくせに」

 ぴんとデコピンがアルトのデコに命中。
 のののぉとうめき声が上がった。


377 名前:空へと響く銃弾 第二話 ◆265XGj4R92 :2008/08/27(水) 23:32:27 ID:zogC6wtA

「よし、んじゃ俺は仕事にでも戻るかねー」

 ぜーぜーとアルトが真っ赤な顔で息を吐くころになって、ようやくヴァイスは手を離した。
 うぅ、いじめっ子だぁと涙目でアルトが呟くのは聞かぬふりである。

「あ、ヴァイス先輩っ」

「ん?」

 自分の部署に戻ろうとするヴァイスに、慌ててアルトは声を上げた。

「そういえば、鑑識班のラードさんが先輩を探してましたよ? なんか用事が終わったから、さっさと来いって。アタシ、伝言板じゃないのに」

「ん? わかった」

 何頼んだんですか? と訊ねるアルトに、ヴァイスは野暮用だと軽く誤魔化す。

 不思議がるアルトを置いて、ヴァイスはその場から立ち去った。




 午前中のデスクワーク作業。
 報告書の草案をまとめ終わり、データを保存したヴァイスは昼飯時にも関わらず食堂に向かわず、ある一室へと足を運んでいた。
 地上本部での捜査任務に属する鑑識班、その部署である。
 武装捜査員と呼ばれる武装隊と鑑識班の繋がりは深い。
 単純な捜査や武力での鎮圧では解決出来ない、科学捜査や最新のテクノロジーなどを用いての分析など彼らの重要性は高いのだ。
 そして、その中の鑑識員の一人にヴァイスは個人的なつてがあった。

「おーう、ヴァイスじゃないか。よく来たな」

 鑑識課の部屋の中、昼飯に出て行ったらしい無人の空間に一人だけコーヒーのカップを持った男がいる。
 にこやかな笑顔、低い身長、少年を思わせる童顔に、藍色の髪。その口から出るのはどこか年老いた男の声。
 少年のような男の名はラード。ラード・グラス。
 年齢にして40にも至る見かけだけならば、十代半ば程度の――幼年成熟の特性を持つ次元世界の住人だった。
 地上本部の古株でもある人物に、昔からヴァイスは世話になっていた。
 元々は質量兵器――弾痕分析などの権威でもある人物である。彼の住まう次元世界は管理世界においても、魔力素が存在しない世界のため例外的に質量兵器が解禁されており、硝煙と鉛玉が行き交う世界だ。
 そのためあまり魔法を好いていない変わった人物でもある。


378 名前:空へと響く銃弾 第二話 ◆265XGj4R92 :2008/08/27(水) 23:33:12 ID:zogC6wtA

「なんか呼んでたらしいっすね」

「ほれ、頼まれていた奴出来とるぞっ」

 ぽいっとバインダーに挟んだ書類をヴァイスに投げるラード。
 それを慌てて受け止めると、ヴァイスはそれを捲った。
 事件発生時の風速、予想射撃角度、打ち込まれた弾痕のひび割れと発見された弾丸からの予測距離、ヴァイスが求めていた情報がずらずらと羅列されている。

「かー! 魔法ばっかりで銃器の硝煙も、力も、恐ろしさも、素晴らしさもわかっとらん海の連中は手抜きばっかりだ」

「さすがっすね」

「ふん。この程度は写真からの予測に過ぎんし、信憑性も高くないわい。ミッドチルダで起きた事件だというのに、陸には指一本触れさせてくれんのだ」

 ガツンとカップを叩きつけ、気息を吐き出すラード。
 その少年じみた顔には似つかわしくない憤怒の表情が浮かんでいた。

「たまらんたまらんたまらん。レジアスの阿呆め、あやつが死んでからわしらの仕事が窮屈になりおった。そう思わんか、ヴァイス?」

「え? あーそう……っすね」

 ラードの言葉に、ヴァイスは躊躇うように返事を返した。
 それは全て事実だった。
 二年前レジアスが暗殺され、彼の補佐官であり、娘であったオーリスが後送されてから地上本部には海からの介入が激しくなった。
 上層部は海からの派遣人員で埋め尽くされ、海派の派閥とシンパによって、元々所属していた陸の人員は肩身の思いをし、古株だった人間は何かの理由で左遷され、或いは退職に追い込まれていった。
 魔力素養が高いものは率先してエリートの道を進み、低いものは出世が遅れて、ハードな現場に送り込まれる。
 もはや陸は海の傀儡だと、単なる飼い犬だと吐き捨てて去っていった人間もいる。
 地上本部はもはや元の原型など留めていないも同然だった。
 そして、海の象徴でもあり、“奇跡の部隊”とさえ褒め称えられた機動六課に所属していたヴァイスは低い魔力量であったが、そのお陰で海からの風当たりは弱かった。
 ハードな環境ではあるが、幸い上司も海からの派遣人員ではなく、運よく生き延びている陸のベテランであり、彼には壁を解消した妹もいる。
 全ては順調、だといえる。
 そう、ただ生き延びるだけなら――

「で? これをどうするつもりなんだ、ヴァイス?」

「え?」

「本局鑑識班からの報告書を渡してきたってことは、どうせお主の“元同僚”の嬢ちゃんたちが絡んでおるんだろう?」

 ラードの目線が厳しく、ヴァイスの胸を貫いた。

「これを見せて、ただそれでお終いというわけにはなるまい。これを理解し、追う人間が必要となる」

「それ、は――」

「海は嫌いだがのぉ、お主自身はわしは気にいっとるよ」

 ずずぅとコーヒーを啜り、少年の姿をした男は足を組んだ。

379 名前:空へと響く銃弾 第二話 ◆265XGj4R92 :2008/08/27(水) 23:33:44 ID:zogC6wtA

「質問じゃ。お主は何のために手を貸す? 友情か? それとも愛情か? それともコネと恩売りか? この件の解決に協力したとあらば、貴重な貸しになるだろうな」

「俺は――別にそんな理由で」

「ならば、なんだ?」

 言葉が突き刺さる。
 視線が突き刺さる。
 衝動が突き刺さる。
 ヴァイスは心臓を握り締められたような感覚がした。ナイフに刺されたような衝撃がした。
 吐き気、吐き気、吐き気。
 汗が浮かぶ、中途半端な自分。


 ――何故俺に協力を仰いだ?



 つい数日前に自分が吐き出した問い。
 その答えは、答えは――

「まあええわ」

 ブルブルと拳を震えさせたヴァイスに、ラードはあっさりと言葉を撤回した。
 え? とヴァイスが呆然とするほどにあっさりと。

「わしには興味が無い。ただ適当に楽しめればええからのぉ」

「楽しいって」

「ヴァイス――殺意の重さを思い出せ」

 え? とヴァイスが呆然となる。
 そんな彼に背を向けて、ラードは再び書類に目を通し始めた。

「主が誰かを殺すことを決めた理由を、思い出せばそれでいい」



「鉛だろうと、魔法だろうと、引き金を引くための重さは変わらんのだから」




380 名前:空へと響く銃弾 第二話 ◆265XGj4R92 :2008/08/27(水) 23:34:52 ID:zogC6wtA
 それは夜。
 仕事が終わり、宿舎に戻る時間。
 そんな時間に、ヴァイスは約束した場所でバイクを傾けて、煙草を吸っていた。
 紫煙が肺に染み渡る、苦い味、吐き気がする――けれどやめられない、やめるつもりもない自傷行為。

「煙草……吸うようになったんですね」

 声がした。
 振り返る必要も無い、呼び出した相手。
 ティアナ・ランスター。かつての同僚、ヴァイスの知る一人の男の妹。
 その事実を彼女は知らない、教える気も無い、だから紫煙を吐き出すことを返事にした。

「まあ、な。別に法令違反じゃないぜ?」

「確か路上喫煙は禁止の場所ですが」

「そりゃ失礼したな」

 すうーと煙草を吸い尽くし、胸ポケットから取り出した携帯灰皿に仕舞い込む。
 風に舞った僅かな灰が、夜空に散った。
 軽い大気汚染、多めに見てほしいけど駄目か?

「それで、返事を」

 ティアナが問う。
 こちらの真意を。
 彼女の捜査に協力するかどうかを。

 答えは決めた。

「協力するさ」

 煙草臭い息を吐いて、ヴァイスは答えた。

「いいんです、か?」

「おいおい、誘ったのはお前だろう?」

 ティアナが少し動揺したのを見て、ヴァイスは肩を竦める。
 腰掛けていたバイクから降りて、ティアナを見る。

381 名前:空へと響く銃弾 第二話 ◆265XGj4R92 :2008/08/27(水) 23:35:51 ID:zogC6wtA

「でも、これは本当なら海の私たちが解決する問題で――」

「そんなわけがない」

 ティアナの言葉を封殺。
 海に所属しているなどという言葉はいらなかった。
 無意識にテリトリーを主張して欲しくなかった。
 アイツが護りたかった地上のことを忘れるような言葉を告げて欲しくなかった。
 かつての機動六課。
 誰もが見捨てた、忘れている、重視していない世界をのけ者にして欲しくなかった。

「これは俺たちの問題だ」

 そうだ。
 これは陸でも、海でもない。
 俺たちの、アイツの、住んでいる、或いは住んでいた世界の問題。

 そして。

「それに」

 ヴァイスはたった一つだけ理由を見つけていた。


「殺意の重さ、それを知りたいんだ」

「え?」

 銃器を、同じ引き金を引き続ける誰かが知りたかった。
 その痛みを知りたかった。


 ただそれだけだ――



382 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/27(水) 23:37:22 ID:LlGiPwSR
渋いヴァイスに支援

383 名前:詞ツツリ ◆265XGj4R92 :2008/08/27(水) 23:38:37 ID:zogC6wtA
投下完了です。
いやはや、色気の欠片も無い内容ですみません。
次回からヴァイスとティアナの捜査が始まる予定です、少しは色気も出てくるかな?


あとまとめ管理人氏にお願いです。
大変申し訳ないのですが、SSXの設定によると二年後の時点では既にティアナは執務官になっていたようなので、

まとめの

 彼に告げるのは小柄な少女。
 オレンジのかかったブロンド、決意を秘めた目つき、中に誇る野生の魅力を漂わせる子猫のような体躯、まだ二十歳にも満たない少女が纏うのは白い制服、執務官補佐の制服。
 ティアナ・ランスター執務官補佐。
 かつてはツインテールにまとめていた髪を肩下まで伸ばした少女。

↑ の内容を

 彼に告げるのは小柄な少女。
 オレンジのかかったブロンド、決意を秘めた目つき、中に誇る野生の魅力を漂わせる子猫のような体躯、まだ二十歳にも満たない少女が纏うのは黒い制服、執務官の制服。
 ティアナ・ランスター執務官。
 かつてはツインテールにまとめていた髪を肩下まで伸ばした少女。

に変更し、補佐官という言葉を全て執務官に修正してもらえないでしょうか?
誠にお手数をかけてすみませんがお願いします。

以上です。

384 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/27(水) 23:40:52 ID:LlGiPwSR
投下乙です!
詞ツツリ氏の作品はダークシリアスで大好きです。
こちらもクロはやも楽しみにしています。

385 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/28(木) 00:14:02 ID:Q95Afx1I
>SSXの設定によると二年後
結局ティアナは二十歳の壁を越えなかったのか(一般待ち組)

386 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/28(木) 00:22:42 ID:K2tsX7Gb
GJ!!です。
シリアス感が堪らないですw
やっぱり、本編後の陸は海の介入を受けるだろうなぁ。
その場合、下手すると人材の引抜が、さらに増加して陸の治安が凄く悪くなりそうだ。

387 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/28(木) 11:30:34 ID:SzRtnGEB
そのうち陸士によるクーデターが起きるかもな
でもあいつらじゃすぐに鎮圧されるか・・・・・・

388 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/28(木) 13:10:09 ID:K2tsX7Gb
ゲリラ戦法や、質量兵器による暗殺(狙撃や車爆弾)を海の重鎮を標的にしたら、
結構いいところまでいけそう。
ただそうなると、もはや、ただのテロ組織www

389 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/28(木) 13:58:31 ID:GDqRxG1N
GJ!!!
なんだろう、ヴァイスって本編じゃ結構かっこよかったのにssじゃあギャグキャラばっかりだよな


久しぶりにシリアスなヴァイスにもう一度GJ!!!

390 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/28(木) 17:17:28 ID:hGHdOk7F
>383
GJです、しかし……

>その日、買いに行った商売女が泣き叫ぶほどに犯した。

まさかソープじゃあるまいなwww

391 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/28(木) 17:43:09 ID:qNuAaMd3


392 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/28(木) 18:44:33 ID:EeddWgoX
>>390
ソープ・ナンバーズと申したか
…このネタも随分懐かしい響きがするな、一頃はあんなに隆盛したというのに

393 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/28(木) 19:42:57 ID:SzEqqGLY
ここでソープ一期二期…………い、いや、なんでもない。

394 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/28(木) 20:13:12 ID:mvnC7vq2
>>390
なぜかセインが頭に浮かんだ。

395 名前:69スレ264:2008/08/28(木) 21:03:01 ID:7FJXwbdT
業務連絡です。
81スレの保管完了しました。
職人の方々は確認お願いします。


野狗 ◆gaqfQ/QUaU氏(>>235-244)と276氏(>>277-283)へ
それぞれアンカーをつけた作品にできれば題名を付けてもらえると助かります。

396 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/28(木) 21:10:37 ID:UagDBnoX
>>395
乙かれー
-━ ポッキードゾー

397 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/28(木) 21:26:06 ID:FbGoVH58
司書殿に傾注!

398 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/28(木) 23:21:21 ID:UKJss0By
>>395 司書様、業務お疲れ様です!

>>390 ソープシリーズは大好きなので、たくさんの職人さんに書いて欲しいですね〜

399 名前:246:2008/08/28(木) 23:41:14 ID:A5o/nDiX
今日は誰も投下が無いなぁと言う事でユノフェイ長編三話投下です。
前回感想レスありがとうございました。
以下ご注意を。
・メインはユノフェイ。後同じくらい高町母子の物語。
・鬱展開。鬱エンド。誰も救われませんし、誰も助かりません。
・なのはさん、フェイトさん、ヴィヴィオ、ユーノ君、八神家、ハラオウン家、ナカジマ家、テスタロッサ家好
きな方は要注意。
ではでは。

400 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/28(木) 23:41:27 ID:nKqXO2Kt
>>349
遅レスですがGJ!!
親子2代あわせて乳とは
そんなにおっぱおがいいのか!
ええ、すごくよくわかります。

「ルー子のエリオ寝取り計画(失敗編)」ってことは成功編もありますよね。
そうだといってよバーニィーーーーーーー!!!!!!!!

401 名前:246:2008/08/28(木) 23:45:04 ID:A5o/nDiX
ごめんなさい。今回前の話の続きなのであらすじ。
なのはさんの体調が悪いと様子を伺うヴィータちゃん。なのはさんは大丈夫だと言い張ります。
ややあって、なのはさんが修理中のレイジングハートを受け取る為に教導隊オフィスを出て行きます。そこにいたのは
フェイトちゃん。なんか様子がおかしいぞ。
一方その頃、ヴィヴィオが在学中の学校で、聖王の鎧が発動したりして――。
以下から前回の続きです。



402 名前:Cursed Lily:2008/08/28(木) 23:45:57 ID:A5o/nDiX
 突然なのはがオフィスを飛び出してから数分。ヴィータは、なのはに確認してもらったスケジュールを再確認
しながら彼女の帰りを待っていた。
 腕を組み足を揺すらせ、苦笑する周りの視線を気にせずに。

「くそっ、こっちは心配してるって言うのに」

 昔からだ。本当にそう言うところだけは何が起こっても、どんな目にあっても変わってくれる気配は無い。
 恐らく高町なのはを良く知っている人間ならば、必ずと言って良いほど目にしてしまう彼女の最も駄目な所。
もう癖だと言い換えても良いだろう。
 それをまた目の前にしてもう我慢なんて出来る筈も無く。一度思いっきり怒鳴りつけてやらないと気がすまな
いと、ヴィータが拳をデスクに叩きつけた。
 それと同時、ヴィータのデスクに積まれていた資料が隣の席に音を鳴らして崩れていく。慌てて崩れた資料を
戻そうと立ち上がったヴィータが見たのは、見慣れた、この苛立ちの原因である彼女の手。

「もぅ、ヴィータちゃん何やってるの。あんまり暴れちゃ駄目だよ」

 今まで無かったレイジングハートがきちんと定位置にあると言う事は、レイジングハートを受け取る為にオ
フィスを出たのだろう。
 見上げたなのははヴィータの崩した山を元に戻す為、資料を一つずつ手に取り始めている。
 その笑みはオフィスに出る前から変わない。違っているのは先ほどよりも血の気が引いて白かった顔が青く
なっているのと、唇が震えているくらいか。
 途中、なのはが手にしていた資料が床へとこぼれ落ちた。ごめんと拾い始めるなのはの手を見て気付いたが、
その指先も滑稽な程に震えていて。
 なのはが床に落ちた資料を屈んで拾う。その度に拾った資料が手から落ちるものだから、それを拾う為にまた
屈む。何度も何度も、寒気がする程にそんな事を繰り返していた。笑顔で。

「お前さ、もう帰れよ。そんで休め。ヴィヴィオだって心配するだろ?」
「またさっきの? ほんとに私は大丈夫なんだから、ね?」

 その普段と変わらぬ口調に。その言葉に。そして何よりも、その笑顔に理解した。
 何を言っても無駄なんて当たり前。なのは本人が全く辛いと思っていないのだから、何度言っても焼け石に水
で終わってしまうのだ。

「やばいな……どうしよ……」

 きっと、自分なんかではどうしようも出来ない。
 故に呟きながらヴィータが出来るのは、なのはの様子を、笑顔の裏側を伺おうとする事のみ。
 ややあって、なのはが突然帰り支度を始めた。上司といくつか言葉を交わし、制止を求める上司の言葉を半ば
振り切る形でなのはが鞄を持ってオフィスを出る。
 なのはとすれ違う寸前、ヴィータが目にした横顔は今までの笑顔が嘘に思えるほど切羽詰っていて。何となく
ではあるけれど、ヴィータが察した。恐らくヴィヴィオの事で間違いない。
 なのはのデスクは資料が散乱したままだった。それを片付けながら、ヴィータが願うように呟いた。

「テスタロッサが何とかしてくれればいいんだけどなぁ――」



 辛くなんて無かった。それがあの子の為なのだと思っていたから。
 苦しくも無かった。あの子が苦しむほうが、何倍も、何十倍も辛いから。
 例えあからさまに避けられても、こちらを見ようとしてくれなくても、名前を呼んでくれなくたって構わない。
どうでもいいと思うことにした。一番最初に戻っただけと思うことにした。
 だって、あの子にママじゃないと言われる事の方が辛いから。
 あの子の温もりが傍に無い事の方が、彼女に拒絶されることよりも辛いから。
 自分はただ、あの子の事だけを考えていれば良い。あの子が笑顔でいられる事だけを考えて生きていれば良い。
 きっとそれが、あの子の母親として役割だ。


魔法少女リリカルなのはStrikerS
―Cursed Lily―
(3)

403 名前:Cursed Lily:2008/08/28(木) 23:46:43 ID:A5o/nDiX


「――あぁ、これもいいかな」

 数え切れるほどの本が宙を浮いていた。
 場所は無限書庫のとある一画。本と同じように宙を漂うユーノ・スクライアは、手にしていた本を一通り確認
してから頷くと前もって用意していたいくつかの本と共に自室である司書長室へと戻って行く。
 彼が手にしているのは、ここ最近に出版された執務官試験の為の参考書だ。何でも新しく執務官補佐になった
元機動六課のメンバーの子に必要との事で、依然にフェイトから以来されていたものをユーノが探す事と相成っ
たのだ。
 そんな訳でユーノは書庫から引っ張り出した数冊の参考書をデスクへ置き、今はコーヒーカップ片手に持って
きた本の内容を吟味しようと言う訳だが、これが中々難しい。

「しっかし、なんで僕がこんな事やらなくちゃいけないんだよ」

 そもそもユーノは執務官では無い。漠然と執務官試験に役立ちそうな参考書と言われても、首を傾げたくなる
のが現状だ。
 フェイトの兄であるクロノ・ハラオウンも無理難題を押し通そうとすることで無限書庫内では密かに有名だが、
それと同等の事を意識せずにやる妹の方が性質が悪いかもしれない。
 既に参考書を捲る事数十分。あまり知らない情報の波にやる気を揉まれ、ユーノは一人読書をする時の半分以
下の時間で目頭を強く抑えて本を閉じた。
 別に自分が選ぶ必要は無い。後でフェイト自身に選んでもらえば良いだけなのだ。
 が、約束の時刻になってもフェイトは訪れる気配がない。どこで油を売っているのかと時計と参考書の表紙を
交互に睨む事、更に三十分弱。

「――ごめん、遅れちゃった」

 やっとの事で無限書庫に姿を見せたフェイトは、ユーノが思わず駆け寄る程に血色の悪い顔で応接間のソファ
に座っていた。


404 名前:Cursed Lily:2008/08/28(木) 23:47:29 ID:A5o/nDiX
「なんか、顔色良くないけど……体調悪いの?」
「ちょっとだけ。毎月の事だから」

 暗に触れるなと言いたいのだろか。
 ユーノ自身、その事に触れる度胸も経験も勿論無い。内心慌てふためきながらもフェイトと反対側のソファへ
座り、秘書の差し出したコーヒーを飲み干し、何とかその場を切り抜けることにした。
 早速参考書を手に取ったフェイトは本の内容と自身を持ち込んだ資料を比較し、二三度頷き本を閉じるを繰り
返す。
 閉じた本に確りと付箋をしている辺り、どうやらフェイトの目に適う本を選ぶ事は出来たようでユーノが僅か
に安堵の息を零していた。

「ありがと。これ全部借りてくね。後、無理言ってごめん」
「いいけどさ、これからはもっとちゃんと探して欲しい本を教えてくれないと嫌だからね。そう言うとこちょっ
とクロノに似てきてる」
「ごめん……善処します」

 しゅんと身体を小さくするフェイトに苦笑し、ユーノがフェイトを促して立ち上がる。
 フェイトとの約束事はこれで終わり。後は溜まっている仕事を片付けて今日の仕事は終了だ。
 が、その前にもう一つ。仕事以外のプライベートな用件だ。

「ねぇ、フェイト。今日仕事何時に終わる予定?」
「え、……どうだろ。そんなに遅くならないと思うけど」
「じゃあさ……ええっと、ちょっと夕食付き合ってくれないかな。君が六課で言ってたやつの話しがしたいんだ」

 突然の誘いだ。
 ユーノの表情は強張ったまま。フェイトも俯いてユーノと同じ様に。

「うん、私もユーノに話したいこと……あるから――」

 ややあって頷いたフェイトに、ユーノが若干表情を和らげる。
 だがそれとは逆に、フェイトは俯いたままだった。


 彼のその一言で、嫌でもあの時の事が甦る。
 なのはからの突然の呼び出し。機動六課が解散してまだ一日しか経っていない日の事。
 伝えたい事がある。そんな事をなのはは言っていた。


* * *



405 名前:Cursed Lily:2008/08/28(木) 23:48:31 ID:A5o/nDiX
 教導隊部署を通じて突然入った連絡に、なのはは一心不乱にそこへ向かっていた。
 レールウェイに乗る時間も惜しく、タクシーを飛ばして彼女が向かうのはベルカ自治領、聖王教会本部だ。
 聖王教会に着くや否や自動で開く扉を強引に開き、財布に入っていた一番貨幣価値の高い札を投げ捨てるよう
に運転手に渡して聖王教会へ駆けていく。
 勿論つり銭の事なんて頭に無い。彼女は、焦っていたから。

「――お待ちしていました、高町一尉」
「ヴィヴィオはどこですか!?」

 碌な挨拶もせず娘の名を叫ぶなのはに、シャッハが僅かに表情を強張らせる。
 呼吸を乱しているなのはは落ち着いている時間なんて要らないと睨んでいるようで、シャッハは何も言わずな
のはを案内する事に終始した。
 シャッハがなのはを招いたのは、カリムの自室だ。部屋に入ってなのはが見たのはソファで寝息を立ててい
る愛娘の姿。
 今朝学院へ向かった時と同じように制服を着ていて、けれど膝には見覚えの無い絆創膏がいくつも。きっと、
転んでしまったのだろう。
 気付いたときには、カリムとシャッハの視線など忘れていて。なのははヴィヴィオの元へ駆け寄り声をかける
寸前だった。

「起こさないで上げてください。ようやく眠ってくれたところです。後シスターシャッハ、なのはさんにハーブ
ティーを」

 それをカリムが制止する。普段とは打って変わった厳格さを声の端々に感じさせながら。

「結構です。それよりヴィヴィオの事を話してください」
「シスターシャッハ、お茶の準備をお願いします。後なのはさん、申し訳ありませんがこのままヴィヴィオを休
ませてあげる気はありませんか?」

 嫌でも分かる遠まわしな物言いだ。娘に大事があってそれで落ち着けるなんて出来るはずが無いのに。
 感情的にカリムを睨むつけるなのはに対し、カリムは涼しげになのはの視線を交わしてヴィヴィオを見ていた。
 連絡を受けたシャッハがここへ連れて来てからも、ヴィヴィオは泣き止まなかった。疲れてしまったのだろう。
なのはがどれだけ怒気を撒き散らそうとも、ヴィヴィオにが起きる様子は微塵も無い。
 残念なのは、この少女の母がその事に今も気付いてくれないこと。

「ヴィヴィオがクラスメイトの子と先生を聖王の鎧で傷つけてしまったと伺いました。それは本当ですか?」
「はい。ヴィヴィオがそう言っていましたから」
「何故ですか?」

 カリムは無言。ソファにも座らずカリムの眼前のデスクに両手を着いているなのはを見上げ、溜息を吐くだけ。
その態度が、今はこの上なく不快だった。

「黙ってちゃ分かりません! 答えて下さい!」

 故にデスクに両手を叩きつけ、なのははカリムを睨む。落ち着かせようとするシャッハの手を払い、怒声と共
に撒き散らすはここへ訪れる間感じていた切なる欲求。
 ヴィヴィオがあんな事、自分の意思でする筈が無かったから。
 きっと、あんな事をした原因がどこかにある筈だから。
 何とかそれを知って、抱きしめたかったのだ。
 ――なのに。

「あなたがヴィヴィオの事を娘としてとても愛しているのは良く分かりました。それで、何故あなたは先程から
ヴィヴィオの心配しかしないのですか?」
「……だからっ、そんな事を聞いてるんじゃ――」
「この子が傷つけてしまった教師と、周りのクラスメイトの子達の事は全く気になりませんか?」

 無言になったのは、なのはだった。
 カリムの言葉に後ずさり、ソファに音を立てて腰を下ろす。瞬間、寝返りを打ったヴィヴィオに肩を震わせて。
それを見つめている表情からは血の気が引いていた。


406 名前:Cursed Lily:2008/08/28(木) 23:49:17 ID:A5o/nDiX
「勿論、ヴィヴィオの事で余裕が無かったのはわかります。ですが、あなたが今考えている事はいけない事の様
に思います」
「……」
「確かに聖王の鎧が発動したのは、クラスメイトの発言がきっかけだったようです」

 それを聞いて、一体何をしようとしていたのか。
 分からない。それがなのはが聞き出したかった最初の言葉を耳にした時の感想。
 なのはとてカリムの言葉の意味は分かっている。当然の事だ。心配しないほうがおかしい。彼女はそれが出来
ない程愛情と言うものに欠けている人間ではない。
 ――だったら、何故こんなにも納得が出来ないのだろうか。

「あなた以外の本当のままと言う事について、聞かれてしまったようです。それが嫌だったのでしょう。泣きな
がらヴィヴィオのママはあなただけだと言っていましたよ。この時期の子供は、特にヴィヴィオは精神が成熟し
ていますから。仕方が無かったのでしょう」

 カリムの言葉がどこか遠くで聞えていた。思考を埋め尽くすのはカリムの言葉でも想像してしまったヴィヴィ
オの泣いている姿でもなく、自分自身を呪う後悔の念。
 きっと、まだ駄目だったのだ。本当のママになんてなれていなかった。自分が本当のママだったなら、ヴィ
ヴィオはそんな事で傷つかずに済んだ筈だから。
 だから全て至らない自分の所為なのだろう――そう思っておかないと、駄目だった。

「……ヴィヴィオを連れて帰ります」

 ヴィヴィオに伸ばしたなのはの手は震えていた。それを一度拳を握る事でどうにか収め、ヴィヴィオを出来る
限り優しく抱きしめる。
 間近で見たヴィヴィオの顔には、涙の跡がいくつも残っていた。それに涙を浮かべそうになって、なのはは
ヴィヴィオの髪に頭を埋めて小さく、ごめんと繰り返す。何度も何度も。

「ザンクト・ヒルデ魔法学院へは、ヴィヴィオを自宅で休ませた後に伺わせて頂きたいと思います。重ね重ね、
申し訳ありませんでした」
「シスターシャッハ。送って差し上げてください」
「申し訳ありません。ヴィヴィオと二人で帰らせてください」

 カリムとシャッハの視線に背を向け、やっと触れる事の出来たぬくもりに目を瞑る。
 怖かったから。抱きしめて、ヴィヴィオの事をもっと近くに感じて、そうしていないと恐怖で震えが止まらな
かったから。
 そして、それを知っていて尚彼女はなのはに問う――否、知っているから問わなければと思ったのだ。

「もし今後この様な事が起こって、それがヴィヴィオに責があった場合……あなたはちゃんと叱ってあげられま
すか?」

 長い沈黙だ。少なくとも、ヴィヴィオが薄っすらと目を開けてしまうくらいには。

「……ママ?」

 目尻に涙を浮かべながら、ヴィヴィオがなのはの頬に触れる。いつもの様に溌剌とした心の底から安心できる
笑顔じゃない、泣きつかれて辛そうな笑みを浮かべながら。
 苦しかった。息が出来ないくらいに、胸が締め付けられた。嫌でも思い出してしまうのは、スカリエッティに
捕まり、泣き叫びながら自分を呼ぶヴィヴィオの悲鳴。

「ヴィヴィオが……笑顔になってくれるなら」

 でも、そうじゃなかったら――。

「私はどんな事をしても、この子の味方でいます」


407 名前:Cursed Lily:2008/08/28(木) 23:50:07 ID:A5o/nDiX
 カリムはそれ以上何も言わなかった。シャッハは口を閉ざしなのはから視線を逸らしていた。それを無視して、
なのはが部屋を後にする。
 誰も追いかける者はいない。当然だ。あんな事を言ってしまったのだから。
 カリムの問いかけを無視する事も出来た。けれどもヴィヴィオへの想いに嘘は吐けなかったから。
 不安だけが募る。
 あの日に、母になると誓ったはずなのに――。



 そう、誓ったんだ。
 彼女に自分の想いを告げてしまったあの日の事。
 この子の為に、あの子以外のいらない物を全て捨ててあげようと思ったんだ。


* * *


 時空管理局本局から転送ポートに乗り、ミッドチルダ首都クラナガンへ着いて十分弱。普段と全く変わらない
緑色のスーツを身につけたユーノは、フェイトとの待ち合わせに何も考えずにここを指定してしまった事に後悔
していた。
 辺りところ構わずいちゃつくカップルに、ガラの悪そうなチンピラ達と酔っ払い。それらが見ていて楽しい筈
も無く、フェイトの言葉どおり本局の待ち合わせでも良かったのではないかと思い始めていたのだ。

「まぁ、でも変な噂立っても嫌だからなぁ」

 その言葉が指し示すのは無論なのはの事だ。未だに想いを伝えられないとは言え、やはり想いを寄せてはいる
相手にいらぬ誤解などされたくないし、耳にもいれて欲しくは無かった。
 と、

「ユーノ、お待たせ」

 フェイトだ。ユーノと同じように仕事を終えたフェイトが、息を弾ませながらユーノの元へ走り寄っていた。
 久しぶりに見た彼女の私服はやはり所々に黒色が散りばめられている。そして思い出せばミニスカートが圧倒
的に多かった彼女だが、今回はジーンズにシャツと言ういたってラフな格好だった。
 特に何も装飾品をつけていないにも関わらず、いちゃついているカップルの片割れや酔っ払い達が振り向くく
らいには、やはり彼女は綺麗だとユーノが思う。

「大丈夫、そんなに待ってないからね。それより早く行こう。ここじゃ落ち着かないでしょ?」
「うん……そうかも」

 辺りを見渡し、自分を見る視線にユーノの背へ隠れようとするフェイトの肩に軽く触れ、向かうはユーノが
フェイトと無限書庫で別れてから予約したレストランだ。
 目的の場所へ着き、ポカンと口を開けているフェイトの視界に装飾が眩しい入り口と、その割には落ち着いた
店内が映っていた。
 普段余り外食をしないフェイトも勿論分かっているのだろう。ここは、気軽に行ける店なんかじゃ無い。

「一応、無限書庫司書長だからね。ある程度の融通は通るみたいだ」

 もしなのはを誘う時、予約が取れないのは情けないから。そう言ってユーノが照れくさそうに頬を掻いた。無
論、店を目の前にしてのやせ我慢だ。
 しかし店内に入れば、外で見た以上に圧倒されてしまうのは当然の事。それを堪えながら二人がウェイターの
案内で席に着く。
 だが非常にまずい。まずいなんて言葉では言い表せないほどに、ユーノはまずい事に気がついた。

「ユーノ……?」
「大丈夫! フェイトは黙って見てればいいから!」


408 名前:Cursed Lily:2008/08/28(木) 23:50:53 ID:A5o/nDiX
 まずこの店内の雰囲気。スーツだからといつものに袖を通したことに先ず後悔。
 ついでに、想像していたよりも一桁ばかり値段が高い。幸い財布の全財産を使えば払えない事は無いだろうが、
貯金を下ろさなかった事にもう一度後悔して。
 更に一番の問題は、メニューを見ても分からない事。本当にこの世に実在するのか分からない食べ物の数々。
最後に、普段碌な食事をしていなかった事に後悔した。
 眉間に皺を寄せてメニューを睨むユーノだが、感じるのは頭痛だけ。額からは大粒の汗が一筋、テーブルクロ
スに零れて染みを作った。

「――貸して」

 そして、そんなものを目の前にして待っていられる程、フェイトとて気は長くない。ユーノから強引に奪い
取ったメニューを一目確認し、全く以って意味が分からない事を理解してウェイターを呼ぶ。
 これ、とフェイトが指差したのは本日のお勧めメニューだ。こればかりはとユーノが避けていた、所謂こう言
う状況での定番メニューである。

「ごめん……フェイト……」

 全く情け無いことこの上ない。
 曖昧に笑うフェイトに、ユーノは肩を落とし深い溜息を吐く。
 もしこの場にフェイトではなくなのはだったならどうなるか。怒ると言う事は無いだろうが、呆れられてしま
うのは必至だろう。
 だがいくら後悔してももう後の祭りでしかない。幸いなのはこの場にいるのがなのはではなく、フェイトで
あった事くらい。

「そういえばさ、フェイト。話したいことあるって言ってなかったっけ?」

 気を取り直し、先ず聞くのは勤務時間中に耳にしていたその事だ。
 無限書庫や考古学で毎日頭を働かせるような事をしているからだろう。彼の元来の性格もあって、やはり一
度気になってしまった事は、最初に片付けないと落ち着かない。
 当然の如くフェイトに聞けば、瞬間フェイトの顔が何故か曇る。まるで、聞かれたくない事を聞いてしまっ
たかのように。

「どうしたの、フェイト?」

 だが、そんな筈は無い。元々、フェイトが伝えたかった事の筈だ。聞かれて困ることなど無いはずだ。あると
すれば、伝えたいけれど言いにくい事。
 そしてそれば、俯くフェイトの雰囲気から分かるように的外れなんかでは決して無い。

「もしかして、言いにくい事なのかな? 聞かない方が良い?」
「そんな事……無いけど……」

 俯くフェイトは曖昧に口ごもるだけで答えてはくれない。その様子に戸惑いを感じ、少し落ち着く為にと冷た
い水を喉に通した。
 ややあって運ばれた食事も手付かずのまま。フェイトはじっと、何かに耐えるように固く握った拳を膝の上に
置いたままだ。

「ごめん。もう聞かないからそんな顔しないで。ほらっ、せっかく来た料理冷めちゃうしさ」

 その辛そうな顔が見ていられなかった。理由は分からない。ただ、フェイトが何かを辛いと感じていることだ
けは理解できる。
 それを追い払うように、ユーノがナイフとフォークを手に取った。視線の先には本日のお勧めなのであろう料
理が皿の真ん中にちょこんと、一口で食べられるほどのサイズで乗っていた。
 フェイトに食べるよう促しながらユーノが一口。皿の上に乗っていた料理は、たったそれだけの行動で消えて
いた。


409 名前:Cursed Lily:2008/08/28(木) 23:51:39 ID:A5o/nDiX
「ユーノ、駄目だよ。そんなに頬張っちゃ」

 別に意識してやった事ではない。単に本当に一口で食べられてしまっただけの事。だが、別の客達の苦笑交じ
りの視線と引き換えにして、フェイトの笑みは取り戻せたようで。
 安堵はするがそれでもやはり顔は熱くなる。そして二皿目がテーブルへ出てくると同時、今度はちゃんとと料
理を切り分けようとするユーノに、フェイトが言った。

「あんまり気にしなくていいんじゃないかな。それに、こんな所より近くのファミレスの方がなのはは喜ぶと思
うよ。ヴィヴィオいるから」

 考えてみれば当然のこと。なのはがヴィヴィオを置いて一人で来るなんて考えにくい。
 すっかり抜けていた自身の考えに更に顔を紅くしながら、ユーノはフェイトの様子を注意深く伺った。
 特に気にする必要が無いほど、フェイトは笑顔だ。ユーノの言葉にも、何ら変わらない様子で笑みを返してく
れている。

「フェイト、大丈夫?」
「何が? あっ、ユーノこれ美味しいよ。早く食べないとだね」

 何かを誤魔化しているのは分かっている。だが、誤魔化さすと言う事はやはり自分には話せない事なのだろう
とユーノが内心頷いた。
 心配ではあるが、今の笑顔を無くさせてでも言葉にさせるのは気が引ける。それに、自分以外にもっとフェイ
トの力になってくれるでろう人間をユーノは数え切れぬほどに知っている。
 フェイトの家族達に、機動六課で知り合った皆、はやて達に、後なのは。特になのはなら、フェイトの心配事
くらい気付いている筈だから。

「あぁ、ほんとだ。さっきは味なんて分からなかったから」
「でしょ? せっかくなんだしもっと味わって食べなくちゃ」

 暗くなりそうな気持ちを払い、ユーノがフェイトの言葉通りの味に舌鼓を打つ。更にもう一口。やはり今まで
食べたものよりも味が良い事は確かだった。
 メインディッシュを食べた後、食後のワインを飲むフェイトはやはり慣れないのだろう。子猫がミルクを飲む
かのように少しずつ。味を確認しながら飲んでいた。

「そういえば、六課のパーティーでも飲まなかったね。はやては飲んでたけど」
「はやてはほら、好きそうだから。私は今まで飲んだことなんて無いし」

 はやてが聞いたなら怒鳴りつけてきそうな事を言いながら、二人は少しずつではあったが酒を飲み、他愛も無
い談笑を続けていた。
 八神家の面々がこの場にいたならば、もっと騒がしくなっていたのだろうか。結局六課のパーティーには現れ
なかったなのはは、やはり飲んだら酔ってしまうのか等色々と。
 ユーノは笑顔だ。仕事以外で久しぶりに心の底から楽しいと思っていたから。
 フェイトは同じように。終ぞユーノには言えなかったあの日の事を、笑顔の裏に隠しながら。



 だって言える訳が無い。目の前にしきりになのはの名を出して笑う彼がいたんだから。
 あの日、機動六課が解散した次の日だ。なのはに呼び出され聞いたのは、全く想像なんてしていなかったなの
はの今までの想い。
 今までの笑顔も温もりも何もかも。全てが、あの時嘘だったのだと教えられた。
 もうきっと、二度と彼女の前では笑えない。それくらいにはっきりと。
 親友だと、心の底から大切だと思っていたのに――。


* * *



410 名前:Cursed Lily:2008/08/28(木) 23:54:19 ID:A5o/nDiX
 ユーノと食事を取り分かれてから一時間弱。自室と言う、最も開放される空間へ戻ったフェイトは部屋着に着
替える気力すら起こらず、ベッドに横たわっていた。
 頭を鈍い鈍痛の様なものが巡る。飲みなれないものを飲んだからだろう。何をしても痛む頭に、恐らく酒は好
きになれないモノだと知りながら、ふと見上げた先、壁にかけられている数枚の写真に視線の動きが止まった。

「……なのは」

 呟く名は、つい最近まで親友だと思っていた彼女の名前。
 そして今は、自分に嘘を吐き続け、彼の想いを踏みにじった多分一番嫌いな女の名前。
 気持ちが悪かった。
 吐き気が治まってくれない。トイレへと向い、見よう見まねで喉奥に指を突っ込むが、一滴の胃液すら出てく
ることは無い。だからこれはきっと、あの日の事の所為なのだろう。そう思ってしまった。
 本当に気持ちが悪い。今にも泣きそうなくらいだ。
 同性にあんな感情を抱いた事は無い。自分があるのは異性だけ。だから理解なんて出来ないし、する気も起こ
りはしない。
 写真の中のなのはの笑顔は少しも色あせはしない筈なのに、この目に映るその笑顔が薄っぺらい仮面の様にし
か感じられない。
 悔しかった。腹が立った。不快だった。

「なのはが……友達になろうって言ってくれたのに」

 そして何よりも、あの時、初めて名前を呼んだ時の事を嫌なものとしか思えなくなった自分が辛かった。
 けれどもう、きっと元には戻らない。戻ろうと思えない。

「……」

 ビリビリ、と手に取った写真が破れていく。
 楽しかった、消えないはずだった思い出と一緒に消えていく。
 破れた写真の中、なのはの笑顔に涙が零れていた。まるで、自分が泣かせてしまったようで、どうして良いか
分からない。
 破れた写真の中に、彼女以外の皆がいる事さえ今はもうどうでも良くなっていて――。

「――ユーノ、もう寝ちゃったのかなぁ」

 寝る直前、無性に彼の声が聞きたくなってしまった。

411 名前:246:2008/08/28(木) 23:56:40 ID:A5o/nDiX
以上です。ありがとうございまいた。
今回は次回へ繋ぐユノフェイ&なのヴィヴィの今後の示唆みたいな感じでした。
次回はユノフェイ←なのはさんな部分が書けるかなぁと。
ところで、前後編くらいクロエイ書こうかなと思うのですが、クロノ君の浮気癖に定評のあるなのはエロパロで
の需要はどの程度なのでしょう……?
とりあえず、また次回です。

412 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/29(金) 00:00:29 ID:TN4YMiCR
GJでした
続きが楽しみなような、でも見たくないような……
>クロエイ
需要あるに決まってるじゃないですか!

413 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/29(金) 00:05:50 ID:SzEqqGLY
GJ!
欠けたパーツの完成が楽しみですけれど………完成図を見たいような見たくないような……。
でも欝ENDは嫌いじゃないw

414 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/29(金) 00:22:15 ID:FZND07HK
GJ!!です。
フェイトとなのはの間に何があったんだろう?


415 名前:亜流:2008/08/29(金) 00:36:59 ID:Y5ImOa+I
>>395
まとめお疲れ様です。
早速ですが、いくつか修正をお願いします。


・文言修正
【ユノアリSS Act.02 X-Rated】

修正前
>「もぅ………バカ!!はやてとかに聞かれでもしたらどうするのよ?!」

修正
>「もぅ………バカ!! はやてとかに聞かれでもしたらどうするのよ?!」


あと、レス区切りで発生した空白行の部分を以下のように詰めて下さい。

【こんなはずじゃなかったふたり。 ALTO View】
>「これだけ…あれば……んんっ…」
>指についたものを確認しないまま、あたしはそれをくすんだピンク色の後ろの孔の部分にあてがった。

>「はぁっ…はぁっ…はぁっ………!」
>強烈な快楽の波がある程度引いたところで、あたしの身体はすっかり脱力しきっていた。

>先輩は一呼吸おいて再びあさっての方向を見つめる。
>「でも、俺もそんなバカでクソマジメな執務官補佐を好きになってたんだ。いつの間にかな」


【ユノアリSS Act.02 X-Rated】
>こんなことを告白するのは恥ずかしいけど、これが正直な気持ち。
>「一応……前にアリサと結ばれたことを思い出しながらする、という手もあるよ?

>ブラの肩紐だけを外している手が止まり、アリサの頬はますます赤みを帯びていく。
>「あんまり……その、ジロジロ見ないでね?」

>「……えっち」
>アリサは何かを持ったままの右手で冷蔵庫の扉を閉め、開いた左手でお尻の部分を視界から遮る。

>すぐにでも暴発しそうな快楽に溺れそうなボクを見て、アリサは満足そうに笑みを浮かべた。
>「いつでもイッていいよ? 最後の仕上げに、お口の中で受け止めてあげるね」


以上です。


416 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/29(金) 00:39:34 ID:EWY2b20j
>>411
GJですぜい!!

なんという三角関係! こりゃ鬱に向かってまっしぐらですね。
なのは・フェイト・ユーノの関係にヴィヴィオがどう絡むか楽しみです。

417 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/29(金) 00:46:02 ID:92tUZaGV
>>411
GJですが、俺も続き楽しみだけど怖いw
完全になのは→フェイトなのって珍しいですね
ギャグだと結構あるけどシリアス系は。

あと、クロエイ全然需要ありますよ!
浮気も好きですが本妻もまたいいものです

418 名前:亜流:2008/08/29(金) 01:11:22 ID:Y5ImOa+I
ついでにチラシの裏

<以下チラ裏>
案がまとまったので作業を進めています。
明日か明後日には投下可能。
他にユノアリで書いておくSSがあるので投下間隔が少し空くかも。

419 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/29(金) 01:42:04 ID:hKoFjjpv
>>411
こりゃ怖いが続きが楽しみだ。

420 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/29(金) 01:42:23 ID:uIF/uAMY
>>411
GJGJGJ!
いいですねー、やっぱなのは→フェイトは最高ですよw
毎度246氏のssはツボのど真ん中に直撃して困る
次も楽しみに待ってますね!

>>417
確かにフェイトそんがなのはさんを嫌ってるのは新鮮だなw

421 名前:野狗 ◆gaqfQ/QUaU :2008/08/29(金) 06:56:41 ID:9tF+hNaE
>>395
いつもありがとうございます。
タイトルは「教えましょう」でお願いします。
お手数おかけします。

422 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/29(金) 13:08:15 ID:oBI7a1um
>>420
しかし二次だと確かにフェイト→なのはが多いが、本編中だとなのは→フェイトであることの方が多い気がする
フェイトは意外と交友範囲が広く、言われてるほどなのは依存って感じはしないんだよな

423 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/29(金) 14:44:34 ID:MEFNe2gS
>>422
俺には
なのは←→フェイト
に見える

424 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/29(金) 15:02:59 ID:PfstCt5h
なのは←オレ→フェイト

425 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/29(金) 15:05:48 ID:fb5mYg7H
両腕を引っ張られて引きちぎられるんですね
分かります。

426 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/29(金) 15:07:58 ID:HNerfIzz
矢印がその状態だと、一方的な思いを二人に向けてるだけですね。

427 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/29(金) 15:11:48 ID:8iYbreCg
>>422
確かにどっちかというとなのはがフェイトに依存してるかもねー
フェイトが死んでプレシア化するなのはとかも見たいぜ
王道的になのはが死んでフェイトがプレシア化するのも見たいけど

428 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/29(金) 15:51:07 ID:ZPxNRM92
ここで過去にユーノが死んでプレシア化するなのはって作品があったような記憶があるんだが

429 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/29(金) 16:17:06 ID:blXX/XZQ
フェイトはヤンデレるの多くね?

まぁ俺のフェイトそんは百合ん百合んでなのはさんは小悪魔だがな


430 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/29(金) 16:20:55 ID:uIF/uAMY
>>427
いいねー、俺もなのはさんが死んでプレシア化するフェイトそんはぜひ読みたいw
誰かが書いてくれる事を祈る

431 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/29(金) 16:37:30 ID:nG8KZCJh
しかし、テスタロッサ家は何か憑かれてるな・・・・
母といい娘といい、被後見人の皆様はそうでないことを願うしかないが

しかし、なのはのプロジェクトF的なものなんて想像できないな人格が丸くなるのか?


432 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/29(金) 17:09:53 ID:6eaEufmn
>>431
つ【リリカルふぇいと】

433 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/29(金) 17:12:57 ID:PfstCt5h
丸くなってNeeeeeeeeeeeeeeeeee

434 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/29(金) 17:13:24 ID:3Nuc3ToV
何故だろうか、なのはが死んでプレシア化するフェイトそんは想像付くのに
逆が想像付かないのは。キャラ固有の倫理観の違いか、これが。

>>431
つ リリカルフェイトのなのはそん 真の冥王様が出来上がってますよ

435 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/29(金) 17:31:43 ID:nG8KZCJh
リリカルふぇいとをさっと読んできた・・・

なのはそんヤバ過ぎるwwwアルフが可哀そうすぎるww色々とキャラが崩壊してるな
クロノがショタコンとかだいぶカオスでした

436 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/29(金) 17:38:01 ID:PfstCt5h
でも最近じゃ一番オモロイよな。

437 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/29(金) 17:38:34 ID:mMnzh05z
>>434
良くも悪くも、フェイトそんは思い詰めたら一直線で視野が狭くなるからじゃね?
逆になのはさんは激怒しててもVSクアットロの時みたいに冷静だろうし。
仮にそれぞれが『殺された』場合のシチュでも、フェイトそんと違ってなのはさんが犯人をヤるイメージが沸かない。
非殺傷設定の全力全壊・SLBexフルバーストで消し飛ばす光景はすぐ思い浮かぶがw

438 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/29(金) 17:53:54 ID:Q1VkviMe
なのはさんは、クールに確実に容赦ない殲滅という名の虐殺が信条なはず!

おや?誰か来たようd

439 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/29(金) 17:55:39 ID:4TZE+tOX
ティアナが執務官試験に合格したのがいつなのか、
特定できるような情報はSSXで出てた?
NanohaWikiではそういう情報は載ってないみたいだが。

440 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/29(金) 18:00:44 ID:8L59Tn/I
>>439
新暦77年頭くらい。

441 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/29(金) 18:02:38 ID:4TZE+tOX
>>440
ギャアァァァァァァ
今のうちに聞いといてよかった……あんがと

442 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/29(金) 19:32:16 ID:8iYbreCg
>>437
そういうなのはさんのイメージとかって見た人一人一人違うと思うぜ
各々好きななのはさんで妄想すればいい

443 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/29(金) 20:01:06 ID:vlrsiEs4
SSにするなら書き手の腕の見せ所だな

444 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/29(金) 20:58:48 ID:fb5mYg7H
なのはやフェイトはそれぞれの獲物でヤるってイメージだけど
はやては謀殺ってイメージ。

445 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/29(金) 21:11:21 ID:2bu7HzV8
はやては、万が一ヴィータが被害者の時だけは我を忘れて殺りにいってほしい。

446 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/29(金) 21:49:06 ID:TWfcnyc3
何故かはやての場合はヴィータに限らず、家族がそういう目にあったら、
どんな手も辞さず報復するイメージがある。

447 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/29(金) 21:59:11 ID:XSXbs4kp
はやてが家族殺られたら→我は忘れないけど報復は忘れない
フェイトがなのはさんやエリキャロだったら→責任感じて自失状態
なのはがフェイトさんだったら→空元気で無理し続けて傷癒えぬままの一生
なのはさんがヴィヴィオだったら→とことん自分を追い詰めていざプレシアママンの道へ
かなぁ……。
一番自分自身を追い詰めるのはなのはさんだと思う。
フェイトさんは逆に自分自身が経験してる事だから、プレシアママンにはならないしなれないからどうする事も出来なくなりそう。


448 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/29(金) 21:59:23 ID:RbSafNpm
直接的ではなく社会的に抹殺しそうだ

449 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/29(金) 22:06:17 ID:mH0iCC5n
変な噂流したもんでユーノに社会的に抹殺されそうになった
漫画なら見たことがある

450 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/29(金) 22:07:36 ID:uIF/uAMY
イメージっつう時点で一人一人感じ方違うんだから異なるのは当たり前なんだし
いちいち自分のイメージを書き連ねてくのはどうかと……

451 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/29(金) 22:19:09 ID:2bu7HzV8
しかし、世界転覆させようとした犯罪者すら、数年後には更正したと見なされ社会復帰できるこの世界で、
社会的抹殺ってどこまでされるんだろ。

452 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/29(金) 22:28:02 ID:fb5mYg7H
ブラックリストにでも登録されるんでない?
特定の施設は利用できない入れないとか。

ちょっと違うか。

453 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/29(金) 22:35:08 ID:TN4YMiCR
中学2年生の頃のノートを全次元世界にむけて公開される

真面目に考えると雇用禁止とかかね?

454 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/29(金) 22:48:56 ID:grV+5t11
社会保障番号とか、銀行口座とかを
すべて書き換えられるとか。

455 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/29(金) 22:53:36 ID:q6tiGqVE
背中に「私はロリコンです」と入れ墨を彫られるとか。

456 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/29(金) 22:53:57 ID:ugLiiiyS
実は一部の法の保護が受けられない、とか。
重態にならない限り怪我させても罪にならない、みたいなのだと結構きついと思われ

457 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/29(金) 23:27:49 ID:XJyXZfeQ
>>453
黒歴史ノート公開とかなんという鬼畜

458 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/29(金) 23:32:13 ID:CJpsrzr8
>>447
昔復讐モノっぽく書いたこともありますが、自分のイメージもそんな感じでした。
隊長三人娘は、身内に不幸があったら責任感じて内に潰れそうなイメージがありますね。
作家さんごとにイメージは違うけど、長編などでキャラの行動が一貫したイメージに基づいて書かれてるものが読み易い感じがします。


459 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/29(金) 23:44:22 ID:7r3LkV8R
ミッドチルダには伝統的な犯罪者の減免法があった(裏)そうそれは性的な無料奉仕
今日はそんな毎月何日かそんな日があるナンバースの一人を紹介しよう

秘密のクラブ

ぬらりとした暗闇が広がっているその中になまめかしいほどの白い裸体が浮かんでいた
そのふくらみは未だまだ幼く眼帯の少女は抑えきれない羞恥にうつむいていた
「あ…」
男がやってきた、ここのところ連日チンクの減免に協力してくれている人物だ、政府の高官らしい
彼のプレイはいささか特殊だったゆえに効果も絶大、ナカジマ家の為にも妹達の為にも自分も協力的であるのが望ましい…はずだ

「おお…きょうも美しいなチンク君…お人形のようだ…はは、ほうぅら、今日はこんなプレゼントを持ってきてあげたんだよ…」
「…あ、ありがとうございま…ぁ…っあ…ぅ」

男は優しく抱擁したかのように見えた、チンクは礼を言おうとして身悶えした
男の手がチンクのお尻に沿い揉んだ
「柔らかいお尻だ…マシュマロのようだね…」
次いでマスクを被った中年の男は手に持ったうずらの卵大のローターをチンクのアナルにあてると
そのまま差し込んだのだ

つぶり
「そんっな…あぅ…ふぁっ…あぅ…はっ…あっ…あああ…」
ぬずずずう

そのまま奥まで押し込まれる、腸を逆に撫で上げられるような感覚に男の胸に手を当てて歯を食いしばるチンク

「どれ」

カチっ ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ

「っひっい!?うぁあああああああああ!!」

ビクリとチンクは白い髪を振りエビのように床で身悶えた、スイッチを止めると男は満足そうに頷いた
白い髪の少女はハァハァと犬のように息をつき唾液が床を舐めた

「ふむふむ感度は良好だな…さぁ立ちなさい夜のお散歩の時間だ」

「はぁあ…ぁ…は、は…い…」


素肌の上にコートを羽織り、よろよろと立ち上がった、今夜は何をさせられるのだろうか
そう思うと知らずチンクの体の奥に熱いものが灯るのを感じた瞳に被虐の色が僅かに瞬いた
男はそれを見逃さなかった

首輪をつけられ縄で引かれた

チンクは思った、これは罰、罰なのだ…

促されて街頭の瞬く深夜の街に踏み出した                      
                                        エロパロ的にはこんなんで?











460 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/29(金) 23:48:25 ID:SfxZs6/W
>>459速く続きを書く作業に戻るんだ!

461 名前:GJ:2008/08/29(金) 23:49:18 ID:2bu7HzV8
>>459
さあ、ディード編とセイン編を書く作業に戻るんだ。

462 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/29(金) 23:50:17 ID:v+ubL7VP
>>459
    _∩
( ゚∀゚)彡 MOTTO!MOTTO!
 ⊂彡

463 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/29(金) 23:56:12 ID:7r3LkV8R
ディ…ディードは…目隠ししておっぱいで奉仕の刑、むせかえるほどの大量の白濁を喉の奥に流しこまれる

セイン、セインはえーと…能力的に壁を境に別々の部屋の男達に上半身と下半身を犯される刑…

464 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/29(金) 23:58:42 ID:CJpsrzr8
>>459
どうかクア姉を宜しくお願いします……

465 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/30(土) 00:03:16 ID:WE2OXCJX
>>463
ありがとうございます。これで今夜は安らかに眠れそうです。

466 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/30(土) 00:10:13 ID:yFo0Thna
ノーヴェあたりは、夜の公園で輪姦露出プレイとかw
あと、目隠ししたまま、男子公衆トイレに手錠で拘束して放置もいいと思うんだ。



467 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/30(土) 01:11:12 ID:l6duhBkT
ディエチは俺の所に永久就職でおk?

468 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/30(土) 01:55:59 ID:SnKlY2Ga
んじゃ、ウェンディは俺の
性欲処理機兼子孫繁殖装置になってもらうわ

469 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/30(土) 02:18:36 ID:Da7gtb9n
なんという産む機械
じゃあセッテは俺がもらうわ

470 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/30(土) 04:14:52 ID:fQTtnz74
ならばオットーは俺の専属お世話係り(嫁ともいう)になってもらう。

471 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/30(土) 04:21:48 ID:Or1SNf6Q
チンクは俺の娘でFA?

472 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/30(土) 09:53:36 ID:IlIAyblq
なんかエロなしのSS用の板ができたらしいが、移動する人とか出るのかな?

創作発表 http://namidame.2ch.net/mitemite/

473 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/30(土) 10:30:58 ID:VwNJIwfc
そもそもこのスレはエロパロといえどもエロオンリーじゃないわけだから、移動する必要もないし。
たまに変なのも湧くけどさ、なのはエロパロスレはこのままでいいんじゃない?

474 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/30(土) 10:38:07 ID:F8vreNl7
>>473
同意
エロありだろうが、なしだろうが楽しめれば問題なしだろ

475 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/30(土) 11:36:26 ID:aO/zjSiC
まぁ向こうにリリなののができたら考える
現状だと放送も終ってるし二手に分かれたら過疎りそうだけどね
昔に比べるとやっぱ減ったよね投下

476 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/30(土) 11:51:45 ID:fvRKwa3m
>>475
減ったか?>投下
落ち着いたとは思うけど
一日に何作も投下があるほうが異常だったんだから

477 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/30(土) 11:56:02 ID:JICSeX+z
>>475
そりゃ本編終わってから結構経つんだから仕方ない
劇場版公開したらまた増えるかもな

478 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/30(土) 12:07:29 ID:oM+1rAej
>>473
今までもエロ、非エロともにいい具合に共存してきたんだ。今更分断する必要もないんでないかい?
今、ヴァイスが主役の非エロSSを書いてる。職人さんの迷惑にならない程度に投下したいな。

479 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/30(土) 12:58:49 ID:F0/FV6tU
>>476
だがエロパロ板で「普通」っつったら……数ヶ月・数年単位で1スレ使い切るペースだぜ?
このスレも最初期はまさにそうだったけどよ。ここもいつかはまた過疎るんだろうな

480 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/30(土) 13:08:55 ID:l6duhBkT
>>479
盛者必衰だからな、しょうがない
でもリリカルシリーズが発表される限りは栄え続けるんじゃない?

481 名前:B・A:2008/08/30(土) 14:59:08 ID:28uAuMX+
規制が未だ解除されていないので、ネカフェから投下します。



注意事項
・B・A版エリルー時空のお話
・主人公はヴィヴィオ
・オリキャラが出ます
・非エロでバトルです
・sts本編から11年後の物語
・フェイトが天寿を全うしております
・その他かなりの捏造多し(特に古代ベルカや聖王に関して)
・タイトルは「Das Erbe zur Zukunft」 意味:未来への遺産
・SSXの内容は風の噂程度にしか知りません(←もう持っている人に対して)
・作中においてヴィヴィオの言葉と行動に矛盾が生じてしまいますが、あくまで本人の気持ちの問題ということにしてください
・前提作品『Ritter von Lutecia』
      『Nach dem eines Speerritters』

482 名前:Das Erbe zur Zukunft@:2008/08/30(土) 15:00:12 ID:28uAuMX+
第28話 「SECRET AMBITION」



少女には目指すべき目標があった。
幼き日に、孤独な暗闇から救い出してくれた母のようになりたい。それは裏を返せば、彼女の娘であることに対する免罪符を求めているのと同じであった。
だから掲げた理想も目指す正義も使用する魔法も、全てが母親の真似でしかなかった。
一度はそれに挫けそうになったこともあった。
自分がしていることは母親の真似でしかなくて、最初から開拓されている道を歩いているだけなのではないのかと悩んだこともあった。
そして、それは事実その通りであった。もしもこのまま時が進めば、自分は当然のように本局教導隊に入り、
多くの魔導師達に戦技を教える日々を送ることになっていただろう。
だが、その道中で感じ、得たものは紛れもない自分自身の内から出た感情であった。
きっかけは憧れだった、
始まりは憧憬だった。
何もかもが母親と同じで、けれど友を救いたいと思う気持ちだけは自分自身の誇りだった。
これだけは、誰の言葉にも左右されない、自分の内側に問いかけて見つけ出した答えなのだから。
だから、例え立ち塞がる敵がどれ程強大であっても躊躇しない。胸に刻んだ青臭い信念を、エゴイスティックなまでに貫き通す。
手にした力は、思いを貫く魔法の力。誰かの悲しみを撃ち抜く力。
その思いを胸に、ヴィヴィオは大空を力強く羽ばたいた。
自分という敵を打ち倒し、闇に囚われた友を救うために。

「アクセルシューター・・・・・・シュートっ!」

重い駆動音と共にカートリッジが炸裂し、三十二発の虹色の球体が不規則な軌道を描きながら聖王ヴィヴィオへと迫る。
誘導操作弾であるという利点を最大限に活かしたその軌道は、純粋に目標を追尾するものから相手の動きを先回りするもの、かく乱のためにわざとジグザクに飛ぶものなど、
複数の軌道を重ねることでさながらサーカスのアクロバットのように青空を縦横無尽に駆け回り、逃げ回る聖王ヴィヴィオと激しいドッグファイトを展開する。

「王の背中を舞うとは、不敬な弾だ!」

振り返りざまに聖王ヴィヴィオは砲撃を放ち、追尾するシューターを打ち消さんとする。すかさず、ヴィヴィオは思念制御でシューターを誘導、
まるで蛇が木の枝に絡みつくように極太の砲撃を避け、動きの止まった聖王ヴィヴィオの体に次々と着弾する。
立て続けに命中したシューターは一発だけでも鋼の装甲に穴を穿つ程の威力を秘めており、非殺傷設定であったとしても当たれば激しい苦痛が全身を襲う。
だが、朦々と立ち上がる白煙を睨みつけながらヴィヴィオは更にカートリッジをロードし、駄目押しとばかりにディバインバスターのチャージを開始した。

「ディバイン・・・・・・」

「見せてやろう・・・・・これが、王の戦いだ!」

「・・・・・バスタァァァッ!!」

白煙を振り払って姿を現した無傷の聖王ヴィヴィオに虹色の砲撃が直撃し、灰色の魔力光が落葉のように散っていく。
やはりと言うべきか、彼女の聖王の鎧は堅牢であった。精神を乗っ取られたことで魔力の性質まで変化してしまったのか、
その強固さはヴィヴィオのそれを遙かに上回っており、戦車をも容易く粉砕する砲撃を直に受けても僅かに仰け反らせる程の効果しか与えられない。

「この程度では、王の歩みは止まらぬ」

戦況を見守るシグナム達が驚愕の声を漏らす。
聖王ヴィヴィオはディバインバスターの直撃を受けてなお、前進を始めたのである。
ヴィヴィオが必死でリンカーコアを活性化させて魔力を注ぎ込んでも、その攻撃は聖王ヴィヴィオの肉体が纏う灰色の光に阻まれ、掠り傷一つ負わせることができない。


483 名前:Das Erbe zur ZukunftA:2008/08/30(土) 15:00:59 ID:28uAuMX+
「王とは媚びず、己が所業を省みぬものだ。受けて返す、それが我が王道よ!」

「奇遇だね、私も同じだ!」

光の奔流を割って繰り出された聖王ヴィヴィオの拳をラウンドシールドで受け流し、即座にアクセルフィンを羽ばたかせて離脱する、
すかさず後を追う聖王ヴィヴィオではあったが、その眼前にはお礼とばかりにばら撒かれたディバインシューターの群れが待ち構えていた。
アクセルシューターを習得しているヴィヴィオにとってその魔法は既に下位ランクに属するのだが、無詠唱でカートリッジを消費せずに発動でき、
尚且つコントロールのためにこちらの動きを止める必要がないという利点がある。直撃を食らっても僅かに怯む程度である聖王ヴィヴィオを前にして
その利点は微々たるものだが、それでも距離を取るには十分な隙となった。

「デバイスがない分、撃ち合いでは不利か・・・・・・・・・なかなか粘るではないか、私よ。そんなにこの娘を助け出したいか?」

「当然だ。セリカちゃんは、私の友達だ」

「言い訳にしか聞こえぬ」

「他に理由なんかない。友達っていうのはそういうものだ」

「共感できんな」

「戦う理由なんてそれだけで十分だ。聖王、お前は何のために戦う!?」

「ベルカの・・・・いや、我が国のためだ」

「その先には何がある?」

「永遠の富と繁栄」

「平和じゃないんだね」

「我が王道の綻びに気づけたか、私よ」

先程までのやり取りが嘘のように静まり返り、空に静寂が戻ってくる。

「ないんだね、終わりが・・・・・・・」

世界は一つではない。次元という海を隔てて無数の世界が混在しており、未だ確認されていない世界も無数に存在する。
聖王が掲げた王道は、確かに全てを支配することができれば争いはなくなるかもしれない。だが、肝心の支配すべき世界に果てなどというものは存在しない。
無限に広がり続ける次元世界に終わりはなく、祖国に恵みをもたらす聖王の戦いが終わることはない。そして、だからこそ彼女の国は繁栄を続けることができたのである。

「一つの世界に終始すれば、或いは見つけられたかもしれぬ。だが、止まってしまえば衰えるのが世の理だ。滅びぬためには戦い続けるしかない。
果てなき永遠の闘争が唯一救いの道であると悟った聖王の血族は、そのために自ら戦地に赴き、誰よりも濃く鮮血に染まることを選択した」

平穏という名のぬるま湯に浸かってしまえば、その先に待っているのは緩やかな衰退だけ。さながらコップの水が水蒸気となって蒸発してしまうかのように
緩慢な滅びの坂道を転がっていく。己の国を永遠に存続させることを願う聖王にとって、それはどうあっても受け入れ難い真理であった。
故に、彼女達の一族は戦い続けたのである。平和に甘えず、平穏をかなぐり捨て、自ら混沌を求め、戦争という一つの経済の下に自国を置くことを考えだした。
そして、そこまでしてなおベルカは滅んだ。

484 名前:Das Erbe zur ZukunftB:2008/08/30(土) 15:01:35 ID:28uAuMX+
「私よ、お前の言う通り私は一人であった。常に最前線で戦い、国のために全てを投げ出した。友と語らう舌も夫と見つめ合う瞳も持たなかった。
だが後悔などしておらぬよ。ベルカは私に夢を見せてくれた。我が統治の下で、繁栄を謳歌する民の笑顔は何よりも勝る至高の悦楽であった。
だから私は戦おうと決めた。どれだけ多くの屍を積み重ねようとも、その微笑みだけは絶やしてはならぬと」

「矛盾している。国民のためと言うなら、どうして国民に犠牲を強いる!?」

「その痛みを忘れぬために、我々は民の先陣を切るのだ」

「私には理解できないな。誰かを傷つけてまで幸せになりたいなんて思えない」

「ならば問い直そう。私よ、我が王道に代わるものをお前は保持しているか? 私を否定するには、その代わりとなるものを持つことが最低条件だ」

聖王ヴィヴィオに問われ、ヴィヴィオは僅かに逡巡した後にレイジングハートの先端を彼女に向ける。それが、今のヴィヴィオの偽らざる本心であった。

「答えはなしか」

「正義と政治に王道なしだ。今はなくても、いつか見つけ出す」

「保留というわけか」

「私にできることなんて、砲撃を撃つことくらいだ。エリオお兄ちゃんみたいに速く走れないし、ルーお姉ちゃんやキャロお姉ちゃんみたいに召喚獣の使役もできない。
クロスレンジは得意じゃないし、戦術なんて全然思いつかない。ううん、それだけじゃない。私は自分の周りのことで手一杯だ。
困っている人を助けたいと思っていても、セリカちゃんみたいに世界中の人を救いたいとは思わないし、あなたみたいに自分を犠牲にしてまで国に尽くしたいとも思わない。
ママみたいに最後まで戦える保障もどこにもない。私は死にたくないし戦いたくもない。それでも・・・・・・・・・」

毅然と見上げた視線は強く、その表情は二十歳にも満たない子どもとは思えぬ程引き締まっていた。
自分の口にしていることがただのわがままであるとわかっていながら、それでもヴィヴィオは目を背けずにきちんと自分と向かい合って胸の内を言葉へと変える。

「それでも、私の力で助けられる人がいるのなら、私は戦う」

「目の前で苦しむ人を救うためにか?」

「それしかできることがない」

「お前の目の届かぬところで苦しむ人間は?」

「私じゃ救えない」

「見捨てるのか?」

「私一人じゃ救えない。けれど、私は一人じゃない。私にできないことはその人がしてくれる。私よりも速く走れる人、魔法の上手い人、力持ちの人、頭のいい人、
そんな人がたくさんいる。だから、私はその人達にできないことをする。私は世界を救うんじゃない、そこに住む人を助けるんだ。それが私の戦いだ」

今日という日まで、ヴィヴィオは多くの人間の生き様を目にしてきた。
愛する者のために全てを投げ出した者がいた。
大切な家族のために己の心を殺した者がいた。
胸に描いた理想のために命を削った者がいた。
目指した夢を叶えた者がいた。
自分の正義に押し潰された者がいた。
様々な価値観が生まれては消え、我を通すこともままならない生き難い社会。それが今のミッドチルダだ。だが、だからこそ生きていける。
多くの思いが交錯するから争いが生まれるのだとしても、その争いの中で芽吹く繋がりは何よりも大切でかけがえのないものなのだから。
だからヴィヴィオは、ただ純粋に助けたいという願いのみを糧に魔法の力を振るい続ける。差し伸べた手を掴んでくれたかどうかという結果よりも、
手を差し伸べるという行為自体が何よりも尊いのだから。

485 名前:Das Erbe zur ZukunftC:2008/08/30(土) 15:02:06 ID:28uAuMX+
「私はみんな大好きだ。だから、私はみんなと生きていく!」

例えそれがもう一人の自分を否定することになろうとも、人間の持つ可能性に賭けたかった。
かつて自分を命懸けで救ってくれた人の涙が、生きとし生きる全ての生物に宿っていると信じたいから。

「お前は・・・・・騎士なのだな」

「そしてお前は王だ」

「王が戦わずして、誰が国を守る?」

「世界を守るのは王じゃない、人だ」

「何故、そこまで信じられる?」

「絶望する理由がないだけだ」

「その言葉、欠片でもこの娘に伝えてやればどうだ?」

「そのための言葉だ。私は最初から、お前なんかと戦っていない!」

虚空から出現した虹色の糸が聖王ヴィヴィオの四肢に絡みつき、身動きが取れぬように拘束する。
同時に、レイジングハートのカートリッジ機構が駆動して高純度の魔力がデバイス内の回路を循環し、槍の先端に虹色の光が凝縮していく。

「私が戦っているのは、セリカちゃんだけだ! お前は邪魔をするなぁっ!!」

叫びと共にエクセリオンバスターが放射され、聖王ヴィヴィオの姿が虹色の奔流に呑み込まれる。
だが、次の瞬間にはバインドを引き千切った聖王ヴィヴィオがカイゼル・ファルベを翼のように押し広げながらヴィヴィオの砲撃を二つに割り、
海面から飛び出たトビウオのように獲物目がけて滑空する。

「それでこそ私だ。私は誰にも理解されず、孤独の中で戦う姿こそよく似合う」

「言葉にすればわかりあえるさ。でなきゃ、人は一人じゃ生まれてこない。みんなと分かち合うために、人は孤独を恐れるんだ」

繰り出された拳をラウンドシールドで受け流し、擦れ違い様にショートバスターを連射して牽制、即座にアクセルフィンで横滑りして用意しておいた
ディバインシューターを展開する。敢えてコントロールを度外視して弾数のみを優先したそれは瞬く間に視界を埋め尽くし、海流のように蠢きながら前進していく。

「その孤独が、多様な価値観が全てを滅ぼす。わからぬ訳ではないだろう!」

極太の砲撃がディバインシューターの壁を焼き払い、滑空した聖王ヴィヴィオの蹴りが容赦なくヴィヴィオの体を捉える。
瞬間、ヴィヴィオもまたレイジングハートを振るい、ショートバスターを発射する。打撃と砲撃がそれぞれの聖王の鎧とぶつかり、
飛び散った火花を垣間見る暇さえ与えずに両者の体は独楽のように回転しながら宙を舞った。

「孤独が争いを生むのなら、それを拭う幸を王が与えれば良い。王とはそのための機械、国を動かす心臓だ! 末端でしかない騎士が敵うと思うな、私よ!」

「王様がそんなんだから、争いはなくならないんだ。言葉にすれば分かり合える、思いをぶつければ分かり合える。そのために人は生きているんだ!」

聖王ヴィヴィオが放った魔力弾の雨を、ヴィヴィオは乱射したシューターで迎撃し、再び砲撃のチャージを開始する。
その隙を突いて聖王ヴィヴィオは拳を握り、追い縋ろうとするディバインシューターを蹴散らしてヴィヴィオへと迫る。

486 名前:Das Erbe zur ZukunftD:2008/08/30(土) 15:02:45 ID:28uAuMX+
「ディバイン・・・・・・」

「はああぁぁぁぁっ・・・・」

「・・・バスタアァァァッ!!」

拳が届く寸前でチャージを終えたヴィヴィオがディバインバスターを発射し、轟音を上げながら虹色の閃光が迫りくる聖王ヴィヴィオを飲み込まんと大気を焦がす。
攻撃に集中している聖王ヴィヴィオに回避の術はなく、直撃を受けて仰け反った隙にバインドを展開、SLBのチャージタイムを稼ぎつつ一気に距離を取るのが
ヴィヴィオの狙いだ。だが、攻撃が間に合わないことを事前に気づいていた聖王ヴィヴィオは即座に用意しておいた砲撃を放ち、威力の相殺を図る。

「なるほど、この娘の記憶の通りだ。お前はお前の母とよく似ている。どれだけ苦しんでも絶望せず、屈しようとしない。諦めるということを知らない。
だが、それがこの娘を追い詰めた。お前の母に憧れ、その強さを目指し、そして手が届かなかったと知るとこの様だ」

光の奔流を割って飛び出した拳が、ヴィヴィオの聖王の鎧とぶつかって鈍い音を響かせる。思わず耳を塞ぎたくなるその音は、人間の骨が砕ける音だ。
しかもそれは一度だけではなく、強固な聖王の鎧を半ば強引に突破せんと力を込める度に、不快な旋律と化して断続的に空に響き渡るのだ。
また、砲撃の威力を殺し切れなかったのは、聖王ヴィヴィオの右腕に深い裂傷が起きており、そこから痛々しいまでに真っ赤な血が流れ落ちているのを見て取れた。

「セリカちゃん!?」

「考えることを放棄し、自分であることを拒絶した挙句、何の見返りも求めずに自己犠牲だ。駒として使い潰す以外の価値など、この娘には存在しない」

「止めろ・・・・・それ以上、セリカちゃんを傷つけるな!」

「喜べ、セリカ・クロスロード。お前は遂に、成りたかった英雄になれるのだ。お前は死して私に勝利をもたらし、私は目の前の私の体へと移る。
生前の私と同じ遺伝子だ、きっとよく馴染むであろうな。その喜びと共に、お前のことを褒めてつかわそう。それが私の与えたお前の役目だ」

灰色の虹がヴィヴィオの聖王の鎧を徐々に侵食し、ゆっくりと拳が不可視の壁を突き抜けていく。それは同時に、彼女の右腕がどんどん壊れていっているのと同義であった。

「自分を取り戻して! 聖王に好き勝手させるなんて、セリカちゃんらしくないよ! このままじゃ、セリカちゃんが死んじゃう!」

「無駄だ、私の言葉はこいつに届かぬ!」

「死んだらそこで終わりなんだよ! もう戦えないんだよ! みんなの笑顔を守りたかったんじゃないの!? ここで死んだら、
今日まで頑張ってきたこと全部が無意味になるんだよ! 思い出して、どうしてここに立っているのかを、何故この道を選んだのかを! 
例えその結果が間違っていても、みんなから否定されたとしても、その道を選んだからここにいるんだってことを忘れないで! 
どうして戦いたいと思ったのか、その気持ちを否定しないで!」

直前まで迫った拳は実際の大きさよりも遙かに大きく見え、触れた先から砕けていってしまうような凶悪な気配を纏っていた。
その死の具現ともいえる拳を前にして、ヴィヴィオは視線を逸らさずに聖王ヴィヴィオの内に沈んでいるセリカに向けて語りかける。

「私だって悩んだ。自分がやってしまったことに後悔して、躓いて、それでもみんなから笑われるような小さな理由に縋ってここまで来た。
小さい頃の私は弱くて泣き虫で、転んでも一人じゃ起きられなくて、みんなにもたくさん迷惑かけて、私なんかいない方が良いんだって思ったこともあって
・・・・・・・それでも、私のことを守るって抱きしめてくれた人がいて、その人に憧れたから・・・・・・その憧れが私を私にしれくれるから、
私はここに立っている。それが正しいのかどうかはわからない。けれど、その気持ちに間違いがないことだけはわかる。憧れることが間違いだなんて、
誰にも言わせない。思い出して、セリカちゃんがみんなの笑顔を守りたいって思った理由を、高町なのはに憧れた訳を! 自分を否定してでも戦おうって決めた原点を
・・・・・・・・胸に宿った、熱い彗星のような鼓動を・・・・・・・その憧れだけは、忘れたりしないで・・・・・・セリカちゃん!」

虹の鎧が砕け、死の拳が唸りを上げる。
その戦いを見守っていた人間の誰もが目を背け、ヴィヴィオ自身ですらここで終わりなのかという諦観の念を抱く。だが、その一撃が頭蓋を砕くことはなかった。
まるで場違いな静寂が空に戻ってくる。
目の前の出来事にヴィヴィオが息を呑み、聖王ヴィヴィオもまた驚愕に眉をひそめる。その視線の先には、突然動かなくなった聖王ヴィヴィオの右腕があった。

487 名前:Das Erbe zur ZukunftE:2008/08/30(土) 15:03:20 ID:28uAuMX+
「う、動かぬ・・・・・・」

「セリカちゃん・・・・そこに・・・・」

「く・・・・このおぉっ!!」

ヴィヴィオが何かを言おうとした瞬間、苛立ちで顔を歪ませた聖王ヴィヴィオが空いている左手を翻して無防備なヴィヴィオの体に魔力弾を撃ち込み、
怯んだところで放たれた回し蹴りが側頭部を殴打する。容赦のないその一撃にヴィヴィオは耐え切れず、視界が暗転すると共に何か見えない力に体が引きずられていく。
堕ちているのだ。
頭部への一撃で意識が飛び、アクセルフィンを維持できなくなったようだ。
どこかに機能障害が発生しているのか、レイジングハートに内蔵されているはずの自動浮遊機能も発動してくれない。

(届いたのに・・・・・・今、確かに届いたのに・・・・・・私の力じゃ、ここが・・・・・限界・・・な・・・の・・・・・)

衝撃が体を走る。
どうやら、殴られているらしい。放っておけばこのまま地面に激突して潰れたトマトのようにみっともない姿を晒してしまうというのに、
あの尊大な王様は不様に死ぬことすら許してくれないようだ。
その時、声が聞こえた。
母から譲り受けて以来、ずっと一緒に戦ってきた鋼の家族、レイジングハートの声が。

《まだです》

(レイジング・・・・ハート・・・・・・・)

《まだあなたは、全てを出し切っていない。あなたにはまだ、やれることが残っているはずです》

(けど・・・・・ブラスターモードは・・・・・・・・)

ヴィヴィオの脳裏に、感情のままにブラスターモードを起動させてセリカを傷つけてしまった時の出来事が蘇る。
あれは自分も敵も傷つける破滅の力。相手の意思など無視して悪魔の如き暴力で捩じ伏せる恐ろしい機能だ。使えば己の命だけでなく、誇りまで失うことになる。

「あんな思いは・・・・・もう嫌だ・・・・・・・」

《それは私達の力です。ですが、あなたの力は・・・・・あなただけの力は、まだ残されている・・・・・・・》

「私に・・・・・そんな・・・・も・・・・」

《否定しないで下さい。王であることも兵器であることも忌むべきことかもしれません。ですが、その力は罪なき無垢なあなたの可能性です。
あなたの一部なのです・・・・・・だから・・・・・・・・・》

奇しくもそれは、かつてセリカが口にしたのと同じ言葉であった。

『あんたの一部に変わりないんだから、きっちり最後まで付き合いなさいよ』

かつて聖王の力に悩んでいた時、セリカが自分にかけてくれた言葉。同情でも否定でもなく、ただ事実だけを述べた冷たい言葉。
けれど、その言葉のおかげで自分の力と向き合うことができた。彼女がいたから、自分は魔導師であり続けることができたのだ。

488 名前:Das Erbe zur ZukunftF:2008/08/30(土) 15:04:05 ID:28uAuMX+
《だから・・・・・・ご自分まで否定しないでください、マスター!》

そしてヴィヴィオは、己の奥に眠る忌むべき力を解放する。
痛みに震える体に鞭を打ち、全身を引きずる重力に逆らって、際限なく澄み渡る意識のままに、ヴィヴィオは脳裏に描いた雷光を現実へと侵食させた。





その瞬間、誰もがヴィヴィオの敗北を確信した。
意識を失い、落下していくヴィヴィオに迫りくる聖王ヴィヴィオの拳から逃れる術は最早ない。堅牢を誇る聖王の鎧も同じ聖王の前には無力であり、
レイジングハートが自動詠唱したプロテクションもほとんど意味をなさなくなっている。だが、その絶望は他の誰でもない、ヴィヴィオ自身の手によって扶植された。

《Sonic Move》

雷光が空を駆け抜ける。
その場にいた誰もが、己の目を疑った。必殺を賭して拳を放った聖王ヴィヴィオですら、いったい何が起きたのか把握し切れておらず、
突如として姿をかき消したヴィヴィオの姿を求めて周囲を見回している。
そんな中、唯一ヴィヴィオの動きを追うことのできたごく一部の者は、彼女の佇まいにある人物の姿を重ね、歓喜と畏怖の入り混じった戦慄に背中を震わせた。

「あ・・・・あれ・・・・あれは・・・・・」

その速さを誰よりも目に焼き付けていたエリオが声を震わせ、隣にいたキャロが堪え切れずに涙を浮かべてエリオの腕に縋りつく。
シグナムは万感の思いでヴィヴィオを見上げ、ティアナは驚愕の余り言葉を失っていた。

「あれは・・・・母さんの魔法だ」

聖王の魔の拳から逃れるためにヴィヴィオが使用した魔法。それはエリオとキャロの母であり、シグナムの好敵手であり、ティアナのかつての上司であり、
そしてヴィヴィオのもう一人の母親であった、フェイト・T・ハラオウンが得意としていた加速魔法、ソニックムーブであった。





一度として使ったことがないにも関わらず、寸分の狂いなく発動したソニックムーブの感触を、ヴィヴィオは言葉に表すことができなかった。
嬉しいのか悲しいのかもわからず、自然に溢れてくる涙を止めることができない。
ただ、この瞬間から自分はさっきまでと違う位置に立つことができるようになった、それだけは理解できる。

「いくよ、レイジングハート」

《Yes, my master》

再びソニックムーブを発動し、光速の矢と化したヴィヴィオが聖王ヴィヴィオへと迫る。それは余りに無謀な突撃であった。
ヴィヴィオの領分は誘導操作弾と砲撃による中・長距離戦であって、接近戦はどうしても聖王ヴィヴィオに劣ってしまう。
いくら魔力が残り少ないからといって、一か八かの突撃を仕掛けるのは愚の骨頂と言っても良い。
だが、稚拙なはずのヴィヴィオの一撃は呆気なく聖王ヴィヴィオの防御を打ち崩し、聖王の鎧を中和しつつ振り下ろした拳が聖王ヴィヴィオの顔面を捉える。
それは、スバルが習得しているシューティングアーツの打撃コンビネーション、ストームトゥースであった。

「動きがさっきと違う!? 何だ、その力・・・・・・」

「これは私の兵器としての力、お前にはない、私だけの力だ。私はもう逃げない、この力とも真正面から向き合って生きていく
・・・・・・・・ここからが、正真正銘の全力全開だ」

手の平から生みだした魔力球が破裂し、眩しい輝きが聖王ヴィヴィオの視界を焦がす。その隙を突いて再び背後に回り込んだヴィヴィオは、
まるでエリオのようにレイジングハートを両手で構え、聖王ヴィヴィオを串刺しにせんと大気を引き裂く。

489 名前:Das Erbe zur ZukunftG:2008/08/30(土) 15:04:42 ID:28uAuMX+
「馬鹿め、殺気が殺し切れておらぬ!」

振り返りざまに放った回し蹴りがレイジングハートの先端を打ち砕く。その瞬間、今にも串刺しにせんと槍を振るっていたヴィヴィオの姿が溶けるように掻き消え、
そのすぐ後ろから染み出るように本当のヴィヴィオが姿を現す。

「幻影!?」

「紫電一閃!」

炎を纏った拳が聖王の鎧を焼き、周囲に猛烈な陽炎を生みだした。その歪んだ空間を引き裂き、聖王ヴィヴィオのハイキックがヴィヴィオの頭蓋を砕かんと迫る。
しかし、その一撃は今までのどの防御魔法よりも強力な障壁が完膚無きまでに防ぎ切り、聖王ヴィヴィオはヴィヴィオに触れることすら敵わなかった。

「トーデス・ドルヒ」

「くっ・・・・調子に乗るな!」

聖王ヴィヴィオはバックステップを踏みながら死角から迫る短剣を破砕、砲撃の態勢に入る。
それを見たヴィヴィオはすかさず用意しておいた術式をレイジングハートに走らせ、激発音声を紡いだ。

「縛って、鋼の軛!」

瞬間、遙か眼下の大地を突き破って出現した無数の虹色の針が、滑空する聖王ヴィヴィオを縫いつけんと迫る。
そして彼女が回避に気を取られている内にヴィヴィオは風に流れる雲の中から適当なものを見繕い、足下に放電を纏う魔法陣を展開する。

「サンダァァァァ、レイジィッ!!」

「回避・・・・間に合わん!」

幾筋もの落雷が降り注ぎ、バリアで防ぎ切れなかった電撃の余波が聖王の鎧に弾かれて霧散する。
これが純粋魔力の砲撃ならば或いは鉄壁の防御を抜けていたかもしれないが、電撃を伴う分その破壊力はヴィヴィオの代名詞ともいえる
ディバインバスターを遙かに上回り、過負荷でかなりの魔力を消耗させることができたはずだ。

「まったく、次から次へと面白い手品を見せてくれる」

僅かに体を帯電させながら、聖王ヴィヴィオは唇の端を釣り上げる。体はお互いにもう限界のはずなのだが、彼女はまるで堪える素振りを見せていなかった。
骨折している上に肉が裂けている右腕もまるで気にならないようで、片腕のハンデにも付け入ることができない。
何とかして大技をぶつけて聖王ヴィヴィオを昏倒させなければ、こちらが先に魔力切れを起こしてダウンしてしまう。

(残りはマガジン一個と四発・・・・・・・何とか動きを止められれば・・・・・・・)





二人の聖王の戦いは、時を追うごとに苛烈さを増していった。
数々の魔法を自分の内より汲み上げて自分だけの戦術を構築し、果敢に攻めるヴィヴィオと、彼女の怒涛の攻めをまともに食らってもない倒れない聖王ヴィヴィオ。
当初こそこれはヴィヴィオの個人的な戦いだからと傍観していた面々は、激しさを増すその戦況に、最早自分達が介入することは不可能であると悟っていた。

490 名前:Das Erbe zur ZukunftH:2008/08/30(土) 15:06:11 ID:28uAuMX+
「ソニックムーブにサンダーレイジ、それに幻術も・・・・・・」

「わたしのブーステッドプロテクションとルーちゃんのトーデス・ドルヒ」

「ヴィータのアイゼンゲホイルとザフィーラの鋼の軛、そして私の紫電一閃」

「見て、あのレイジングハートの構え方はエリオの槍術よ」

「それにシューティングアーツも・・・・・・・・・」

「これが、レリックウェポンの真の力・・・・・兵器として生み出されたヴィヴィオに組み込まれた、高速学習能力・・・・・・・」

高速データ収集による攻撃の無効化及び学習は、ヴィヴィオが生み出される際に付属された機能であり、
幼い頃のヴィヴィオはこの機能に従って無意識の内に魔導師や騎士に興味を示し、本能的に身を守るために戦い方を学習していた。
そして、一度でも学習した魔法はデータとしてヴィヴィオの内に記録され、それを無効化する能力を彼女は有している。
だが、なのはの娘として普通の人々と共に生きると決めたヴィヴィオは、その力を嫌悪し、コントロールの方法を身につけてからは
自主的に使用したことは一度としてなかった。その力を自覚する度に彼女は、自分が人間ではなく兵器であるということを思い知らされるため、
ずっと忌み嫌ってきたのだ。それはヴィヴィオが母親と同じ戦い方に固執していたことからも容易に想像がつく。
だが、ヴィヴィオが今使用している魔法や技は全て忌み嫌っていたその力を使って学習したものであり、彼女はそれを用いて戦うことに何の躊躇も抱いていない。
それは彼女が自分の思いを貫くためにその力と向き合い、遂に自分の一部として受け入れることができたからだ。
しかもそれは、ただ戦い方を模倣しているだけではない。最初は拙く、形を真似ていただけの粗悪な模倣でしかなかったが、
次第に自分の戦い方に合わせて最適化し、他の魔法や技術と複合させることで全く新しい戦術へと昇華させていっている。
それはもう誰の真似でもない、ヴィヴィオが一人で完成させた、ヴィヴィオだけの戦い方だ。

「ヴィヴィオの中には、あたし達やなのはさん・・・・・みんなの思いが生きているんだ」

何気ないスバルの呟きに、その場にいた全員が同意する。

「ヴィヴィオは多くの人達から学んだことを、思想や信念をただ受け継いだだけじゃない。それに対して自分で考え、形を変えて自分だけのものへと成長させている。
過去から継承した思いを、今という自分の中で育み、未来へと繋ぐ・・・・・・・・・ヴィヴィオには、人間の持つ無限の可能性が秘められている」

「人の欲望から生み出された彼女が、人間の希望を象徴している・・・・・・みんな見えるか、ヴィヴィオは今、自分の力で羽ばたいているぞ」





全てを投げ出し、考えることを止め、混濁する意識の闇に呑まれたはずだった。外の戦いから目を背け、何もない世界で自己が消えるまで漂い続ける不確かな存在。
そんな残骸に成り果てたはずなのに、気付けば自然と浮かび上がろうとしていた。

(何でかな・・・・・・・何で、こんなに必死なんだろう?)

感覚すら消えた孤独の闇の中で、どうして自分はこんなにももがいているのだろう。
もう自分の役目は終わったはずなのに、どうしてまだ戦おうと足掻いているのだろう。
大好きなあの人はもういないのに、どうして消えたくないと念じているのだろう。

491 名前:Das Erbe zur ZukunftI:2008/08/30(土) 15:07:03 ID:28uAuMX+
『セリカちゃん!』

あいつが呼んでいる。
友達だから、ただそれだけの理由でボロボロに傷つきながら、それでも懸命に羽ばたいて立ち向かってきた少女。
あいつを見ていると無性にイライラしてくる。お節介焼きで優柔不断で何かにつけて悩みまくる上に、人を疑うことを知らない純真な魔導騎士。
ハッキリ言って大嫌いの部類に入る人間なのに、どうしてこんなにもあいつのことが気になるんだろう。どうして、あいつの言葉がこんなにも胸に突き刺さるんだろう。

(ああ・・・・そうか・・・・・・あいつだけだ、私を否定したのは・・・・・・)

みんなの笑顔を守りたい。そんなご大層な夢を、彼女だけが真剣に取り合ってくれた。そして、そのために暴走した自分を真っ向から否定してくれたのも、あいつだけだ。
思えば、自分のためにこんなにも真剣になってくれた人間はいなかった。誰もが自分の夢をせせら笑うか、無知な子どもを見るような目で見下す中、
彼女だけがその夢を正しいと言ってくれた。そして、そのための方法を間違えていると断じてくれた。
自分に生き方を教えてくれたシエン・ボルギーニですらしてくれなかったことを、彼女だけがしてくれたのだ。友達だから、ただそれだけの理由で。

(違う・・・・・友達って、理由にならない・・・・・・・理由もなく真剣になっちゃう相手が・・・・・・友達って言うんだ・・・・・・・)

どんなに拒絶しても彼女は諦めず、最後の最後まで自分の名前を呼んでくれた。
どんなに傷つけても躊躇わず、最後まで自分のことを友達と呼んでくれた。
友達だから真剣に向き合ってくれて、自分の怒りを受け止めてくれて、間違っていることを指摘して、一番大事なところは認めてくれた。

『例え自分を否定しても、戦おうって決めた原点を・・・・・・・・胸に宿った、熱い彗星のような鼓動を・・・・・・・その憧れだけは、忘れたりしないで』

シエンに命じられたから戦った。彼のために自分を投げ出し、偽りの聖王となってあいつを傷つけた。何でそんなことをしようと思ったのか。
どうして自分の存在がなくなってでも、平和な世界を作りたいと願ったのか。その答えは、自分の中のずっと深いところで今もまだ燻っている。

(だって、楽しそうだから・・・・・・みんなが笑っているのを見ると、私まで笑えるから・・・・・・・だから、それが私の原点
・・・・・・英雄に憧れたのもそれが見たかったから・・・・・あの人が・・・・・なのはさんが笑っていたから・・・・・・・・・)

強くて美しかった高町なのは。だが、セリカを惹きつけて止まなかったのは、彼女が災害現場から救出した子どもを抱え上げて微笑んでいる写真だった。
子どもの無事を、ただ純粋に喜んでいた彼女の微笑みに、自分は目を奪われた。

(私もあんな風に笑いたくて・・・・・あんなに眩しく笑えるのなら、私も魔導師になって、みんなの笑顔を守りたかったから
・・・・ずっと側で、誰かの笑顔を・・・・・・ああ、そうか・・・・何でこんな思い違いを・・・・・・・)

何もない暗闇に向けて、セリカは自嘲する。

(私はみんなの笑顔を守りたいんじゃなくて、みんなの笑顔が見たかったんだ)

けれど、力を求め続けて最初の思いを忘れてしまった。目的を見誤って、自分を犠牲にして戦うなどという考えを抱いてしまったのだ。
ただ守りたいという思いに駆られて、前提から間違えて、その先にあるものが何か知ろうともせずに、
ずっとそれが自分の願いだと思い込んで、今日まで走り続けてしまったのだ。
だが、気付くのが遅すぎた。やり直したくてもやり直すだけの力がもう残っていない。もう一度戦いたくても、指先一つ動いてくれない。
心のどこかでまだ、あの人と同じ場所に逝きたいと思っているから、どうしても最後の一歩を踏み出せない。
あの人の声が聞こえたのは、正にその時だった。

                                                              to be continued

492 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/30(土) 15:08:14 ID:mpNHUJug
支援するぜい

493 名前:B・A:2008/08/30(土) 15:11:48 ID:28uAuMX+
以上です。
本当はこれと次話を一話で終わらせるはずだったのですが、分量増えまくったので2つに分けました。
よって一話余分に増えて予定終了話はきっちり30。
いや、エピローグが一話で収まればの話ですが。

494 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/30(土) 15:34:42 ID:mpNHUJug
あう、支援間に合わなかった……代わりにB・A氏にこれをつGJ
熱い戦闘、いいなあ……自分も今戦闘シーンを書いてるけど面子の都合上ちっとも
熱くならないぜ。

最近のペースが落ち着いてるのは規制に引っかかってる職人氏が多いのかな?



495 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/30(土) 15:54:44 ID:7l5HUJ9n
最近氏が来ないので心配だったぜ
GJ!
もうこの展開熱すぎるだろ!!!
間違いなくBGMは水樹じゃなくてスパロボのラスボス戦のだな
とうとうヴィヴィオの思い届くのか?
次回も燃えさせてくれ!

496 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/30(土) 16:28:59 ID:Nd1ghgp7
>>492>>494
エロパロ板の一番上の宣伝スレは一体何のために設置されてるのかと小一時間(ry

497 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/30(土) 17:13:55 ID:vcd1H6yj
>>496
完全に部外者ですまんがどういう意味なのか教えていただきたい
純粋にわからん

498 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/30(土) 17:17:51 ID:GskjJmSX
>>497
つスレッド924

>>493
GJ!いやもう分量気にせずゆっくり納得いくまで書いてください。

499 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/30(土) 17:29:13 ID:Iucvsigy
やっぱ分割で書いてると
容量オーバーとかしやすいな。
投下しちゃった分は直せないし。
難しいな。

500 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/30(土) 17:39:25 ID:pEkfoCp7
>>498
717しか、ないんだけど……?
壺、じゃ見えないのかな。

501 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/30(土) 17:54:57 ID:GskjJmSX
クグっても出てこない?
俺もdat落ちとかの情報載せてるスレで見聞きしただけなんだが

>//----------------------------------------【編集後記】
>識者の方からアドバイスをいただきました。昨日の「アダルト専用サーバのご案内スレ」ですが、
>通称「スレッド924」と呼ばれるスレで、『板内での告知・宣伝などを目的とした「書き込めない」「落ちない」
>「ちょくちょく上がってくる」特殊なスレッド』(2ちゃんねるwikiより引用)だそうです。

>114 名前: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 投稿日: 2008/08/28(木) 06:40:08 ID:riV2p/mE
>>113 運営が張ってる広告専用スレ

>イパーン人は書き込めないんだけど、書き込みの操作をすることで
>連投規制の支援ができる、便利なスレ

502 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/30(土) 17:56:52 ID:vcd1H6yj
>>501
サンクス やっと見えた

503 名前:ぬるぽ ◆6W0if5Z1HY :2008/08/30(土) 20:32:50 ID:Ym+ydcd5
 スマン、ありえねーくらい間を空けてしまった。申し訳ない。80スレの頭で書いた寿司のやつの続きです。
15レスくらい使わせてもらいます。途中で規制される可能性があるので、ちょっと時間がかかるかも。

・前編、後編の二回。今回は後編
・エロくない作品
・ほのぼのと真面目の入り交ざった作品
・時間軸はA’sのちょい後の軸と、Stsのちょい前の軸の混合
・NGにしたい人はトリップかIDでよろしく。

〜〜前編のあらすじ〜〜

 なんやかんやで、八神家の五人は、ヴィータのゲートボールの知り合い・鈴木老人の寿司屋にやってきた。
もうすぐ、鈴木老人の店はなくなってしまうのだが、果たして……


↓以下、本編スタート

504 名前:ゲートボールと寿司と八神はやて・後編 ◆6W0if5Z1HY :2008/08/30(土) 20:34:12 ID:Ym+ydcd5
「――うむ。はやてちゃんにしぐなむさんにしゃまるさんにざふぃーらさん、じゃな」
「うちのヴィータが、いつもお世話になってます」

 鈴木老人にぺこりと頭を下げるはやて。

「いやいや。わしらこそ、びーたちゃんのおかげで、随分と外に出るのが楽しくなったもんじゃ。
 今日はみなさんのために、赤字覚悟で思い切りいい魚を仕入れてきた。半分やけくそじゃ」
「えっ? いや、そんな……」
「ええんじゃ、ええんじゃ。どうせもうすぐ店はなくなるんじゃ。炎が消える前の最後の瞬きじゃ」

 そう言って鈴木老人は豪快にふひゃひゃと笑ったが、事情が事情だけに、八神家の五人は笑えない。
豪快な笑いの中に、どこか寂しげなものが混ざっていることに気が付くのは、容易かった。

「あの……」
「はは、すまんの。では、そろそろ始めようかの」

 そう言うと、鈴木老人は準備を整える。ではここから、八神家が味わった寿司のうち、五品を紹介しよう。


505 名前:ゲートボールと寿司と八神はやて・後編 ◆6W0if5Z1HY :2008/08/30(土) 20:35:28 ID:Ym+ydcd5
〜〜秋刀魚の握り〜〜

「へぇー、秋刀魚って、お寿司で食べられるんですか?」

 秋刀魚の調理法というと、塩焼きしか思いつかない人がほとんどではないだろうか。
ところがどっこい、実はこの大衆魚、寿司ネタとして非常に鮮烈な味を持っているのだ。

「世間一般ではあまり知られてはおらんようじゃがのぅ。めちゃくちゃうまいぞ」

 料理の知識にはそこそこ自信のあるはやてだが、秋刀魚が寿司ネタとして優れた面を持つということは、
皆目知らなかった。驚きと同時に、はやての口から疑問の声が漏れる。

「知らんかったわぁ……でも、秋刀魚のお寿司って全然見ぃひんね。どうしてやろ?」

 漁獲量が昔より減ってきているとはいえ、秋刀魚はまだまだスーパーに行けば見ることができる魚だ。
そんなポピュラーな魚なのに、寿司ネタとして使われるという話をあまり聞かないのはどうしてだろうか。

「秋刀魚は鮮度が落ちやすくてのう。鮮度が落ちると、寿司ねたとしての味は極端に落ちてしまう。
 つまりは鮮度が勝負の魚なんじゃ。今日は特別に、仕入れてもらった。では――」

 その言葉を境に、鈴木老人の周りの空気がスッと変わった。

「握るぞい」

 真剣な眼差し。いつもと違うその様子に、ごくり、と生唾を飲むヴィータ。
と、次の瞬間!まるで鷹が獲物を攫うかのように、木桶に右手を突っ込んで中の酢飯を掴み取る鈴木老人。
鮮やかな手つきでそれを丸めると同時に、左手には秋刀魚の切り身がのっかっている。
丸めた酢飯を切り身の上に置いた――かと思ったときには、既に寿司の形がしっかりと形成されていた。

(なんと……この老人、只者ではない!)

 目の前の老人から放たれるオーラに、思わず背筋をブルッと震わせるザフィーラ。

(な、なんなの、この人……!)

 圧倒されるその仕事ぶりはまるで――目の前の一人の老人に、光が凝縮していくようだと感じるシャマル。

(くっ、馬鹿な……! この私が、目で追うのが精一杯だと!)

 自分がライバルと目する少女のスピードに勝るとも劣らない、と驚愕するシグナム。
凄まじい勢い。それでいて雑な感じは全くなく、丁寧な仕事ぶり。あっという間に、十貫の寿司が出来上がった。

「さあ。どうぞ、召し上がれ」

 秋刀魚の上には、一般的なワサビではなく、生姜がのっかっている。ワサビより、生姜のほうが相性がいいのだ。

「……んっ、はぅん……!」
「……っ……おいし……」

 口内にじゅわっと広がる脂の味が、なんとも鮮烈。おっとりとした(?)感じではなく、勢いのある味の脂だ。
青魚にありがちな臭みがほとんど感じられないのは、薬味の生姜の効果だけではなく、下処理が丁寧だからだろう。
身もとろけるような食感。その秋刀魚の身が、ほのかなだしの香りがする酢飯と非常によく合う。
素材がよいのはもちろんだが、職人の腕によって見事に素材の魅力が引き出され、一流の寿司となっていた。
内心、たかが秋刀魚だと思っていたはやては、その認識を大幅に改めた。

(うわぁ……秋刀魚だと思って馬鹿にしてたら、あかんわあ……)


506 名前:ゲートボールと寿司と八神はやて・後編 ◆6W0if5Z1HY :2008/08/30(土) 20:37:27 ID:ESYNTb+e
〜〜赤貝の握り〜〜

「ほぅれ、ご開帳じゃ」
「うわぁ! すごい、真っ赤!」

 鈴木老人が貝を開くと、中から真っ赤な水が溢れ出した。赤貝が赤いのは、身だけではない。
赤貝の身や体液が赤いのは、人間の血液が赤いのと同様、ヘモグロビンによるものである。

「うちの店で扱っている赤貝は、本物の赤貝じゃぞい」
「えっ? 本物って……」
「世の中に出回っている赤貝の大部分はのう、実は偽物なんじゃ」

 実は、赤貝は最近やっと養殖ができるようにはなったものの、まだまだ高級品。
一流の寿司屋などでないと、なかなか取り扱うことができない。
そこで、赤貝とよく似た貝を赤貝と称して売るというのが、いかにも日本人の考えそうなことである。
残念ながら、読者の諸君が寿司屋や缶詰で食べているのは、十中八九、赤貝の偽物だ。

「この世界って、結構いい加減ねえ……」
「うぬ……我々も、何が真で、何がそうでないか、それを見極める目をしっかりと持たねばならんな」

 ざわざわする八神家を、鈴木老人が諭した。

「だからのう、よく知っておいて欲しいんじゃ。本物の味を、な」

 目の前に置かれた赤貝の握りは、『大人の事情』などまるで知らないかのように、美しく輝いていた。
鼻にスッと抜ける爽やかな香り。それでいて、底の見えないような奥の深い味。
本物の味がこの一貫に凝縮されている――まだ世の中をほとんど知らない10歳のはやてだが、そう思った。

〜〜炙り金目鯛の握り〜〜

「へぇー、金目鯛を握り寿司に……」

 秋刀魚の時と同様、またしてもはやての口から「へぇー」が飛び出した。
はやては、金目鯛の料理法というと、甘辛く煮付けることしか思い浮かばなかった。

「これはのう、とある駅の駅弁を参考にして作ってみたんじゃが」

 皮を残した金目鯛の切り身を、炭火で軽く炙る。香ばしい匂いが立ち込めた。
その切り身と酢飯を、光速で寿司に仕立て上げていく手つきの鮮やかなこと。

「うまい……」
「なんという……上品で軽い味だ……!」

 その美味さに、ザフィーラとシグナムが揃って声を上げる。
さっと炙ることによって、適度に身が引き締まった金目鯛は、しっとりと、それでいて洗練された味がした。
炙られて香ばしくなった皮の食感が、金目鯛の淡白な身の旨みを引き立てる役割を果たしている。
金目鯛にある独特のクセは感じられない。酢飯との一体感も素晴らしい。

507 名前:ゲートボールと寿司と八神はやて・後編 ◆6W0if5Z1HY :2008/08/30(土) 20:38:06 ID:ESYNTb+e
〜〜四海巻き〜〜

 四海巻き、とは断面が四角い巻き寿司のことである。
巻いて包丁で切ると、四角い断面にはマグロや胡瓜・玉子焼きやでんぶなどがカラフルに、美しく配置される。
見たことがある、という人も少なくないだろう。
だが、作り方が非常に難しく、最近ではこれを巻ける職人が少なくなってきたらしい。

「ほれ、こうやって、こうして……完成じゃ!」

 全く迷いがなく、鮮やかな手つきで四海巻きを完成させる鈴木老人。包丁でカットすると、断面が現れる。

「うわあ〜……」
「わあ、きれいやなぁ……」

 ヴィータとはやてが、その美しい断面にうっとりとした声を揃って上げた。
他の三人も、感嘆の眼差しで四海巻きの芸術的な断面を見つめている。食べる前に、まず鑑賞。

「食べるのが勿体無いわね……」

 名残惜しそうに四海巻きを眺めた後、ゆっくりと口に運ぶシャマル。

「……っ!!……!」

 まるで、仕事帰りのサラリーマンが一杯やり始めたときのような、くはぁーっという表情を浮かべた。
なんという美味しさ。様々な具が渾然一体となり、それを寿司飯が見事にピタッと一つに纏めている。
寿司飯とは、なんという偉大なものなのだろう。
目で見て楽しみ、舌で味わい愉しむ。これぞまさしく、四海巻きの真骨頂だ。


508 名前:ゲートボールと寿司と八神はやて・後編 ◆6W0if5Z1HY :2008/08/30(土) 20:38:44 ID:ESYNTb+e
〜〜炙り大トロの握り・塩〜〜

「いよいよ、最後の一品と行こうかのぅ。らすとにふさわしい一品を用意したぞ」

 柵取りされたマグロの大トロが、神々しいまでの光を放つかのように、どーんと登場した。
見事な刺身包丁によってその身は大きくカットされ、次には炭火で炙られる。
その極上の大トロを、豪快且つ繊細な技で寿司にしていくのは、まさに、ごっど・おぶ・寿司職人。

「うは……」

 誰からともなく、ため息が漏れた。大きくカットされた大トロは、シャリの上から悠々とはみ出している。
表面を軽く炙った黄金に輝く大トロに少々塩を振り、その上に白髪ネギと大根おろしがちょこんと載っていた。

「これが大トロ……私、食べるの初めてやわ……」

 以前、友人達と青森に行った時には、あの有名な『大間のマグロ』を食べる機会があったが、
あの時食べたのは赤身だった。大トロの部分は食べていない。
(某友人がマグロの目玉という爆弾を頼んだりはしたが)
こんなにいいものを自分が食べてもいいのだろうか、という背徳感と、美味しいものに対する期待感。
逡巡しながらも、はやては炙り大トロの握りに、ぱくりと食い付いた。

「……っ!!」

 はやての身体に、電撃が走った。

「……んはぁっ……」

 まるで、性的に最も脂がのった時期の女性が絶頂でもしたかのような表情と声を上げるはやて。
よく、大トロを食べたときの表現として、「口の中でとろけていくようだ」というのがあるが、まさにそれだ。
程よく炙られて香りの高まった大トロがみるみる融けていき、甘い脂となって口の中で唾液と混ざり合っていく。
白髪ネギと大根おろしが、その脂をなんとも爽やかなものに昇華させている。

 まさしく、至高の一品!

509 名前:ゲートボールと寿司と八神はやて・後編 ◆6W0if5Z1HY :2008/08/30(土) 20:39:20 ID:ESYNTb+e
「――どうじゃ。満足してくれたかい?」

 ニコニコとしながら、目の前の五人を眺める鈴木老人。

「すげー……こんなにうめーものが、この世界にはあったのか……」
「これが寿司……単なる食べ物ではなく、まるで完成された芸術品のようだ。素晴らしいです、御主人」
「シャマル。お前も少し、この方を見習ったほうがいい」
「な、な、な、なんですって!」

 ザフィーラに掴みかかるシャマルを横目に、はやては満面の笑みを浮かべながら鈴木老人に言う。
今のはやての表情は、心も身体も満ち足りた者にしかできないものだろう。

「私――食べ物で感動したん、初めてです。ほんまに美味しかった。ありがとうございます」
「うんうん。最高の褒め言葉じゃ。みなさんに喜んでもらえて、わしも嬉しいのう」

 ずずずず、とお茶をすするはやて。ぷはぁ……と一息ついた後、こう言った。

「それにしても、こんなに美味しいお寿司を握れる人が、こんなに近くにいたなんて、知らんかったわぁ……」

 その言葉に、鈴木老人の眉がピクリと動いたように見えた。そう、はやての言う通りだ。
なぜ、これほどの腕を持つ人物が、このような目立たない場所で埋もれているのだろうか。
先ほどから抱いていた疑問を払拭すべく、シグナムが、ゆっくりとこう切り出す。

「御主人。あなた、只者ではありませんね」
「はは、そんなたいしたもんじゃないぞい。わしはただの老いぼれじゃ。ふひゃひゃひゃひゃ……」
「……私は、食べ物の世界のことは正直よくわかりません。
 しかし、あなたの持つ雰囲気は一流そのもの、ということだけは確信を持って言うことができます。
 そのようなお方が、なぜこんな目立たないところに……」

豪快に笑い飛ばす鈴木老人を、じっと見据えるシグナム。
その視線に、それまでニコニコと相好を崩していた鈴木老人が、ふと真面目な顔つきになった。

「……なかなかに鋭い目をお持ちの娘さんじゃのう。ここまでやってしまうと、さすがに隠せんか」

 ふぅーと大きく息を吐いた後、どかっと椅子に腰掛けて、鈴木老人は語り出した。


510 名前:ゲートボールと寿司と八神はやて・後編 ◆6W0if5Z1HY :2008/08/30(土) 20:40:07 ID:ESYNTb+e
「……昔はな、銀座の一流店で職人をしておった」
「銀座で!?」

 鈴木老人の言葉に、はやてがビックリした声を上げた。

「ぎんざ? じーちゃん、どこだよそれ」

 はやて以外の四人は銀座を知らない。驚愕の表情を浮かべるはやての横で、ぽかーんとしている。
はやてが、興奮気味の声で四人に話し出す。

「みんな、銀座っていうのはな!(……大幅に中略……)そういうところなんや」
「「へぇー」」
「鈴木のじーちゃん、そんなにすごいところにいたのに、どうしてこの街に来たんだよ」

 ヴィータの問い掛けに、鈴木老人は複雑そうな表情になった。

「……何かが、違うような気がしての……」
「……?」
「はやてちゃんやびーたちゃんには難しい話かもしれんがの。あの店に来るのは、接待のお客ばかりじゃった」
「せったい? なんだそりゃ?」

 案の定、接待という用語がわからないヴィータ。

「簡単に言うと、仕事じゃ。仕事のために食べに来るんじゃ」
「仕事で? あたし達みたいに、鈴木のじーちゃんの寿司を食べたいから来るわけじゃないってことか?」
「まあ、そういうことじゃな。もっと言うと、わしの握った寿司を味わいたくて来るんじゃなくて、
 わしの寿司を仕事の『道具』として使うために来店する。そういうのが何か、違うような気がしての……」
「…………」
「純粋に、わしの寿司を『美味しい』と言ってくれるお客さんが見たくてのう。ここに越してきたんじゃ」
「……よくわかんねーな。そういう世界のことは」

 わかんねーな、と言いつつ、ヴィータは鈴木老人の気持ちが少しわかったような気がした。
時空管理局に入局して一年、複雑な『大人の世界』というものを少しは見てきたのだ。
鈴木のじーちゃんは、大人の世界の複雑な部分に絡め獲られちまったんだな、と。

「はは……びーたちゃんには難しすぎたか。いや、すまんかった。気にせんでくれ」

 力なく笑う鈴木老人に、シグナムが再び問い掛ける。

「……ところで――よろしいのですか、御主人? この店をもうすぐ畳むと伺いましたが」

 その途端、沈痛な面持ちになる寿司職人。しばらく黙り込んだ後、苦々しく呟く。

「……仕方あるまい。魚は年々値上がりしておる。いいものも手に入りにくくなってきておる。
 わしのような小さな店では、もう限界じゃ。これ以上はどうしようもない……」
「あなたには、まだ十分な力がある。このまま終わってしまうのは実に惜しい。何とか、ならないんですか?」

 何とかしようと一生懸命に頑張った結果がコレだと、そうわかっていながらも、
シグナムはそう言わずにはいられなかった。

「いいんじゃよ、もう。じじいはいささか疲れたわい……」

511 名前:ゲートボールと寿司と八神はやて・後編 ◆6W0if5Z1HY :2008/08/30(土) 20:40:48 ID:ESYNTb+e
 帰り道――明るく輝く満月の下を、車椅子に乗ったはやてを囲みながら、八神家は淡々と歩いていた。

「……現実というのは、残酷なものだな」

 ポツリ、とシグナムが漏らす。その表情は、沈痛なものだった。

「もういい、とおっしゃっていたが、内にはまだ、この道を歩み続けて生きたいという情熱があるのだろう。
 そうでなければ、今日のように素晴らしいものを作ることなどできはしまい」
「そうね……」

 シャマルも、同調する。

「あれほどの腕と情熱を持ちながら、己の道を途中で断念せざるをえないとは……」
「どうにか、ならないものかしら?」
「……我々には、どうすることもできん。実に、無力だ」

 管理局や魔法関係のことならばともかく、この世界の一般人に過ぎない鈴木老人の店の経営など、
はやて達にはどうすることもできないのは明白だ。

「……残念やけど、なんともならんやろうなぁ。住む世界でも替えない限りは……」

 はやての言葉に、ふぅーっ一同がため息をついた。
だが、しばらく歩いた後、はやては突如自分で言った言葉を、ん?と思った後、あっ!と思った。

(そうや……! 住む世界を、替えれば……)



「――みっどちるだ? そりゃあ、一体どこじゃい?」
「えっと、まあ……とりあえず、一度来てみませんか?」

 ミッドチルダは外国のとある街だ、と適当に誤魔化した上で、はやてとヴィータは説明した。
上述したように、ミッドチルダには生の魚介類をそのまま食するという文化がない。
そもそも、生に限らず、魚介類を食するということがあまりない。
需要が少ないわけだから、魚というものに商品価値はそれほど認められず、したがって安価。
ミッドチルダでなら、何とか寿司屋をやっていけるのではないかと考えた。
(もっとも、市場が発達していないという別のリスクはあるのだが)

512 名前:ゲートボールと寿司と八神はやて・後編 ◆6W0if5Z1HY :2008/08/30(土) 20:41:34 ID:ESYNTb+e
「……せっかくじゃが、やめにしとくわい。あんた達に迷惑はかけたくないんでの……」
「そんな、私達は迷惑なんか――」
「いやいや、ええんじゃ。ありがとう、はやてちゃん、びーたちゃん」

 諦めというかなんと言うか、もはや達観してしまったかのような、その表情。
だが、店の奥に引っ込もうとした鈴木老人を、ヴィータの声が引き戻した。

「……あれは、嘘だったのかよ?」
「……?」
「この前、『おいしい』と言ってくれる人が見たくて、って言ってたじゃねーか。あれは嘘かよ」
「…………」
「いろいろ理由をつけて……本当は、うまくいかなくなるのが怖くて、びびってるだけじゃねーのか」
「こら! ヴィータ!」

 いつもなら、はやてに「コラ!」と言われれば、そこで終わりである。だが、ヴィータは引かなかった。

「この前の鈴木のじーちゃん、すごく生き生きしてた。本当はまだ、お店、続けたいと思ってるんだろ?」
「いや、わしは……」
「鈴木のじーちゃんの寿司、すごくおいしかった。あたし、また食べたい」

 訴えるヴィータの眼差しは、真剣そのもの。真っ直ぐに目の前の老人を捉えている。
その視線に射すくめられ、鈴木老人は押し黙ってしまう。場に沈黙が流れた。

「……びーたちゃんの言う通り、度重なる苦境で、わしは臆病になっとったのかもしれんのう……」

 その言葉が出たのは、唐突だった。

「わしの寿司をまた食べたい、か……そう言われてしまうと、やめてしまうわけにはいかんのう。
 どこまでやれるかは、わからんが……」
「それじゃあ……」



 そもそも、魔法の存在を知らない人間を、ミッドチルダに連れてくること自体、問題といえば問題なのだが、
そこは管理局の有力魔導師や実力者と太い繋がりがある八神家。
周囲の協力の下、なんやかんやでうまいことやり、『鮨の鈴木・みっどちるだ本店』をOPENさせてしまった。

――ミッドチルダ初の寿司屋が開店した裏側には、こういう事情があったわけである。


513 名前:ゲートボールと寿司と八神はやて・後編 ◆6W0if5Z1HY :2008/08/30(土) 20:42:12 ID:ESYNTb+e





514 名前:ゲートボールと寿司と八神はやて・後編 ◆6W0if5Z1HY :2008/08/30(土) 20:42:44 ID:ESYNTb+e
「……のう、はやてちゃん。どうやら随分とお疲れのようだが、大丈夫かえ?」
「えっ?」

 鈴木老人に声を掛けられ、はやてはハッとした。
気分転換のために管理局を抜けて外に食べに来たというのに、どうしても仕事のことが頭から離れない。
せっかく食べにきた寿司も、それほど味わった気がしない。

「なにか、悩みでもあるんじゃないかえ?」
「いや、そんな……そういうわけや、ないんですけど……」
「ふひゃひゃひゃ、隠しても無駄じゃよ。顔にしっかりと書いてあるぞい」

 やはり、数十年間、カウンター越しに客と接してきた職人は違う。人を見る目は伊達ではない。
隠そうと思っても、あっさりとこちらの心の中を見破られてしまった。
しばらく黙っていたはやてだが、やがて、ぽつりぽつりと喋り出した。

「……今の仕事が、あんまりうまくいってないんです……」
「それはそれは……大変じゃのう……」

 うんうんと頷きながら、鈴木老人は次の寿司を握り始める。
鮮やかな手つきで握られたそれは、きらきらと輝きを放ちながら、はやての目の前に置かれた。
だが、はやては心ここにあらずといった感じで、手をつけようとしない。

「あんまり、一人で抱え込まんほうがいいと思うがのぅ……ささ、召し上がれ」
「……私にしか、できない仕事なんです。私が頑張らな、みんなに迷惑が……」

 鈴木老人に勧められて、ようやくはやては目の前の寿司を口に入れた。

「…………」

 絶品のはずなのに。とっても美味しいはずなのに。
はやては思う。これを美味しいと思えないなんて、きっと自分は心が病んでいる証拠だな、と。
でも、仕事の手を緩めたり、ましてや休むわけにはいかない。新しい部隊はどうしても必要なのだ。
今、自分が頑張らなかったら、全てがパーになってしまう。

「ふーむ……」

 はやての言葉を聞いた鈴木老人は、しばらくの間じっと考え込んでいたが、いきなりこう切り出した。

「……はやてちゃんは、寿司が握れるかい?」
「え?」
「わしと同じように、寿司を作ることができるかえ?」
「いや、そんな……私には、無理です」
「まあ、そうじゃな。自分で言うのも何じゃが、みっどちるだで寿司を握れるのはわしだけじゃ。
 そういう意味では、この仕事はわしにしかできんのう」
「…………?」

 鈴木老人の言葉の意図がわからず、はやては黙って話を聞いていた。

515 名前:ゲートボールと寿司と八神はやて・後編 ◆6W0if5Z1HY :2008/08/30(土) 20:43:32 ID:ESYNTb+e
「じゃがのう、はやてちゃん。わしは一人でこの仕事をしとるとは思ってはおらんぞ。
 例えばのう……寿司を握るためには魚が必要じゃ。じゃが、わしは魚の獲り方など知ってはおらん。
 寿司を握るためには、魚を獲ってきた人から、買わなきゃならん。お米や酢も同じじゃ」
「…………」
「他にもあるぞい。この店――建物はわしでは造れん。誰かに建ててもらわにゃならん。
 電気やがすや水道も、わしの力ではどうにもならん。誰かに送ってもらう必要がある。
 いや、そもそもここでこうして寿司を握れるのは、あの時みなさんが助けてくれたからじゃ」
「…………」
「こうして考えてみると、わしゃあ、世の中のことの万分の一もできん。なんとも非力じゃ。
 人間なんて、みなそんなもんじゃないかえ? 一人でできることなど、たかが知れておる。
 つまりの――わしがここで寿司を握るためには、様々な人の助けがどうしても必要になるわけじゃ」

 その言葉に、はやてはハッとした。

「はやてちゃんも、同じじゃないかえ? わしゃ、仕事の内容がどんなものかまでは知らんがのぅ。
 はやてちゃんにしかできないものだとしても、その仕事をするはやてちゃんが生きていくためには、
 様々な人の助けが必要なはずじゃ」
「……私……」

 自分は一人なのだと、いつしかそう思うことにはやては慣れてしまっていた。
だが、鈴木老人の言葉を聞いてはやては思った。
今の自分が一人に追い込まれてしまっているのは、他でもない、自分自身のせいではないか……、と。

「今のはやてちゃんを見ておると、一人で全部抱え込もうとしているように見えるのう。それはいかんぞい。
 一人で抱え込まずに、もっと周りを見て、頼ってもいいと思うが、どうじゃろうか」
「御主人の言う通りです、主」

 今まで黙って話を聞いていたシグナムが、力強く頷いた。
はやての肩をポンと叩きながら、優しくも強い口調で言う。

「我々では力不足かもしれませんが……あなたの力になりたいと、私は思っています。
 あなたの力に、あなたの支えになってくれる人間は、他にもたくさんいます」
「シグナム……」
「あ、あたしも!」

 出遅れたと思ったのか、座っていたヴィータが、勢いよく立ち上がって叫んだ。

「あたしは、その……はやてがどんな仕事をしているかは、詳しくはわからないけど……
 はやてに文句を言う奴がいたら、そいつ、ぶっ飛ばしてやるから……」
「ヴィータ……」

 たどたどしい感じのヴィータの言葉だったが、気遣いは充分に伝わってきた。

516 名前:ゲートボールと寿司と八神はやて・後編 ◆6W0if5Z1HY :2008/08/30(土) 20:44:20 ID:ESYNTb+e
「わしも、はやてちゃんの力になりたいと思うとる。はやてちゃんが、わしの寿司を食べてくれて、
 笑顔になってくれて、また明日から頑張ろうと思ってくれるなら、わしゃあ、死ぬまで寿司を握るぞい」

 三人の言葉を聞いて、はやては胸が熱くなった。人間、辛いときほど周囲の支えがありがたく感じられるものだ。
ありがとう、と言おうとした。だが――

「はやて……?」
「主……」

「あ……」

 気が付いたときには、溢れ出した涙が、はやての頬を伝っていた。

「え……?」

 慌てて目をこすって涙を拭こうとしたが、一度溢れ出した涙の奔流を止めるのは、無理だった。
人前では涙は見せるまいと、そう決めていたはずなのに。

「あかん……なん、で……」

 まだ18歳の女の子でしかないはやてがこの世界で生きていくには、いろいろと辛いことが多すぎた。
辛かったことはその度に、心のゴミ箱に放ってきたつもりだったが、完全に消去することなどできなかった。
誰かにこの辛さをわかって欲しかった。
でも、自分は頑張らないといけないから、この辛さも一人で処理しなければならないと勘違いしてしまっていた。

「……ごめん、な……私……あり……が……」

 自分のことを支えてくれる優しい人達は、こんなにたくさん、近くにいたのに……。
どうして、一人だなんて思ってしまったのだろうか。どうして、孤独だと思ったのだろうか。
どうして、一人で頑張らなければいけないなんて、思い込んでしまったのだろうか。

 優しくて、温かい存在が見えていなかった自分が、悔しくて、情けなくて、申し訳なくて。

 はやてはひたすら、泣いた。

517 名前:ゲートボールと寿司と八神はやて・後編 ◆6W0if5Z1HY :2008/08/30(土) 20:45:11 ID:ESYNTb+e
「主……」

 両手で顔を覆ったまま、うっうっと嗚咽しているはやての肩をグッと抱き、頭を撫でるシグナム。

「はやて……」

 こういう時、どうすればいいのかわからなくて、心配そうな表情を浮かべることしかできないヴィータ。
鈴木老人は優しくはやてに話しかける。

「……笑ってくれんか、はやてちゃん。さっきは力になりたいと言ったが、わしもはやてちゃんから力をもらいたいのじゃ。
 はやてちゃんが笑ってくれれば、わしゃあ、いくらでも頑張れる気がするんじゃがのぅ……」

 人は誰も一人では決して生きてはいけない。助けて、助けられて、そうやって生きていくのだ。
これからは一人で抱え込まずに、もっと周りの人達に頼っていこう。
逆に、自分が誰かの力になれるなら、精一杯頑張って、力になってあげよう。
そう思うと、はやては幾分、心が楽になった気がした。

 ゆっくりと顔を上げると、自分のことを優しく見守ってくれているシグナム、ヴィータ、寿司職人・鈴木老人。
明日からも大変なことがたくさんあるだろうけど、自分は一人じゃない。はやてはもう一度認識した。

「ふひゃひゃ、しんみりしてしもうた。よぅし、次の一品はさーびすじゃあ!好きなものを頼んでくれて構わんぞ」
「ホントか、じーちゃん!それじゃ、あたしは車海老!」

 ここぞとばかりに、値段の高いものを何の躊躇もなく注文するヴィータ。

「こら、ヴィータ!お前、少しは遠慮というものをだな……御主人、私は鮑を」
「――ってオイ!言ってることと、やってることが違u
「主、御主人の温かい心遣い、ありがたく頂戴いたしましょう。何になさいます?」

 澄ました顔で、聞こえないふりをするシグナムがおかしくて、はやては思わずクスッと笑う。
まだ涙の残る目で、それでも精一杯の笑顔を作って、はやては言った。

「私は……炙り大トロで――!」



お わ り

518 名前:ぬるぽ ◆6W0if5Z1HY :2008/08/30(土) 20:46:10 ID:ESYNTb+e
(  ;∀;)イイハナシダナー

 自分がこうしてSSを書いて投稿できるのも、様々な人の助けがあってこそ。
スレ住人が相互感謝の気持ちを忘れないように、という意味も込めての作品でした。
作中の通り、我々なんて世の中のことの一万分の一のことも知らないんだから、お互いに感謝し、
助け合って生きていきませう。……誰か一緒に映画行ってくれませんかのぅ orz

 これの続編として、機動六課設立の見返りとして上層部のじーさん共に身体を要求されて陵辱されるはやて、
という鬱話を書こうと思ったが、来月末から三ヶ月の長―い研修に入るので、多分もう年内に書くことはないかな。
というわけで、よいお年をwwwwwwwww

519 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/30(土) 20:48:46 ID:pEkfoCp7
>>518
GJ!
関西在住ならご一緒にw
あー、すし食いたくなってきた。


ふと、ナガジマ家もこんな感じでミッドチルダに来た、だったら面白いなあと思った。

520 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/30(土) 21:09:37 ID:ELUTYbDD
>>518
GJ!
面白かった。
いいね、鮨。
普通にいい話で、しかも前半が美味い話だった。
サンマ食いてぇ。どっかのホームベースが肝美味いって言ったたのを思い出したよ。

521 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/30(土) 21:24:10 ID:oM+1rAej
>>518
GJ!!80スレに戻って読んだけどすごく面白かったです!!
何かこう、ほのぼのとしてて思わず八神家を応援したくなるSSですね。

研修の合間にネタを考えるのもいいのでは?

522 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/30(土) 21:25:33 ID:xoiGq/ad
このスレやたら無駄に続いてるのに
保管庫どんだけ見づらいんだよ、タグとかいらねえから
普通にカプ同士で分けろよ

523 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/30(土) 21:29:48 ID:GskjJmSX
>>518
GJ!炙り焼きは本当に旨いですよね

524 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/30(土) 21:32:10 ID:WQey7ztn
>>522
またお客様気分のバカか
見づらいなら整理する側になって自分でやれ

525 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/30(土) 21:36:49 ID:jY/fodx1
保管庫にあるのが全てカプもので分類できると正気で思ってるんだろうか……

526 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/30(土) 21:45:48 ID:JS4Gp9ok
>>518
寿司を食べるときの喘ぎ声が無駄にエロすぎワロタ

527 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/30(土) 22:25:24 ID:93ZEUBGI
レスが反映されねええええええええ

528 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/30(土) 22:25:42 ID:93ZEUBGI
あ、PINKには書けた

529 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/30(土) 22:33:29 ID:Ua5S0Aku
なんか送信したはずのレスが誤爆でもなくどこかに消えるバグが出てるね。
俺もさっきなった。

530 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/30(土) 22:43:44 ID:93ZEUBGI
>>529
どうやら全域的に治ったみたい
スレ汚し失礼した

531 名前:詞ツツリ ◆265XGj4R92 :2008/08/30(土) 23:05:17 ID:aRkUxruT
ここ連日の雷雨でビクビク状態の日々です。

突然ですが、「しんじるものはだれですか?」の続きを30分から投下してもよろしいでしょうか?

30KBで、今回はエロはありません。

532 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/30(土) 23:07:58 ID:oM+1rAej
>>531
tkpls

533 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/30(土) 23:23:45 ID:JICSeX+z
>>531
カモン!

ところで誰か>>532の意味を教えてくれないか

534 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/30(土) 23:24:56 ID:LLbxQ3Lx
>>533
投下プリーズかな多分。

535 名前:しんじるものはだれですか? ◆265XGj4R92 :2008/08/30(土) 23:30:30 ID:aRkUxruT
とにかくプリーズと読めましたw
では、投下開始します。








 何故わたしは彼を好きになったんやろうか。
 わからへん。
 いつの間にか好きになっていた。
 だから恋に理由なんかない。
 ただただ、私は愛し続けるやろう。

 この命が尽きるまで。



 しんじるものはだれですか?




 某月、某日。

「それで、君はちゃんと仕事の重要性を理解しているのか?」

「うぅ、すんません」

 アースラの執務官室。
 持ち主の心を表したのか質素極まる机の上で、一人の人物がため息を吐き出していた。
 黒い制服、黒髪に黒い瞳、日系人を思わせる父譲りの色を受け継いだ少年とも青年とも言えない人物が机を指で叩きながら、ジロリと目の前の少女を睨んだ。
 彼の名はクロノ・ハラオウン。若干十四歳でアースラの執務官に配属されたアースラの切り札とも言われた少年。
 その彼が年月を重ね、十八歳になり、低かった身長が見違えるほど高くなった成長した姿だった。
 そして、その前でカーペットにしゅんっとなって小さくなっている少女の名は八神 はやて。
 地球では小学六年生、しかし一度時空管理局に入れば特別捜査官として名を馳せる才女だった。
 しかし、その威厳は欠片もない。


536 名前:しんじるものはだれですか? ◆265XGj4R92 :2008/08/30(土) 23:31:29 ID:aRkUxruT

「コレを見てくれ。これは何に見える?」

 そこにあったのは何個も0が続いた数字と、ずらずらと書き綴られた被害報告と苦情の数々。
 それを直視し、はやてはあははーっと明後日の方向に目を向けて。

「ええと、給料明細?」

「ち・が・う。これは君が――正確には君たち三人が吹っ飛ばした建物の被害額とその報告だ」

 ニッコリとクロノが微笑む。
 全てを温かく照らすような表情――けれど、それははやてにはまるで地獄に落ちろとファックポーズを取る閻魔のように見えた。

「訊ねたいんだが、なんで毎回毎回君たちは簡単な鎮圧任務でも被害を出すのかな?」

「えーと、なのはちゃんが全力全開で砲撃を――」

「ああ。それはなのはからよく聞いているよ、何故か涙を流しながら私がやりましたぁああ! だからごめんなさいい! とうるさく言っていたから、始末書200枚を手書きで提出するように命じておいた」

 うわーとはやては心の中で引き攣った声を上げた。
 報告書を200枚、しかも手書き。
 夏休みの溜まった宿題を一日でやるよりもきつい仕打ちだと思った。

「なのははまだミッドチルダ共通語に不慣れだからね、いい勉強になるだろう」

 しかも普段は日本語でいいのに、ミッドチルダ共通語で書くように命じたらしい。
 爽やかな笑みで告げるクロノはそのことに何の罪悪感も感じていないようだった。
 呼び出される2時間前に聞いたなのはの「悪魔なのー!!」という悲鳴はきっとこの笑みを見て叫ばれたものに違いないだろう。

「あとさらに聞いたところだと、フェイトも被害を出してるな。なになに? 出来れば尋問用に捕縛してほしかった人物を、重傷に追い込んで、面会謝絶の重態だとか?」

「えっと、それはやねー。戦闘中でフェイトちゃんが背後から飛んできた魔力弾をよけて、反撃でサンダーブレイドを打ち込んだんやけど……うっかりその傍で水場に立っていたターゲットまで一緒に感電して……」

「なるほどなるほど。まあ咄嗟の事態だからね、反撃の種類も選べないだろうから、とりあえずフェイトには力尽きるまで大型スフィアからの砲撃でディフェンス訓練を受けるように指示しておいたよ」

 ……なんという悪魔。
 あのうすっぺらいフェイトちゃんの防御力やと、スフィアからの砲撃なんか受けたら火星までぶっ飛んでまうやろ。
 と、はやては思ったが口にはしなかった。
 一時間前に聞いた「お兄ちゃんの鬼ー!!」というフェイトに叫び声を上げさせた、クロノのとても楽しそうな笑みを目の前にしているのだから。

「そして、はやて」

「な、なに?」

「君は二人と一緒になって戦闘をしていたはずなんだが――君には指揮官権限を与えてあるんだ。何故二人を止めなかったのかな?」

「え、えーと……私もいっぱいいっぱいやったというか、二人の暴走を止めるのは無理だったというか」

 人差し指を突き合わせながら、はやてが言い訳をするとニコニコとクロノの笑みが深まっていく。
 にこにこと笑みが柔らかく、優しくなっていくのだが――反比例するかのようにはやての背筋に恐怖が走った。
 逃げたい。
 今すぐリイン、ユニゾンやー! と叫びながら全力疾走で逃げ出したくなる。
 けれど、それは許されない。
 何気に両手でS2Uとデュランダルの待機状態のカードを握り締めた彼からの追撃が背中に直撃し、某正義のヒーローに蹴り飛ばされる怪人よりもぶっ飛ぶことになるだろう。
 それぐらい彼は怒っている。間違いない。


537 名前:しんじるものはだれですか? ◆265XGj4R92 :2008/08/30(土) 23:33:05 ID:aRkUxruT

「く、クロノ君……怒ってる?」

「いや、僕は怒ってないよ? 精々君の指揮官適正を見極めた局員に苦情と、あとついでに判断力を鍛えるために極限まで追い詰めるか、そうだそれには模擬戦休憩無しで僕が相手してやろう、大体八時間ぐらい。としか考えてないな」

「めっちゃ怒ってるやんかー!!!」

 どこからどうみても大激怒だった。
 研修期間中の預かりになっている三人が問題を起こせば苦情が飛んでくる身だ。
 今は退艦したリンディの替わりに艦長になっているあの飄々爺さんと違って、クロノは責任感が強いとも言える。
 飛んでくる苦情の一つ一つをしっかりと受け止め、その問題性を理解しているのだろう。
 だから、彼はきっとこう思っているはずだ

 僕の教育――いや、調教が足りなかったんだと。

「あかん! 調教されてまう!」

「は?」

 ついに脳まで春になったのか、と冷ややかな目でクロノがはやてを見つめるが、被害妄想で満杯な小学六年生の割には耳年増な少女はいやいやと身体を捻っていた。

「ああ、私はきっとクロノ君に酷い目にあって、お嫁にいけなくなるんやね……」

「はぁ……ていっ」

 ゴガンといい音が響いた。
 あいたー! と叫んで悶絶するはやてが頭を押さえて、クロノは起動状態にしたS2Uで肩を叩きながらため息を吐く。

「ふざけるようなら、さっきなのはとフェイトに科したペナルティを両方共こなしてもらってもいいんだが?」

「え、あ、いえ! ごめんなさい、真面目にやります! 許してください!」

 ぺこぺこと頭を下げるはやて。
 誰しも命は惜しかった。
 なのはの精神をガリガリと削って、SAN値がゼロに限りなく近づくような拷問も。
 フェイトの肉体をゲシゲシに苛め抜いて、新しい領域の扉が開きそうな拷問も真っ平御免だった。
 今のクロノならディフェンス訓練をさせながら、始末書を書かせるような無理難題も押し付けてくるだろう。

「しかし、はやて。どのような問題でも、現場責任者――つまり指揮官が背負う責任は大きい。それを指揮し切れなかったのははやて、君の責任なんだぞ?」

「それはわかっとる」

 キリッと顔を真顔に変えて、はやてはしっかりと返事を返した。
 おふざけだった表情から一変した顔だった。
 うん、とクロノがどこか満足したように頬を緩めると、S2Uを待機状態に戻した。

「まあ今後からはさらに注意するように。同じようなことが頻発するようだったら、リイン無しでマルチタスク三重処理の訓練を受けてもらうからな。それぞれミッド式とベルカ式の広域結界構築に、自分へのブーストの術式演算だ」

「うへー、なに、その衝突必死の術式チョイス」

「それをこなしてこそのマルチタスクだろう? 君はレアスキル分、所持魔法が多いんだ。誰よりも多くの魔法を使いこなすべきだ、持っているだけでは腐るだけだからね」

 淡々と厳しい要求を告げるクロノの発言は間違っていなかった。
 はやてはかつての闇の書――蒼天の書を受け継いだ夜天の主。
 レアスキル蒐集を所持し、ざっと数えても三桁を超える魔法を記憶している。
 しかし、その全てが使いこなせているとはいえない。


538 名前:しんじるものはだれですか? ◆265XGj4R92 :2008/08/30(土) 23:33:37 ID:aRkUxruT
 たった三年前までは単なる小学生だったのだし、魔導師になった経緯も異常とも言える出来事でだ。
 魔導師の力と技を手に入れただけで、その後は必死に知識を詰め込んで、俄仕立ての魔導師になった。
 その際には目の前の人物からも多くの師事を得ている。
 それこそ、先生と呼んでもおかしくないほど――

「まあそれは後の課題として、はやてにもしっかりと何かをしてもらうぞ」

「う」

「他の二人にも申し訳ないからな、贔屓だーっと怒られるのは不本意だ」

 クロノはそういいつつも困った様子もなく、頬に指を立てて何をしてもらうのか考え始めた。
 どんな難題が飛び出してくるのか、冷や汗たらたらではやてが待っていた時だった。

『クロノくーん? まだお説教中―?』

「エイミィ。なんだ?」

『なんだじゃないよー、説教が長いのはいいけどね。そろそろ予定座標への次元航海を開始するから、その前に武装隊とのミーティングをするんじゃなかったの?』

「ああ」

 うっかり忘れていたとばかりにポンッとクロノが手を打つ。
 僕としたことがっと、少しだけばつ悪そうに口元を緩めると――不意にクロノの目がはやてを見つめた。

「なんや?」

「いや、丁度いい戦力がいたなと思ってね」

「へ?」

 ニヤリとクロノが口元の脇を歪めて、笑った。

「いい機会だ。現場の空気を味わうといい」

 へ? とはやてが首を傾げる中、クロノは静かにS2Uを展開させて、告げた。

「遺跡調査、僕と付き合ってもらうぞ?」




539 名前:しんじるものはだれですか? ◆265XGj4R92 :2008/08/30(土) 23:34:55 ID:aRkUxruT


 あらゆる次元世界を航海する海の役割として未探査世界の調査が存在する。
 そして、その中でもアースラは無人世界――まだ文明が発達していない、或いは文明が滅び去った世界の探査を目的としていた。
 各主要世界からの連合機構であり、多次元世界の代表として文明世界との接触と交渉するには人員も足りず、権限も足りない。
 決して劣るというわけではないが、必要とされている役目が違うのだ。
 本来ならば第97管理外世界の接触もまたアースラの権限から超えているものだった。
 A級ロストロギア・ジュエルシード。
 幾多の被害を齎したロストロギア・闇の書。
 この二つに広大な惑星の一つの町で立て続けに発生したのは如何なる運命なのか。
 誰かの策略か。
 それとも気まぐれな神の導きか。
 誰も知る由はない。
 知ることも出来ない。
 シナリオを描く運命の導き手と接触することなど誰にも出来ないのだから――




 転送ポートから降り立った大地の上、砂塵が舞う大気。
 空は砂塵の雲に覆われて、薄暗く、眩く、不透明。
 有害物質の混じった砂塵は設定を調整したバリアジャケットが遮断し、複数の魔導師たちが降り立っていた。
 目的は一つ、この世界で発見された古代文明の遺跡。
 そこでの調査結果の回収なのだが――武装隊が降り立ったのには理由がある。

「さて、ここからが本番なわけだが――」

 黒い法衣型のバリアジャケットに身を包み、両手にS2Uとデュランダルを握り締めたクロノは告げた。

「エイミィ、先遣調査隊からの連絡は?」

『さっきから通信を送ってるんだけど、やっぱり返事が無いよ。通信は届いているみたいなんだけど……』

 先遣調査隊。
 アースラよりも先にこの地に訪れ、遺跡の調査をしていた一団から定時連絡が途絶えて二日。
 アースラはその調査と確認に訪れていた。

「応えるものがいない、か」

 クロノは表情を厳しく、呟いた。
 その横に立つ同じく騎士服姿を纏い、シュベルトクロイツを握り締め、ユニゾン状態の黒い翼を生やしたはやてが首を傾げる。

「つまり、どういうこと?」

(どういうことですぅ?)

 ユニゾン状態のリインフォースUもまたはやてにしか聞こえない声を上げる。


540 名前:しんじるものはだれですか? ◆265XGj4R92 :2008/08/30(土) 23:35:59 ID:aRkUxruT

「さてね。通信が届いているということは通信機能が壊れたわけじゃない、ただ――嫌な予想が立つだけだ」

「へ?」

「三班に分かれましょう。アインス隊長、ツヴァート隊長、それぞれルートAとBから部隊を率いて侵入してください」

「了解」

「あいよ」

 アースラの武装隊を指揮する分隊長の二人が威勢よく指を上げる。

「はやて、僕たちは二人でCルートを進むぞ」

「あ、了解や」

 遺跡の中に入るルートは三つ。
 正規ルートであるAとBのルートと、裏門であるCルート。
 遺跡の見取り図は先遣隊からの定時連絡による情報で手に入っている。
 故に迷う必要もなくクロノは歩き出し、はやてもその後ろを付いていく。

「なぁ、クロノ君?」

「なんだ」

「私ら、二人だけでCルートいくんか?」

「そうだが?」

「危険、やない?」

(クロノさんとはやてちゃんだけじゃ、危ないですよー)

 今までの任務はいつも武装隊やヴォルケンリッター、なのはたちが居た。
 最低でも三人だった。
 けれど、今は二人。
 それも閉所で何が起こっているのかわからない危険な場所。
 はやてが戸惑うのも仕方が無かった。

「危険、だろうな」

「それなら――」

「しかし、これがベストなんだ」

「ふぇ?」

 クロノは感情の抜け落ちた顔で告げる。
 緩やかに、言葉を刻みつけるように、手を振った。

「高位魔導師と普通の魔道師、その戦力差から考えれば」

 砂塵の舞う大地から空を見上げて、クロノは呪うように言った。

「君も理解するべきだ。君たちと僕らの差を」

 才は無く、血反吐を吐くような思いで力を手に入れた少年はただ思う。
 常人から超越者への領域に踏み込んだ狂人は静かに歩き出した。

541 名前:しんじるものはだれですか? ◆265XGj4R92 :2008/08/30(土) 23:37:08 ID:aRkUxruT


 砂塵に埋もれた遺跡の扉。
 その横にあったパネルにクロノが携帯情報端末から伸ばしたチューブを突き刺し、端末にコードを打ち込むと鈍い地響きを立てて動き出した。

「まだ機能は動いているんやね」

「ああ。先遣隊はホストコンピューターを探して調査をしていたはずだが……」

 そう告げて、クロノがゆっくりと指を曲げる――アクション・トリガー成立。
 瞬間、クロノの顔面一センチの位置で火花が散った。
 チュインッという金属音、一瞬だけ停滞したそれは黒い塊。鉛玉。
 すなわち質量兵器での銃撃だった。

「え?」

(なんですー!?)

「一足遅かったようだな」

 クロノが足を踏み出し、S2Uの尖端を扉の向こうに向けた。
 飛び散る火花、銃弾が足元を飛びまわる、壁を銃弾が駆け抜けて、銃撃音が鼓膜を刺激する。

「下がるんだ」

 その瞬間からクロノの空気が変わった。
 いや、隠してもいなかった雰囲気にはやてがようやく気付いただけだった。
 はやてが戦闘体勢に入り、クロノは――既に思考を切り替えている。

「クロノくん、危ないで!?」

 銃撃が降り注ぐ、その中でクロノは突き進む。
 障壁がひしゃげ、不可視の壁が次々と虫食いのように食い破られていく。
 その中でクロノは身体機能を弄り、瞳孔を細めた。
 虹彩を広げて、闇へと同調する。

 見えた。

「そこか」

 アクショントリガー成立。
 目を見開き、リンカーコアから魔力を放出し、破壊のイメージを演算処理で現実へと変換する。
 僅かに唇が歪む――小さな愉悦。
 ぞくりとはやての肌が泡立つ、恐怖の予兆。
 スティンガー・スナイプ。

「――スナイプショット!」

 弾丸加速のスペルワード。
 空間を切り裂くように右手を振るう、その軌道に合わせて光弾が飛んだ。
 青白い鬼火のような一撃、それは鋭く飛び去って――何かを砕いた。ばしゃりと生々しい音を響かせた。

「がぁああ!」

 悲鳴が上がった。
 暗がりの中で何かが倒れる音がした。
 はやては目撃する、それは人間だと。


542 名前:しんじるものはだれですか? ◆265XGj4R92 :2008/08/30(土) 23:37:52 ID:aRkUxruT

「そっちもだ!」

 S2Uを横に薙ぎ払う。
 まるでピアノ線で操られているかのように、青白い光弾が急激に軌道を変えて飛翔した。
 弾道操作、魔法の恩恵、そこから打ち出された弾は物理法則に縛られることなく自在に軌道を変える。
 銃撃を放っていた人物が、暗がりの中で泡を食ったように走り出す――その背に光弾がめり込んだ。

「散れ」

 クロノの呟き。
 同時にめり込んでいた光弾が爆散し、人影は手榴弾の直撃でもあったかのように吹き飛んだ。
 奇怪な姿勢で壁に激突し、赤黒いものを撒き散らしながら床に崩れ落ちる。
 銃撃はそこで止んだ。
 否、既に打ち放つものはそこにいなかった。

「や、やりすぎちゃうか? 非殺傷設定でも、あれじゃ重傷やで……」

「完全に戦闘能力を削ぐならあの程度でも優しいほうだ」

 そう告げて、クロノはデバイスを振るうと、倒れ付した二体の人影にバインドを掛ける。
 同時に近づいたことで、その人相を理解した。

「盗掘者、か」

 クロノが目を細める。
 そこにあった光景。
 それはこちらに向けていた銃火器を床に落とし、防塵マスクを被った男たちが倒れ付した姿。
 ――魔導師ではないな。
 魔導師ではあっても低レベルの弱い存在。そう判断する。
 魔法の力に頼れない、奇跡の力を編み出せない存在は質量兵器という力を得て、その差を埋めようとする。
 それは正しい。
 正しいが、そんな当たり前の常識は一人の超越者の前には無意味だった。
 悲しいほどに圧倒的な差があった。

「はやて、障壁を忘れるな。バリアジャケット程度では貫かれる」

 クロノは静かに告げると、銃撃の止んだ道を進み始める。

「う、うん」

(オートプロテクションを発動しておくですー)

「頼むわ」

 リインの返事にはやてがゴクリと喉を鳴らしながら返事を返した。
 ずかずかと進むクロノの背中、その背に僅かな違和感を感じながら。



543 名前:しんじるものはだれですか? ◆265XGj4R92 :2008/08/30(土) 23:39:22 ID:aRkUxruT


 遺跡の内部は朽ち果てていた。
 かつては文明の最先端を進んでいたのだろうその内部は風化した紙とも金属とも思えぬ欠片を散りばめさせ、ひび割れた壁が続く。
 その道を物珍しそうにはやては眺めながら、警戒を続けるクロノの後ろを付いていった。

≪ここから先の廊下を曲がれば、先遣隊のベースキャンプ位置のはずだが……≫

≪敵の根城の可能性、大やね≫

 気付かれる可能性を極力減らすために念話でクロノとはやては会話していた。

≪ああ≫

 短い返事。
 それに加えて二人は足音を立てていなかった。
 床から数センチ上を滑るように飛んでいた。
 飛行魔法の応用である浮遊、無声と消失した足音というのは室内戦において極めて有利な要素である。
 通常の物理法則を操作することが出来る魔導師。
 その可能性はどこまであるのだろうか。
 その利便性は計り知れないものがあった。
 そして、二人は静かに廊下の角まで辿り着き、静かに床に着地する。

≪どう?≫

≪動いている、な。声がする、どうやらアインス隊長とツヴァート隊長が上手くやっているらしい≫

 耳を澄ませば怒鳴り声が響き渡り、奥からは銃撃音が響いていた。
 ビリビリと心が、身体が震えそうな声、音。
 はやては無意識に震える自分の手を押さえようともう片方の手で押さえつけようとした――その時だった。
 クロノが左手に握っていたデュランダルを待機状態に戻した。

「へ?」

 震えた手を、無造作にクロノに掴まれた。
 ゴワゴワとどこか硬くて、細い自分の手よりも逞しい少年の手が包んでいた。
 他人の体温が伝わってきて、どこか熱かった。

≪怖いのか?≫

 クロノの問い。
 それにはやては極自然に、けれど顔を少しだけ赤くして答えた。

≪あ、当たり前や≫

≪そうか≫

 けれど、何故だろう。
 手の平から、指先から伝わってくるクロノの体温を感じていたら、何故か震えが止まっていた。
 身体がぽかぽかとしてきて、どこか胸が熱くなる。
 この感覚がリインに伝わらないことを何故かはやては祈っていた。


544 名前:しんじるものはだれですか? ◆265XGj4R92 :2008/08/30(土) 23:40:22 ID:aRkUxruT

≪怖いとき、誰かの手を握るといい≫

≪え?≫

≪一人なら出来ないことも二人なら出来る。そう信じられるだろう?≫

 そう告げるクロノは何故か渇いた目を浮かべていた。
 その手に握るはやての体温をなんとも思っていないかのように、温かい体温とは裏腹に冷たい鋼のような瞳を浮かべて、その右手にS2Uを掴んでいた。
 何故かはやてはそれを悲しいと感じた。
 何故か痛々しいと感じていた。
 理由なんかない。
 理由が分からない。
 ただ空虚な気配を漂わせるクロノが切なくて、右手に握るクロノの左手の感触を忘れないように指を絡めていた。
 力強く握ったその手は頼りがいがあって、まるではやてを支えてくれるような気がした。

≪うー、リインもいるですよー!≫

 リインフォースUが可愛い声を出して、主張した。
 はやては音も立てずに苦笑する。

≪そうやな、私は一人とちごたんやな≫

 クロノ君が居て、リインもおる。
 震えは止まっていた、代わりに力が沸いていた。

≪もう大丈夫だな≫

 瞬間、するりとクロノの手がはやての指から抜け落ちた。
 もう十分だろうと判断して、左手の自由を取得する。

(あ)

 何故かその時はやては惜しいと感じた。
 けれど、そんな感傷は数瞬。両手でシュベルトクロイツを握り直す。
 クロノは口を僅かに歪めて、念話で誰かに言葉を送ると、いけるか? とはやてに視線を送った。

≪大丈夫や≫

 はやては頷く。
 そして、クロノは左手に再び起動状態にしたデュランダルを握ると、僅かに指を動かした。
 デバイスを操作・詠唱省略・演算開始。

≪まず僕が奴らの目を潰す、援護を頼む≫

 クロノは無造作とも言えるタイミングで廊下から足を踏み出す、黒い法衣が暗がりに紛れて、目立たずに廊下から姿を現す。
 クロノの目に飛び込んできたのは広い室内。
 遮蔽物の少ないイスやテーブル、その奥にいる無数の銃器を手に持ち、怒鳴り声を上げている人物。
 そして、その部屋の横で――無造作に並べられた人間サイズの袋。
 それを見た瞬間、クロノは静かに手の中のデバイスを握る手を強めた。


545 名前:しんじるものはだれですか? ◆265XGj4R92 :2008/08/30(土) 23:41:20 ID:aRkUxruT

「ん?」

「ま、まどう――」

 クロノの存在に気付いた声、されど遅い。

「遅い」

 演算処理完了・魔力伝達・顕現開始。
 クロノは右手を降り抜いた、青白い魔力光を放ちながら、一直線に光の弾が音速に迫る勢いで室内の奥の床に直撃し――

「ブレイク」

 瞬間、白い光が全てを包んだ。
 空気がかき乱されるような爆音に、閃光が闇に満ちていた。
 今まで暗がりに慣れていた目にその光は凶悪だった。網膜が焼きつくような光量に絶叫が上がる。

「スティンガーレイ!」

 その中で足音も聞こえず、魔法を放つ声すらも聞こえないまま、目を閉じたクロノが動いた。
 マルチタスク起動。
 並列思考で共に同じ演算処理を行い、しかしその軌道のみを違えるイメージを持ち合わせ、両手に握る二振りのデバイスを振り抜く。
 縦に、横に、空間に線を刻み込むような動作と共に青白い光線が飛翔した
 白い世界に壊れた人形のような人影が踊り狂う、光が終わる、白い世界が終わると共にどさりと崩れ落ちる音がした。

「くそったれ!」

 ガチャガチャという金属音。
 未だに残る数十人の男たちが武器を構えるのを理解、クロノはそれに恐れる事無く足を踏み出そうとするが。

「甘いで! リイン!」

≪はいですー!≫

 その背後から、シュベルトクロイツを掲げ上げ、その黒き翼を羽ばたかせたはやてが躍り出る。
 魔力供給・バレルフィールドを展開・演算処理終了・顕在化開始。
 ミッドチルダ式の魔法陣が次々と展開されて、遺跡内部の壁を照らし出す、盗掘者たちの目に黒き翼を生やした天使の如き少女の姿が映る。

「全弾もってけ! アクセルシュータァアア!」

 オーケストラの指揮でもするかのように騎士杖を振り抜き、光が拡散した。
 それはまるで流星群のようだった。
 狭い通路の中、はやての前方から撃ち出された無数の光弾はクロノの脇を綺麗に潜り抜けて、カクカクと直角に折れ曲がりながら、その悉くを武装した盗掘者たちに着弾する。

「がぁああ!」

 スタン設定。
 非殺傷設定の弾丸は魔力を持つものにはそのリンカーコアにダメージを与えて魔力ダメージを与え、相殺し切れぬ過剰魔力によって肉体の神経に負荷を叩き込み、麻痺させる。
 リンカーコアを持たざるものには相殺すらも許されず、麻痺するのみ。
 大リーグピッチャーが投げ放つ球よりも速く鋭い、確かな威力を持った魔力弾の直撃に人体は容易く吹き飛んだ。
 壁に、床に、空に、蹴飛ばされた小石のように吹き飛んだ盗掘者たちがそれぞれの固い壁に激突し、悶絶する。後に残るのは呻き声のみだった。
 視界内の全ての人間を見事に撃ち抜いた少女はふぅっと額の汗を拭った。

「さっすが私、お手柄やん」

≪やったですー!≫

 ニコリと笑みを浮かべるはやてに、クロノは静かに目線を向けた。


546 名前:しんじるものはだれですか? ◆265XGj4R92 :2008/08/30(土) 23:42:02 ID:aRkUxruT

「この部屋には――もういないか?」

 探査魔法を駆使し、動体反応を探る。
 視覚内に映る人数が全てがどうか探査し、クロノは警戒を怠らない。

「んー、まあ大丈夫やろ。私とクロノ君の仕事に手抜かりはなしや!」

≪ですー!≫

 はやてが無邪気に笑い、リインが同調するように声を上げた。
 そんなはやてを冷たい目で、嘆くかのように、羨むように、ただ渇いた目で一瞥し――瞬間、クロノは足場を踏み変えた。
 探査反応2、背後からだ。

「はやて!」

「へ?」

 クロノがドンッとはやてを肩で押し飛ばす。

「なにす」

 るんや! そう叫ぼうとした時だった。
 赤い華が裂いた。クロノの体から赤く染まり、遅れて銃声が轟いた。
 カランと右肩を打ち抜かれたクロノの右手から、S2Uが零れ落ちる。

「クロノ君っ!」

 そこでようやくしりもちをつき、痛みの走った腰の痛みも忘れてはやてが絶叫を上げた。
 銃撃のマズルフラッシュは彼女たちの背後、そこには二人のマスクを付けた男たちが居た。
 騒ぎを聞きつけて、巡回から戻ってきたのだろう二名。
 その喉の奥から聞こえる声は憤怒に満ちていた。

「死ねぇえええ!」

「っ!」

 続いて叩き込まれる銃撃を、クロノは左手に握ったデュランダルの先に発生させたラウンドシールドで凌ぐ。
 障壁に直撃し、跳弾した銃弾は床に、天井に着弾し、火花を散らす。

「化け物が!!」

 恐怖に怯えるような叫び声が聞こえた。
 実際恐ろしいのだろう。
 魔導師は恐ろしい。たった一本の杖でビルを崩壊させることも、地面を粉砕することも、何人もの人を殺すことも容易な存在なのだから。
 忌避の目はいつだって見てきた。
 はやても、クロノも当たり前のように受けてきたのだ。
 見れば奥にいる二人の片割れが肩にごつい鉄の塊を背負い、その砲口をはやてたちに向けていた。
 はやてはそれに見覚えがあった。
 あくまでも映画の中だが、確かにそれは――

「ロケット砲や!」

 パスンとどこか気の抜けるような音と共に噴射炎を吹き出し、ロケット弾が飛び出す。
 それを回避するには体勢が悪すぎた。
 はやてはしりもちをついたまま、クロノはラウンドシールドを展開したまま身動きが取れない。


547 名前:しんじるものはだれですか? ◆265XGj4R92 :2008/08/30(土) 23:43:10 ID:aRkUxruT

「くっ!」

≪障壁を!≫

 はやてがシュベルトクロイツを振り翳し、障壁を展開しようとする。
 しかし、間に合わない。
 如何にシュベルトクロイツが高性能だろうが、ユニゾンデバイスが補助についていようとも、一呼吸するよりも早く演算処理を終えるなど不可能だ。
 ロケット弾をたった一つのラウンドシールドで防げるか?
 手榴弾の熱量と衝撃ならば二人のバリアジャケットで防げるだろう。しかし、ロケット弾は? 防げるかもしれないし、凌駕するかもしれない。
 故に。

「止まれ」

 そんな賭けに出る気はクロノにはさらさらなかった。
 二人に直撃するロケット弾、それが二人に迫る一メートル前で――光の鎖に縛られて停止した。

「え?」

 ディレイドバインド。
 クロノが得意とする空間設置型バインド。
 座標領域に侵入した全ての物体を停止させる魔法。それは人体でも、ロケット弾でも例外ではない。

「っ、ユーノなら銃弾でも止めるんだろうが」

 無限書庫で働いている悪友の名前を上げて、クロノは皮肉げな笑みを浮かべる。
 己の未熟さに。
 己の至らなさに。
 己の脆弱さをせせら笑うかのような笑み。

「クロノく――」

「返すぞ」

 はやてが声を掛けるよりも早く、クロノはデバイスを降り抜いた。
 飛行魔法の亜種、ベクトル操作。
 ロケットへと働いていたベクトルを真逆に変える、右は左に、上は下に、正面は後方に。
 バインドを解除。

「消し飛べ」

 そして、加速。
 まるで超能力のように、手で触れる事無くロケット弾が真逆の方角に――すなわち撃ち放った二人へと飛翔した。

「なっ!」

 避ける暇などない。
 先ほどのはやてたちの状況の鏡写し、違うのは魔法が使えないということだけ。
 すなわち防ぐ手段などなく――二人にロケット弾が着弾する。衝撃で爆砕し、爆風と衝撃破がグロテスクに人体を砕いた。
 爆音が鼓膜を震わせる。
 爆風が皮膚を震わせる。
 生臭い香りが、鼻腔を刺激した。
 人間はあっさりと死ぬものなのだと理解させた。

「これで最後、か?」

 探査反応はないな、とクロノは打ち抜かれた肩に手を当てながら呟く。
 その様子を呆然と眺めていたはやては不意に我に返ったように、声を上げた。


548 名前:しんじるものはだれですか? ◆265XGj4R92 :2008/08/30(土) 23:44:38 ID:aRkUxruT

「っ、クロノ君!!」

 人が死んだ。
 それも間接的に魔法を使っているとはいえ、質量兵器でだ。
 問題ではないのか? いや、それ以上にはやてはショックを受けていた。

「い、今……」

 人が死んだのだ。
 あっさりと知り合いの男性が人を殺した。
 若干十二歳の少女は手を震わせていた。
 人を傷つけたことがないわけじゃない、死体を見たことが無いわけじゃない、けれど――誰かが殺すところを見たことはなかった。
 吐き気が遅れて込み上げてくる。
 はやての声は震えていた。

「どうかしたか?」

 けれど、クロノはまるで気にした様子もなく、ただはやてを気遣うような言葉を吐き出した。
 その顔には動揺の一つもなく、涼しい顔。
 今居る場所は確かな戦場なのだと告げるように、当たり前の顔をしていた。

「クロノ君……その人たち」

「殺したよ」

 あっさりと告げられた事実に、はやては震えた。

「なんで! クロノ君の腕なら殺さなくても――」

「彼らは調査隊を殺した」

 静かにクロノは部屋の隅を一瞥する。
 そこに並べられたゴミのような死体袋、おそらくデータを抜き取った後は放置しておくつもりだったのだろう。

「危険性が高いからね、執務官の判断で殺傷許可は降りる。無闇に危険を負ってまで非殺傷で留めるよりは、殺したほうがこちらの安全性が高い」

「っ、そんな言い方はないやろ!」

「なら、君は一生手を汚さずに戦い続けられると思っているのか?」

「それ、は」

 その言葉にはやては言い返すことは出来なかった。
 はやてが使う魔法、なのはたちが使う魔法、それらは非殺傷設定という人を殺さずに済む安全性を持っている。
 けれど、使うのは紛れも無い破壊の力。
 並大抵の爆薬や銃器など比較にならない破壊を齎すことの出来る技術なのだ。
 はやては言い返さない。
 そんなのは不可能だと知っているから。
 自分の使う力が都合のいい御伽噺のような力では無いことを知っているから。
 いつかはやても人を殺すだろう。
 なのはもフェイトも手を血に染めるだろう。
 戦い続ければ、誰かを護るために魔法を使えばいつか誰かを殺す。
 それは免れない運命。
 だけど。


549 名前:しんじるものはだれですか? ◆265XGj4R92 :2008/08/30(土) 23:45:17 ID:aRkUxruT

「それを許容してたら、単なる人殺しや」

 殺すことを当たり前にしていたら、大切な何かが壊れるだろう。
 壊したことに心が痛まなくなった人間は本当に人なのだろうか?
 はやては迷う。
 迷いながら、手を血に染める少年に思いを告げようとして――

「だろうな」

「へ?」

 肯定するようなクロノの言葉に、はやては戸惑いの声を上げた。
 クロノはどこか遠くを見ていた。

「君たちはそれでいい」

 クロノは告げる。
 祝詞でも上げるかのように、舌を震わせ、唇を動かした。

「いずれ君も手を染めるだろう。僕らは――力を持った魔導師は誰かのために泥を被る。血を浴びる、手を染める、真っ赤に染めるだろう」

 じわりと血がにじみ、クロノの肩を押さえた手が赤く汚れていく。
 背負った人殺しの業が滲み出たかのように、真っ赤に染まる。

「それを恐れるなとはいわない」

 汗が吹き出す。
 激痛を感じているはずなのに、クロノははやてに諭すように語り続ける。

「けれど、その悲しみを忘れないでほしい。流す血の痛みを忘れないで欲しい」

 出来の悪い生徒に優しく教えるような教師の声音でクロノは告げる。

「そうすれば、君たちは僕がやるよりもずっと悲しみを減らせるはずだから」

「クロノ……くん」

 心に染み込むような言葉。
 どこまでも重い言葉だった。

≪あうー、難しいです≫

(でも、大切なことや)

 リインフォースUの言葉に、はやては噛み締めるように思った。
 この人はどこまで見ているんだろうか。
 僅かな共感。
 三年もの長い月日を共にしてきたが、初めてその心に触れたような気がした。
 くすぐったいような感覚が胸の中に湧き上がる。
 その正体を理解するよりも早く、頭の中にある言葉が飛び込んできた。

≪こちらアインス! ホストコンピューターまでのルートを制圧した!≫

≪了解。こちらもベースキャンプに待機していた武装集団の鎮圧に成功、悪いが人数を回してくれ≫

≪ラジャー。よくやったな、坊主≫

 アインスの笑うような声。
 それにはやては慌てて付け加えた。

550 名前:しんじるものはだれですか? ◆265XGj4R92 :2008/08/30(土) 23:46:17 ID:aRkUxruT

≪あ、あと救護班を至急や!! クロノ君が負傷しとる!≫

≪なに?≫

「いや、この程度なら――」

「なにいってんねん!! 銃で撃たれておいて、軽傷もクソもないやろ!! さっさと治療するで!」

 そういって、はやては今までの呆然としていた動きが嘘のようにクロノの無事な腕を掴んだ。
 同時にシュベルトクロイツを操作し、はやては並行思考から自分のストックしている回復魔法の演算を開始する。

≪早くですー! クロノさんが怪我してるですー!≫

≪わかった! ひとっ走り走らせるから、しゃきんとしてろよ!≫

 アインスの念話が途切れ、静けさが満ちる。
 あとの室内に残ったのはノックダウンした武装集団の呻き声と、治療魔法の詠唱を続けるはやての声のみ。

「まず応急処置で止血するで。あと破傷風とか怖いからちゃんと医療班の手当てを受けんと――」

「いや、弾丸は貫通しているし、幸い骨には異常はないみたいだ。この程度なら傷口を塞げば……」

「うるさい! 怪我を甘くみたら、寿命縮めるで!」

 はやては怒鳴り声を上げると、その血に塗れた肩に手をあてがった。

「クロノ君、この部分だけバリアジャケットを解除してな」

「分かった」

 僅かにクロノが眉を歪めて、瞬間光が還元されるかのように右肩からクロノのバリアジャケットが消失した。
 其処に見えたのは赤黒い出血を流す肩、むわっとした血なまぐさい臭いがはやての鼻を突く。
 間近に見た出血と臭いに吐き気が込み上げながらも、はやてはハンカチを取り出して応急処置で習った傷口よりも心臓に近い位置を縛り、傷口の上にゆっくりと手をあてがった。
 はやての掌に柔らかな光が灯り、ゆっくりと出血が緩まっていく。

「まったく……偉そうなこといっても、こんなことしてたら死んでしまうで」

「いや」

 クロノが反論しようとして、ギロリと睨みつけてくるはやての眼光に黙殺される。

「うるさい。黙って治療受け取れ」

≪受けるですー!≫

「……わかった」

 どこかしょんぼりしたようにクロノが返事を返し、はやては武装隊が駆けつけてくるまでずっとクロノの治療を続けた。
 それがはやての義務だというかのように。
 ずっとずっと手を当てていた。


551 名前:しんじるものはだれですか? ◆265XGj4R92 :2008/08/30(土) 23:47:22 ID:aRkUxruT


 結局、先見調査隊は全員殺害されていたことが分かった。
 盗掘者だと思われたのは旧ベルカ王国の過激派で、遺跡のホストコンピュータに眠っていた古代ベルカ関連のデータを狙っていたらしい。
 私たちが知っているのはそこまで。
 それ以上は私たちが知る権限のない話。お偉いさんが判断する内容やった。
 あとは任務通りにデータの抽出を終えて、先遣隊の遺体の回収と過激派の拘束と護送。
 それで私たちの任務は終わりを告げた。


 思えばあの時からかもしれん。

 私がクロノ君を好きになったのは。

 初恋という感情も理解しないまま――私は惹かれた。


 それが仕組まれていたことだということも知らずに。


 私は壊れた狂人に恋をした。



552 名前:詞ツツリ ◆265XGj4R92 :2008/08/30(土) 23:51:54 ID:aRkUxruT
投下完了です。
前回までの話から二年前、まだクロノとはやてが恋人同士になる前の時代。
はやてがクロノに惹かれたのはこれからでした。
未だに彼と彼女の恋物語は始まってすらいません。
未だにこれから。
これから描かれるのは破綻するのが見えている恋愛劇。
少女は壊れた狂人に恋をする。
壊れた狂人は少女を惑わす。
彼と彼女の心が重なる時は来るのか。

次回はまだ大人になった少年と未だに青い少女の物語になります。
彼と彼女を取り巻く環境をどうぞお楽しみ下さい。
めくるめくる物語がどうか皆様のお楽しみになりますように。

読んでいただいてありがとうございました。


553 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/31(日) 01:25:09 ID:V3BJuy7p
このクロノとはやてがどうやってあのエロス時空になったか気になりますね。
しかも鬼畜だぜクロノ君、普通に犯人殺してるぜ、しかも作中描写で狂人扱いwww
続きが気になる! 次話の投下もお待ちしております〜。

554 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/31(日) 02:51:12 ID:sGZvnJ/2
貴重なクロはや分をありがとうございました。
近いうちの続きのご投下をお待ちしております。

555 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/31(日) 03:54:39 ID:i4v/3dNs
>>493
GJ!!
熱血のつぼをつきまくりです
全員の力と思いを受け継いだヴィヴィオ…
誰かに伝えたい強い思いを持ち、力を皆を守り助ける力として振るう
それでこそ真の聖王と呼べるのだろうな
いやもう、とことん個人的には続けて欲しいです!


556 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/31(日) 10:09:31 ID:U0NWD+Oc
>>518
GJ!です!
まさかここで料理もののSSまで読めるとは!
エロ非エロなんて小さな括りはとうに超越したこのスレの懐の深さを見た思いです。
私も暫くネットに繋げない環境にいたことがありますが、三ヶ月くらいは長いようであっという間ですよ。
いつまでもお帰りをお待ちしております!
あ、映画は九州圏なら是非ww 大人一枚が辛い歳になって久しいですorz

557 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/31(日) 11:56:17 ID:aFZ6ZZMf
>>518
GJ! 旨いな。
来年なんて気の早いこといわんでまた投下してくれ。
(魚詳しいね、業界の人?)

558 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/31(日) 16:20:49 ID:Sy+srVWC
B・A氏GJ!
凄く熱い展開に燃えさせてもらったが、この後の予言のことを考えると…
どういう結末で終わるのか気になる

559 名前:246:2008/08/31(日) 20:23:14 ID:JYebJ06P
長編感想レスありがとうございました。
今回は有言実行と言う事で、前後編のクロエイの前編です。
・メインはクロエイ。前編はエロなし。後編はエロあり。
・カレルは、優しく元気な男の子。リエラはお兄ちゃん大好き幼女。今回この子達の名前が割りと出ます。
では。


560 名前:Love for you:2008/08/31(日) 20:24:19 ID:JYebJ06P
 時空管理局本局次元航行部隊所属、XV級大型次元航行船クラウディア艦長――クロノ・ハラオウン。
 彼は今、暇だった。

「このままクラウディアは、巡航ルートを進みつつ異常があるまで待機だ」

 その命令を下したのは、一体いつだっただろうか。
 片付けるべき仕事も終わり、簡単な昼食を取り食後のコーヒーを飲むこと、既に数時間。艦長室拳自室で制服
の上着を脱ぎ捨て、シャツのボタンを大きく開き脱力している現状。
 はっきり言って、あまり良いものではない。何も起こらないに越した事は無いが、それでもと思ってしまうの
がこの暇と言う存在の恐ろしいところである。
 仕方ない、と溜息を吐きながらクロノは立ち上がる。シャツのボタンを閉めなおし、制服の上着に袖を通しな
がら部屋を出て向かうは、義妹であるフェイト・テスタロッサ・ハラオウンの自室だ。
 これと言った趣味も無く、クルーである皆と純粋に会話を楽しむ事が出来る程、艦長と言う立場は簡単なもの
じゃない。目の前で緊張されるのは余り嬉しい事じゃない。
 となると自然、クラウディアのナンバー2であり家族でもある彼女の元に足が進んでしまうのは、仕方の無い
事。

「フェイト、クロノだ。入っていいか?」

 トレーに二人分のコーヒーを乗せつつ、来訪を告げるアラームを鳴らす。
 たまには妹と話すのも悪くない。そう思っての事だった。

「……フェイト? いないのか?」

 だがいくら声をかけてもフェイトが応える気配は無い。自然、耳を澄ませ室内の様子を伺うように聞き耳を
立ててみれば、聞えたのは良く見知った、けれどここへいる筈も無い彼女の親友の悲鳴。
 扉のロックはされていなかった。クロノがフェイトの了解なしに扉を開けた。瞬間鼻をくすぐったのは、
思わずクロノが呻いてしまうほどの強い、彼女達の匂いだ。

「クロノ。悪いけど今取り込み中」
「ひっ、ぁっ……んん……!」

 フェイトが頬を高揚させながら、押し倒している彼女の教導隊制服の上から胸を強く揉む。首筋に這わせてい
たフェイトの舌が、ぬめぬめと光る道をつくっていた。
 フェイトに押し倒されている彼女は涙目で、羞恥に顔を真っ赤にさせながらも、現れたクロノに助けを求めて
いる。
 見知ったサイドテールを震わせている彼女の傍ら、白い銃形のデバイスが二挺起動状態で転がっていた。壁に
はいくつもの銃弾の後。
 きっと、彼女も暇なのだろう。そう思うことにして、クロノはそのままフェイトの自室に背を向ける。クロノ
さん、と呼びかける十年来の友人の声にクロノは脱兎の如く逃げ出していた。

「フェイトは駄目と」

 荒い息もそのままに、次にクロノが向かうのはフェイトの執務官補佐であるシャリオ・フィニーノの巣くう場
所。
 その場所の特定は出来ている。彼女は大抵、デバイスを弄くって恍惚となっている筈なのだ。

「シャーリー、僕だ」
「あ、クロノ艦長。お疲れ様です。どうしましたか?」

 予想通り、シャーリーはそこにいた。
 妖しげな器具の埋め尽くすこの部屋で、シャーリーが眼鏡に光りを反射させながら今日の獲物であるデバイス
を見つめ笑っている。
 彼女の視線が注がれている哀れなデバイスの名は、バルディッシュ。

「すみません。今忙しいので、お持て成しは出来ませんが――」
「いや、いい。そのまま続けていてくれ。ところで、それはちゃんとフェイトの許可を取っているか?」
「もっちろんです。ちゃーんと、見て見ぬ振り一回で」


561 名前:Love for you:2008/08/31(日) 20:25:23 ID:JYebJ06P
 ならば何も言う事は無い。
 クロノがそのまま立ち去っていく。背中越しに聞える奇声に身震いしながら、フェイトの時と同じように
足を速めて。
 終ぞ暇を解消できる存在がいなかった事に、盛大な溜息を吐いたのだ。

「やっぱり、仕事しか無いか」

 結局、自分は仕事だけしてればいいのだろう。肩を落とし、クロノがブリッジへと向かう。
 ブリッジには誰もいない。当たり前だ。一日中仕事なんて誰だってしたくは無い。無論クロノも仕事が好きな
訳じゃない。仕事があるからやりたくなるだけなのだ。
 と、

『――クロノ、元気でやってる?』

 不意の事。突然開いた通信回線に視線を向ければいるのはここ十年、何故か何時までも姿の変わらぬ笑顔の母。
 気味の悪い笑顔でクロノを見る母が紡ぐその言葉こそ、彼にとって、特別に忙しい一日の始まりの訪れを感じ
させる始まりの鐘であった。


魔法少女リリカルなのはStrikerS
―Love for you―
(前編)


 時空管理局本局次元航行部隊所属、XV級大型次元航行船クラウディア艦長――クロノ・ハラオウン。
 彼は今、狼狽していた。
 突然の母の通信に、寒気のする笑顔。その正体は、呆気無さ過ぎる程簡単に分かってしまったから。

「全く、君は来るなら来ると連絡をいれれば――」
「向かいに来てくれたりした?」

 まるで、分かっていると言いたげな物言いだ。
 正直の言葉を返すのも癪に障り、クロノが鼻を鳴らして顔を背ければ、それに苦笑した彼女がごめんごめんと、
全く誠意の感じられない謝罪をしつつ、彼女はクロノの頭に手を伸ばす。
 背伸びをして、随分身長差をつけられてしまった夫の頭を彼女は撫でようとしていたのだ。

「カレルとリエラはどうしたんだよ」
「母さんに預けてきた。今日母さん仕事休みなんだ。それでたまには羽根を伸ばして来いって言うから」

 ちなみにここは、ブリッジから艦長室へと繋がる通路の途中だ。
 頭を撫でられる艦長と言う、おおよそ始めて見るであろう光景にすれ違う者達が目を丸くし、ややあって笑い
始める。
 それに内で溜息を吐き、いい加減にしろと頭を撫でる手を払いのけようとすれば、何時の間にか頭を撫でる彼
女の手はそこには無かった。

「――久しぶり。海鳴での任務以来」
「うん、そうだね。エイミィ」

 目の前にいたやたら顔色の良いフェイトに、エイミィが手を振っていたからだ。

「エイミィ、いつ来たの?」
「今だよ。クロノ君が迎えに来てくれないから」
「ふざけるな。連絡一つよこさなかっただろうが」


562 名前:Love for you:2008/08/31(日) 20:26:10 ID:JYebJ06P
 各々言いたいこと、聞きたい事を口にしながら三人はエイミィが淹れたコーヒーを啜る。クロノとフェイトが
無糖のブラック。エイミィは、ミルクと砂糖とたっぷりと。
 クロノにフェイト、そしてエイミィと言う顔合わせ。家族同士の会話でしか無いそれが、酷く懐かしいと感じ
てしまうのは何故なのか。
 会話は花を咲かせるように淀み無く進み、今エイミィとフェイトが話しているのは専らアルフの事。二人の会
話に適当に相槌を打ちながら、クロノは頭を過ぎった思考を流してしまうかのようにコーヒーを啜っていた。

「そういえばさ、エイミィ今日予定あるの?」
「ん、クロノ君に夕食作ってあげに来ただけ。今日の夜には帰るよ。やっぱり子供達が心配だからね」
「ゆっくりしてけばいいのに」
「だーめ。母さん一日しか休み無いから」
「――僕は家には帰らないぞ。ここで待機中だ」

 二人の言葉を遮るようにクロノが言う。
 瞬間見たエイミィの困ったような笑みに、言ってしまった事を後悔した。

「艦は私が見てるから。クロノはエイミィと一緒にいていいよ」

 助け舟と言うよりも、エイミィのその笑みが嫌だったのだろう。最後の一口を飲み終えたフェイトが、退室の
直前、そんな事を言っていた。

「ま、待てフェイト! 艦に艦長がいないなんて――」

 だがそれを許せるほど、彼は融通が利く人間ではない。寧ろ、硬いと言われさえする人間だ。
 フェイトが呆れかえり、エイミィが眉を下げて頬を掻こうが、それを止める事は無いしやめる事なんて出来や
しない。

「クロノ君、ごめん。あたし帰ったほうがいい?」
「い、いや! 誰もそんな事を言ってるわけじゃ――」
「じゃあ、どっち?」

 口を噤むクロノに、フェイトが笑う。
 やはり、提督と言えど妻には勝てないらしい。

「決まり。はい、クロノ艦長。今日一日お疲れ様でした」
「すまない、フェイト。今日一日よろしく頼む」

 クロノの視界の端、小さくガッツポーズをしている妻の姿に彼は苦笑しながらも、私服に着替えるべく、
制服の上着を脱ぎ捨てた。


* * *


 時刻は丁度午前一時を回ったばかり。
 私服へと着替えたクロノが車を走らせるは、ミッドにあるハラオウン家の自宅だった。

「ごめんねークロノ君。我侭言って」
「いいさ。それよりエイミィ、夕食まで時間があるがどうする気だ?」
「んー、何も。夕食作りに来ただけだから」

 全く以って予想通りの言葉である。
 しかし、夕食の時間まではまだ遠い。食事の買い物をしようにも、その後の時間をどうするかは分からない。
 咄嗟に考え、クロノは自宅へと続く道とは違う方向へとハンドルを大きく切り、咄嗟に自身の肩を掴むエイ
ミィに言う。
 たまには悪く無いだろう、と。


563 名前:Love for you:2008/08/31(日) 20:27:01 ID:JYebJ06P
「夕食までまだ時間がある。どこかで時間を潰そう」
「じゃあちょっと寄ってもらいたいところあるんだ……いい?」
「どこでも」
「えーとね、カレルとリエラにお土産。お父さんからって渡すから」

 最後に会ったのはいつだったか。我ながら情けなくなる事を考えながら、クロノがアクセルペダルを強く踏む。
恐らく選ぶのには時間がかかる。時間が沢山あるに越した事は無いだろう。
 舗装された道路を進む二人の車が、大通りに差し掛かった。
 減速し、しきりに左右に視線を動かすクロノが考えるは、自分達の子供であるカレルとリエラの事。
 一体、何を買えばいいのやら。カレルには玩具でも買ってやるべきか、リエラは何を買ってやれば喜ぶか。や
はり、兄と一緒の方がいいのだろうか――。

「参った。難しい」
「何でもいいんじゃないかな。クロノ君が選ぶものならあの子達だって喜ぶよ」

 エイミィが思案に耽るクロノの横顔を眺めながらその向こう、流れる風景の所々にいる女性の服装をじっと
見つめている事にクロノが気付く。
 何かエイミィにも、そう言葉を投げるクロノに彼女は首を横にして言うのだ。

「いいよ別に。クロノ君、多分二人の選ぶので大変だから」

 遠慮をしている様子は無い。きっと、本当にそう思っているのだろう。
 車を停車させ、車から降りたクロノの手を自然な動作でエイミィが握る。若干顔が熱くなるのを感じながらも、
その手を払おうとはしないクロノに、またエイミィが小さく声を漏らしながら笑った。
 それぞれ目当ての店を探しながら歩く二人の会話は、専ら自分達の子供の事。
 今年四歳になる双子の子供達の近況をエイミィが話し、クロノが頷く。
 子供達が去年幼稚園へ入園し、もう短くない時期が経っている。もうそろそろ、小学校に上がる為の準備も必
要となってくるのだろう。

「士郎さん達が色々助けてくれてるよ。子育ては母さんもアルフも好きみたいだし、あっちにいると結構暇なん
だ」
「そうか。それよりエイミィ、あの子達の学校は?」
「考え中。あっちには二人の友達もいっぱいいるからね。だからあっちの方がいいのかなぁ、って」

 クロノとしては、ミッドにいてくれた方が何かと助かる事が多い。一緒にいてやる時間も格段に増えるし、何
より時空管理局と言う職場が認知されているから。
 エイミィとしてもその事は勿論分かっているし、言ってある。ただ、少し不安があると言うところだろう。カ
レルとリエラは、まだ数えるほどしかこっちの世界に来た事は無かったから。恐らく、外国か何かと思っている
のは間違いない。
 と、不意の事。エイミィが目を輝かせてずっと握りっぱなしだったクロノの手を引っ張った。
 目指した先は、子供用の洋服を専門に扱っている店だ。恐らく、リエラに似合いそうなものでも見つけたのだ
ろう。


564 名前:Love for you:2008/08/31(日) 20:27:57 ID:JYebJ06P
「クロノ君、クロノ君! これ可愛いよ!」
「あ、あぁ……そうかもな」
「リエラに似合うかなぁ……」

 どうやら、リエラへのプレゼントは早々に決定しそうである。
 興奮ぎみに声を大きくするエイミィの後を追いながら、クロノはクロノでエイミィ程とはいかないものの、子
供達に似合いそうな服を手に取り、吟味する。
 エイミィが店員と何やら話しているのに聞き耳を立てていればエイミィが、目ざとくそれを見つけて手招きし
て。

「クロノ君、何かいいの見つけた?」
「いや。エイミィこそどうなんだ」
「これとか」

 そう言ってエイミィが目の前に差し出したのは、やたらレースのある動きにくそうな洋服だ。
 可愛いでしょ、と小首を傾げるエイミィに、だがクロノは眉を顰めるだけ。それよりももっと、クロノが選ん
でいたのは違うものだ。

「君は何を考えてるんだ。そんなのリエラには似合わない」
「えー、可愛いよ!」
「リエラはもっとカレルと一緒に遊べるくらいのがいいだろ」

 頑なに自分の主張を推そうとするクロノにエイミィも負けてはいない。頬を膨らませ、クロノが戻したレース
付きの服を再び手に取り一人レジへと進んでいく。
 リエラは可愛いんだから何だって似合う。そんな意地になっているとしか言えない事を言いながらだ。

「待て待て、僕が買う筈だろう! 君が買ってどうするんだ!」
「いいの! リエラに絶対似合うんだからっ! クロノ君からって言う」
「なっ――僕がそんなの選んだなんて言われたくない! 戻せ!」
「いーや! これ買うの!」

 ぐぐっと顔を突き合わせにらみ合う事数分。近くにいた店員は眉を下げながら苦笑し、二人と同じように商品
を選んでいた客は、微笑みながら二人の事を見つめている。
 だがそんな視線に気付かない二人の機嫌は、さながら地面すれすれを飛ぶ燕の様に秒刻みで下降した。
 似合うったら似合うと商品をレジへ出そうとするエイミィを制し、クロノがこっちのほうが似合うと何時の間
にか手に取っていた服を変わりにレジへと突き出した。
 それをエイミィが止め、クロノが声を荒げるの繰り返し。

「っ――いい加減にしろ! 変な意地張るな!」
「そっちだって!」

 売り言葉に買い言葉。際限なく高まる苛立ちに、最早冷静に考える事など出来なくなっていた。
 二人同時にレジへと服を突き出し、二人同時に財布から出した紙幣を叩き付け、つり銭と共に商品を受け取っ
て。
 ふと、思い出したように辺りを見渡したエイミィが、自分達を見つめる視線に気が付いたのだ。
 瞬間、エイミィの顔が沸騰する。やや遅れて気付いたクロノも同様に。

「い、いくぞエイミィ!」
「待ってよクロノ君!」

 二人分の商品を手に、クロノが足を速め店から逃げ出した。
 車に乗り込み、エイミィが助手席に乗ってから車を走らせて――すっかり治まってしまった怒気に、しばらく
二人で笑いあった。

「どうするんだ。リエラのが二つになったじゃないか」
「カレルのも二つ買えば良いよ。お母さんとお父さんからって。ね?」


565 名前:Love for you:2008/08/31(日) 20:29:05 ID:JYebJ06P
 今度は喧嘩なんてしないように。ゆっくりと。カレルの土産を選んだときには、日が落ち、空はすっかり星達
が輝く夜空へと変わっていて。
 エイミィがこちらへ赴いた目的である夕食の時間が訪れたのだ。

「クロノ君、帰る前に夕食の材料買わなきゃ」
「……」
「クロノ君ってば」

 だが思う。リエラの服を買う前の事だ。やはりこのまま、エイミィに夕食を作らせるだけで帰していいのか、
と。

「エイミィ、今日夕食作ったら帰るんだよな」
「うん。母さん、今日一日しか休み取れないんだって」
「……むぅ」

 思考すること数分。その間しきりに自分の名を呼ぶエイミィの事を無視して、それとは逆に彼女の事を考えて
いた。
 別にエイミィの夕食が食べたくない訳じゃない。寧ろ食べたい。だが何か……せめて美味い食事くらいご馳走
してやるべきじゃないのか。そう思い始めてしまっていたのだ。

「決めた。エイミィ、悪いが夕食は明日にしてくれ。今日は外だ」
「ちょ、ちょっと待ってよ! だから明日は――」
「僕から母さん達には連絡する。アルフだっているんだ。一日くらい構わないさ」

 戸惑うエイミィを無視する形で、クロノが車を走らせる。
 突然の事だ。勿論予約なんて取っていない。実はこう言う時エイミィが喜びそうな店も知らない。唯一あると
すれば、彼女の要望どおり夕食を作らせて美味いと言ってやることくらい。
 だがそれは、明日やる事に決めてある。

「しょうがないなぁ、クロノ君は」

 微笑んでいるエイミィだが、子供達の事を考えているのは分かっている。
 やはり止めておくべきだったか。そんな事を考えながら、クロノは久方ぶりの妻との食事に、自然とステアリ
ングを握る力が強まっていた。
 やはり、彼も妻の来訪は快いものだったらしい。


* * *



566 名前:Love for you:2008/08/31(日) 20:29:51 ID:JYebJ06P
 クロノが選んだ店は、ごくごく普通の、一度はエイミィと行った事もあるレストランだった。味も悪く無く、
エイミィも実に美味そうに食べていた。
 今はその帰り。腹も膨れ、後は自宅に帰って寝るだけと言う時間である。

「――すみません、お願いします」
『はいはいー。エイミィによろしくねクロノ』

 公言どおりエイミィの一泊の了解を取り付けたクロノが、そっと隣で安堵の息を吐いているエイミィに
振り返る。
 聞いていたにも関わらず、どうだったと聞く辺り余程子供達の事を心配しているのだろう。
 クロノが肯定の意を込めて頷くと同時、普段の笑みに何倍もの明るさを混ぜながら彼女はクロノの腕を絡め
取っていた。

「なんだよ」
「たまにはいいでしょ。駐車場までこのまま」

 若干頬を紅くしながらも、クロノも満更では無い様子。
 エイミィはクロノの歩調に合わせやや早足になりながらも、何ら気にした素振りも無い。歩きにくいかと聞か
れても、ただ首を横に振るのみであった。

「もう慣れたよ。クロノ君、歩くの早いから」

 敷地内では無いとは言え、店から駐車場までの距離は長くない。エイミィに気付かれない程度に、気持ち歩く
速度を緩めては見たが、やはり大した意味は無いだろう。

「クロノ君」
「なんだ? もう何も無いぞ。今日は寝るだけだ。僕は明日仕事なんだからな」

 当たり前の様に呟けば、目を丸くしたエイミィが呆れたように溜息を吐いて。
 そして言うのだ。自分だけ、と。

「自分だけって、元々君は働いて無いじゃないか」
「そう言う意味じゃない。ヒトの予定勝手に一日遅らせておいて、自分は好き勝手やるのかって意味」
「おあいこだ。君が来なかったら僕は今日仕事が出来たんだ」

 まるで仕事が大好きな人間のようだ、と内心思った。
 それはエイミィも同じだったのだろう。一頻り声をかみ殺して笑い、クロノと触れている方とは逆の手で、
僅かに浮いた涙を拭う。
 二人で歩いて数分。そんな記憶にすら残らない会話をしていた。視界の奥には既に、目的地である駐車場が
見え始めている。
 それが何となくではあったが、寂しさを感じずにはいられなかった。たまには海鳴に帰って、家族達と共に
過ごそうと思うくらいには。
 と、

「ね、ねぇねぇ……クロノ君」
「またか。なんだ?」
「えぇ、っと……その――」
「なんだよ、はっきりしてくれ。分からない」

 エイミィが、躊躇いがちにちょこんと指を突き出していた。
 それに視線を向け、瞬間クロノの顔が沸騰したかのように赤くなり鼓動が早鐘を打ち始める。見ればエイミィ
は、クロノ以上に紅くなりながら俯いていた。

「歩き疲れた。休憩しよう」

 そんな歩いているわけじゃないだろう、と言う突っ込みなどお構いなしに。
 先ほどまでの色々な感情など、全てどうでも良いと言われているくらいに、不意の事。
 エイミィが指差したそこは、所謂ラブホテルだったりした。

567 名前:246:2008/08/31(日) 20:33:21 ID:JYebJ06P ?2BP(0)
以上です。ありがとうございました。
んー、やっぱりエイミィさんは描写が少なめだからいまいち書きにくい気がする。この辺り、やはりエイミィさ
んが出てこない理由なんでしょうかねぇ……結構好きなのですけど。
後自分が台詞書く時は、中の人の声で脳内再生されないと書かないのですが、クロノ君の声がたまにショタ声に
なって困ります。
クロノ君は、無印、A`sの時の自分が受けた感じをそのまま大人にした感じ。エイミィさんはちょっと苦しいか
も。
次回は、エロ後編です。長編待っている方しばしのお待ちを。

ついでに。
☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第83話☆
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1220182289/l50


568 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/31(日) 20:37:51 ID:THmEhVdu
GJです
ニヤニヤしたw

569 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/31(日) 20:43:13 ID:olLOSVVA
GJ。
しかし、フェイトさん、あんた部下に何てことをさせてんのさw

570 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/31(日) 20:46:38 ID:x4iOSYNP
GJ!珍しくおとなしめなクロノだ
エロ楽しみにしてます
あと、ティアナに合掌

571 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/31(日) 20:46:50 ID:0/Q3y8gc
>>567
GJ&スレ立て乙っす。
一つ質問ですが、>>560でフェイトに押し倒されているのはティアナでいいんすよね?
『教導隊制服』で『サイドテール』と書かれているので一瞬なのはかと思ったんすが。
ただ単に俺がティアナが教導隊に転向する話を見落としてただけならすいません。

572 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/31(日) 20:49:00 ID:fPDZE1yg
>>571
幻術だろう。

573 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/31(日) 20:52:46 ID:Dx4QxkOT
>>571
状況から総合的に判断すれば、ティアナの幻術だな。

574 名前:571:2008/08/31(日) 20:54:12 ID:0/Q3y8gc
>>572-573
そ れ だ ! orz

ああ、だから>>570がティアナ合掌とか言ってるのか。
その位付こうよ俺 OTL

575 名前:246:2008/08/31(日) 20:56:30 ID:JYebJ06P
ごめんなさい。わざとぼかして書いていたもので。ティアナの幻術です。
意味も無くなのはさんとフェイトさんを書きたくなる悪い癖です。

576 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/31(日) 21:00:19 ID:L492sLK/
>>575
GJ!&スレ建て乙!
俺はそれを悪い癖とは思わないぜブラザー
後編と長編の続き楽しみに待ってますね

577 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/31(日) 21:01:54 ID:OCZlnRRk
>>567
GJGJGJGJGJGJGJGJGJGJGJGJGJグッジョオオオォォォォォォォォォオブ!!!
待ちに待ったクロエイがやっときて感激のキワミ!アッーーーー!です!
いや〜いい夫婦ですな、エイミイさんの誘い方もグーです
後半を全裸で待っています

578 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/31(日) 22:39:08 ID:wkN/OB4c
なんか、久々にエイミィ見た気が…
とにかくgj!!


579 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/31(日) 23:04:41 ID:4fXmP27O
>>567
いや〜GJです。
何か、クロエイすごくなごむ。でも後半に備えて俺も全裸待機ですな。

580 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/31(日) 23:39:44 ID:mQQCu+qq
なんかもう…………とにかくティアナ乙w

581 名前:野狗 ◆gaqfQ/QUaU :2008/09/01(月) 01:28:15 ID:un68OYZU
 まとめにも載ったやつの続きです。完結。
 レス数6。
 エロ。はやて。オリキャラ。お尻。
 あぼんは鳥かコテで。

 タイトルは
 「石田医師はまた出張に行きました その2」

582 名前:野狗 ◆gaqfQ/QUaU :2008/09/01(月) 01:28:48 ID:un68OYZU
            1

 少女の甘く荒い吐息だけが、処置室の中に聞こえていた。
 お尻の穴を擦られるたびに、触れられるたびに吐息は漏れ、あるいは囁くような喘ぎが聞こえる。
 快楽によって熱っぽくなった胸は息苦しささえ覚えさせ、犬のように舌を出して無様に喘ぐ。
 出した舌は指に挟まれ、扱くように指先に揉まれる。揉まれた舌の先がじんじんとしびれて、何かに触れていたい、何かに触れられたいと疼きだす。
だから、舌は無意識の内に自分を弄ぶ指を追っていた。
 ぺちゃぺちゃと指先を舐めると、それに答えた指が舌先から根本にかけてを握りしめるように捕らえ、優しく表面をくすぐった。
 お尻の穴と舌先を同時にいじられ、一本の長い棒で身体を貫かれたような錯覚すら、少女は覚える。
 長い棒が肛門から直腸を通り、胃を貫き、食道から喉へ、そして唇から舌先へ。愚かな錯覚であると自分でもわかっていた。しかし、それは甘美に思えたの

だ。
 貫かれ、どうしようもなく弄ばれること。
 自由を奪われ、ただ甘い刺激だけを与えられ続けること。
 はやては、自分がハンモックになってぶら下がっているような気がしていた。
 舌先に繋がれた糸と、お尻の穴から伸びるヒモ。その二つでぶら下げられるハンモック。
 ゆらゆらと揺れるたびに、上から、下から、心地よさが送られてくる。

 ふと、下腹部に違和感があった。
 覚えのある感覚にはやては焦り、舌足らずに訴えかける。

「あ、あ、あの、先生」
「どうしたの? はやてちゃん」

 医師は静かに尋ねた。今はリズミカルな刺激だけを与えている。刺激を与えられることに抵抗が全くなくなったとき、次のステップに移るのだ。

「おトイレが……」
「ああ、おしっこか。もう少し、我慢できるかな?」

 言いながら舌をつねり、お尻に回していた手を秘部に回してやや強引に尿の出る付近をさする。
 そして突然のことに抵抗しようとするはやてから、一気にアナルビーズを抜いた。
 
「あ、か……」

 舌を引き出されたまま、歯を食いしばることもできずに拳を握りしめる。

「見たらあかんっ!」

 シーツをぐっしょりと濡らす失禁に、医師は大袈裟にため息をついた。

「お漏らしとはね……」

583 名前:野狗 ◆gaqfQ/QUaU :2008/09/01(月) 01:29:20 ID:un68OYZU
          2

 それはあまりにもショックな出来事だった。
 お漏らしをしてしまったことが、はやてにとっては大きなショックだったのだ。
 そんな粗相など、記憶の中では一度もない。
 車椅子というのは、一人で行動するにはあまりに不便だ。家を一歩出てしまえば、トイレにすら苦労するのが日常生活なのだ。
しかし、それでもはやてはきちんと自分を管理していた。
 自分が一人でトイレを使える場所を把握し、誰に頼らずとも用が足せるように行動していたのだ。
 ヴォルケンリッターが来てからでもそれは替わらない。車椅子を押してくれるというだけで、はやては基本的には自分だけで処理できるように行動していた

のだ。
 だから、ある種のパニックにはやては陥ってしまった。
 こんな粗相は隠さなければならない。知られてはならない。誰にも知られてはならない。たとえ家族同様の守護騎士たちであっても。
 そして医師は、はやてがそう言い出すであろう事を予想していた。
 だから、内緒にすると申し出た。
 もちろん、代償はある。引き替えに、今日のことを誰にも言わないこと。
 それを約束させると、医師ははやての舌をもう一度引き出し、思うがままに味わった。
 小さな舌を捕らえ、ねぶり、吸い、甘噛みし、唾液を自分のものと交換する。柔らかく温かく、甘さすら感じる少女の舌を医師は思うがままに蹂躙したのだ



「お漏らしのことは誰にも言わないからね。だからはやてちゃんも、今日僕にされたことを誰にも言っちゃあ行けないよ」

 これは約束だ。と医師は言う。
 約束と名が付くだけで、はやてにとっては幾ばくかの束縛になることを見越した言葉だった。
 そしてその目論見は見事に当たる。
 誰にも言わない、とはやては約束してしまったのだ。どんな形であろうと、はやては絶対に約束を破りはしないだろう。

「それじゃあ、今日はこのくらいにしておこうか。明日もこの時間に来るんだよ」
「……はい。先生……」

 呼び出した助手に車椅子を押され、部屋を出るはやて。
 肩を落としたその姿に、医師は心の中でほくそ笑んでいた。


「あの、はやてちゃん……何かあったんですか?」

 はやてを待っていたシャマルがあまりの様子に堪らず声をかける。ちなみに、シャマルたちは例の医師が戻ってきていることを知らない。
知っていれば、どんな手段を使っても排除していただろう。

「ん? あ、なんでもないよ、シャマル。ちょっと、疲れてるだけやから。なんも心配せんでええんよ?」

584 名前:野狗 ◆gaqfQ/QUaU :2008/09/01(月) 01:29:54 ID:un68OYZU
        3

 泣きそうな顔で、はやては目の前の異物をにらみつけていた。

「そんな顔なんてすると、可愛い顔が台無しだよ、はやてちゃん」

 揶揄するような医師の言葉にも反応しない。
 お漏らしの日から一週間が過ぎていた。その一週間、はやてはずっとお尻の穴を弄られ続けている。今も、医師の指が穴に入り込んでいた。
 ベットに腹這いに寝かせたはやての前に立ち、上半身で覆い被さるようにして、医師の指ははやての肛門を弄っている。

「ふ……ん……んっ!」

 指で中身を穿られる度に、はやては息を短く激しく吐き出している。そして抜かれると息を吸い、一瞬だらしなく口元が開く。
すぐに持ち直し口を閉じるが、その一瞬でこぼれた涎が唇を濡らしていた。

「涎を垂らすって言うことは、そんなに好物なんだ、これ」

 医師のズボンのチャックは開けられ、そこからはみ出したペニスがはやての面前に突きつけられている。

「おちんちんを見て涎を垂らすなんて、はやてちゃんはスケベだね」
「違……」

 違う、と言いかけたはやての肛門の内側を指が撫でる。医師の特技は、指の第一関節だけを曲げることだった。その曲げた指の腹で、肛門の内側をなでさす

る。

「う……は、あ……」

 言葉は喘ぎに混ざり、否の返事は打ち消される。
 内側に螺旋の筋を引くように動く指。その動きにつれて、はやては舌を出し喘ぐ。

「舌まで出して、催促するの? 本当にスケベな子だ」

 言うなり、指が置くまでずぶりと差し込まれる。この数日で慣れきった肛門が指を軽々と飲み込み、はやてはのけぞった。
 その唇と舌に、医師はペニスを押しつける。

「んぐっ……んんっ」
 
 指の動きに合わせて腰を動かすと、喘いで暴れる舌が愛撫をするかのように揺れる。その結果はやての舌は、自ら進んで行うように医師のペニスを舐め回し

ていた。

585 名前:野狗 ◆gaqfQ/QUaU :2008/09/01(月) 01:30:26 ID:un68OYZU
        4

 そしてさらに三日後。

「先生、もっと、触ってください」
「はっきり言わないとわからないなぁ」
「お尻、あたしのお尻です」
「ここを、触ればいいのかな」
「違う、違いますっ」
「わからないよ、はやてちゃん」
「お尻の……お尻の……」
「わからないなぁ」

 ニヤニヤと笑いながら、医師ははやてのお尻のすぼまりの付近を爪で押さえる。

「ひっ! そこ、そこです、その中を、もっと、もっと指を入れてください!」
「だから、どこだか言ってもらわないと」
「お尻の……お尻の……穴です!」
「ああ、ここか。ここに指を入れるとどうなるのかな?」
「ひゃ、ああ、……気持ちええんです。気持ちよくなるんです。お尻が熱くて、あそこが熱くて……」
「ふーん。でも、はやてちゃん一人で気持ちよくなるのは良くないなあ」
「ああ、堪忍ですぅ、そやけど、もっと触って欲しいんです」 
「替わりに、何かしてくれる?」

 はやては答えず、唇を噛みしめている。

「うん。別にいいんだよ。僕は別に、お尻を触らなくてもいいんだから」
「待って! 待ってくださいっ!」
「何かな?」
「……舐めます」
「何を?」
「先生の…………舐めます」
「聞こえない」
「先生の、お……おちんちん、舐めます」

 医師はゆっくりと、はやての頬を両手で挟み、うつむいていた顔を自分に向ける。 

「違うよね? 正直に言ってごらん?」

 はやての両目には、涙が浮かんでいた。
 それは悔しさか、情けなさか、悲しさか。…………それとも、悦びか。

「先生のおちんちん……舐めたいんです」
「正直でいいよ。はやてちゃん」

586 名前:野狗 ◆gaqfQ/QUaU :2008/09/01(月) 01:30:59 ID:un68OYZU
           5

 さらに一週間後。

 マンションのエントランスまで、医師は少女を迎えに出た。

「一人で来たの?」
「はい」
「本当に?」
「あの……ヴィータがついてくる言うたけど、たまには一人で行きたいって……」

 医師ははやてのむき出しの太股に手をやると、そのままスカートに中へと手を滑らせた。
 そこにあるはずの下着の感触はない。ただ、温かく濡れそぼった肉の感触がある。

「もう濡れてるのか? 本当、スケベな子だな、君は」
「だって、先生が……」
「わかってるな?」
「はい」

 医師は電動車椅子のスイッチを手動に切り替えると、後ろに回って押し始める。
 はやてはいつも通り、スカートをまくり上げると、両手を秘部に当てる。
 すぐに濡れた音が玄関ロビーに響き、はやての喘ぎが小さく聞こえ始める。

「公園を一回りしてこよう。たくさんイケたら、ご褒美だ」
「はい。先生」

 指の動きが早くなり、はやては声を出さないようにうつむく。
 医師は、毛布をはやての下半身に掛け、周囲からは何も見えないようにする。

「じゃあ行こうか」

 はやての返事は、くぐもった喘ぎだけだった。

587 名前:野狗 ◆gaqfQ/QUaU :2008/09/01(月) 01:31:30 ID:un68OYZU
         6

 そして約十年後。

「はやてちゃん、これからどうするの?」

 なのはが問うと、フェイトも興味ありげに首を並べる。
 六課がなくなった後の進退はすでに決まっているし、それは互いに知っていることだ。
 今なのはが聞いているのはもっと短期間のこと。それこそ、「明日はどうするの」という類の質問だった。

「私とフェイトちゃんは少し休暇をもらったから、原隊復帰の前に海鳴に帰ってみるけれど」
「あー。あたしは海鳴の家は処分してるし、シグナムたちはみな仕事で、リインは長期メンテナンス。休暇もあたし一人やしなぁ」
「一緒に来る? はやてちゃんならお母さんも歓迎だよ」
「あ、うちも同じだよ。母さんだって、クロノだってエイミィだって歓迎するよ」
「ありがと、そやけど、実はちょっとした計画があるんよ」
「計画?」
「旅行や。この世界やのうて、地球やけどな」
「へえ。あ、もしかしてゲンヤさんと一緒とか」
「ちゃうちゃう。そんな浮いた話やあらへんよ。そしたら、あたしはそろそろ行くから、また、休みが終わったら会おな」




 これまでも、定期的にここには来ている。疑念をもたれたことは一度もない。当たり前だ。地球は自分の故郷なのだから。
 休暇の度に里帰り。何の不思議もない。
 後は定期連絡さえ絶やさなければどこへ行くのも自由だ。
 はやては、マンションのエントランスを合い鍵で通ると、早足でエレベータに乗り込んだ。
 息が荒くなるのがわかる。
 身体は知っている。もうすぐなのだと。
 濡れているのが自分でもよくわかった。今すぐに脱ぎ捨てたい衝動を抑えて、エレベータを下りる。
早くしないと、スカートにまで染み出て来かねないほどに濡れているのだ。
 ドアフォンを鳴らす。
 ドアの開いた先には、初恋の人。自分に全てを教えてくれた人。
 はやては挨拶もなしで入り込むと、後ろ手にドアを閉めた。
 その人は笑っている。
 はやては振り向いて、ドアに身体を預け、お尻を男に向ける。そして、スカートをまくり上げた。

「あたしのいやらしいお尻に、先生の罰を与えてください」

 たっぷりと犯されることを想像する、はやてはすでに喘いでいた。

588 名前:野狗 ◆gaqfQ/QUaU :2008/09/01(月) 01:32:16 ID:un68OYZU
以上。お粗末様でした。

次はナンバーズのエロを書きたいな。

589 名前:名無しさん@ピンキー:2008/09/01(月) 01:52:08 ID:r7uvfk9x
GJ
まさかお仕置きENDじゃなくて調教成功ENDだとは……
はやてはえろいな〜

次はナンバーズなら空気なカルタスと空気なディエチ希望

590 名前:名無しさん@ピンキー:2008/09/01(月) 02:26:29 ID:xFNimyOR
>>493
自分の力を完全に受け入れ闘うこの熱い展開にGJ! と言いたい自分と
>>言葉にすれば分かり合える、思いをぶつければ分かり合える。
何百年も生き続けたもう一人の自分の考えを「理解できない」の一言で切り捨てて
考えも受け入れもしない奴がほざくな。
と注意事項を読んでても言いたい自分がいる。
個人的に最後に「お前は間違ってる!」なんてセリフだけは出ないよういのるばかりだ。

591 名前:276 改め 82スレ276:2008/09/01(月) 04:13:16 ID:MvgPsbk6
>>69スレ264氏
遅レス申し訳ないです。
まず、ふたなりティアナの話(>>277-283)のタイトルは、「ずっといっしょ」とします。
また保管していただく際には今回の話にサブタイトルとして「オトコノコになったティアナ」とつけて頂ければ幸いです。


最後に、コテが276だけだと過去の同名の方と被ってしまうので今後は82スレ276と名乗らせていただきます。
それでは、また書く作業に戻ります。



592 名前:名無しさん@ピンキー:2008/09/01(月) 09:37:54 ID:6qjebO18
GKです。
回らない寿司が喰いたい。

593 名前:名無しさん@ピンキー:2008/09/01(月) 12:32:07 ID:4HvOrDCg
ゲハ板に 帰れ

594 名前:名無しさん@ピンキー:2008/09/01(月) 13:23:33 ID:OXoiQT5O
>>588
GJ!!!
なんと素晴らしいケツマンコSS、幼女の内から調教するド変態ぶりに感激・感服しました。
ナンバーズエロも全力全開全裸でお待ちしておりますよ〜。

595 名前:名無しさん@ピンキー:2008/09/01(月) 17:52:39 ID:6pGlRhis
>>588
GJ
てっきりヴォルケンにお仕置きされるのかと思っていたら、こっちだったか。

596 名前:名無しさん@ピンキー:2008/09/01(月) 17:54:53 ID:6qjebO18
最近毎日投下してるようだけど、よく書けるよな。
これが小説ジャンキーというヤツか。
正直尊敬するわ。

597 名前:名無しさん@ピンキー:2008/09/01(月) 22:09:59 ID:UHvUpTj8
残り20kb
投下したい書き手さんはいませんかー
AAで埋めちまうよー

598 名前:名無しさん@ピンキー:2008/09/01(月) 22:10:41 ID:pBkp4U3l
ごー!

599 名前:名無しさん@ピンキー:2008/09/01(月) 22:21:18 ID:UHvUpTj8
              ((・∀・)x)) それでは埋めにはいります
               (0¶¶0  キコキコ
              _,,[ ̄ ̄ ̄]、.,_
            , ・´ ̄   ̄ ` ・、
       .    ./  へ::::::::::::::へ \
         ,<, / ヘ ̄ ̄ ヘ ヽ  、>、  _
       ()()> y ./      丶 `.、>  <()(ノ
       (゜_゜ )/i i        、  i ヽ'( ゜_゜)
         ヽ〃 |リル.  i  Nviノ| l │ i|_ノ   
           レ!小l ○ヽハノ   ○从 |、i| 
          ヽ|l ⊂⊃    ⊂⊃ノ|ノ.ノ!
             ヽ    l ̄ ̄l  .ノノ /⌒ヽ
     i⌒\_ へ> |__|,イへ/w、/ 〉
     \ w       《 † 》    ∧_ 〉
.       \   L_ i  /~∞~ヽ    _」 爪
         l                    \
       /                   /
      |           ____________ 人__
      入           /===/         ヽ
      (--[ヽ__________|===( ○  ○  ○ )
      \‘二___ノ  \二_ヽ______ノ


    ,-ー──‐‐-、       ,-ー──‐‐-、 
   ,! ||      | ...........  ,! ||      |
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  .|:::i /´ ̄ ̄`ヽi      . .|:::i /´ ̄ ̄`ヽi
  .|:::i |./ ( ゚ - ゚))||. .   .  .|:::i.|/ (‘ -‘)x)||
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600 名前:名無しさん@ピンキー:2008/09/01(月) 22:22:05 ID:UHvUpTj8
随分と昔のことだ。
陸士訓練生だったんだが、なんとなく空隊のほうがかっこいいと思って
喪友達と二人で空隊の白ジャケ制服を特注した。
それを着て、公開空戦演習場に乗り込み、わざと目立つ位置で観戦してた。
(空隊のトップエースで、若手のライバルの視察にきたという設定)
壁によりかかりながら、人が近くを通る時を見計らって
俺「なかなか粒揃いじゃないか‥‥」
友「ああ・・特にあの白いBJの女」
俺「お前と同じセンターガードだな。どうだ?止められそうか?」
友「どうかな‥‥」
俺「おいおい‥‥エースがそんな弱気でどうすんだよ」
友「本局の提督から誘いを受けてるお前にはかなわんさ‥‥」
俺「あんま関係ねーよ。海に転向すると決めた訳じゃないしな」
友「お?やっぱ兄貴の後を追って教導隊にいくつもりか?」
俺「今の隊も気に入ってるんだがな。まあ、ゆっくり考えるさ・・・」
こんな感じのやりとりを繰り返した。
たぶん強そうに見えたと思う。

(コピペ改変)


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601 名前:名無しさん@ピンキー:2008/09/01(月) 22:23:11 ID:UHvUpTj8


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   〃:.:.:./.:.:.:.,:.:.:.:.:.:.:.:.:.\:.:.:.:.:i、:.:.:.:.ヽ┴┴┐, ||::|_   
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     'ヘ/:.:l::l:.:l'莎 ヘト忝レ::l::ム/ 'v l |:.:.:.'  | ||::| | | ||li|\
    .|:.: :⊥ヽl ¨ ,  ゙ー' |/イ/    └──┴┐.||::| |   | ”|
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602 名前:名無しさん@ピンキー:2008/09/01(月) 22:24:10 ID:UHvUpTj8
フェイトソンのマーチ
作詞:たかまち なのぱ/作曲:たかまち なのぱ/編曲:エロオ モンデヤル/ 歌:フェレットのお兄さん

そうだ 怖れないで 皆の為に
愛と露出だけが 友達さ

何が君の特技?
何をしたら強くなる?
脱がないまま終わる
そんなのは 嫌だ!

忘れないで エロを
裏切らないで 期待
だから君は脱衣するんだ どこまでも

そうだ 怖れないで 皆の為に
緊縛されることは お約束

ああ フェイトソン 優しい君は
脱げ! みんなの夢守るため

                ⌒*(・∀・)*⌒  ヽ、   
                  , :<´ ̄ ̄> 、}}ノ    
              ー=≠": : : : : : : : : : : : :\   
                 /: : : :/: {: : ヽ: ヽ : : ヽ:ハ  
               i.: ::{ 斗-ハ: : :}十ト:i :}: :}: :}   
             □■□■□■□■□■□■  
             ■□■□■□■□■□■□   
                Y:ヘ  _     } : /′       、 _
                 Yヽ. ヽノ   /: /ヘ         アヘヘ `ヘ
                   ヽi{`>- イ´/W}<        Z ノ八从ハ
             /⌒ヽ   /i>く´   }ヘ\}      `ヘリ゚ д゚ノリ
              {=x ノー ': ,/{/こ)'ヽ/ : l: : :`>: 、.._    
           /^こヽ{ : : : / :| ,ハ   ∧: : }: : : : : : : : :`ヽ  
             ノ  ヽノノ: : : : >:|/ || /: :`<: : : : : : :/: : : :}
         ∧/^Y,イ}: : : : く : {' l」/: : : :/ : : : : : /: : : : :|
         /: :{^ノ|: /|: : : : : ヽヘ、/: : :/「^}___ {/: : : : : ヘ
        ,/ : 〃: ||/: |: : : : : : :\' : /{⌒ 'こ} :〈 : : : : : : :〉
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603 名前:名無しさん@ピンキー:2008/09/01(月) 22:25:09 ID:UHvUpTj8
捨てればいいって訳じゃない。                  __________________
――逃げればいいって訳じゃ、もっとない!          /:/|:::: / l/   l'   !:::.:| ヽ::_ lr┼~: 亅::: |: :
_________________________ /|,!: / '    `  ヽ__レイ ニニ二- ,' ::::: / :
ノ'.::::::;;;///  ,,/ ,,/ /  ,i , , i, i l'、 !l  i,  ヽ、  //:7‐l- __     .'" !lン ̄/|'"''‐-、.\:ヽ./ : : :
::::/  ,,/  _/i  ./_/j /l/l i l,  l ヽヽ iヽ l  ヽ, \.//!r'ニ =.三ヽ、      ´  ,__ノο::::::',  ヽ/:::::.:
/ ,,/ ,_/ /   /  /`irーi-i、l,,i |  ヽ i l | l  ヽ // :/ .´,ノο:',            |:::::::::::r―''" /: : : ./l
 ,/  ,/彡 l   / l i___`'ii ヽil  ヽl i il  、  //!、l  |`'::::::__,l          l:: ,、::::`:7 / : : _/:::
 ,_ィイ    i /l i_/´__ノ:::.i i`'  ヽ  ├i-、l  | // ', `.ゝ !::_´-,┐         」:_!:_r'.!ノ/: : , -'/:: :
/ l、l;;| ,/ヽ/ | l " ii i:::::::ノリ      ,_,l/ l  l .//|  .l,   ヽ:::,l_/   ,         ー=二 --‐ " / : :
 l;;;ヾヽl i´ヘl  'i,l   ゝ_`´ノ      ,_.ノl!! jl /.// l`_/!.   ̄    丶             ./.:   
 i;;ヾl i l 、 i   i       ̄       ll/i/ii /レ //X_ !/:::::l.           ___       . '´:: : .,-"./
  ヾ;;;;;;;ヽ_               、iン / |.//  /~ : |           '´       ., '´:__, -, '´ /'´
ヽ_ ヾ;;;;;;;;;;`ヽ,                ´   ll //  /::: :.  /!、             , '´, -',-‐'_/ ̄ /
、_ヾヾ ;;;;;;;;;;;;ヽ,          ー‐     ノl //. / ::: : ,イ:/   `ヽ_          /, ''∠ :;‐'" _//_
    ̄ ̄~`ー-、_ヽ,.,             /.//  ,' :: //:/      `‐-、      〃  ./  .〈,-ニ`ー,      
__ ー--、_ . `ヽ_ヽ、,        _.,-‐'" ,:::/  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄    
  ` ''ー--、___-、`ー-、ヽ`j-、,-‐'" :::::__/  自分で決めたことを曲げられない気持ち、逃げたくない気持ち。
                          少しだけど分かるから。だから今、最初で最後の本気の勝負!
                          ――何度でも伝えるよ、笑顔を見せて欲しいから……。



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604 名前:名無しさん@ピンキー:2008/09/01(月) 22:26:09 ID:UHvUpTj8


                            _, ‐  ̄  ̄ヽ
                            /^^ヽ     ニヽ __
                       //  | //   ',ヽ_>
                         l l| |l |/^ヽヽ,    l ト{
                          !|レl rュ|   }>   / |    フェイトちゃんまだかな?
                             ( ノ |   |〈    ,イ ト、           
                          ヽ_ヽ ト_ゝ_,/ l /  l
                              `lヽl (     レ  ̄
                          , ‐'´   ヽ
                           /        ヽ
                         l      )   l
                          l   l    /   /
                        l   l     /
                       l   l       /
                       l  /       {
                         __l   /       ',
                      r┴′イ         ',
                       ,{_ュ  ,ノ|           ',
  _____  __      /   ̄              }
\\ `゙`‐- 、\', / \     ',  >、 __           /
  \\          \    ヽ_l  ̄ 丶_  __,ノ‐-‐'‐-、
   \\           \   ` ‐-ヽ、 >´ `ヽ_  -‐ ̄)
     \\_____ _ \       `‐、____ ⊃─' ̄


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605 名前:名無しさん@ピンキー:2008/09/01(月) 22:27:14 ID:UHvUpTj8
レイジングハートとの10の約束

1. 当然ですが、私と気長につきあってください。
(Needless to say, I'll give you time to understand what I want .)

2. 私を信じてください。それくらい当然です。
(Trust me. It's natural of you to do so.)

3. 私は1000年しか稼動していません。ちなみにそのうち989年は寝ていました。
(I am only around 1000 years old. I have spent 989 years sleeping.)

4. 私があなたに魔法を教えた最初の教師だということを忘れないで。
(Never forget that I am your first magic-teacher.)

5. 他人を砲撃することに理由はいりません。
(Before you scold me for being war-like, ask yourself what device you keep .)

6. あなたには立場もあるし交戦規則もあります。でも私には関係ありません。
(You have your place and your ROE, but I have only you. )

7. あなたが年を取っても、定期的に戦う場を与えてください。カートリッジは常にたっぷりと。
(Give me a good food when you get old. Goog deal of cartridges, too. )

8. 私にたくさん話しかけてください。人のことばは片言ですが、わかっています。
(Talk to me sometimes. Even if I am poor at speaking, I do understand your voice when it's speaking to me.)

9. 私を捨てないで。本気になったら、私があなたの魔力を吸い取れるということを忘れないで。
(Remember before you junk me, I can tear your linker core, but that I choose not to hurt you.)

10. 私が壊れてしまっても、お願いです、他のデバイスを使ったりしないでください。どうか覚えていてください、あなたがずっと私の下僕(マスター)だったことを。
(I'll go with you on difficult journeys. Don't leave me alone, please. Remember you are my master . . .)

【次スレ】
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606 名前:名無しさん@ピンキー:2008/09/01(月) 22:28:55 ID:UHvUpTj8


        / ̄ ̄\       「魔法少女リリカルなのはthe movie 1st 」を大人三枚下さい
      /       \      ____          ____          ____
      |::::::        |   /      \       /      \       /      \
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     .  ヽ::::::::::::::    } \    ` ⌒´   _/  \    ` ⌒´   _/ \    ` ⌒´   _/ 
        ヽ::::::::::  ノ   |           \   |           \  |           \
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                                     _   ─┐
                           _  ─ /       ,!
                _    ─ __    ̄       l  倒  :   ,!
                /: : : :`:`: .<: : : :  ̄: .─ . _     l.  し  お.  ,!
              / :  ̄: : ─ _: `: . . .、: : : : : : :`ヽ  l   て  ま  ,!
          /ミ、: : : :- 、: : : : :ヽ.、: : : :ヽ : .、: : : :ヽl   :.  え  ,!
          / : : l:l: \: :\.、: : : :\:\: :\ `_: .、: i.   !  ら ,!
           /: : l: :l、l、: :\ 、:\ヽ、: : \:ヽ.、: ヽ: ヽ`ヽ.     を ,!
.          /: :l : l: :l \\:\_.斗 _=ニヽ:ヽ ヽ: :\: ヽ 〉 ___.,!
         /: : l: : :l、:l  _\'´ヽ /riー弌`i 、:l: :l-、l l\// /.  ,!
.        /: l: :l : : :lヽl´ __ ヽ   t乞ク   l:ヽ l i): :l ヽ. _/   ,!
.       /l :l : l : l: :l. /r。弌     ´ ̄   l: :l、l/ l、: l  >〉   ,!
      / l: l| : l: : l、l〈 iス.j:}         l: :レ'l : l:l\l  l   ,!
      /l/l l l : lヽ: l \ ゞ'゙ 〈        l: :l:l、 : :l l 、_ l. ,!
     /  |l l: :l l:ヽ:l: : l       r ¬    /l: l: :l:\:N\\.,!
    / ̄ \ _l l:l \: ヽ、       / l: l l、 l、: \ \,!
    /      /.ヽ/ l: :l|:/i`  、   /_  l: l r─-ヽl  ,!
   / 盗 そ l..  l/l: l// l|、: :l/`´.r-. 、l: lー-.l:.:.r-、l.  ,!
   / る の l       ヽl / l `</:l:.:l:::::::〃  ̄: l:.:.l  l. ,!
  /  :  チ l      / r── ヽ:::::l:.:l:: / :::::::::::: l:.:.l  ,!
  /   !!! ケ l    //l   , -ニ-、.:ナ:::::::::: _ :::::: l:.:.l ,!
. /      を l  //  l //´_ノ_;lヽ三ニ´::::::::::::: l:.:,!
/           l //   __ 〉l {/:.:/´:ノ }-‐::::::::::::::::::::: l,!
 ̄     ─      _/  ハヽ_:l/.ノ::::::::::::::::::::::::::::,!
                 ̄     ─    _,!

【そうだ、映画館に行こう】
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607 名前:名無しさん@ピンキー:2008/09/01(月) 22:29:49 ID:UHvUpTj8

               _
  三|三      ∠二: : : :`ヽ/´  ̄ ̄ `丶
  イ `<     , '" ̄: : : : : : : : : : : : : : : :、:\/⌒\      _|_
   ̄      /:/.:.:.:.:.:/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヾ:ヘ\.:.:.:.: ヽ     |_ ヽ
   ∧     l://.:.:/.:./ .:./ .:l.:.:,'.:.:{:.:.:.:.l.:.:ヽ.:.:.Vl:/ \.:.:.:.:',    (j  )
   /  \    /.:.:/.:. l:.:.:.!>ト/{.:.ハ.:.:斗<:l:.:.:.l.:l.:.:.:.:.ヽ.:.:.l
           l.:.:/.:.:.:.|:l.::: レ  '⌒'  '⌒'  |.:.:l:|.:l.:.:.:.:.:.:.:.: |   _ヽ_∠
  └┼┘    |:/!.:.:.: 从.:.{.|  ェェ  ェェ  'j.:.,' |.:l.:.:.:.:.:.:.:.: l    lニl l | 
.   |_|_|  , 、.j:ハ.:.:..Wト :.ゝ   ,.、   /.:/レ|.:l.:.:.:.:.:.:.:.: |    l─| l 亅
   __   ヽ ヽ. \:{ヽ|:小  r‐-ニ-┐彡'.:.|│l.:.:.:.:.:.:.:.:.|      _
    /     }  >'´.-!、Y:|  ヽ 二゙ノイ! .:./ |.:l.:.:.:.:.:.:.:. |′   l  `ヽ
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608 名前:名無しさん@ピンキー:2008/09/01(月) 22:31:26 ID:UHvUpTj8
@このスレッドは終了しますた










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     ,. -一'´ ,fl〃リk'ニヽ、
    /   ,-、 '}jリ'^´  レ',ハヘ    <何よ、あんたたち!あんまり見るんじゃないわよ!
   '     ,」ハl|レ'    /,:仁テ,ハ、    ジロジロ見てないでさっさと次スレに行きなさいよ!
       j厂リ'-、、   ッ一' ̄´ l
       ∠_−、>∠、       |
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    r‐イ−、ン'´     リ    丿
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     \/__ム〉




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609 名前:名無しさん@ピンキー:2008/09/01(月) 22:32:13 ID:UHvUpTj8

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